この記事で分かること
- 熱伝導・熱伝達・熱通過の場所と、λ・α・Kの単位の違い
- 管壁・流体・汚れを「直列の熱抵抗」で考える方法
- 対数平均温度差を使う理由と具体的な計算手順
- 流速・スケール・油膜・霜が熱交換器へ与える影響
結論:熱交換量はK・A・平均温度差の掛け算で決まる
凝縮器や蒸発器では、高温流体から管壁へ熱伝達し、管壁内を熱伝導し、反対側の流体へもう一度熱伝達します。この一連の移動が熱通過です。
熱交換量の基本式は Φ=K A Δtm です。Kは熱通過率、Aは伝熱面積、Δtmは平均温度差です。どれか1つが小さくなると、他の条件が同じなら熱交換量も小さくなります。
公式・専門資料の確認先
- 農研機構:流速とヒートポンプ熱交換特性の研究成果(熱通過率・熱交換量・SCOPを比較)
- 日本冷凍空調工業会:「冷凍と空調の基礎知識」(伝熱を含む技術入門書)
- 日本冷凍空調学会論文集:熱通過率と平均温度差の取扱い
- 高圧ガス保安協会:国家試験問題・正解答
技術情報確認日:2026年7月28日
図解:流体から壁を通って反対側の流体へ進む
高温流体側
熱伝達
流体から壁表面へ
管壁・汚れ層
熱伝導
固体内部を通過
低温流体側
熱伝達
壁表面から流体へ
3つをまとめて評価する指標が熱通過率K
水冷凝縮器なら、冷媒→管内面、管壁、管外面→冷却水という順です。空冷蒸発器なら、庫内空気→霜やフィン・管壁→冷媒という方向に熱が移ります。
λ・α・Kは意味と単位を分ける
| 指標 | 表すもの | 単位 |
|---|---|---|
| 熱伝導率 λ | 材料内部の熱の通しやすさ | W/(m・K) |
| 熱伝達率 α | 壁面と流体間の熱の移しやすさ | W/(m²・K) |
| 熱通過率 K | 両側流体間の総合的な熱の通しやすさ | W/(m²・K) |
λとKは単位が違うため、数値を直接比べて「Kは必ずλより小さい」とはいえません。λは材料固有の性質、Kは壁厚・両側の流れ・相変化・汚れなどを含む装置側の指標です。
同じ種類の指標でも値は条件で変わります。特にαは流速だけでなく、流体物性、流路形状、層流・乱流、沸騰・凝縮の状態で変化します。「流速を上げれば必ず省エネ」とは限らず、圧力損失とポンプ・ファン動力も増える点に注意します。
熱伝導と熱伝達の基本式
平板の熱伝導
Φ=λAΔt/δ
薄いほど、λ・A・温度差が大きいほど熱を通す
壁面の熱伝達
Φ=αAΔt
α・A・壁面との温度差が大きいほど熱を移す
δは壁厚です。熱伝導の単位面積当たり熱抵抗は δ/λ、熱伝達の熱抵抗は 1/α と表せます。抵抗が大きい層ほど温度差を多く消費し、全体のボトルネックになります。
熱通過率Kは熱抵抗の合計から求める
平板で両側の面積が等しく、接触抵抗を無視できる単純な場合は、次の式で考えられます。
1/K = 1/α1 + δ/λ + 1/α2 + Rf
Rfはスケール・油膜・霜などをまとめた汚れ熱抵抗。実際の円管では内外面積の違いも考慮する。
独自計算例:α1=1,000、α2=2,000 W/(m²・K)、管壁δ=0.001m、λ=50 W/(m・K)とします。清浄時の合計抵抗は0.001+0.0005+0.00002=0.00152なので、Kは 1÷0.00152≒658 W/(m²・K) です。
ここへ汚れ熱抵抗0.0005 m²・K/Wが加わると、Kは1÷0.00202≒495 W/(m²・K)。約25%低下します。薄い汚れでも、もとの管壁熱抵抗より大きければ全体を大きく悪化させることが分かります。
対数平均温度差は「場所ごとに変わる温度差」の代表値
熱交換器では流体が進むにつれて温度が変わるため、入口と出口の温度差は同じとは限りません。端部の温度差をΔt1、Δt2とすると、対数平均温度差は次式です。
Δtm=(Δt1-Δt2) ÷ ln(Δt1/Δt2)
Δt1=Δt2のときは、その共通の温度差を使う。温度差はKでも℃差でも数値は同じ。
計算例:冷媒が40℃で凝縮し、冷却水が20℃から30℃へ温まる凝縮域を考えます。両端の温度差は40-20=20Kと40-30=10Kです。
Δtm=(20-10)÷ln(20/10)≒14.4K。算術平均は15Kですが、対数平均は少し小さくなります。K=800 W/(m²・K)、A=5m²なら、交換熱量は800×5×14.4≒57.7kWです。
冷媒温度がほぼ一定なのは、圧力損失が小さいとみなした蒸発域・凝縮域です。熱交換器内に過熱蒸気の冷却や液の過冷却も含む場合、機器全体を「ずっと一定温度」とは扱えません。区間分けや補正が必要になることがあります。
汚れと流れは熱交換量と動力を一緒に見る
| 変化 | 伝熱への影響 | 併せて確認 |
|---|---|---|
| 水側スケール | 汚れ熱抵抗が増えてK低下 | 凝縮圧力・水温差・水処理 |
| 冷媒側油膜 | 冷媒と壁の熱移動を妨げる | 油戻り・油量・温度差 |
| 空気側の霜 | 熱抵抗と通風抵抗が増える | 風量・差圧・除霜制御 |
| 流速上昇 | 一般にαは増えやすい | 圧力損失・ポンプ/ファン動力・騒音 |
凝縮器の構造と水側管理は「凝縮器の種類と特徴」、着霜とデフロストは「蒸発器の種類と特徴」で詳しく整理します。
試験で狙われる入れ替え
- 熱伝導率λと熱通過率Kを直接大小比較する:単位と意味が異なるため不適切です。
- 壁を厚くすると熱抵抗が下がる:逆です。δ/λなので、同じ材料なら厚いほど抵抗は増えます。
- 汚れが付くとKが大きくなる:汚れ熱抵抗が加わるためKは小さくなります。
- フィンはKを直接大きくする:主目的は伝熱面積Aを増やすことです。フィン効率も影響します。
- 入口と出口の温度差を単純平均すれば常に正確:基本は対数平均温度差を使います。
理解度チェック
【問1】熱伝導率λと熱通過率Kについて正しいものはどれですか。
(1) 両者は同じ単位である
(2) λは装置全体、Kは材料単体を表す
(3) λとKは単位が異なり、数値を直接大小比較できない
(4) Kは必ずλより小さい
(5) λは流速だけで決まる
【問2】同じ材質・面積・温度差の平板で、伝導熱量を小さくする操作はどれですか。
(1) 壁厚を2倍にする
(2) 熱伝導率を2倍にする
(3) 面積を2倍にする
(4) 温度差を2倍にする
(5) 壁厚を半分にする
【問3】端部温度差が20Kと10Kのとき、対数平均温度差に最も近いものはどれですか。
(1) 5.0K
(2) 10.0K
(3) 14.4K
(4) 20.0K
(5) 30.0K
【問4】空冷蒸発器に霜が厚く付着した場合の説明として最も適切なものはどれですか。
(1) 熱抵抗は下がり、風量は増える
(2) Kは増えるが、面積は減る
(3) 熱抵抗と通風抵抗が増え、能力低下につながる
(4) 冷媒の熱伝導率だけが上がる
(5) 除霜しても伝熱は変わらない
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まとめ
熱通過は、高温側の熱伝達、壁と汚れ層の熱伝導、低温側の熱伝達をまとめた現象です。λ・α・Kは意味と単位を分け、Kは各熱抵抗の合計の逆数として考えます。
熱交換量はΦ=KAΔtmです。汚れでKが下がる、フィンでAを増やす、運転条件で平均温度差が変わるという3方向で整理すると、凝縮器・蒸発器の性能低下を論理的に判断できます。
最終更新日:2026年7月28日
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