ボイラーの取扱い

【二級ボイラー技士・取扱い】ボイラー用水処理(軟化・脱気・清缶剤)

この記事で分かること

  • 軟化・脱気・薬品処理が、それぞれ何を除くか
  • 軟化装置でシリカ・酸素・電気伝導率まで下がらない理由
  • 貫流点(硬度漏れ)を出口硬度で見つける方法
  • 全硬度から軟水採取量を求めるオリジナル計算例

結論:ボイラー水処理は、1台の装置で水を「きれい」にする作業ではありません。軟化装置は硬度、脱気装置は溶存気体、清缶剤は残留成分とpH、吹出しは濃縮という別々の問題を担当します。

旧本文の「ボイラー水は一律pH 11〜11.8が適正」という断定は撤回します。目標値はボイラー形式、圧力、補給水、処理方式で変わります。JIS B 8223や製造者の水質基準を、設備ごとに適用することが大切です。

公式資料の確認先

公式資料確認日:2026年7月28日。薬品名・濃度・分析頻度・排水処理は設備と水質で変わるため、実機では製造者・水処理会社・事業場の管理基準を優先してください。

まず給水系統の5つの水を区別する

名称 意味 主な確認
原水 水道・工業用水・地下水など 硬度、濁度、シリカ
補給水 損失分を外部から補う処理水 残留硬度、処理性能
復水 蒸気使用後に戻る凝縮水 油、鉄、銅、漏入物
給水 補給水と復水を合わせて送る水 pH、溶存酸素、温度
ボイラー水 缶内で加熱・濃縮された水 pH、伝導率、薬剤成分

復水は一度蒸発した水なので硬度が低い一方、熱交換器から油や工程物質が混入することがあります。「戻り水だから必ず良質」と決めつけず、汚染時に切り離せる監視が必要です。

水中成分と障害を1対1で結び付ける

Ca・Mg・シリカ

スケール、伝熱阻害、局部過熱

O₂・CO₂

孔食、給水・復水系の腐食

溶解塩類の濃縮

フォーミング、キャリオーバ

不適切なpH・薬剤

腐食、脆化、堆積物

スケールは熱伝導率が鋼材より低いため、同じ蒸発量を保とうとすると火側金属温度が上がります。薄い付着でも燃料損失だけでなく、膨出・割れ・漏れへつながる点が本質です。

水処理は直列のバリアで考える

原水

硬度・シリカ・気体

軟化

Ca・MgをNaへ交換

脱気

O₂・CO₂を低減

薬注

残留成分とpHを管理

ボイラー

蒸発・濃縮・吹出し

前段の異常を後段だけで補うのは危険です。軟化装置が硬度漏れしているのに清缶剤を増やし続ければ、スラッジと溶解塩類が増え、別の障害を招きます。原水から復水・給水・ボイラー水まで測定点を分けます。

軟化装置は硬度をナトリウムへ交換する

単純軟化法では、ナトリウム形の強酸性陽イオン交換樹脂(R−Na)へ原水を通します。カルシウムイオン1個またはマグネシウムイオン1個を樹脂が捕らえると、電荷をつり合わせるためナトリウムイオン2個が水へ出ます。

2R−Na + Ca²⁺ → R₂−Ca + 2Na⁺

硬度は下がりますが、イオンが消えるのではなく種類が変わります。

軟化装置で除けるもの・除けないもの

項目 軟化後 理由
Ca・Mg硬度 低下する 樹脂がNaと交換
シリカ・陰イオン 基本的に残る 陽イオン硬度だけを交換
溶存酸素 残る 気体を除く装置ではない
電気伝導率 大きくは下がらない Na塩としてイオンが残る

したがって「伝導率が低いから硬度漏れなし」「伝導率が高いから軟化装置故障」とは判定できません。軟化装置出口では硬度指示薬や硬度計で残留硬度を直接測る必要があります。

貫流点を超える前に再生する

通水量が増えると樹脂の交換能力が消費され、ある点から処理水の残留硬度が急に上がります。この立ち上がりを貫流点といいます。再生工程は一般に、逆洗、食塩水による再生、押出し・すすぎを組み合わせます。

食塩水を入れれば樹脂が新品に戻るわけではありません。鉄汚染、樹脂破砕、流路の偏り、塩不足、弁の不良があれば硬度漏れします。採水量だけでなく、出口硬度と再生記録を照合します。

全硬度から理論採水量を求める

原水のカルシウムが22.0mg/L、マグネシウムが4.8mg/Lのとき、炭酸カルシウム換算の全硬度を求めます。

Ca硬度:22.0 × 100÷40 = 55.0mgCaCO₃/L

Mg硬度:4.8 × 100÷24 = 20.0mgCaCO₃/L

全硬度:55.0 + 20.0 = 75.0mgCaCO₃/L

樹脂100L、交換容量50gCaCO₃/Lなら総交換容量は5,000g。理論採水量は、5,000÷0.075=66,667L、つまり約66.7m³です。

実機では貫流前に再生し、樹脂劣化や原水変動の余裕を見ます。上の値をそのまま再生設定には使わず、装置仕様と出口硬度で補正します。

脱気は物理処理と化学処理を組み合わせる

気体の水への溶解度は、一般に温度を上げると下がり、気相側の圧力を下げても下がります。この性質を利用するのが物理的脱気です。

  • 加熱脱気:給水を蒸気で飽和温度付近まで加熱し、O₂・CO₂を放出する
  • 真空脱気:減圧して低い温度でも溶存気体を放出しやすくする
  • 膜脱気:気体透過膜を介して水中の溶存気体を除く
  • 化学的脱気:亜硫酸ナトリウムやタンニンなどで残留酸素を反応除去する

加熱だけで酸素が完全にゼロになるわけではありません。脱気器出口の溶存酸素、給水温度、ベント状態、脱酸素剤の残留成分を組み合わせて管理します。

清缶剤は目的別に選び、分析値で量を決める

目的 働き 管理不足・過剰の例
脱酸素 残留O₂と反応 不足で酸素腐食、過剰で塩類増加
硬度処理 りん酸塩等でスラッジ化 排出不足で堆積
pH調整 腐食しにくい範囲へ保つ 低すぎても高すぎても障害
分散 粒子の付着・成長を抑える 水質不適合では効果不足

JIS B 8223:2021の公表問題を見ると、産業用水管ボイラーでも圧力や処理方式によりpHの選択肢が9.6〜10.811.0〜11.8などに分かれます。つまり11〜11.8は、ある条件の目安であって全ボイラー共通値ではありません。

日常管理は測定場所と目的をそろえる

採水場所 主な項目 分かること
軟化装置出口 残留硬度 貫流・再生不良
脱気器出口・給水 温度、O₂、pH 脱気・薬注状態
ボイラー水 pH、伝導率、薬剤成分 濃縮・内部処理
復水 鉄、銅、油、伝導率 腐食・工程漏入

採水直後の高温試料をそのまま測ると、温度補正や気体放出で値が変わります。採水冷却器、採水位置、冷却温度、測定時刻をそろえ、平常値との傾向で判断します。

電気伝導率などが管理上限へ近づいたときの吹出しは、「安全弁・水面計・吹出し操作」で解説しています。吹出しを増やす前に、測定誤差、補給水増加、復水汚染、薬注過多も確認しましょう。

理解度チェック

【問1】ナトリウム形軟化装置を通した後も基本的に残るものはどれですか。

(1) カルシウム硬度だけ
(2) マグネシウム硬度だけ
(3) 溶存酸素とシリカ
(4) 全てのイオン
(5) 水そのもの

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正解:(3)
単純軟化法はCa・MgをNaへ交換します。溶存気体やシリカをまとめて除く処理ではありません。

【問2】軟化装置の貫流点を最も直接的に確認できる測定はどれですか。

(1) 出口水の残留硬度
(2) 炉内温度
(3) 蒸気圧力
(4) 煙道O₂
(5) 燃料粘度

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正解:(1)
貫流点を超えると処理水の残留硬度が急上昇します。伝導率だけでは硬度漏れを判定できません。

【問3】原水硬度75mgCaCO₃/L、樹脂の総交換容量3,750gCaCO₃なら理論採水量はどれですか。

(1) 5m³
(2) 25m³
(3) 50m³
(4) 75m³
(5) 500m³

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正解:(3)
3,750g÷0.075g/L=50,000L=50m³です。実機は余裕を見て貫流前に再生します。

【問4】ボイラー水のpH管理として適切な考え方はどれですか。

(1) 全設備で11.8固定
(2) 高いほど安全
(3) 圧力・形式・処理方式に応じた基準を使う
(4) pHは測らない
(5) 原水と必ず同じにする

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正解:(3)
JISの管理範囲も条件ごとに異なります。設備へ適用される水質基準で管理します。

関連学習とまとめ

軟化は硬度、脱気は溶存気体、薬品は残留成分とpH、吹出しは濃縮を担当します。どこか一つの数値だけで水質全体を判断せず、原水・補給水・給水・ボイラー水・復水を同じ条件で測り、変化の原因を上流から追いましょう。

最終更新日:2026年7月28日

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