ボイラーの取扱い

【二級ボイラー技士・取扱い】スケール・腐食の原因と防止策(酸素腐食・苛性脆化)

スケールと腐食 ─ ボイラーの二大トラブルを知ろう

ボイラーを長く安全に使うために、避けて通れないのが「スケール」「腐食」の問題です。

前回の記事(ボイラー用水の処理)で水処理の基本を学びましたが、水処理が不十分だったり、管理を怠ったりすると、ボイラー内部にスケールがたまったり、金属が腐食したりします。

放っておくとどうなる?
スケールがたまると伝熱不良→過熱→膨出・破裂。腐食が進むと肉厚が減少→漏れ・破損。どちらもボイラー事故の直接的な原因になります。

この記事では、スケールと腐食それぞれの種類・原因・障害・防止策をていねいに解説します。試験でも最頻出テーマのひとつなので、しっかり押さえましょう!

スケールとは?その正体と種類

スケールとは、ボイラー水に溶けていた成分が伝熱面に固着した硬い沈殿物のことです。いわば「ボイラー版の水あか」です。

現場イメージ
電気ポットの内側に白い塊がこびりつくのを見たことがありますか?あれがまさにスケールです。ボイラーの中ではこれが何ミリもの厚さで付くことがあり、簡単にはがれません。

スケールの主な種類

スケールの種類 特徴
炭酸カルシウム
(CaCO₃)
低温部に付きやすい。比較的軟らかく、酸で溶けやすい
硫酸カルシウム
(CaSO₄)
硬くて除去しにくい。高温になるほど溶けにくくなる性質がある
シリカスケール
(SiO₂系)
非常に硬く、最も除去しにくい。伝熱阻害が大きい。高圧ボイラーで特に問題

試験のポイント
「硫酸カルシウムは硬い」「シリカスケールは最も除去しにくい」というキーワードが出題されやすいです。炭酸カルシウムは比較的「軟らかい」「酸に溶ける」と覚えましょう。

スラッジとの違い

スラッジは水中に浮遊する軟らかい泥状の沈殿物です。スケールのように伝熱面に固着していないので、ブロー(吹出し)で排出できます。清缶剤の軟化剤は、硬度成分がスケールになる前にスラッジにして排出しやすくする役割があります。

スケールが引き起こす障害

スケールが伝熱面に付着すると、以下のような深刻な障害が起きます。

① 伝熱阻害

スケールは熱を通しにくい(熱伝導率が低い)ため、火炎や燃焼ガスの熱がボイラー水に伝わりにくくなります。その結果、燃料消費量が増加して効率が低下します。

現場イメージ
やかんの底にスケールがびっしり付いていると、お湯が沸くのに時間がかかりますよね?ボイラーでも同じで、スケール1mmでも燃料費が数%上がるといわれています。

② 過熱(オーバーヒート)

熱がボイラー水に伝わらないということは、金属自体の温度がどんどん上がるということ。金属が設計温度以上に過熱されてしまいます。

③ 膨出(バルジング)

過熱された金属は強度が低下し、内部の圧力に耐えきれなくなって外側に膨らみ出します。これが膨出(バルジング)です。最悪の場合、破裂につながる非常に危険な状態です。

スケールの障害をまとめると
スケール付着 → 伝熱阻害金属の過熱膨出破裂
この「ドミノ倒し」のような流れを覚えておきましょう!

腐食とは?ボイラーを蝕むサビの正体

腐食とは、金属が化学的・電気化学的に侵される現象です。わかりやすくいうと「ボイラーの中がサビていく」ことです。

腐食が進むと金属の肉厚が減り、圧力に耐えられなくなって漏れや破損が起きます。

腐食の主な種類

① 酸素腐食(溶存酸素による腐食)

ボイラー水に溶けている酸素が金属と反応して起きる腐食です。ボイラーにおける腐食の最も一般的な原因です。

現場イメージ
鉄のクギを水に浸けておくとサビますよね?あれは水の中の酸素が鉄と反応しているからです。ボイラーの中でも同じことが起き、しかも高温なので反応が加速します。

酸素腐食が進むと、金属表面に小さなくぼみ(穴)ができます。これをピッチング(点食)といいます。

ピッチング(点食)

ピッチングとは、金属表面に針で突いたような小さな穴があく腐食のことです。表面はそれほど大きく見えなくても、穴は深くまで進行していることがあり、ついには貫通(穴が開く)して漏れの原因になります。

試験のポイント
「ピッチング(点食)は溶存酸素による腐食が原因」というのは頻出です。給水中の溶存酸素を除去する脱気処理がいかに重要かがわかりますね。

② 苛性脆化(かせいぜいか)

苛性脆化は、ボイラー水中の苛性ソーダ(水酸化ナトリウム、NaOH)の濃度が局部的に高くなった箇所で起きる腐食です。

リベット穴やころ広げ部分など、すき間がある部分にボイラー水が入り込み、蒸発によって濃縮されると、その部分のアルカリ濃度が異常に高くなります。

すると金属の結晶粒界(金属の粒と粒の境目)が侵されて、ひび割れ(クラック)が発生します。

苛性脆化の怖さ
外から見ただけでは気づきにくく、突然の破裂につながることがあります。特に高圧ボイラーで問題になります。

試験のポイント
苛性脆化のキーワードは3つ:①アルカリの局部濃縮②すき間部分(リベット穴など)③結晶粒界のひび割れ。この3点セットで覚えましょう。

③ 電食(でんしょく)

異なる種類の金属が接触している部分で起きる腐食です。例えば、鉄と銅が接触してボイラー水に浸かっていると、電池のような状態になり、一方の金属(鉄側)が腐食しやすくなります。

現場イメージ
水道管で鉄管と銅管がつながっている部分にサビが集中しているのを見たことがある人もいるかもしれません。あれが電食です。ボイラーでも異種金属の接触部に同じことが起きます。

腐食の種類をまとめて整理

腐食の種類 原因 特徴
酸素腐食 溶存酸素 ピッチング(点食)が発生。最も一般的
苛性脆化 アルカリの局部濃縮 すき間部分に発生。結晶粒界のひび割れ
電食 異種金属の接触 接触部の一方が集中的に腐食する

スケールの防止策

スケールを防ぐには、その原因である硬度成分をボイラー水に持ち込まないことが基本です。

① 軟化処理(外部処理)

軟化装置(イオン交換樹脂)で給水中のカルシウム・マグネシウムを除去します。これがスケール防止の最も効果的な方法です。詳しくはボイラー用水の処理を参照してください。

② 清缶剤の使用(内部処理)

軟化装置で除去しきれなかった硬度成分を、清缶剤の軟化剤(リン酸ナトリウムなど)スラッジに変え、ブローで排出します。

③ ブロー管理

ボイラー水中のスラッジや濃縮した不純物を定期的にブロー(吹出し)して排出します。

④ 適切なpH管理

ボイラー水のpHを適正(11〜11.8程度)に保つことで、一部のスケール成分を溶解状態に維持できます。

腐食の防止策

酸素腐食の防止

対策 具体的な方法
脱気処理 加熱脱気・真空脱気で溶存酸素を除去
脱酸素剤 亜硫酸ナトリウム・ヒドラジンなどで化学的に除去
給水温度を高くする 水温が高いほど酸素が溶けにくくなる

苛性脆化の防止

苛性脆化を防ぐには以下の対策があります。

  • pH管理を適正に行う:アルカリ濃度が高くなりすぎないよう管理する
  • 低リン酸処理:リン酸ナトリウム系の薬品を使い、水酸化ナトリウムの遊離を抑える
  • すき間部分の構造改善:リベット構造をできるだけ避け、溶接構造にする

現場イメージ
現代のボイラーは溶接構造が主流なので、リベット穴からの苛性脆化は昔ほど問題になりません。しかし試験では古い形式のボイラーも出題されるので、知識としてしっかり覚えておきましょう。

電食の防止

  • 異種金属の直接接触を避ける(絶縁材を挟む
  • 犠牲陽極(亜鉛板など)を取り付けて保護する

全体の防止策マップ

スケール・腐食の防止策まとめ

【スケール防止】
・軟化装置で硬度成分を除去(外部処理)
・清缶剤の軟化剤でスラッジ化(内部処理)
・ブローで不純物を排出

【腐食防止】
・脱気処理+脱酸素剤で溶存酸素を除去
・pH管理(11〜11.8)で保護被膜を形成
・防食剤の使用
・異種金属の接触を避ける(電食防止)

低温腐食にも注意!

ここまでは「ボイラー水側」の腐食を見てきましたが、煙側(燃焼ガス側)にも腐食の問題があります。

燃料中の硫黄が燃焼すると亜硫酸ガス(SO₂)が発生し、これがさらに酸化されると三酸化硫黄(SO₃)になります。SO₃が排ガス中の水分と結合すると硫酸(H₂SO₄)が生成され、金属面の温度が露点以下になった部分で結露して腐食を起こします。これが低温腐食です。

試験のポイント
低温腐食はエコノマイザ詳しくはこちら)や空気予熱器の低温部で発生しやすいです。燃料中の硫黄分が多い重油を使うと起きやすくなります。

低温腐食の防止策としては、以下があります。

  • 給水温度を高くして、エコノマイザの金属温度を露点以上に保つ
  • 硫黄分の少ない燃料を使う
  • 空気予熱器に耐腐食性の材料を使う

試験で狙われるポイント

  • スケールの害 — 伝熱面に付着→熱伝導を妨げ→過熱→膨出・破裂の危険。燃料の無駄も発生
  • 酸素腐食 — 溶存酸素がボイラー金属を腐食。防止法は脱気・化学的脱酸素(亜硫酸ナトリウム)
  • 苛性脆化 — 高濃度の苛性ソーダがリベット穴等に濃縮→金属がもろくなる。低りん酸処理で防止
  • 電食(異種金属接触腐食) — 異なる金属の接触部で起こる腐食。絶縁材の挿入で防止

理解度チェック

ここまでの内容を3つの問題で確認しましょう!

Q1. ボイラーの伝熱面にスケールが付着した場合の障害として、誤っているものはどれか。

(1)伝熱が阻害される (2)燃料消費量が増加する (3)金属が過熱される (4)ボイラー水のpHが上昇する (5)膨出が起きる

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正解:(4)ボイラー水のpHが上昇する
スケールの付着による障害は「伝熱阻害→金属の過熱→膨出→破裂」という流れです。燃料消費量の増加も正しい障害です。しかし「pHが上昇する」はスケール付着の直接的な障害ではありません。

Q2. ピッチング(点食)の主な原因として正しいものはどれか。

(1)ボイラー水の過度なアルカリ (2)給水中の溶存酸素 (3)異種金属の接触 (4)スケールの付着 (5)燃料中の硫黄

解答を見る

正解:(2)給水中の溶存酸素
ピッチング(点食)は溶存酸素による酸素腐食が原因です。金属表面に小さな穴が開き、深くまで進行する特徴があります。脱気処理や脱酸素剤で溶存酸素を除去することが防止策です。

Q3. 苛性脆化について正しい記述はどれか。

(1)溶存酸素が原因で起きる (2)金属表面が全体的に薄くなる (3)リベット穴などのすき間部分で起きやすい (4)酸性のボイラー水で起きやすい (5)低温のボイラーで多く発生する

解答を見る

正解:(3)リベット穴などのすき間部分で起きやすい
苛性脆化は、すき間部分でボイラー水が蒸発・濃縮してアルカリ(苛性ソーダ)濃度が局部的に高くなることで起きます。結晶粒界が侵されてひび割れが発生します。溶存酸素が原因ではなく(→酸素腐食)、酸性ではなくアルカリ性が原因です。

まとめ

この記事のポイント

  • スケールの種類:炭酸カルシウム(軟)、硫酸カルシウム(硬)、シリカ(最も除去困難)
  • スケールの障害:伝熱阻害→過熱→膨出→破裂
  • 酸素腐食:溶存酸素が原因。ピッチング(点食)を引き起こす
  • 苛性脆化:アルカリの局部濃縮が原因。すき間部分でひび割れが発生
  • 電食:異種金属の接触が原因
  • スケール防止 → 軟化処理・清缶剤・ブロー
  • 腐食防止 → 脱気・脱酸素剤・pH管理・防食剤
  • 低温腐食:燃料中の硫黄→硫酸が金属面で結露して腐食

スケールと腐食は「水処理」の記事で学んだ内容と表裏一体です。水処理がうまくいけばスケール・腐食は防げる、逆に水処理を怠ればスケール・腐食が起きる。この関係をしっかり頭に入れておきましょう!

水処理の基本をおさらいしよう!

スケール・腐食を防ぐには水処理が重要です

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