この記事で分かること
- 往復式・ロータリー式・スクリュー式・スクロール式の圧縮原理
- 開放形・半密閉形・全密閉形の違い
- 圧力比が体積効率と吐出し温度に与える影響
- 液戻り・液圧縮・油上がりを区別するポイント
結論:構造・容量制御・弱点をセットで比較する
圧縮機は、蒸発器から戻った低圧の冷媒蒸気を吸い込み、凝縮器へ送れる高圧まで圧縮する機器です。基本4機器のうち、外部から軸仕事を受けて冷媒を循環させる中心的な役割を担います。
試験では名称だけでなく、「何が動くか」「どう容量を変えるか」「どんな異常に弱いか」まで結び付けると判断しやすくなります。なお、構造や弁、油系統は製品ごとに異なるため、本記事では代表的な構成を説明します。
公式情報の確認先
技術情報確認日:2026年7月26日
4方式を一覧で比較
| 方式 | 圧縮する動き | 代表的な容量制御 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 往復式 | ピストンの往復 | アンローダ、回転数制御 | 吸込弁・吐出し弁があり、すきま容積の影響を受ける |
| ロータリー式 | ローラの偏心回転 | 回転数制御など | 小形化しやすく、連続的な回転で振動が比較的小さい |
| スクリュー式 | ねじ状ロータの回転 | スライド弁、回転数制御など | 連続圧縮で脈動が小さく、油噴射形では油分離が重要 |
| スクロール式 | 渦巻きの旋回 | 回転数制御、複数台制御など | 圧縮が連続的で、振動・トルク変動を小さくしやすい |
圧縮ポケットの動きで覚える
吸込み
低圧の冷媒蒸気を圧縮室へ入れる
容積縮小
ピストン・ロータ・渦巻きで空間を小さくする
吐出し
高圧・高温になった蒸気を凝縮器へ送る
往復式はシリンダ内で工程が周期的に進みます。ロータリー、スクリュー、スクロールは回転または旋回に伴って圧縮空間が移動し、比較的連続した流れを作ります。
往復式:弁・すきま容積・アンローダが要点
ピストンが下がると吸込弁が開いて冷媒蒸気を吸い込み、上がると圧縮して吐出し弁から送り出します。多気筒機では、アンローダで一部のシリンダを休止させるなどして容量を調整します。
- 往復運動による慣性力と圧力脈動が生じるため、防振・保守が重要
- 上死点でも残るすきま容積のガスが再膨張し、吸込量を減らす
- 液冷媒を大量に吸い込むと、弁・ピストンなどを損傷する液圧縮につながる
ロータリー式:ローラとベーンで区画する
代表的なローリングピストン形では、偏心回転するローラとベーンがシリンダ内を吸込側・吐出し側に分けます。小形で部品点数を抑えやすく、ルームエアコンなどに使われます。
ただし、ローラとベーンを一体化したスイング形など別構造もあります。「ロータリー式はすべて同じ部品構成」とは決めつけず、基本原理と製品固有構造を分けて理解します。
スクリュー式:ツインとシングルがある
一般的なツインスクリュー形は、雄・雌2本のロータとかみ合い空間で冷媒蒸気を圧縮します。一方、1本の主ロータとゲートロータを使うシングルスクリュー形もあります。
油噴射形では、油がロータすきまのシール、潤滑、圧縮熱の除去を担い、吐出し後の油分離器で冷媒蒸気と分離されます。スライド弁の制御範囲や方式は機種によるため、「必ず10~100%」など固定値では覚えません。
スクロール式:固定渦巻きと旋回渦巻き
固定スクロールと旋回スクロールの間にできた複数のポケットが外周から中心へ移動し、容積が小さくなることで圧縮します。圧縮工程が重なって進むため、トルク変動や脈動を小さくしやすい構造です。
断定に注意:圧縮機構として吸込弁を必要としないのが一般的ですが、逆流防止用の吐出し逆止弁などを備える機種があります。「スクロールには弁が一切ない」とは言い切れません。
開放形・半密閉形・全密閉形
| 形式 | 電動機との関係 | 保守・漏えいの要点 |
|---|---|---|
| 開放形 | 圧縮機外の電動機と軸で接続 | 分解整備しやすいが、軸封部の点検が必要 |
| 半密閉形 | 同じケーシング内 | ボルト接合部を開けて内部整備できる構造が一般的 |
| 全密閉形 | 溶接ケーシング内に一体収納 | 外部軸封がなく漏えい経路を減らせるが、通常は現場分解しない |
全密閉形でも配管接続部などからの漏えい可能性はあるため、「冷媒漏れがない」は誤りです。電動機の冷却経路も機種により異なるので、吸込冷媒ガス冷却をすべての密閉形へ一律に当てはめないようにします。
体積効率と圧力比
往復圧縮機の体積効率は、実際の吸込体積流量を理論押しのけ量で割った値です。すきま容積の残留ガスが再膨張するため、一般に100%未満になります。
圧力比 = 吐出し絶対圧力 ÷ 吸込み絶対圧力
圧力比が大きい → 残留ガスの再膨張が長く続く → 新しく吸い込める体積が減る → 体積効率が低下
圧力比には絶対圧力を使います。蒸発温度低下で吸込み圧力が下がる場合や、凝縮温度上昇で吐出し圧力が上がる場合は圧力比が増し、吐出し温度上昇や効率低下にも注意が必要です。
液戻り・液圧縮・油上がりを区別する
- 液戻り:蒸発し切らない冷媒液が圧縮機へ戻る現象。油への冷媒溶解や油粘度低下を招く
- 液圧縮:シリンダ等へ入った非圧縮性に近い液体を圧縮しようとして、部品に大きな力がかかる状態
- 油上がり:圧縮機から冷凍機油が冷媒回路へ持ち出される現象。油戻り不良では潤滑油不足につながる
液戻りが液圧縮の原因になることはありますが、両者は同義ではありません。運転管理と保守では過熱度、油量、異音・振動を関連づけて確認します。
理解度チェック
【問1】往復圧縮機で圧力比が大きくなると、体積効率は一般にどうなりますか。
(1) 上がる
(2) 下がる
(3) 必ず100%になる
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正解:(2)
すきま容積の残留ガスがより大きく再膨張し、新しい冷媒蒸気の吸込量が減ります。
【問2】スクリュー圧縮機について正しいものはどれですか。
(1) 必ず雄・雌2本のロータだけで構成される
(2) シングルスクリュー形もある
(3) 容量制御範囲は全機種で同じ
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正解:(2)
ツインスクリュー形のほか、主ロータとゲートロータを使うシングルスクリュー形があります。
【問3】全密閉形の説明として適切なものはどれですか。
(1) 冷媒漏れが絶対にない
(2) 外部軸封がなく、通常は現場でケーシングを分解しない
(3) 電動機は必ず外気で冷却する
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正解:(2)
溶接ケーシングで外部軸封はありませんが、冷媒設備全体の漏えい可能性がゼロになるわけではありません。
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まとめ
往復式はピストンと弁、ロータリー式はローラとベーン、スクリュー式はねじ状ロータ、スクロール式は固定・旋回渦巻きで圧縮します。形式ごとの一般的特徴と、製品固有の構造を分けて覚えることが大切です。
往復圧縮機では、絶対圧力で求めた圧力比が大きいほど体積効率が下がります。液戻りと液圧縮を混同せず、油の希釈や潤滑不良まで一連の異常として理解しましょう。
最終更新日:2026年7月26日
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