燃料及び燃焼

【二級ボイラー技士・燃焼】重油の種類と性質|発熱量・引火点・粘度・加熱温度

この記事で分かること

  • A・B・C重油が「品質順位」ではなく粘度区分である理由
  • 水分・スラッジ・残留炭素・硫黄・灰分が起こす障害
  • 高発熱量と低発熱量を混同しない読み方
  • 固定温度でなく、バーナに適した粘度へ加熱する考え方

結論:液体燃料の取扱いは、燃料名だけで温度を決めるのではなく、納入燃料の性状表、配管で流せる粘度、バーナが要求する噴霧粘度を結び付けて考えます。A・B・C重油は、主に動粘度で分けた用途別の区分です。

旧本文の「C重油は必ず80〜105℃」「引火点を超えて加熱してはいけない」という丸暗記は修正しました。高粘度油は加熱して使いますが、必要温度は油種・バーナ・配管・季節で変わります。引火点以上で扱う設備では、密閉、漏えい防止、換気、温度制御など設備固有の保安対策が必要です。

公式・一次資料の確認先

資料確認日:2026年7月28日。実機の温度設定は燃料供給者の性状表とバーナ・油加熱器の取扱説明書を優先してください。

A・B・Cは良し悪しではなく粘度の違い

通称 JIS区分 取扱いの特徴
A重油 1種 低粘度、通常は加熱不要
B重油 2種 中間、現在は需要が少ない
C重油 3種 高粘度、移送・噴霧に加熱が必要

同じ「C重油」でも粘度範囲や硫黄分、水分などは銘柄で異なります。高粘度油ほど密度、炭素・水素比、残留炭素分などが大きくなる傾向があり、一般に単位質量当たりの発熱量は小さくなります。

質量当たりと体積当たりを混ぜない

環境省資料の総発熱量は、A重油38.90GJ/kL、C重油41.78GJ/kLです。体積当たりでは密度の大きいC重油の値が大きくなり得ます。「重い油ほど発熱量が小さい」という試験知識は、主に単位質量当たりの比較です。

単位を消してはいけない

MJ/kg、GJ/kL、MJ/Lは同じ比較軸ではありません。数値だけを並べず、質量基準か体積基準かを必ず確認します。

成分・性状から障害を予測する

成分・性状 起こりやすい障害 確認箇所
水分 熱損失、いきづき、スラッジ タンク底、ドレン、火炎
スラッジ 弁・ろ過器・チップ閉塞、摩耗 差圧、ポンプ、ストレーナ
残留炭素分 ばいじん増加、ノズル汚損 排煙、バーナ、伝熱面
硫黄分 SOx、酸露点上昇、低温腐食 燃料分析、低温伝熱面
灰分 付着、伝熱阻害、高温腐食 炉内、過熱器、灰成分

ストレーナは固形物を捕集しますが、油中の水分を除去する装置ではありません。水は貯蔵タンク・サービスタンクの低部で確認し、所定の手順で排出します。低温腐食の連鎖は「スケールと腐食」、排出物対策は「大気汚染防止と燃焼障害」で解説しています。

高発熱量と低発熱量の差は水蒸気の潜熱

高発熱量

総発熱量。燃焼で生じる水蒸気の凝縮熱を含む

低発熱量

真発熱量。水蒸気の凝縮熱を差し引く

差を決めるもの

燃料中の水素分と水分

非凝縮式ボイラーでは排ガス中の水蒸気を凝縮させないため、低発熱量基準がよく使われます。一方、環境省のエネルギー換算表のように高発熱量を使う資料もあります。効率値を比較するときは、発熱量の基準をそろえることが必要です。

ボイラー効率の式と換算蒸発量は「ボイラーの容量・効率・伝熱面積」へ分け、本記事では燃料側の読み方に絞ります。

発熱量を指定した効率計算

蒸気500kg/hが1kg当たり2,500kJを吸収し、燃料35kg/h、指定された低発熱量が42MJ/kgだったとします。

蒸気の吸収熱:500 × 2,500 = 1,250,000kJ/h

燃料の供給熱:35 × 42,000 = 1,470,000kJ/h

効率=1,250,000 ÷ 1,470,000 × 100=約85.0%

42MJ/kgを42kJ/kgのまま計算しないよう、MJをkJへそろえます。高発熱量で計算した値と低発熱量で計算した値を、そのまま優劣比較してはいけません。

引火点と着火温度は火種の有無で分ける

引火点は、外部の火源を近づけると蒸気が瞬間的に燃える最低温度です。着火温度は、外部から点火しなくても酸化反応の発熱と放熱が釣り合わなくなり、自ら燃え始める最低温度です。着火温度の方が高くなります。

重油の引火点は一般に60〜150℃の範囲ですが、これは製品ごとに確認する値です。加熱温度が引火点以上になる系統では保安上の注意が必要であり、「引火点を1℃でも超えたらバーナで使えない」という意味ではありません。

加熱温度は三つの場所で目的が違う

重油がバーナへ届くまで

貯蔵・移送
流動点を上回り配管で送る
油加熱器
バーナ要求粘度へ下げる
ノズル・カップ
微粒化して空気と混ぜる

ENEOSの資料では、C重油を流体として扱うための加熱は40〜70℃としていますが、良好に噴霧するにはバーナが指定する最適粘度になる温度まで調整します。したがって、記事の温度だけを全設備へ適用しないことが重要です。

温度 起こりやすいこと 現場の手掛かり
低すぎる 高粘度・粗い噴霧・すす 油圧、火炎、排煙
適正 安定した微粒化 粘度、噴霧、O2・CO
高すぎる 気化・ベーパロック・いきづき 圧力脈動、火炎の断続

霧化方式ごとの違いは「液体燃料の燃焼方式と油バーナ」で確認してください。

燃料受入れから日常点検まで

  1. 受入れ:油種、数量、性状表、タンク切替先を照合する。
  2. 貯蔵:油面、温度、水分、漏えい、加熱蒸気を確認する。
  3. 供給:ストレーナ差圧、ポンプ圧、油温、戻り油を記録する。
  4. 燃焼:火炎だけでなくO2、CO、排ガス温度、ばいじんを見る。
  5. 異常時:水分・詰まり・温度・圧力を時系列で切り分ける。

冬の始動時だけ油温が上がらず、ノズル差圧が増えて黒煙が出るなら、燃料そのものだけでなく保温・トレース・温調弁・ストレーナを追います。「C重油だから仕方ない」で終わらせないことが再発防止です。

理解度チェック

【問1】A・B・C重油を分ける主要な性状はどれですか。

(1) 色
(2) 動粘度
(3) タンク容量
(4) ボイラー圧力
(5) 煙突高さ

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正解:(2)
JISの1種・2種・3種は主に動粘度で分かれ、A・B・C重油と呼ばれます。

【問2】油の加熱温度が低すぎると起こりやすいものはどれですか。

(1) 粘度低下によるベーパロックだけ
(2) 粘度上昇による噴霧不良とすす
(3) 硫黄分の消失
(4) 灰分の完全除去
(5) 発熱量の倍増

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正解:(2)
粘度が高いままだと油滴が粗くなり、混合不良・すす・不完全燃焼につながります。

【問3】高発熱量と低発熱量の差を主に決めるものはどれですか。

(1) 灰の色
(2) タンク材質
(3) 水素分・水分に由来する水蒸気の凝縮熱
(4) 煙突の直径
(5) ストレーナの網目

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正解:(3)
高発熱量は水蒸気の凝縮熱を含み、低発熱量は含みません。

【問4】本文の条件で求めたボイラー効率は約何%ですか。

(1) 71.4%
(2) 80.0%
(3) 85.0%
(4) 92.5%
(5) 117.6%

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正解:(3)
1,250,000÷1,470,000×100=約85.0%です。発熱量の基準と単位を確認します。

関連学習とまとめ

A・B・C重油は用途と粘度が異なります。性状から水分、閉塞、ばいじん、腐食を予測し、油温は移送と噴霧の目的ごとに管理します。発熱量は高位・低位と単位を明記して比較することが重要です。

最終更新日:2026年7月28日

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