ボイラーの取扱い

【二級ボイラー技士・取扱い】点火前の準備と点火の手順(油だき・ガスだき)

この記事で分かること

  • 冷間起動前に水・燃料・空気・弁・安全装置を確認する順番
  • プレパージから火炎確認までの基本シーケンス
  • 油だき・ガスだきで追加確認する項目
  • 逆火の原因と、点火失敗後にすぐ再点火してはいけない理由

結論:点火は「燃料を出して火を付ける操作」ではありません。炉内確認→水位・弁・系統確認→ダンパ・通風確認→プレパージ→点火→火炎確認→低燃焼で暖機までが一つの手順です。設備ごとにバーナ、点火方式、パージ条件が違うため、この記事は試験で問われる原則の整理に使い、実機では取扱説明書と事業場の手順を優先してください。

点火前は「人・水・系統・炉」の順で確認する

起動前チェックは、機器だけでなく作業状態から始めます。炉内・煙道・バーナ周辺で点検や清掃をしている人がいないか、工具・ウエス・仮設物が残っていないか、作業許可が解除されているかを引継ぎ記録と現場で確認します。

確認区分 主な確認内容
人・作業 点検終了、炉内立入なし、工具・仮設材なし、連絡完了
水側 実水位、水面計、給水タンク・ポンプ、吹出し弁の閉止
蒸気側 圧力、主蒸気弁、空気抜き、ドレン弁の起動時位置
燃料・空気 漏れ、圧力・温度、ストレーナ、バーナ、ファン、ダンパ
制御・安全 電源、警報、低水位遮断、火炎検出、燃料遮断の点検状態

水位は表示だけでなく実在を確かめる

水面計に水が見えていても、蒸気側・水側連絡管の閉塞やコックの誤位置で偽水位を示すことがあります。冷間起動前は所定の機能試験で水面計の通りを確かめ、ボイラー内が適正な起動水位にあることを確認します。試験方法は設備形式によって違うため、「水面計の機能試験と吹出し操作」と実機手順を参照してください。

弁の位置は名称ではなく起動状態表で照合する

冷間起動の一般例では、主蒸気弁を閉じ、吹出し弁を閉じ、空気抜き弁を開いて昇温を始めます。ただし、待機運転、複数缶の共通母管、温水ボイラーでは条件が異なります。タグ番号付きの起動状態表で一つずつ照合し、圧力計がゼロを示す場合も、空気抜きや他の表示と合わせて残圧がないことを確認します。

自己流の作動試験はしない:安全弁を手動レバーで持ち上げる、稼働中に火炎検出器の配線を外す、といった操作を始業前の一般手順にしません。点検時期・圧力・試験方法は、法定検査、取扱説明書、点検要領に従います。

プレパージは法令で求められる点火前の換気

ボイラー及び圧力容器安全規則第30条は、点火前にダンパの調子を点検し、燃焼室と煙道の内部を十分に換気した後でなければ点火してはならないと定めています。プレパージは、前回の失火や漏れで残った可燃性ガス・油蒸気を点火前に排出する工程です。

ダンパ・煙道

通風経路と
開度を確認

ファン運転

所定風量を
確立

時間を保持

炉・煙道を
十分に置換

点火位置へ

指定の空気量へ
移行

「ファンを回したから完了」ではありません。パージ風量、ダンパ位置、保持時間が成立して初めて次工程へ進みます。大臣告示の認定対象となる自動制御装置には炉・煙道内容積の4倍以上の空気を通す要件がありますが、実機では適用規定と製造者が定めるパージ条件を確認します。

油だきボイラーは油の状態と霧化を確認する

油だきでは、燃料油タンク、ストレーナ、油加熱器、ポンプ、圧力、温度、漏れを確認します。重油はバーナが適切に霧化できる粘度へ調整しますが、必要温度は油種だけで一律に決まりません。銘柄の粘度、バーナ方式、配管放熱、メーカー指定を基準にします。「A重油は常に加熱不要」「C重油は必ず一定温度」という固定暗記は避けます。

油だきの代表的な自動点火シーケンス

始動条件確認プレパージ → 点火用火炎または直接点火 → 火炎確認 → 主燃料供給 → 主火炎確認 → 低燃焼で暖機

点火用バーナを持つ設備もあれば、電気火花で主バーナへ直接点火する設備もあります。共通原則は、空気の流れを確立してから燃料を許可し、燃料供給後は定められた時間内に火炎を確認することです。複数バーナは燃焼中のバーナ火炎を流用して次のバーナへ着火させず、それぞれ定められた点火装置と順序で起動します。

ガスだきボイラーは漏れと弁の健全性を重視する

ガスだきでは、供給圧力、遮断弁、弁漏れ検知、ガス検知器、通風条件を確認します。都市ガスとLPGでは空気に対する比重も異なるため、換気口や検知器の位置を自己判断で変えません。

プレパージ後、点火用火炎または直接点火を行い、火炎が証明されてから主燃料を許可する原則は油だきと同じです。ただし、元弁・操作弁を手動で開く順序や点火時間を一般化すると危険です。燃焼制御盤が管理する自動シーケンスと、設備固有の手順に従います。

点火失敗時は燃料遮断・原因確認・再パージ

点火を繰り返さない:火炎を確認できない場合は燃料を遮断し、ロックアウト表示と最初の警報を記録します。燃料漏れ、点火装置、火炎検出器、空気量などの原因を除去し、手順が求める再パージを完了してから再起動します。

職場のあんぜんサイトには、失火後のパージを含む安全な作業方法が不十分だった炉内爆発事例が掲載されています。着火操作を繰り返すほど、未燃燃料が蓄積する可能性があります。「もう一度だけ」は安全根拠になりません。

逆火と炉内・煙道側の燃焼を分けて考える

逆火は、点火時の急な圧力上昇で火炎や燃焼ガスがバーナ側・たき口側へ吹き返す現象です。令和8年4月掲載の公表問題は、逆火の原因を次のように整理しています。

逆火につながる事象 なぜ危険か
煙道ダンパの開度不足 燃焼ガスが円滑に抜けない
空気より先に燃料を供給 未燃燃料が着火前にたまる
着火遅れ 蓄積した燃料へ遅れて着火する
他バーナの火炎で次を点火 不確実な着火で燃料が先行し得る

同じ公表問題では「煙道内にすすが多い、または未燃ガスが多く滞留している」を逆火の直接原因としては不適切としています。ただし、すす火災や煙道側での爆発・異常燃焼の危険がないという意味ではありません。試験上の現象分類と、現場の危険評価を分けることが大切です。

点火後は低燃焼で均一に暖機する

着火後すぐに燃焼量を上げると、金属部やれんが積みの温度差が大きくなります。その結果、ボイラーとれんが積みの境界の隙間、目地の割れ、胴・管・継手の熱応力によるクラックや漏れにつながります。

最新公表問題では、たき始めに燃焼量を急増させてはならない主な理由としてウォータハンマーを挙げるのは不適切です。暖機時は水位、圧力上昇速度、膨張、漏れ、異音を確認します。送気側のウォータハンマー対策は「圧力上昇と暖管・送気開始」で扱います。

理解度チェック

【問1】法令上、点火前に必要な措置はどれですか。

(1) 主蒸気弁を全開にする
(2) ダンパを点検し、燃焼室と煙道を十分に換気する
(3) 火炎検出器を外す
(4) 燃料を先に供給する
(5) 安全弁を常時開く

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正解:(2)
ボイラー及び圧力容器安全規則第30条が、ダンパの点検と燃焼室・煙道の十分な換気を求めています。

【問2】油だきボイラーの逆火原因になり得るものはどれですか。

(1) 空気の流れを確立してから燃料を許可した
(2) 点火前に炉内を換気した
(3) 空気より先に燃料を供給した
(4) 点火失敗後に原因を調べた
(5) 指定手順で低燃焼にした

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正解:(3)
燃料が先行すると未燃燃料が蓄積し、遅れて着火した際に逆火する危険があります。

【問3】点火に失敗した直後の対応として適切なものはどれですか。

(1) 何度も連続して点火する
(2) 燃料を増やす
(3) インタロックを無効化する
(4) 燃料を遮断し、原因確認と必要な再パージを行う
(5) ダンパを閉じたまま再点火する

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正解:(4)
未燃燃料を増やさないよう遮断し、原因を除去して指定の再パージ後に復帰します。

【問4】たき始めに燃焼量を徐々に増やす主な理由はどれですか。

(1) 金属部・れんが積みの急な温度差と熱応力を抑える
(2) ウォータハンマーだけを防ぐ
(3) 水位計を見えなくする
(4) すすを急に増やす
(5) 燃料圧力を異常上昇させる

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正解:(1)
急熱による不均一な膨張を避け、れんがの割れ、管・継手のクラックや漏れを防ぎます。

関連学習とまとめ

点火前は人・水・系統・炉内を確認し、ダンパと通風条件を成立させて十分にプレパージします。点火後は火炎を確実に確認し、低燃焼で均一に暖めます。点火失敗時は燃料を遮断し、原因を除去してから必要な再パージを行うのが原則です。

最終更新日:2026年7月28日

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