この記事で分かること
- ブライン(二次冷媒)と一次冷媒の役割の違い
- 塩化カルシウム・塩化ナトリウム・EG・PGの選び分け
- 「濃いほど凍りにくい」が途中から成り立たない理由
- 濃度、pH、防食剤、漏えいを現場で管理する順序
結論:最低液温を決め、必要濃度だけを使う
ブラインは、冷凍機で冷やされて負荷側へ熱を運ぶ二次冷媒(熱媒体)です。一般的な単相ブラインは、蒸発・凝縮する一次冷媒と違い、液体のまま循環して顕熱で熱を運びます。
選定の核心は「最も低くなる液温でもポンプ輸送できる濃度」と「材料・毒性・防食剤・粘度」の両立です。濃度は高いほどよいわけではありません。過濃度は粘度とポンプ動力を増やし、共晶点を越えれば凝固温度が逆に上がる系もあります。
公式・専門資料の確認先
- ASHRAE Handbook 2025:二次冷媒の物性と防食
- OxyChem:Calcium Chloride Handbook
- NSF:偶発的食品接触用熱媒体(HT1)の登録例
- CDC/NIOSH:エチレングリコールの危険性
- 日本冷凍空調学会:氷スラリーとブラインの手引書
- 高圧ガス保安協会:国家試験問題・正解答
技術情報確認日:2026年7月28日。実設備では採用製品の技術資料・SDS・機器メーカー仕様を優先してください。
間接冷却は「冷媒回路」と「ブライン回路」を分ける
一次冷媒がブラインから吸熱
低温ブラインを送る
空気・製品などから吸熱
一次冷媒を機械室側へまとめやすく、複数の負荷へ配管で冷熱を分配できるのが利点です。一方、熱交換器が一段増えるため温度差が必要となり、ブラインポンプの動力も加わります。間接冷却は「必ず高効率」でも「必ず安全」でもなく、漏えい時の影響を含めたシステム設計です。
ブライン4種類の違いを比較
| 種類 | 長所 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 塩化カルシウム | 安価で低温域を得やすい | 塩化物腐食、濃度過多で析出 |
| 塩化ナトリウム | 安価で物性を把握しやすい | CaCl₂より使える低温範囲が狭く、腐食性あり |
| エチレングリコール(EG) | PGより低温時の熱物性・流動性で有利 | 飲み込むと有害。漏えい・誤飲対策が必要 |
| プロピレングリコール(PG) | EGより低毒性の製品を選べる | 粘度・価格が高め。食品用途は製品認証まで確認 |
「有機ブラインは腐食しない」も誤りです。水、酸素、異種金属、pH低下があれば腐食は進みます。EG・PGは、適切な防食剤を含む製品を規定濃度で使って初めて低腐食性を得られます。
塩化カルシウムは約29.6質量%付近が最低域
OxyChemのデータでは、CaCl₂水溶液は29.6質量%で凝固点約−51℃です。ところが30質量%では約−47℃、32質量%では約−27℃となります。つまり、共晶濃度付近を越えて塩を増やすと、氷ではなく塩の水和物が析出しやすくなり、凍結・結晶化温度が上がります。
旧稿の訂正:「濃度約30%なら約−55℃」と丸めると、30.0%と共晶付近29.6%の差を見落とします。実務では濃度単位(質量%・容量%)と採用製品の凍結曲線を必ずそろえます。
塩化物系ブラインは熱物性と価格に利点がありますが、腐食が最大の課題です。密閉化、空気混入の低減、材料適合、防食剤濃度、pH、沈殿物をまとめて管理します。
EGとPGは「成分名」ではなく製品全体で選ぶ
エチレングリコールはプロピレングリコールより分子量が小さく、一般に低温での粘度や熱物性に有利です。しかし、体内で有害な代謝物を生じ、誤飲は中枢神経・心肺・腎臓へ重大な影響を与え得ます。食品や飲料へ混入するおそれがある系で、価格だけを理由に選びません。
プロピレングリコールはEGより低毒性ですが、「PGという成分だから食品設備で自由に使える」わけではありません。防食剤、染料、混入物も含め、偶発的食品接触に適合する表示・認証を持つ熱媒体を選びます。これは直接食品へ加えてよいという意味でもありません。
自動車用クーラントの流用や、異なる銘柄・EG系・PG系の混合は避けます。添加剤同士が反応して沈殿したり、防食性能や濃度測定値が崩れたりするためです。
凍結防止と破裂防止は同じではない
凍結防止は、最低温度でも氷結晶を生じず、運転中にポンプ輸送できる状態を保つ設計です。ASHRAEは一つの目安として、予想最低液温より凝固点を3K低くする考え方を示しています。
破裂防止は、停止中に一部がシャーベット状になっても膨張余地を確保し、配管破損を避ける考え方です。運転中のブライン回路に必要なのは通常、流動可能な凍結防止側です。設計余裕はメーカーの凍結曲線と最低局所温度で決めます。
濃くし過ぎると搬送効率が下がる
ブラインの顕熱搬送量は、Q=ṁcpΔTで表せます。Qは熱量kW、ṁは質量流量kg/s、cpは比熱kJ/(kg・K)、ΔTは往還温度差Kです。
独自計算例:必要ブライン流量
負荷35kW、比熱3.5kJ/(kg・K)、往還温度差5Kなら、
ṁ=35÷(3.5×5)=2.0kg/s。
密度を1,050kg/m³と仮定すると、体積流量は2.0÷1,050×3,600=約6.86m³/hです。
濃度を上げると比熱が下がり、低温では粘度も増えやすいため、同じ熱量を運ぶ流量やポンプ揚程に影響します。凝固点だけでなく、設計温度での密度・比熱・粘度・熱伝導率を製品表から使います。
現場管理は濃度・防食・汚れをセットで見る
| 点検 | 確認方法 | 異常時に疑うこと |
|---|---|---|
| 濃度・凝固点 | 製品対応の屈折計・密度計、温度補正 | 漏えい後の水補給、蒸発、誤混合 |
| pH・防食剤 | 製品指定の試験、定期的な液分析 | 酸化劣化、異種液混入、補給水不良 |
| 外観・差圧・流量 | 濁り、沈殿、泡、ストレーナ、圧力計 | 腐食生成物、結晶、空気混入、閉塞 |
| 漏えい | 液位、継手、ポンプ軸封、床面 | 腐食、ガスケット劣化、凍結膨張 |
代表性のある位置から十分に混合した液を採取し、測定温度を記録します。屈折率と濃度の対応は製品ごとに異なるため、汎用換算表だけで決めません。補給水の水質、pH、防食剤残量はメーカー基準で判定し、濃度だけ合っていても合格にしないことが重要です。
クロム酸塩は「昔の代表例」のまま補充しない
古い教材では塩化物ブラインの防食剤としてクロム酸塩が挙げられることがあります。しかしASHRAEは、六価クロムの環境・健康上の問題から、クロム酸塩を現在の防食剤として適切でないと整理しています。
現場では既存液へ自己判断で薬剤を足さず、液分析の結果とメーカー指定に基づいて、承認された防食剤パッケージを使用します。交換液はSDSと地域の廃棄規則に従って処理します。
試験で狙われる誤り
- ブラインは蒸発器内で蒸発する一次冷媒:通常の単相ブラインは液体のまま顕熱を運ぶ二次冷媒です。
- 濃いほど凝固点は必ず下がる:共晶点を越えると逆に上がる系があります。
- EG・PGは金属を腐食しない:防食剤、pH、水質、材料適合の管理が必要です。
- PGなら食品へ漏れても安全:採用製品全体の偶発的接触適合とSDSを確認します。
- 濃度だけ測ればよい:pH、防食剤、沈殿、流量、漏えいも一組で点検します。
理解度チェック
【問1】一般的な単相ブラインの説明として正しいものはどれですか。
(1) 圧縮機で圧縮される一次冷媒である
(2) 液体のまま循環し、顕熱で冷熱を運ぶ二次冷媒である
(3) 必ず水だけで構成される
(4) 直接冷却方式だけに使う
(5) ポンプ動力を必要としない
【問2】塩化カルシウム水溶液の濃度と凝固点について適切なものはどれですか。
(1) 0%が最も低い
(2) 濃度を上げるほど無限に下がる
(3) 40質量%が常に最も低い
(4) 約29.6質量%付近に最低域があり、それ以上では凝固・結晶化温度が上がり得る
(5) 濃度と凝固点は無関係である
【問3】負荷35kW、比熱3.5kJ/(kg・K)、往還温度差5Kのとき、必要質量流量はどれですか。
(1) 0.5kg/s
(2) 1.0kg/s
(3) 2.0kg/s
(4) 5.0kg/s
(5) 7.0kg/s
【問4】食品を扱う設備のブライン選定として最も適切なものはどれですか。
(1) EGは甘味があるので食品向けである
(2) PGを含めば添加剤を確認しなくてよい
(3) 自動車用PGクーラントをそのまま使う
(4) PGは食品へ直接添加してよい
(5) 漏えいリスクを評価し、製品全体の偶発的食品接触適合・SDS・機器仕様を確認する
次に読む記事
まとめ
ブラインは間接冷却で冷熱を運ぶ二次冷媒です。塩化物系は低温性能と価格に利点がある一方で腐食管理が重要、EGは熱物性に優れる一方で誤飲毒性に注意、PGは低毒性の選択肢ですが製品全体の適合確認が必要です。
最低液温から必要な凍結余裕を決め、製品固有の濃度曲線で選定します。運転後は濃度だけでなく、pH、防食剤、外観、差圧、流量、漏えいまで継続して管理しましょう。
最終更新日:2026年7月28日
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。