この記事で分かること
- 乾式(直膨式)・満液式・液ポンプ循環式の違い
- 蒸発器出口の過熱度と冷媒供給量の関係
- 冷凍能力を比エンタルピー差から求める方法
- 着霜の見分け方と安全な除霜シーケンス
結論:蒸発器は熱を受け取り、冷媒を蒸発させる
蒸発器(エバポレータ)は、冷やしたい空気・水・ブライン・製品から熱を受け取り、低圧の冷媒液を蒸発させる熱交換器です。「冷気を作る」のではなく、対象から熱を冷媒へ移す装置と考えると仕組みがつながります。
乾式(直膨式)は出口に適切な過熱度を持たせて圧縮機への液戻りを防ぎます。満液式・液ポンプ循環式は伝熱面を液でよく濡らして使い、気液分離器や液面制御で圧縮機を守ります。分類名だけで「冷媒が必ず管内・管外」と決めず、個々の構造と冷媒供給方式を分けて確認しましょう。
公式・専門資料の確認先
- 日本冷凍空調工業会:空気調和の基礎知識(冷凍サイクル)
- 日本冷凍空調工業会:冷凍と空調の基礎知識
- 高圧ガス保安協会:令和6年度 第三種冷凍機械試験問題
- Danfoss:蒸発器の冷却・除霜シーケンス制御
- Copeland:除霜制御と圧縮機への液戻り
技術情報確認日:2026年7月28日。実設備ではメーカーの制御手順、冷媒・冷凍機油の適合、保安手順を優先してください。
蒸発器では二相流から過熱蒸気へ変わる
膨張後の低圧・低温の気液二相冷媒
潜熱を受け取り液が蒸気へ
直膨式では少し過熱した蒸気
冷媒は膨張弁を出ただけで全部が液になるのではありません。一部がフラッシュガスになった気液二相状態で蒸発器へ入り、残った液が対象から熱を受けて蒸発します。直膨式の出口では、飽和蒸気温度より実測温度が高い過熱蒸気にします。
過熱度は「出口温度-その位置の圧力に対応する飽和蒸気温度」です。高過熱度は冷媒不足・流量制限などで蒸発器が乾き過ぎている可能性、低過熱度は過供給や負荷低下による液戻りリスクを示します。ただし、冷媒種と圧力、測定位置をそろえて判断します。
乾式・満液式・液ポンプ循環式を比較
| 方式 | 冷媒供給 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 乾式・直膨式(DX) | 膨張弁で必要量を直接供給 | 充填量を抑えやすい。出口過熱度で液戻り防止 |
| 満液式 | 伝熱面を冷媒液で満たす | 伝熱面を濡らしやすい。液面・油・冷媒量の管理が重要 |
| 液ポンプ循環式 | 必要蒸発量より多い液を循環 | 大規模設備で均等給液しやすい。気液分離とポンプ動力が必要 |
代表的な満液式シェルアンドチューブ蒸発器では、冷媒が胴側、冷水・ブラインが管内を流れます。一方、空気冷却コイルへ液を過剰供給する液ポンプ循環式では、冷媒が管内を流れる構成もあります。「満液式」という言葉は冷媒供給・濡れ状態を示すのであり、管の内外を一律に定義する言葉ではありません。
満液式で油がたまる位置や戻し方も、冷媒と油の相溶性、密度、温度、分離器構成で変わります。「底から抜けばよい」と決めつけず、設計された油回収系に従います。
乾式蒸発器は過熱度と有効面積の両方を守る
直膨式では温度自動膨張弁(TXV)や電子膨張弁(EEV)が冷媒供給量を調節します。供給が少な過ぎると蒸発が早く終わり、後半が蒸気の過熱だけに使われて蒸発面積を生かせません。多過ぎると未蒸発液が出口へ到達し、圧縮機の液圧縮・油希釈につながります。
高過熱度、低い吸込み圧力、能力不足、蒸発器の一部しか冷えない
低過熱度、液戻り、吸込み配管や圧縮機の異常着霜、油希釈
過熱度だけで冷媒充填量を断定しません。風量・水量、負荷、フィルタドライヤや電磁弁の詰まり、膨張弁の選定・感温筒取付け、凝縮側の液状態も一緒に確認します。
冷凍能力は冷媒の比エンタルピー差で求める
蒸発器の冷凍能力 Φ0 は、冷媒質量流量 qmr と蒸発器出入口の比エンタルピー差から求められます。
蒸発器の熱収支
Φ0=qmr(hout-hin)
qmr:kg/s、h:kJ/kgなので、答えはkW
独自計算例
冷媒流量0.080kg/s、入口比エンタルピー250kJ/kg、出口400kJ/kgなら、
Φ0=0.080×(400-250)=12.0kWです。
空気やブライン側からも、流量と出入口状態が分かれば能力を確認できます。ただし空気冷却では、温度低下の顕熱だけでなく、水分が結露・凍結するときの潜熱もあるため、乾球温度差だけの計算では不足する場合があります。
ユニットクーラは空気を冷却・除湿する
冷蔵・冷凍庫のユニットクーラは、冷媒管とフィン、送風機、ドレンパンなどで構成されます。空気が露点以下まで冷えると水分が凝縮し、表面が0℃以下なら霜や氷になります。着霜量は表面温度だけでなく、庫内湿度、扉開放、外気侵入、製品からの水分、風量に左右されます。
霜は熱抵抗を増やし、フィン間の通風路を狭めます。低温・高湿度用途ではフィン間隔を広くする設計が使われますが、必要間隔は温度だけで一律に決まりません。着霜負荷、除霜周期、風量、製品条件で選びます。
除霜4方式は使える熱源と温度帯で選ぶ
| 方式 | 熱源 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| オフサイクル | 0℃より暖かい庫内空気 | 中温用途向け。低温庫では溶けにくい |
| 電気ヒータ | 電熱 | 制御しやすいが電力と過熱保護が必要 |
| ホットガス | 圧縮機吐出しガス | 圧力制御、凝縮液排出、液ハンマ防止が重要 |
| 散水・温水 | 水の顕熱 | 給液停止、排水、再凍結・飛散を管理 |
方式の採用比率は設備用途で異なるため、「ホットガスが常に最も多い」とは断定できません。小型ショーケースでは電気式、0℃超の用途ではオフサイクル、大型産業設備ではホットガスや散水式など、条件に応じて使い分けます。
安全な除霜は開始から再冷却までを一つの手順にする
必要に応じポンプダウン
温度・圧力を監視
最大時間の安全上限
滴下・送風遅延後に復帰
KHKの公表問題でも、満液式蒸発器の散水除霜では、散水前に冷媒液供給を止め、コイル内の液を回収または補助受液器へ移す考え方が確認できます。大量の低温液を残したまま急加熱すると、圧力上昇や液移動を制御しにくくなるためです。
ホットガス式では、加熱中に生じた凝縮液を安全に排出し、圧力差を急変させません。終了後は溶けた水を排出するドリップ時間を取り、必要に応じてコイルを再冷却してから送風機を起動します。温水・電気式でも、ファン停止、ドレンヒータ、終了温度、最大除霜時間は機器の設計シーケンスに従います。
除霜は回数固定ではなく着霜負荷で最適化する
除霜不足は霜を残し、過剰な除霜は庫温上昇、製品乾燥、電力増加を招きます。必要頻度は、扉の開閉、外気湿度、製品の水分、庫内温度、蒸発器の大きさで変わります。「1日2~4回」と固定せず、設備仕様と実測に合わせます。
| 確認値 | 着霜・異常の手掛かり | 併せて見る項目 |
|---|---|---|
| 風量・ファン電流・差圧 | 全面着霜で通風低下 | フィン汚れ、製品による風路閉塞 |
| 吸込み圧力・過熱度 | 冷媒供給不足や負荷低下 | 膨張弁、冷媒量、フィルタ詰まり |
| 霜の分布 | 入口だけなら給液不足の可能性 | 回路分配、感温筒、風量偏り |
| 除霜後の氷 | 終了不足・排水の再凍結 | 終了センサ、ドレン、ヒータ、傾斜 |
理解度チェック
【問1】直膨式蒸発器で出口過熱度が極端に小さいとき、最も注意すべきものはどれですか。
(1) 冷却水のスケールだけ
(2) 圧縮機への液戻り
(3) 凝縮器の水処理
(4) 冷却塔の飛散水
(5) ボイラーの低水位
【問2】冷媒流量0.050kg/s、蒸発器出入口の比エンタルピー差160kJ/kgの冷凍能力はどれですか。
(1) 3.2kW
(2) 5.0kW
(3) 8.0kW
(4) 16kW
(5) 32kW
【問3】満液式という分類について適切なものはどれですか。
(1) すべての構造で冷媒は必ず管外を流れる
(2) 伝熱面を冷媒液で十分に濡らして使う方式である
(3) 出口過熱度だけで液面を制御する
(4) 冷媒充填量は常にゼロである
(5) 気液分離は不要である
【問4】除霜後の再起動手順として最も適切なものはどれですか。
(1) 排水を待たず最大風量で送風する
(2) 給液を続けたまま急にホットガスを入れる
(3) 終了センサを外して時間無制限で加熱する
(4) 排水・必要な再冷却・ファン遅延を含む設計手順に従う
(5) 方式に関係なく同じ固定時間だけ除霜する
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まとめ
蒸発器では、膨張後の気液二相冷媒が対象から熱を受けて蒸発します。直膨式は過熱度、満液・液ポンプ循環式は液面と気液分離を中心に、伝熱面を使い切りながら圧縮機へ液を送らない設計です。
着霜は伝熱と通風を同時に悪化させます。除霜は加熱だけで終わらず、給液停止、終了判定、排水、再冷却、ファン遅延までを一つの安全シーケンスとして理解しましょう。
最終更新日:2026年7月28日
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