ボイラーの取扱い

【二級ボイラー技士・取扱い】ボイラー用水の処理(軟化装置・脱気・清缶剤)

ボイラー用水の処理とは?水をキレイにしないと大変なことに!

ボイラーは水を加熱して蒸気をつくる装置ですが、実はどんな水でもOKというわけではありません。水道水や井戸水には、目に見えないさまざまな成分が溶け込んでいます。

たとえば、やかんの内側に白い汚れがつくのを見たことはありませんか?あれは水の中のカルシウムやマグネシウム(硬度成分)が固まったものです。ボイラーの中でも同じことが起こり、放っておくとスケール(水あか)がびっしりとこびりつきます。

スケールがたまるとどうなる?
伝熱面にスケールが付着すると、熱が水に伝わりにくくなります。すると燃料のムダ使いになるだけでなく、金属が過熱されて膨出(ふくらみ)破裂の原因になることも!

こうしたトラブルを防ぐために行うのが「ボイラー用水の処理」です。この記事では、軟化装置・脱気・清缶剤など、ボイラーの水処理の全体像をわかりやすく解説します。

ボイラーに使う水の種類を整理しよう

まずは用語の整理から。ボイラーに関わる「水」にはいくつか名前があります。

用語 意味
給水 ボイラーに補給する水の総称。補給水+復水(戻ってきた蒸気が冷えた水)
補給水 新たに外部から足す水。水道水・工業用水など
ボイラー水 ボイラー内部で実際に加熱されている水

現場イメージ
ビルの機械室では、水道水をそのまま使わず、まず軟化装置を通してからボイラーに送ります。蒸気として出ていった分だけ補給水を足すので、ボイラー水の中に不純物が濃縮されていきます。だから定期的にブロー(吹出し)で濃くなった水を排出するんですね。

スケールの原因「硬度成分」って何?

水の中に溶けているカルシウム(Ca)マグネシウム(Mg)を合わせて「硬度成分」と呼びます。これらが多い水を硬水、少ない水を軟水といいます。

日本の水道水は比較的軟水ですが、それでもボイラーのように長時間加熱すると硬度成分が析出してスケールになります。

試験のポイント
スケールの主成分は炭酸カルシウム硫酸カルシウムなど。硬度成分を取り除く処理を軟化処理といい、これがボイラー水処理の第一歩です。

軟化装置(イオン交換樹脂)の仕組み

スケールの原因となる硬度成分を取り除くのが軟化装置です。最も一般的なのがイオン交換樹脂方式(強酸性陽イオン交換樹脂)です。

イオン交換って何?

イオン交換樹脂は、小さなビーズ状の粒がたくさん詰まったフィルターのようなものです。このビーズの表面にはナトリウムイオン(Na⁺)がくっついています。

水がこの樹脂を通ると、水の中のカルシウムイオン(Ca²⁺)やマグネシウムイオン(Mg²⁺)が樹脂に捕まり、代わりにナトリウムイオン(Na⁺)が水の中に出ていきます。

かんたんイメージ
「席替え」を想像してください。Ca²⁺やMg²⁺が座っていた席に、Na⁺が代わりに座ります。Ca²⁺やMg²⁺はスケールの原因になりますが、Na⁺はスケールになりにくいので安心、というわけです。

樹脂の再生(食塩水で復活!)

イオン交換樹脂はずっと使っていると、Ca²⁺やMg²⁺でいっぱいになり、交換能力がなくなります。これを「樹脂が飽和した」といいます。

飽和した樹脂は、食塩水(塩化ナトリウム水溶液)を流すことで再生できます。

再生の仕組み
食塩水の大量のNa⁺が、樹脂に捕まっていたCa²⁺やMg²⁺を押し出して、再びNa⁺がセットされます。つまり樹脂がリセットされて、また使えるようになるんです!

試験のポイント
「軟化装置の再生に使うのは?」→ 食塩水(塩化ナトリウム水溶液)。これは頻出です!「酸」や「アルカリ」ではないので注意しましょう。

軟化装置の注意点

軟化装置は硬度成分を取り除きますが、溶存酸素や溶存ガスは除去できません。また、シリカ(ケイ酸)も除去できないことがあります。そこで次に紹介する「脱気」や「清缶剤」と組み合わせて使います。

脱気処理で溶存酸素を追い出す

水の中には目に見えない酸素が溶け込んでいます。この溶存酸素がボイラー内部の金属と反応すると腐食(さび)が起きます。特にボイラーのように高温・高圧の環境では腐食が加速します。

溶存酸素を取り除く処理が脱気処理です。

加熱脱気(脱気器)

水を加熱して沸騰させると、溶けていた酸素が追い出されます。これが加熱脱気の原理です。

脱気器では、給水を細かく噴霧しながら蒸気で加熱します。温度が上がると溶存酸素は水の中にいられなくなり、外に出ていきます。

現場イメージ
コーラの缶を振ると泡が出ますよね?あれは溶けていた二酸化炭素が出てきた状態。同じように、水を加熱すると溶けていた酸素が泡になって出ていくイメージです。

真空脱気

容器の中を真空(減圧)にすると、水の沸点が下がります。すると低い温度でも溶存酸素を追い出すことができます。これが真空脱気です。加熱脱気が使えない場合や、低温で処理したい場合に用いられます。

試験のポイント
脱気の方法として「加熱脱気」「真空脱気」の2つを覚えましょう。加熱脱気のほうが一般的で、脱気器を使うパターンが試験によく出ます。

清缶剤の種類と役割

軟化装置や脱気で取りきれない不純物や、ボイラー水の性質を調整するために清缶剤(せいかんざい)を使います。清缶剤にはいくつかの種類があり、それぞれ目的が違います。

① 脱酸素剤(酸素除去剤)

脱気処理でも完全には除去できない微量の溶存酸素を、化学的に除去します。

薬品名 特徴
亜硫酸ナトリウム 溶存酸素と反応して硫酸ナトリウムになる。低圧ボイラー向き
タンニン 酸素と反応する天然成分。防食効果もある
ヒドラジン 酸素と反応して窒素と水になる。高圧ボイラー向き(有害物質なので取扱い注意)

② pH調整剤(アルカリ調整剤)

ボイラー水のpHを適正に保つための薬品です。

ボイラー水は弱アルカリ性(pH 11〜11.8程度)に維持するのが理想です。アルカリ性にすることで金属表面に保護被膜ができ、腐食を防ぎます。

現場イメージ
pH調整剤としては水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)リン酸ナトリウムなどが使われます。ビルの機械室では、清缶剤の投入量を水質検査の結果に応じて調整しています。

注意!
pHが高すぎると苛性脆化(かせいぜいか)という別のトラブルが起きることがあります。pH管理は「高ければ良い」わけではないので注意しましょう。詳しくはスケール・腐食の記事で解説します。

③ 軟化剤(スラッジ調整剤)

軟化装置を通しても除去しきれなかった硬度成分を、ボイラー水の中でスラッジ(軟らかい泥状の沈殿物)に変えて、ブローで排出しやすくする薬品です。

リン酸ナトリウムなどがこの目的で使われます。硬度成分がスケール(硬い結晶)になる前に、軟らかいスラッジにしてしまうのがポイントです。

④ 防食剤

ボイラーの金属表面に保護被膜をつくり、腐食を防ぐ薬品です。皮膜形成型のインヒビターなどが使われます。

清缶剤まとめ
① 脱酸素剤 → 溶存酸素を化学的に除去
② pH調整剤 → ボイラー水をアルカリ性に維持
③ 軟化剤 → 硬度成分をスラッジ化して排出しやすく
④ 防食剤 → 金属表面に保護被膜を形成

ボイラー水の水質管理(pH管理・電気伝導率)

ボイラーを安全に運転するためには、ボイラー水の水質を定期的にチェックする必要があります。

pH(ペーハー)管理

ボイラー水のpHは11〜11.8程度(弱アルカリ性の上のほう)に維持します。

pH範囲 状態
pH 7以下(酸性) 金属が腐食しやすい。絶対に避ける
pH 11〜11.8 適正範囲。保護被膜ができて腐食を防ぐ
pH 13以上(強アルカリ) 苛性脆化のリスクあり

電気伝導率

水の中の不純物(イオン)が多いほど電気を通しやすくなります。電気伝導率を測ることでボイラー水の濃縮度がわかります。濃縮が進みすぎている場合はブローを行います。

その他の管理項目

全硬度、塩化物イオン、りん酸イオン、シリカなども定期的に検査します。JIS規格でボイラーの種類ごとに水質基準が定められています。

ブロー(吹出し)管理の重要性

ボイラーで蒸気をつくると、水だけが蒸発して出ていくため、残ったボイラー水の中に不純物がどんどん濃縮されていきます。これを放置するとスケールやキャリオーバの原因になります。

そこで定期的にブロー(吹出し)を行い、濃縮されたボイラー水の一部を排出して新しい水に入れ替えます。

間欠ブローと連続ブロー

種類 特徴
間欠ブロー 一定時間ごとに弁を開けて一気に排出。ボイラー底部のスラッジを排出するのに有効
連続ブロー 少量を常に排出し続ける。ボイラー水の濃度を一定に保つのに有効

現場イメージ
ビルのボイラー室では、ボイラー技士が毎日水質を測定し、電気伝導率が基準値を超えていたらブローを行います。「今日はちょっと濃いな…」と数値を見て判断するわけですね。ブローのやりすぎは熱のムダになるので、適切な量を見極めるのが腕の見せどころです。

補給水処理の流れをまとめよう

ここまでの内容を、補給水がボイラーに入るまでの流れとして整理しましょう。

補給水処理の流れ

原水(水道水・工業用水)
 ↓
軟化装置(イオン交換樹脂で硬度成分を除去)
 ↓
脱気器(加熱脱気で溶存酸素を除去)
 ↓
清缶剤の注入(脱酸素剤・pH調整剤・軟化剤など)
 ↓
給水ポンプでボイラーへ供給
 ↓
ボイラー水の水質管理ブローで濃縮を防止

ボイラー水処理の「内部処理」と「外部処理」

水処理には大きく分けて2つのアプローチがあります。

区分 内容
外部処理 ボイラーに水を入れる前に行う処理。軟化装置・脱気器・ろ過装置など
内部処理 ボイラー水の中に薬品を入れて行う処理。清缶剤の投入・ブロー管理

試験のポイント
「軟化装置は外部処理か内部処理か?」→ 外部処理。ボイラーに入れる前に行うからです。「清缶剤は?」→ 内部処理。ボイラー水の中に入れるからです。この区別は出題されやすいので確実に押さえましょう。

給水の注意点

せっかく水処理をしっかり行っても、給水の段階で問題があると意味がありません。

給水温度はできるだけ高く!
給水の温度が高いほど、溶存酸素が少なくなります(温度が高いと気体は水に溶けにくくなるため)。また、ボイラー本体への熱衝撃も小さくなります。エコノマイザ(詳しくはこちら)で排ガスの熱を利用して給水を予熱するのも、この理由からです。

試験で狙われるポイント

  • 軟化装置の原理 — イオン交換樹脂でCa²⁺・Mg²⁺を除去。再生にはNaCl(食塩水)を使用
  • 脱気の目的 — 溶存酸素を除去して酸素腐食を防止。加熱脱気法と化学的脱気法がある
  • 清缶剤の種類 — りん酸ナトリウム(軟化)、亜硫酸ナトリウム(脱酸素)、苛性ソーダ(pH調整)
  • ボイラー水のpH管理 — pH 11〜11.8が目安。酸性側に傾くと腐食が進む

理解度チェック

ここまでの内容を3つの問題で確認しましょう!

Q1. 軟化装置のイオン交換樹脂を再生するために使う液体はどれか。

(1)塩酸 (2)食塩水 (3)水酸化ナトリウム水溶液 (4)硫酸 (5)蒸留水

解答を見る

正解:(2)食塩水
強酸性陽イオン交換樹脂(ナトリウム型)は、食塩水(塩化ナトリウム水溶液)を通すことで再生します。大量のナトリウムイオンが樹脂に捕まったカルシウムイオンやマグネシウムイオンを押し出し、樹脂が再び使えるようになります。

Q2. ボイラー水のpH管理について、適正な範囲として最も近いものはどれか。

(1)pH 5〜6 (2)pH 7〜8 (3)pH 9〜10 (4)pH 11〜11.8 (5)pH 14

解答を見る

正解:(4)pH 11〜11.8
ボイラー水はアルカリ性に維持します。pH 11〜11.8程度が適正範囲です。アルカリ性にすることで金属表面に保護被膜ができ、腐食を防ぎます。酸性(pH 7以下)では腐食が進み、強すぎるアルカリ(pH 13以上)は苛性脆化のリスクがあります。

Q3. 次のうち、ボイラー水処理の「外部処理」に該当するものはどれか。

(1)清缶剤の投入 (2)ブロー管理 (3)軟化装置による処理 (4)pH調整剤の添加 (5)脱酸素剤の注入

解答を見る

正解:(3)軟化装置による処理
外部処理は「ボイラーに水を入れる前に行う処理」のことです。軟化装置や脱気器はボイラーの外で水を処理するので外部処理です。一方、清缶剤の投入やブロー管理はボイラー内部の水に対して行うので内部処理です。

まとめ

この記事のポイント

  • 硬度成分(Ca・Mg)がスケールの原因。軟化装置(イオン交換樹脂)で除去する
  • イオン交換樹脂の再生には食塩水を使う
  • 脱気処理(加熱脱気・真空脱気)で溶存酸素を除去し、腐食を防ぐ
  • 清缶剤は4種類:脱酸素剤・pH調整剤・軟化剤・防食剤
  • ボイラー水のpHは11〜11.8(アルカリ性)に維持する
  • ブローで濃縮されたボイラー水を排出し、水質を管理する
  • 軟化装置・脱気器は外部処理、清缶剤・ブローは内部処理

ボイラー用水の処理は、ボイラーを安全・効率的に運転するための「縁の下の力持ち」です。水をキレイにする → 酸素を追い出す → 薬品で調整する → ブローで排出する、この流れをしっかり覚えておきましょう!

次の記事では、水処理がうまくいかないと何が起きるか?スケールと腐食について詳しく学びます。

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