保安管理技術 第三種冷凍機械責任者

【第三種冷凍機械責任者・保安管理】蒸発器の種類と特徴(満液式・乾式・着霜とデフロスト)

蒸発器ってなに? ─ 冷凍サイクルで「実際に冷やす」装置

冷凍サイクルの4つの機器の中で、実際に被冷却物(冷やしたいもの)から熱を奪うのが蒸発器(じょうはつき)です。英語では「エバポレーター(Evaporator)」ともいいます。

膨張弁で低温・低圧になった冷媒が蒸発器の中で液体→気体に蒸発する際に、周囲から熱を吸収します。これが「冷やす」仕組みの本体です。

蒸発器の2つの分類軸

① 冷媒の供給方式:満液式 vs 乾式
② 冷却対象:液体を冷やす(水・ブライン)vs 空気を冷やす(冷蔵庫・エアコン)

満液式蒸発器 ─ 冷媒にどっぷり浸かる方式

満液式蒸発器(まんえきしきじょうはつき)は、シェル内に冷媒液をたっぷり溜めて、その中に伝熱管を浸すタイプです。伝熱管の中を冷水やブラインが流れ、管の外側で冷媒が蒸発して熱を吸収します。

項目 満液式の特徴
構造 シェルの中に冷媒液が溜まり、伝熱管が浸かっている
冷媒の流れ 冷媒は管の外側(シェル側)で蒸発
被冷却液の流れ 冷水やブラインは管の内側を流れる
伝熱効率 伝熱管が常に冷媒液に浸かっているため効率がよい
冷媒充てん量 多い(シェル内に大量の冷媒液が必要)
油の問題 冷媒液に油が溜まりやすい → 油戻しの仕組みが必要

身近なイメージ
お風呂に浸かるイメージです。浴槽(シェル)にお湯(冷媒液)がたっぷり入っていて、その中に体(伝熱管)がどっぷり浸かっている状態。体(管の中の水)は周りのお湯(冷媒)と効率よく熱交換できます。

試験のポイント ─ 凝縮器との冷媒の位置の違い
シェルアンドチューブ式で比較すると、凝縮器も満液式蒸発器も冷媒はシェル側です。ただし満液式蒸発器は冷媒液が大量にシェル内に溜まる点が特徴。また、フルオロカーボン冷媒では油が冷媒液に溶けるため、蒸発器の底に油が溜まりやすく、油戻しの工夫が必要です。

乾式蒸発器 ─ 冷媒が管の中を流れる方式

乾式蒸発器(かんしきじょうはつき)は、冷媒が伝熱管の内側を流れながら蒸発するタイプです。膨張弁で冷媒の供給量を制御し、蒸発器の出口で冷媒が完全に蒸発するように調整します。

項目 乾式の特徴
冷媒の流れ 冷媒は管の内側を流れる
冷媒充てん量 満液式より少ない
蒸発器出口の状態 冷媒は過熱蒸気になって出る(過熱度あり)
油戻し 冷媒と一緒に油も流れるため、満液式より油戻しが容易
膨張弁 温度自動膨張弁で過熱度を制御するのが一般的

現場イメージ
家庭用エアコンの室内機を分解すると、フィンの間を銅管が蛇行しています。これが乾式蒸発器。冷媒が銅管の中を流れながら蒸発し、フィンを通じて室内の空気から熱を奪っています。業務用のシェルアンドチューブ乾式蒸発器では、冷媒が管の内側、被冷却液(水やブライン)が管の外側(シェル側)を流れます。

満液式と乾式の比較

比較項目 満液式 乾式
冷媒の位置 管の外側(シェル側) 管の内側
冷媒充てん量 多い 少ない
伝熱効率 高い やや低い
油戻し 工夫が必要 容易

空気冷却用蒸発器(冷却器・ユニットクーラ)

冷蔵庫やエアコンなど、空気を直接冷やすために使われる蒸発器を冷却器(ユニットクーラ)といいます。フィン付きの伝熱管にファンで空気を送り、空気を冷やします。

項目 特徴
構造 フィン付き伝熱管 + ファン(送風機)
冷媒の流れ 冷媒は管の内側を流れる(乾式が多い)
フィン間隔 低温(−20℃以下)では霜が付くためフィン間隔を広くする

着霜(ちゃくそう)とデフロスト ─ 蒸発器の宿敵

蒸発器の表面温度が0℃以下で、空気中の水蒸気が蒸発器の表面に触れると、水蒸気が凍って霜(しも)になります。これを着霜(ちゃくそう)といいます。

着霜の悪影響
① 霜は熱伝導率が低い → 伝熱を妨げる(断熱材のように熱を遮断)
② フィンの隙間を霜がふさぐ → 通風が悪くなる
③ ①と②の結果、冷凍能力が大幅に低下する
④ 蒸発圧力・温度が低下し、さらに着霜が進む悪循環に陥る

この霜を取り除く作業をデフロスト(除霜・じょそう)といいます。

デフロスト方式 方法 特徴
ホットガス方式 圧縮機からの高温ガスを蒸発器に流す 効率的で短時間。最もよく使われる
電気ヒーター方式 蒸発器にヒーターを設置して加熱 構造がシンプル。小型向け
散水方式 蒸発器の表面に水をかけて霜を溶かす 短時間で除霜可能だが排水設備が必要
オフサイクル方式 冷凍機を停止し、ファンだけ回して室温の空気で溶かす 0℃以上の庫内向け。時間がかかる

現場イメージ
業務用冷凍庫では、タイマーで1日に2〜4回、自動的にデフロスト運転が行われます。「ゴーッ」という音がして庫内の温度が少し上がったら、デフロスト中の合図。しばらくすると水がドレンパンに流れ落ち、再び冷却運転が始まります。家庭用の冷凍庫でも「自動霜取り機能」が付いているものは、同じ原理で動いています。

試験のポイント ─ デフロスト時の注意
デフロスト中はファンを停止する(またはダンパを閉じる)のが原則。ファンを回したまま除霜すると、溶けた水が庫内に飛び散ったり、庫内温度が上昇しすぎたりします。除霜が完了してからファンを再起動します。

蒸発器に関する重要な管理ポイント

管理項目 内容
着霜管理 定期的なデフロスト。低温のフィン間隔を広くする
油の管理 満液式では蒸発器に油が溜まりやすい。油膜は伝熱を阻害する
冷媒量の管理 冷媒不足は蒸発圧力の低下・冷凍能力の低下を招く
液戻り防止 液冷媒が圧縮機に戻ると液圧縮の危険。過熱度の確保が重要

よくある疑問・間違い

Q. 満液式と乾式、どちらが主流?

用途によります。空調用は乾式が主流(冷媒充てん量が少なく扱いやすい)。大型の水やブラインの冷却には満液式が使われることが多いです。

Q. なぜ低温ではフィン間隔を広くするの?

低温では着霜が激しくなります。フィン間隔が狭いとすぐに霜でフィンの隙間が埋まってしまい、空気が通れなくなります。フィン間隔を広くすることで、霜が付いてもある程度の通風を確保できます。

Q. デフロストはいつ行うの?

多くの場合、タイマーで自動的に行います。大型の冷凍倉庫では、蒸発圧力や温度差を監視して、着霜が進んだタイミングで自動起動するシステムもあります。

理解度チェック

【問1】満液式蒸発器の特徴として、正しいものはどれか。

(1)冷媒は管の内側を流れる
(2)乾式に比べて冷媒充てん量が少ない
(3)伝熱管が冷媒液に浸かっており伝熱効率がよい
(4)蒸発器出口の冷媒は必ず過熱蒸気になる
(5)油の管理は特に必要ない

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正解:(3)伝熱管が冷媒液に浸かっており伝熱効率がよい
満液式蒸発器では、シェル内に冷媒液がたっぷり溜まっており、伝熱管が常に冷媒液に浸かっています。そのため伝熱面が有効に使え、伝熱効率が高いです。冷媒は管の外側(シェル側)で蒸発します。

【問2】蒸発器の着霜に関する記述として、誤っているものはどれか。

(1)蒸発器の表面温度が0℃以下のとき、空気中の水蒸気が凍って霜になる
(2)霜は伝熱を妨げ、冷凍能力を低下させる
(3)霜が付くとフィンの間の通風が悪くなる
(4)低温用の蒸発器ではフィン間隔を狭くする
(5)定期的なデフロスト(除霜)が必要である

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正解:(4)低温用の蒸発器ではフィン間隔を狭くする
低温用の蒸発器では着霜が激しいため、フィン間隔を広くします。狭くするとすぐに霜で詰まって空気が通れなくなり、冷却能力が急激に低下してしまいます。

【問3】ホットガスデフロストの方法として、正しいものはどれか。

(1)蒸発器に電気ヒーターを設置して加熱する
(2)冷凍機を停止し、室温の空気だけで霜を溶かす
(3)圧縮機からの高温高圧の冷媒ガスを蒸発器に流して霜を溶かす
(4)蒸発器に水をかけて霜を洗い流す
(5)冷媒の蒸発温度を上げて霜を自然に溶かす

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正解:(3)圧縮機からの高温高圧の冷媒ガスを蒸発器に流して霜を溶かす
ホットガスデフロストは、圧縮機の吐出ガス(高温高圧)を蒸発器に直接送り込み、その熱で霜を溶かす方式です。効率的で短時間に除霜できるため、業務用冷凍装置で最も広く使われています。

まとめ

この記事のポイント

  • 満液式:冷媒=管の外側(シェル側)、充てん量多い、伝熱効率高い、油戻しに工夫必要
  • 乾式:冷媒=管の内側、充てん量少ない、油戻し容易、温度自動膨張弁で過熱度制御
  • 空気冷却用蒸発器:フィン付き管+ファンで空気を冷やす
  • 着霜は伝熱を妨げ通風を悪化させる → デフロストで除去
  • デフロスト方式:ホットガス(最も一般的)、電気ヒーター、散水、オフサイクル
  • 低温用はフィン間隔を広くする(霜対策)

前の記事 → 凝縮器の種類と特徴(水冷シェルアンドチューブ・空冷・蒸発式)

次回は附属機器(受液器・油分離器・液分離器・フィルタドライヤ等)を解説します。

試験頻出ポイント

  • 満液式蒸発器:管外に冷媒液。伝熱性能が高いが冷媒充填量が多い
  • 乾式蒸発器:管内に冷媒。冷媒充填量が少ない。膨張弁で過熱度を制御
  • 着霜=蒸発温度が0℃以下で空気中の水分が霜になる
  • デフロスト(除霜)方法:ホットガス方式・散水方式・オフサイクル方式
  • 蒸発温度が低くなると冷凍能力が低下しCOPも下がる

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