結論から言うと、ボイラー排ガスの問題はNOx、SOx、ばいじん、COを同じ原因で説明しないことが第一歩です。NOxは高温域の温度・酸素・滞留時間や燃料中窒素、SOxは主に燃料中硫黄、ばいじん・COは空気量だけでなく混合・霧化・火炎冷却にも左右されます。さらに、SOxの一部は低温部で硫酸となり設備を腐食させます。
試験で先に分ける
サーマルNOx=空気中の窒素が高温域で酸化
フューエルNOx・SOx=燃料中の窒素・硫黄に由来
CO・すす=不完全燃焼のサイン
低温腐食=硫酸が冷たい金属面へ凝縮
発生源から煙突までを一枚でつかむ
燃料・燃焼・低温部・排ガス処理
S→SOx
N→燃料NOx
灰分→ばいじん
高温→熱的NOx
混合不良→CO・すす
酸露点以下
→硫酸凝縮・腐食
脱硝・脱硫・集じん
基準適合を測定
NOx・SOx・ばいじん・COを比較する
| 項目 | 主な生成要因 | 主な低減の考え方 |
|---|---|---|
| NOx | 高いピーク温度、酸素、高温滞留時間、燃料中N | 低NOx燃焼、FGR、二段燃焼、脱硝 |
| SOx | 主に燃料中Sの酸化 | 低硫黄燃料、燃料転換、排煙脱硫 |
| ばいじん | 灰分、すす、未燃炭素、飛散粒子 | 燃焼改善、燃料管理、集じん |
| CO | 空気不足、混合不良、低温、滞留不足 | 空燃比・霧化・火炎・通風の調整 |
「NOx=温度、SOx=硫黄」は試験の入口として便利ですが、NOxには燃料中窒素由来もあり、すすには燃料灰分由来の粒子もあります。短い暗記を実機へそのまま当てはめないことが重要です。
NOxはピーク温度・酸素・時間で抑える
サーマルNOxとフューエルNOx
サーマルNOxは主に空気中のN₂が高温域で酸化して生じ、ピーク火炎温度、酸素濃度、高温域の滞留時間が増すほど生成しやすくなります。「何℃から突然発生する」という固定境界ではありません。
フューエルNOxは燃料中の窒素化合物に由来します。このため、同じ燃焼温度でも燃料と燃焼方式によってNOxの内訳が変わります。
燃焼改善と排ガス処理を分ける
| 方法 | NOxを減らす仕組み | 注意点 |
|---|---|---|
| 排ガス再循環(FGR) | 排ガスで希釈しピーク温度と酸素濃度を下げる | 火炎安定、ファン動力、ガス流量 |
| 二段燃焼 | 一次域を燃料過濃にし、後段空気で燃焼を完結 | CO、未燃分、火炎長さ |
| 低過剰空気 | 反応域の余剰酸素を抑える | 下げすぎるとCO・すすが増える |
| SCR・SNCR | 生成後のNOxをN₂へ還元 | 温度窓、薬剤、触媒、アンモニア管理 |
「空気を減らせばよい」と自己流で設定を下げるのは危険です。O₂を下げてもCOが上がれば不完全燃焼です。メーカーの燃焼曲線と排ガス測定を使い、安全な火炎安定範囲で調整します。詳しい空気比は「燃焼の基礎理論」、火炎安定は「ガスバーナ」を参照してください。
SOxは燃料中硫黄から理論量を計算できる
硫黄Sが完全にSO₂へ酸化すると、分子量比は64÷32=2です。次は、燃料中の硫黄がすべてSO₂になると仮定した学習用の上限計算です。
条件:重油1000L、密度0.95kg/L、硫黄分0.50質量%
燃料質量=1000×0.95=950kg
硫黄質量=950×0.005=4.75kg
理論SO₂質量=4.75×(64÷32)=9.50kg
実際にはSO₃への転換、燃焼灰への残留、脱硫設備での除去などがあるため、煙突から9.50kgがそのまま出るという意味ではありません。それでも、燃焼調整だけでは燃料由来の硫黄量そのものを消せず、低硫黄燃料や脱硫が本筋になる理由が分かります。「重油の種類と性質」も合わせて確認してください。
ばいじんとCOはO₂だけで正常判定しない
油だきでは、油温不適正、ノズル摩耗・詰まり、霧化圧力不足、空気との混合不良で粗い油滴が生じ、すすやCOが増えます。ガスだきでも、炎孔汚れ、局所的な空気不足、火炎の冷却、短絡流でCOが上がることがあります。
重要:煙が見えないことと完全燃焼は同じではありません。COは無色で、局所混合不良なら排ガスO₂が残っていても発生します。O₂・CO・CO₂、ばいじん、火炎、燃料圧、通風を組み合わせて判断します。
低温腐食は排ガス温度より金属表面温度を見る
燃料中S → SO₂ → 一部がSO₃ → H₂Oと反応 → 硫酸蒸気 → 冷たい面へ凝縮 → 腐食
硫酸が凝縮し始める酸露点は、硫黄分、SO₃濃度、水分、圧力、過剰空気などで変わります。「常に150℃」という固定値ではありません。また、平均排ガス温度が酸露点より高くても、空気予熱器やエコノマイザの局部的な金属表面温度が低ければ凝縮する可能性があります。
対策は、低硫黄燃料、空気漏入防止、安全な範囲での低O₂運転、ガス流れの均一化、添加剤、耐食材料、低温端表面を酸露点より下げない設計・運転です。給水温度を下げてエコノマイザ表面をさらに冷やすのは逆効果で、令和8年4月掲載の公表問題でも誤りの選択肢になっています。
高温腐食はバナジウムだけで固定しない
重油灰中のバナジウム、ナトリウムなどが低融点の付着物を作り、高温の過熱器管などを侵すことがあります。発生温度は灰組成と金属表面温度で変わるため、「600℃を超えれば必ず発生」とは断定しません。燃料成分、添加剤、付着除去、材料、表面温度を設備条件に合わせて管理します。
大気汚染防止法は労働安全衛生法と別に確認する
2026年7月28日時点で、環境省は大気汚染防止法のばい煙発生施設となるボイラーの規模要件を重油換算の燃焼能力50L/h以上と案内しています。労働安全衛生法上のボイラー区分に使う伝熱面積・圧力とは別の判定です。
排出基準は一つの固定値ではありません。SOxは地域と有効煙突高に応じるK値規制、ばいじん・NOxは燃料、排ガス量、新設・既設などに応じる濃度規制が基本で、自治体の上乗せ・横出し規制もあります。必ず所在地の自治体と最新の環境省「ばい煙発生施設」、ばいじん・NOx排出基準一覧で確認します。
独自計算:酸素濃度補正で希釈を見抜く
排ガスを余分な空気で薄めて見かけの濃度だけを下げないよう、対象物質・施設では標準酸素濃度へ補正します。学習用に、測定NOx濃度Cs=120ppm、測定O₂濃度Os=8%、標準O₂濃度On=4%とします。
補正濃度C=(21-On)÷(21-Os)×Cs
C=(21-4)÷(21-8)×120=約157ppm
測定時O₂が基準より高いので、空気希釈の影響を戻すと濃度は120ppmから約157ppmになります。実際の適用可否、標準O₂、測定方法は施設・物質ごとの法令で確認します。
排ガス異常を原因別に切り分ける
| 観測 | 考えられる要因 | 次に確認 |
|---|---|---|
| NOx上昇・CO低い | 高いピーク温度、空気過多、FGR不足 | 負荷、O₂、FGR、バーナ配分 |
| CO・すす上昇 | 空気不足、混合・霧化不良、火炎冷却 | 油温・圧力、ノズル、ダンパ、炎 |
| 低温端の減肉・付着 | 硫酸凝縮、局部低温、ガス偏流 | 燃料S、O₂、表面温度、漏気 |
理解度チェック
【問1】サーマルNOxの生成を左右する組合せとして最も適切なものはどれですか。
(1) 燃料中硫黄と水分だけ
(2) ピーク温度・酸素・高温滞留時間
(3) 給水硬度だけ
(4) 蒸気圧力計の径だけ
(5) 低温端の金属厚さだけ
【問2】重油1000L、密度0.95kg/L、硫黄分0.50質量%で、全硫黄がSO₂になると仮定した理論SO₂質量は何kgですか。
(1) 2.38kg
(2) 4.75kg
(3) 9.50kg
(4) 19.0kg
(5) 95.0kg
【問3】低温腐食の抑制として不適切なものはどれですか。
(1) 低硫黄燃料を選ぶ
(2) 空気漏入を抑える
(3) 低温端表面を酸露点より下げない
(4) 給水温度を下げてエコノマイザ表面を冷やす
(5) 安全な範囲で過剰空気を抑える
【問4】低過剰空気運転について最も適切な説明はどれですか。
(1) O₂は低いほど無条件によい
(2) NOx低減に役立つことがあるが、CO・すす・火炎安定も確認する
(3) SOxを燃料から除去できる
(4) 酸露点を常に0℃にできる
(5) ばい煙発生施設の届出が不要になる
関連学習とまとめ
排出対策は「原因を減らす燃焼・燃料対策」と「生成後に除く排ガス処理」を分けます。低温腐食では平均排ガス温度だけでなく、最も冷たい金属表面と酸露点の関係を確認します。
法令確認基準日・最終更新日:2026年7月28日
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