二級ボイラー技士 燃料及び燃焼

【二級ボイラー技士・燃焼】通風装置|自然・押込み・誘引・平衡通風

この記事で分かること

  • 自然通風力を煙突高さとガス密度差から求める方法
  • 押込み・誘引・平衡通風の圧力分布と空気漏入
  • ダンパ・入口ベーン・回転数制御の違い
  • ファンの相似則と、回転数低下による動力削減の計算

結論:通風は、燃焼用空気を供給し、炉・伝熱面・煙道の抵抗を越えて燃焼ガスを煙突へ運ぶ仕組みです。方式の違いはどこで圧力を上げるか/下げるかで見分けます。

押込み通風は空気側から押し、誘引通風は排ガス側から引き、平衡通風は両方を協調させて炉内を所定圧力に保ちます。旧本文の「誘引なら気密構造は不要」「押込みファンは必ず長寿命」「平衡通風は一律の微負圧値」という断定は外しました。実機の炉内圧設定は、ボイラー形式とメーカー基準で決まります。

公式・一次資料の確認先

資料確認日:2026年7月28日。ファン特性、炉内圧、ダンパ開度、インタロックは個別設備の図書を優先してください。

通風力は圧力損失を乗り越える力

空気と燃焼ガスは、バーナ、炉、管群、エコノマイザ、空気予熱器、集じん装置、ダンパ、煙道を通るたびに抵抗を受けます。この圧力損失の合計を上回る圧力差がなければ、必要流量を確保できません。

空気・燃焼ガスの流れ

外気
燃焼用空気

バーナ・炉
燃焼

伝熱面
熱回収

煙道
抵抗・浄化

煙突
排出

すす付着、ダンパ閉塞、集じん装置の差圧上昇などで抵抗が増えると、同じファン回転数でも流量は低下します。「ファンが回っている=必要空気量がある」ではなく、差圧、流量、O₂、炉内圧を見ます。

自然通風:煙突内外の密度差を使う

自然通風は、高温で密度の小さい煙突内ガスと、密度の大きい外気の空気柱の重さの差を使います。損失を無視した概略の通風圧は次式で表せます。

自然通風圧 Δp = g × H × (ρ外気-ρガス)

高さH=25m、外気密度1.20kg/m³、煙突内ガス密度0.80kg/m³なら、Δp=9.81×25×(1.20-0.80)=約98Paです。実際に使える通風力は、ここから煙道・ダンパ・伝熱面などの圧力損失を差し引いたものです。

変化 通風圧への基本影響 同時に考えること
煙突が高い 空気柱が長くなり増加 構造、摩擦、建設条件
内外密度差が大きい 増加 排ガス温度を上げるほど熱損失も増える
流路抵抗が増える 利用できる流量は低下 すす・ダンパ・曲がり・断面

押込み・誘引・平衡通風の圧力分布

方式 ファン位置 炉内圧の傾向 主な注意
押込み通風 空気入口側のFDファン 一般に正圧 高温ガス漏出を防ぐ気密性
誘引通風 排ガス出口側のIDファン 負圧 外気漏入、排ガス量増加、腐食・摩耗
平衡通風 FD+IDファン 所定のわずかな負圧に制御する例 2台の協調、炉内圧制御、トリップ

押込み通風:常温空気を扱うが漏出に注意

FDファンは一般に常温側の空気を扱うため、同じ体積流量なら高温ガス側より小さくしやすく、灰や燃焼生成物にも直接触れません。一方、炉内が正圧の設備では、扉・ケーシングの隙間から高温ガスが漏れる危険があるため、加圧燃焼に対応した気密構造が必要です。

外気も粉じん、塩分、湿気を含むことがあり、押込みファンが必ず腐食せず長寿命とは限りません。吸込フィルタ、入口ベーン、軸受、ベルト、振動を点検します。

誘引通風:負圧でも気密管理が必要

IDファンは燃焼ガスを吸い出すので、炉・煙道から外へガスが漏れにくい反面、隙間から外気を吸い込みます。空気漏入は排ガス量とO₂を増やし、ファン動力・排ガス損失を増やすほか、低温部では酸露点・水露点との関係で腐食を助長することがあります。

IDファンは高温で体積の大きいガスを扱うため、一般にFDファンより大容量になりやすいという試験上の比較があります。ただし、実際の入口温度、集じん位置、材質、ダスト量で摩耗・腐食条件は変わります。「負圧だから気密不要」ではありません。

平衡通風:FDとIDを協調させる

平衡通風は、FDファンで燃焼用空気を送り、IDファンで燃焼ガスを引きます。通風抵抗の大きな設備でも通風力を確保しやすく、燃焼量と炉内圧を別々に調整できます。

代表的な制御の分担

燃焼量・空気比要求 → FDファン/空気ダンパで空気量を調整

炉内圧要求 → IDファン/出口ダンパで所定圧力へ調整

負荷上昇時は一時的な空気不足を避けるため空気を先行させ、負荷低下時は燃料を先に減らすのが基本です。詳しくは「運転中の留意事項」で解説しています。

送風機の種類は風量・圧力・ガス条件で選ぶ

ファン 羽根・流れ 選定時の見方
多翼・前向き羽根 多数の前向き羽根を持つ遠心式 比較的低い圧力域、大風量、コンパクト性
後向き羽根 回転方向に対して後向きの遠心式 効率、圧力、ダスト付着、動力特性
軸流 軸方向へ流す 大風量、比較的低圧、設置スペース

「小型なら必ず多翼、大型なら必ず後向き」とは限りません。必要風量、全圧、効率、温度、ダスト、騒音、保守性とファン特性曲線を合わせて選定します。

ダンパ・入口ベーン・回転数制御

調節方式 何を変えるか 特徴
吐出ダンパ 流路抵抗 簡単だが、絞り損失が残る
入口ベーン 羽根車へ入る流れの向き 予旋回で風量・動力を調節
回転数制御 ファン回転数 低負荷時の動力削減に有利

独自計算:回転数80%で理論動力は約51%

同じファンで気体密度がほぼ一定、相似運転が成り立つ範囲では、送風機の相似則を次のように近似できます。

風量 Q ∝ 回転数 n

圧力 Δp ∝ n²

軸動力 L ∝ n³

回転数を100%から80%へ下げると、風量は約80%、圧力は0.8²=約64%、理論軸動力は0.8³=約51.2%です。たとえば基準軸動力30kWなら、30×0.512=約15.4kWです。

これは相似則による理論値です。実際の消費電力は、設備抵抗曲線、モータ・インバータ効率、最低回転数、ダンパ開度で変わります。必要な燃焼空気と炉内圧を保つ範囲で調整します。

異常時は圧力・流量・漏れを一緒に見る

兆候 確認先 影響
炉内圧が正側へ上昇 IDファン、出口ダンパ、煙道閉塞、燃焼急増 高温ガス・炎の漏出
負圧が強すぎる ID過大、FD不足、炉扉・煙道の漏れ 冷気吸込み、O₂上昇、熱損失
風量低下 吸込閉塞、回転数、ベルト、ダンパ、管群差圧 CO・すす・失火
振動・電流上昇 羽根付着、摩耗、軸受、芯ずれ、接触 ファン損傷・停止

燃焼用空気の供給が異常停止したときは燃料を遮断できなければなりません。ファン停止、風圧低下、ダンパ異常などを検出するインタロックは「自動制御装置と燃焼安全装置」で確認できます。

理解度チェック

【問1】高さ20m、外気密度1.20kg/m³、煙突内ガス密度0.90kg/m³のとき、損失を無視した自然通風圧は約何Paですか。g=9.8m/s²とします。

(1) 5.9Pa
(2) 29.4Pa
(3) 58.8Pa
(4) 98Pa
(5) 588Pa

解答を見る

正解:(3)
9.8×20×(1.20-0.90)=58.8Paです。実際の流量には流路抵抗も影響します。

【問2】誘引通風で炉内負圧が強すぎると起こりやすいものはどれですか。

(1) 隙間からの外気漏入
(2) 燃料発熱量の増加
(3) ボイラー水の硬度低下
(4) 蒸気圧力計の目盛増加
(5) 自然通風力の消失

解答を見る

正解:(1)
外気が炉・煙道へ入り、排ガス量、O₂、ファン動力、熱損失を増やすことがあります。

【問3】相似則が成り立つとき、ファン回転数を90%にした場合の理論軸動力は約何%ですか。

(1) 27%
(2) 51%
(3) 73%
(4) 81%
(5) 90%

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正解:(3)
0.9³=0.729なので約73%です。風量は約90%、圧力は約81%です。

【問4】平衡通風の説明として最も適切なものはどれですか。

(1) 煙突だけで通風する
(2) FDファンだけで炉内を正圧にする
(3) IDファンだけで空気を押し込む
(4) FDとIDを協調させ、空気量と炉内圧を調整する
(5) ファン停止時も燃料を供給し続ける

解答を見る

正解:(4)
FDで燃焼用空気を送り、IDで排ガスを引き、両者を協調させます。空気供給停止時は燃料遮断が必要です。

関連学習とまとめ

通風はファン位置の暗記だけでなく、圧力がどこで上がり、どこから外気や燃焼ガスが漏れ得るかを追います。低負荷時の回転数制御は省エネに有効ですが、安全な空気量と炉内圧を外さないことが前提です。

最終更新日:2026年7月28日

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