この記事で分かること
- 油・ガスだきの運転停止と、石炭だきの埋火の違い
- 通常停止・緊急停止・内部清掃前で操作が変わる理由
- 乾燥保存法・満水保存法・窒素封入法の選び方
- 休止明けに乾燥剤や閉止板を残さないための復旧確認
結論:「停止」と「保存」は別の作業です。まず燃料別の手順で安全に燃焼を止め、残熱と圧力を管理します。その後、休止期間・凍結の可能性・再起動までの時間・水質管理体制から保存法を選びます。
旧本文の「埋火=燃焼を徐々に弱める一般操作」は正確ではありません。埋火は主に石炭などの固体燃料をたくボイラーで、短い休止後の再点火に備えて火種を残す操作です。油・ガスだきボイラーの通常停止とは分けて覚えましょう。
公式資料の確認先
- 安全衛生技術試験協会:免許試験の公表問題
- 安全衛生技術試験協会:安全な停止・保存法の公表問題(PDF)
- 安全衛生技術試験協会:内部清掃前の冷却手順に関する公表問題(PDF)
- 日本ボイラ協会:二級ボイラー技士の試験科目・学習範囲(PDF)
公式資料確認日:2026年7月28日。操作順、ポストパージ時間、薬剤、保存圧力は設備ごとに異なるため、実機では取扱説明書と事業場の手順を優先してください。
通常停止・緊急停止・内部清掃前を混同しない
| 場面 | 最優先 | 冷却・換気 |
|---|---|---|
| 通常停止 | 負荷を下げて燃料停止 | 設備シーケンスで徐冷 |
| 緊急停止 | 直ちに危険源を遮断 | 異常別手順に従う |
| 内部清掃前 | 隔離・無圧・低温の確認 | 自然通風で徐々に冷却 |
通常停止では急な温度差を避けますが、低水位、異常燃焼、燃料漏れなどの緊急時に「ゆっくり止める」ことを優先してはいけません。まず燃料遮断など、その異常に対する緊急措置を行います。
油・ガスだきボイラーの通常停止
1 負荷を下げる
蒸気使用側と調整し、低燃焼へ移行
2 燃料を止める
燃料遮断弁と火炎消失を確認
3 後掃気
所定のポストパージで残留ガスを排出
4 徐冷・監視
水位・圧力・漏れを見ながら隔離
ポストパージが終わる前に送風機を止めたりダンパを閉じたりすると、炉内・煙道内に可燃性ガスを残すおそれがあります。反対に、パージ後も冷たい外気を大量に通し続けると各部の温度差を大きくします。ダンパやファンは、製造者が定める停止シーケンスで扱います。
停止後は残熱・水位・圧力を追う
- 燃料停止後も、炉壁や伝熱面の残熱でしばらく蒸発が続く
- 蒸気の収縮で圧力が下がると、密閉状態では真空へ向かう
- 冷却中も水面計、圧力計、漏れ、異音、弁の閉止状態を確認する
- 内部清掃のため排水する場合は、燃焼停止・十分な徐冷・無圧を確認し、空気抜き弁などを開いてから行う
「圧力がゼロになった瞬間に必ず全量排水」ではありません。通常停止後に満水保存へ移る場合と、内部清掃のため排水する場合では後の操作が違います。
内部へ入る作業は別管理:停止スイッチだけでは隔離になりません。蒸気・給水・燃料・薬品・電源などを確実に遮断し、必要な閉止板やロックアウト、換気、酸素・ガス測定、入槽手順を事業場の規定で確認します。
埋火は石炭だきで火種を残す操作
埋火(まいか)は、石炭だきボイラーを夜間など短時間休止するとき、次回の点火を容易にするため火床(かしょう)に火種を残す操作です。空気供給を絞り、燃え進みすぎず、未燃ガスも滞留しない状態に保ちます。
埋火
火種を残して短い休止後の再点火に備える。固体燃料側の操作。
燃し切り停止
燃料を燃やし切って火炎・残り火がない状態へ移す。
埋火中は放置ではありません。余熱で再燃し、コールゲートやダンパを過熱することがあるほか、空気を絞りすぎれば未燃ガスがたまります。火床の作り方、石炭・灰の量、ダンパ開度は燃焼装置で変わるため、記事の数値を実機手順にしないことが大切です。
休止保存は「半分だけ水がある状態」を避ける
鋼材の腐食には水、酸素、電解質が関係します。特に水面付近では酸素濃度の差による局部電池ができ、腐食が集中しやすくなります。そのため、保存の基本は十分に乾かすか、処理水で完全に満たして空気を追い出すかのどちらかです。
休止条件から保存法を選ぶ
凍結のおそれあり
乾燥保存を優先
比較的短い休止
満水保存を検討
長期・乾燥困難
窒素封入などを検討
乾燥保存法:長期休止や凍結リスク向け
- 十分に冷却し、無圧と空気抜きを確認して排水する
- スラッジや付着物を清掃し、残水を除いて完全に乾燥させる
- 蒸気管・給水管から水分が入らないよう閉止板などで隔離する
- シリカゲルや活性アルミナなどの吸湿剤を容器に入れて配置する
- 密閉後も吸湿剤と湿気の状態を定期確認し、必要なら交換する
乾燥剤を鋼板へ直接まくと、吸湿後の薬剤が鋼材へ悪影響を与えたり、回収漏れの原因になったりします。個数と設置場所を記録し、復旧前に全数回収します。
満水保存法:おおむね3か月以内が試験上の目安
- 必要に応じて内部を清掃し、保存用の処理水を準備する
- 清缶剤・脱酸素剤などを水質基準に合わせて添加し、十分に混合する
- 空気だまりを作らないよう高部から空気を逃がし、処理水で満たす
- 密閉後も水位、漏れ、pH、薬剤濃度などを定期確認する
公表問題では、満水保存法を採用する休止期間の目安をおおむね3か月以内として扱います。「1か月未満にしか使えない」という旧本文の断定は狭すぎます。ただし、凍結のおそれがある場所では満水保存を採用できません。
満水保存は水を入れて終わりではありません。水に酸素が残り、薬剤が不足し、空気だまりがあれば腐食します。薬剤名や濃度を固定せず、補給水・缶水の分析と製造者・水処理会社の管理基準に合わせます。
窒素封入法:酸素を窒素へ置き換える
窒素封入法は、内部の空気を窒素で置換し、試験知識ではおよそ0.05〜0.06MPaの微加圧状態で保持する方法です。水を完全に抜きにくい設備や長期保存で用いられます。
窒素は無臭でも安全な空気ではない:漏れれば酸素欠乏を起こします。封入・開放・入槽は、圧力管理、立入管理、換気、酸素濃度測定を含む事業場の手順で行います。上の圧力値だけを見て自己流で実施してはいけません。
保存法の比較と休止明けの復旧
| 保存法 | 長所 | 要注意点 |
|---|---|---|
| 乾燥 | 長期・凍結環境に向く | 完全乾燥と湿気監視 |
| 満水 | 比較的復旧しやすい | 凍結、空気だまり、水質 |
| 窒素 | 酸素を排除できる | 圧力低下、酸素欠乏 |
再起動前の取り残し防止チェック
- 乾燥剤、仮設ホース、清掃具、ウエスを全数回収したか
- 閉止板、プラグ、窒素系統を復旧計画どおり外したか
- 保存水を排出・置換する必要と、排水処理方法を確認したか
- 内部点検口を閉じ、ガスケット、弁、計器、低水位装置を復旧したか
- 水圧・漏れ、水位、給水、燃料、通風、インタロックを点火前に確認したか
保存中に腐食しなかったとしても、復旧漏れがあれば事故につながります。保存開始時に「入れた物・閉じた物・外した物」を一覧化し、再起動時に逆順で照合すると確実です。
理解度チェック
【問1】埋火の説明として適切なものはどれですか。
(1) 油バーナのポストパージ
(2) 石炭だきで短い休止後の再点火に備えて火種を残す操作
(3) 満水保存中の薬注
(4) 水面計の吹出し
(5) 安全弁の調整
【問2】満水保存法を避けるべき条件はどれですか。
(1) 凍結のおそれがある
(2) 処理水を準備できる
(3) 水質分析を行える
(4) 比較的短い休止
(5) 空気だまりを排除できる
【問3】満水保存で処理水を満たすだけでは不十分な理由はどれですか。
(1) 水は必ず蒸発するから
(2) 残留酸素・空気だまり・薬剤不足があれば腐食するから
(3) 乾燥剤が水を増やすから
(4) 安全弁が必ず開くから
(5) 石炭が再燃するから
【問4】乾燥保存からの復旧で最も重要な確認はどれですか。
(1) 乾燥剤を残して点火する
(2) 閉止板を増やす
(3) 乾燥剤・閉止板など仮設物の全数回収と系統復旧
(4) 水面計を閉じる
(5) 空気抜きを永久に閉じる
関連学習とまとめ
油・ガスだきの停止は燃料遮断と後掃気、石炭だきの埋火は火種の安全な保持です。保存は、長期・凍結なら乾燥、比較的短期で凍結しないなら満水を基本に検討し、条件に応じて窒素封入も使います。どの方法も、保存中の監視と休止明けの復旧確認までが一つの作業です。
最終更新日:2026年7月28日
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