二級ボイラー技士 燃料及び燃焼

【二級ボイラー技士・燃焼】伝熱の基礎(伝導伝熱・対流伝熱・放射伝熱)

伝熱とは?ボイラーの効率を左右する「熱の伝わり方」

ボイラーの仕事は、燃料を燃やして発生した熱を水に伝え、蒸気や温水をつくることです。この「熱が伝わること」を伝熱(でんねつ)といいます。

伝熱の仕組みを理解することは、ボイラーの効率を考えるうえで非常に重要です。熱の伝わり方には3つの種類があり、ボイラーの中ではこの3つがすべて同時に起こっています。

熱の伝わり方は3種類

伝導伝熱(でんどうでんねつ):固体の中を熱が伝わる
対流伝熱(たいりゅうでんねつ):液体や気体の流れで熱が伝わる
放射伝熱(ほうしゃでんねつ):電磁波で熱が伝わる

① 伝導伝熱(熱伝導)

伝導伝熱は、物質の中を、高温側から低温側へ熱が直接伝わる現象です。物質そのものが移動するわけではなく、分子の振動が隣の分子に伝わっていく形で熱が移動します。

身近なイメージ
フライパンの取っ手を想像してください。金属のフライパンを火にかけると、取っ手の根元から先端に向かってだんだん熱くなりますよね。これが伝導伝熱です。熱が金属の中を「じわじわ」と伝わっていきます。

ボイラーでの伝導伝熱

ボイラーでは、炉壁(ろへき)や水管の金属板の中を熱が伝わります。高温の燃焼ガスに接した金属の外側から、低温の水に接した内側へと熱が金属板を通じて伝導します。

熱伝導率(ねつでんどうりつ)

物質によって「熱の伝わりやすさ」は異なります。この伝わりやすさを数値で表したものが熱伝導率です。

物質 熱の伝わりやすさ
非常に伝わりやすい(熱伝導率が大きい)
鉄・鋼 伝わりやすい
金属に比べると伝わりにくい
空気・ガス 非常に伝わりにくい(熱伝導率が小さい)

試験のポイント
「金属は熱伝導率が大きく、空気やガスは小さい」が基本。
ボイラーの伝熱面にスケール(水あか)が付くと、スケールの熱伝導率は金属よりずっと小さいため、伝熱効率が大幅に低下します。スケール対策が重要な理由はここにあります(スケール・腐食の原因と防止策を参照)。

② 対流伝熱(熱伝達)

対流伝熱は、流体(液体や気体)が流れることで熱を運ぶ現象です。温められた流体が移動することで、熱が高温部から低温部へ運ばれます。

身近なイメージ
お風呂のお湯を沸かすと、下のほうが熱くなって上に昇り、上の冷たい水が下に降りてきますよね。この循環で全体が温まります。これが対流伝熱です。エアコンの暖房も、温かい空気を吹き出して部屋の空気を循環させる対流伝熱の一種です。

自然対流と強制対流

対流伝熱はさらに2つに分けられます。

種類 特徴
自然対流 温度差による密度差で流体が自然に動く(例:お湯が上に昇る)
強制対流 ファンやポンプで強制的に流体を動かす(例:エアコンの送風)

強制対流のほうが熱伝達率が大きい(流体の速度が速いほど熱が伝わりやすい)。ボイラーでは通風装置(ファン)で燃焼ガスを流したり、循環ポンプで水を流したりして、強制対流で効率よく伝熱しています。

ボイラーでの対流伝熱

  • 燃焼ガス → 水管の外面:高温の燃焼ガスが水管の周りを流れ、熱を水管の外面に伝える
  • 水管の内面 → ボイラー水:管内の水やお湯が流れることで、管壁の熱を受け取る

試験のポイント
「流体の速度が大きいほど熱伝達率が大きい」は頻出。つまり、ボイラー内の水の流速が速いほど、また通風が強いほど、伝熱効率が上がるということです。

③ 放射伝熱(熱放射・ふく射伝熱)

放射伝熱は、物体が電磁波(赤外線など)を放出して熱を伝える現象です。伝導や対流と違い、物質がなくても熱が伝わるのが最大の特徴です。真空中でも伝わります。

身近なイメージ
焚き火のそばに立つと、体が温かくなりますよね。でも、焚き火と体の間には空気しかなく、空気自体はそこまで熱くありません。これは焚き火から出た赤外線(電磁波)が直接体に届いて温めているからです。太陽の熱が宇宙空間(真空)を超えて地球に届くのも放射伝熱です。

放射伝熱の特徴

  • 物質を介さなくても伝わる(真空中でも伝わる)
  • 温度が高いほど放射エネルギーが大きくなる:放射エネルギーは絶対温度の4乗に比例する(ステファン・ボルツマンの法則)
  • 高温になるほど放射伝熱の割合が増える

ステファン・ボルツマンの法則(かんたん解説)
放射エネルギーは絶対温度の4乗に比例します。つまり、温度が2倍になると放射エネルギーは2⁴=16倍にもなります。ボイラーの炉内は1000℃を超える高温なので、炉内では放射伝熱が非常に大きな割合を占めます。

ボイラーでの放射伝熱

ボイラーの炉内(燃焼室)では、高温の火炎や燃焼ガスからの放射伝熱が最も大きな伝熱方式です。炉内は1000℃以上の高温になるため、放射による伝熱量が圧倒的に大きくなります。

一方、煙道(えんどう)では燃焼ガスの温度が下がっているため、対流伝熱が主体になります。

試験のポイント
「炉内では放射伝熱が主体、煙道では対流伝熱が主体」は頻出!
温度による違いを理解していれば簡単に解けます。高温=放射、温度が下がると=対流が主役です。

3つの伝熱方式 比較まとめ

伝導伝熱
何で伝わる?
固体の中を直接
身近な例
フライパンの取っ手
ボイラーでは
水管・炉壁の金属板
対流伝熱
何で伝わる?
流体(気体・液体)の流れ
身近な例
エアコン・お風呂
ボイラーでは
煙道での熱回収
放射伝熱
何で伝わる?
電磁波(赤外線)
身近な例
焚き火・太陽の熱
ボイラーでは
炉内(燃焼室)

伝熱面と伝熱面積

ボイラーで燃焼ガスの熱が水に伝わる面のことを伝熱面(でんねつめん)といいます。伝熱面の面積が大きいほど、水に伝わる熱量が増えるため、ボイラーの能力(出力)は伝熱面積に大きく左右されます。

現場イメージ
水管ボイラーの水管が何十本、何百本もあるのは、伝熱面積をできるだけ大きくするためです。管の本数が多い=燃焼ガスと水の接触面積が大きい=たくさんの熱を水に伝えられる、というわけです。ボイラーの容量・効率・伝熱面積の記事でも詳しく解説しています。

伝熱を妨げるもの ─ スケールと煤

伝熱面に付着するスケール(水あか)煤(すす)は、熱伝導率が金属に比べて非常に小さいため、伝熱を大きく妨げます。

付着物 付着する場所 影響
スケール 水側(管の内面) 伝熱効率低下・過熱・膨出
煤(すす) ガス側(管の外面) 伝熱効率低下

スケールの危険性
スケールが伝熱面に付着すると、燃焼ガスの熱が水に伝わらなくなり、金属板だけが過熱されます。過熱が進むと金属が軟化して膨出(ふくれ)や破裂を起こす危険があります。ボイラーの水処理やスケール除去が重要な理由はこれです。

理解度チェック

ここまでの内容を確認してみましょう!

【問1】伝熱の方式のうち、物質を介さなくても(真空中でも)熱が伝わるものはどれか。

(1)伝導伝熱 (2)対流伝熱 (3)放射伝熱 (4)蒸発伝熱 (5)接触伝熱

解答を見る

正解:(3)放射伝熱
放射伝熱は電磁波(赤外線)で熱が伝わるため、真空中でも伝わります。太陽の熱が宇宙空間を通って地球に届くのがその例です。伝導伝熱は固体、対流伝熱は流体が必要です。

【問2】ボイラーの炉内(燃焼室)で主体となる伝熱方式はどれか。

(1)伝導伝熱 (2)自然対流 (3)強制対流 (4)放射伝熱 (5)蒸発伝熱

解答を見る

正解:(4)放射伝熱
炉内(燃焼室)は1000℃以上の高温になります。放射エネルギーは絶対温度の4乗に比例するため、高温の炉内では放射伝熱が圧倒的に大きくなります。煙道に入ると温度が下がり、対流伝熱が主体になります。

【問3】放射伝熱に関する記述として、正しいものはどれか。

(1)放射エネルギーは温度に比例する (2)放射エネルギーは絶対温度の2乗に比例する (3)放射エネルギーは絶対温度の4乗に比例する (4)温度が高くなると放射伝熱の割合は小さくなる (5)液体や気体がないと伝わらない

解答を見る

正解:(3)放射エネルギーは絶対温度の4乗に比例する
これはステファン・ボルツマンの法則です。温度が2倍になると放射エネルギーは2⁴=16倍になります。温度が高いほど放射伝熱の割合は大きくなり、物質がなくても(真空中でも)伝わります。

ミニテストで腕試し!

「伝熱の基礎」のミニテスト(各5問×3回)で理解を定着させましょう!

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試験で狙われる!頻出ポイント5選

  1. 放射伝熱のエネルギーは絶対温度の4乗に比例(ステファン・ボルツマンの法則)
  2. 炉内では放射伝熱が主体煙道では対流伝熱が主体
  3. 熱伝導率の大小:金属 > 液体 > 気体(スケールや煤は気体に近く伝熱を妨げる)
  4. 対流伝熱は流速が大きいほど伝熱量が増加する
  5. スケール付着 → 伝熱面の過熱 → 膨出・破裂の危険

まとめ

この記事のポイント

  • 伝導伝熱:固体の中を熱が伝わる(例:フライパンの取っ手)
  • 対流伝熱:流体の流れで熱が運ばれる(例:お風呂の循環)。流速が大きいほど伝熱量大
  • 放射伝熱:電磁波(赤外線)で伝わる。真空中でもOK。絶対温度の4乗に比例
  • ボイラーの炉内では放射伝熱が主体煙道では対流伝熱が主体
  • スケール・煤は伝熱を妨げ、過熱・破裂の原因になる

次回は大気汚染防止と燃焼障害(NOx・SOx・ばいじん・低温腐食の抑制)を解説します。ボイラーの排ガスによる環境問題と対策を学びましょう!

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