この記事で分かること
- 受液器と液分離器を設置位置から見分ける方法
- 油分離器が油を100%除去する装置ではない理由
- フィルタドライヤとサイトグラスによる異常診断
- 液ガス熱交換器が必ずCOPを上げるとは限らない理由
結論:附属機器は「何を・どこで分けるか」で覚える
冷凍装置の附属機器は、冷媒液を蓄える、冷媒から油や水分を除く、圧縮機へ液を入れないなど、主要4機器だけでは担えない役割を持ちます。名前の暗記よりも、高圧・低圧のどちらにあり、何を分離・保持するかで整理すると迷いません。
特に混同しやすいのが受液器と液分離器です。一般的な高圧受液器は凝縮器の後で液を蓄え、吸込み液分離器は蒸発器の後で圧縮機への液戻りを防ぎます。一方、液ポンプ循環装置の低圧受液器は気液を分離して液を再供給するため、低圧側の液分離機能も持ちます。
公式・専門資料の確認先
- 高圧ガス保安協会:令和7年度 第三種冷凍機械試験問題
- 日本冷凍空調工業会:冷凍空調機器と補器
- Danfoss:フィルタドライヤとサイトグラス
- Danfoss:冷凍装置の故障診断
- Danfoss:吸込み液分離器による圧縮機保護
技術情報確認日:2026年7月28日。容器容量、油戻し、乾燥剤は冷媒・油・装置設計に合わせ、メーカー仕様を優先してください。
附属機器を冷凍サイクル上に配置する
吐出し
油を分離
蒸気を液へ
液を保持
乾燥・状態確認
減圧・流量調節
吸熱
液戻り防止→圧縮機
これは直膨式装置の代表例です。すべての装置に全機器があるわけではなく、凝縮器が受液機能を兼ねる、小型装置で受液器を省く、低圧受液器を使うなどの構成があります。試験問題では、まず高圧・低圧と流れ方向を確かめます。
高圧受液器は冷媒液の変動分と回収分を収める
高圧受液器(レシーバ)は凝縮器の下流に置かれ、負荷や運転状態に応じて変わる冷媒液量を受け入れ、液管へ連続した液を供給します。保守時に装置内の冷媒をポンプダウンして保持する役割もあります。ただし、受液器が冷媒圧力を水道タンクのように一定にするわけではありません。圧力は主に冷媒温度と高圧側制御で決まります。
KHKの学習基準では、修理時に冷媒充填量の大部分を回収でき、回収液が内容積の95%以内に収まり、少なくとも5%の蒸気空間を残す考え方が示されています。液で満たすと温度上昇時の熱膨張を吸収できず、閉じ込め液の圧力が急上昇します。
実務上の注意:「95%まで入れてよい」という運転目標ではありません。必要な運転液面と保守時の回収容量は装置ごとの設計値で管理します。弁で液を閉じ込める区間には、必要な圧力逃がしも設計します。
低圧受液器と吸込み液分離器は目的が重なる
低圧受液器は、蒸発器から戻る気液混合冷媒を分離し、蒸気を圧縮機へ、液を液ポンプなどで蒸発器へ戻します。大規模な液ポンプ循環式では冷媒液の保持、気液分離、安定給液をまとめて担います。この機能があれば、同じ吸込み配管へ別の液分離器を重ねて設ける必要がない構成があります。
吸込み液分離器(サクションアキュムレータ)は、直膨式やヒートポンプなどで一時的に戻る液を受け、圧縮機の液圧縮と油の過度な希釈を防ぎます。単なる空洞ではなく、入口デフレクタ、U字管、油戻し用の小孔などを備える形式があります。
| 機器 | 主な系統 | 液の扱い |
|---|---|---|
| 高圧受液器 | 凝縮器後の液管 | 高圧液を蓄え膨張弁へ送る |
| 低圧受液器 | 液ポンプ循環の低圧側 | 気液分離し液を再循環 |
| 吸込み液分離器 | 蒸発器と圧縮機の間 | 一時的な液戻りを受け徐々に戻す |
液分離器は「液を全部永久に閉じ込める」装置ではありません。冷媒と油を安全な率で系統へ戻せなければ、装置の冷媒不足や圧縮機の油不足が起きます。容量・戻し孔・配管は冷媒と油の相溶性、総充填量、最低流量に合わせます。
油分離器は吐出しガスから油滴を減らす
油分離器(オイルセパレータ)は、圧縮機と凝縮器の間に置き、吐出しガス中の油滴を流速低下、方向転換、遠心力、合体エレメントなどで分離します。分離油の戻し方は、単一圧縮機へフロート弁で戻す方式、油だめと油面制御器を介する並列方式、アンモニア系で安全に抜き出す方式など装置により異なります。
油分離器を付けても分離効率は100%ではなく、配管内の適切なガス速度と油戻り設計は必要です。油が蒸発器へ多く回ると油膜が熱抵抗となり、圧縮機の油面も低下します。油注入式スクリュー圧縮機では吐出し油量が多いため、高性能な油分離と油冷却・油圧管理が重要です。
独自計算例:分離器を通過する油量
吐出しガスに含まれる油が0.50kg/min、分離効率98%なら、下流へ進む油は
0.50×(1-0.98)=0.010kg/min=0.60kg/hです。高効率でも長時間では無視できません。
フィルタドライヤは水分と固形異物を除く
直膨式装置のフィルタドライヤは通常、膨張弁・キャピラリチューブの上流の液管に置きます。乾燥剤が水分や酸性生成物を保持し、フィルタ部が金属粉、酸化物、乾燥剤粉などを捕集します。乾燥剤は冷媒・冷凍機油と適合し、砕けにくく、不要な化学変化を起こさないものを選びます。
水分は膨張部で凍結して流れを妨げるほか、冷媒・油・高温生成物と関係して酸やスラッジ、絶縁劣化を招きます。ただし、フィルタドライヤは真空乾燥や漏えい修理の代わりではありません。開放整備後は十分な真空引きと気密確認を行い、指定時期にドライヤを交換します。
目詰まりすると圧力降下で出口側の液がフラッシュし、膨張弁が給液不足になります。運転中のドライヤ前後に不自然な温度差・霜付きがある場合は制限を疑いますが、交換や弁操作は冷媒回収と安全手順に従います。
サイトグラスの気泡だけで冷媒不足と決めない
液管サイトグラスは、冷媒の流動状態と、指示器付きなら水分状態を確認します。一般にフィルタドライヤの下流へ置けば、ドライヤ通過後の状態を観察できます。
| 見え方・測定 | 候補 | 次に確認 |
|---|---|---|
| 連続する気泡 | 冷媒不足、過冷却不足、液管圧力降下 | 漏えい、過冷却度、凝縮条件 |
| ドライヤ後だけフラッシュ | ドライヤ目詰まり | 前後温度・圧力差 |
| 水分指示色の変化 | 許容水分超過の可能性 | 製品固有の色表、運転時間、整備履歴 |
| 始動直後だけ泡 | 過渡的な流量・圧力変化 | 安定後に再確認 |
水分指示器の安全色・警告色は製品ごとに確認します。気泡を見て冷媒を足す前に、圧力・温度から過熱度と過冷却度を計算し、漏えいと流路制限を切り分けることが大切です。
液ガス熱交換器は効果と不利を両方持つ
液ガス熱交換器(液-吸込みガス熱交換器)は、高圧液を過冷却し、低圧吸込み蒸気を過熱します。液側の比エンタルピーが下がるため冷凍効果を増やし、膨張弁前のフラッシュガス防止に役立つ場合があります。
しかし吸込み蒸気の過熱は比体積と圧縮機吐出し温度を上げ、質量流量や圧縮仕事へ不利になる場合もあります。そのため、液側の冷凍効果が増える=装置COPが必ず上がるではありません。冷媒の物性、蒸発・凝縮条件、圧縮機の許容吸込み温度で評価します。
附属機器を点検するときの順序
- 運転状態を固定:始動直後・除霜直後ではなく、負荷と弁状態を記録します。
- 圧力と温度を測定:過熱度・過冷却度、ドライヤ前後差を計算します。
- 液面・油面・サイトグラスを見る:単独の見え方で断定せず、設計範囲と比較します。
- 原因を上流から追う:凝縮、受液、流路制限、膨張、蒸発、吸込みの順に確認します。
- 密閉系をむやみに開けない:冷媒回収、換気、保護具、メーカー手順を守ります。
理解度チェック
【問1】高圧受液器と吸込み液分離器の組合せとして適切なものはどれですか。
(1) どちらも圧縮機吐出し側で油だけを分離する
(2) 高圧受液器は液を蓄え、吸込み液分離器は液戻りを防ぐ
(3) 高圧受液器は水分だけを除去する
(4) 吸込み液分離器は凝縮器の出口だけに置く
(5) どちらも液を満杯にして使う
【問2】0.40kg/minの油を含む吐出しガスを分離効率97.5%の油分離器へ通したとき、下流へ進む油量はどれですか。
(1) 0.010kg/min
(2) 0.025kg/min
(3) 0.39kg/min
(4) 0.40kg/min
(5) 0.975kg/min
【問3】サイトグラスに気泡が見えるときの判断として適切なものはどれですか。
(1) 必ず冷媒不足なので直ちに追加する
(2) 必ず正常なので記録しない
(3) 冷媒不足・過冷却不足・流路制限などを測定値で切り分ける
(4) 油分離効率だけを測る
(5) 圧縮機を開放して内部を確認する
【問4】液ガス熱交換器について正しいものはどれですか。
(1) 液過冷却が増えればCOPは条件に関係なく必ず上がる
(2) 吸込み蒸気を冷媒液へ戻す装置である
(3) 水分と固形異物だけを除く
(4) 液過冷却の利点と吸込み過熱の影響を冷媒・運転条件ごとに評価する
(5) 圧縮機の吐出し油を100%除去する
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まとめ
高圧受液器は凝縮後の液を保持し、低圧受液器と吸込み液分離器は低圧側で気液を分けます。油分離器は吐出し油を減らし、フィルタドライヤとサイトグラスは清浄度と液状態を管理する組合せです。
附属機器は付いていれば安心ではありません。容量、圧力損失、油・冷媒の戻し、乾燥剤の適合まで含め、圧力・温度・液面・油面を組み合わせて診断しましょう。
最終更新日:2026年7月28日
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