燃料及び燃焼

【二級ボイラー技士・燃焼】燃焼の基礎理論|理論空気量・空気比・燃焼ガス量の計算

この記事で分かること

  • 理論酸素量・理論空気量・実際空気量のつながり
  • 空気比と過剰空気率を混同しない計算方法
  • 乾き燃焼ガスと湿り燃焼ガスの違い
  • 排ガスのO₂・CO₂・COから燃焼状態を読む際の注意点

結論:燃焼計算は、①燃料が必要とする酸素量 → ②空気中の酸素21%で割って理論空気量 → ③空気比を掛けて実際空気量 → ④生成ガスと過剰空気を足して燃焼ガス量、の順に追えば整理できます。

空気は不足すると局所的な不完全燃焼を招き、多すぎると余分な窒素や酸素まで加熱して排ガス損失を増やします。ただし、適正空気比は燃料、バーナ、負荷、測定位置で異なります。旧本文のように全ボイラーを一律「1.1〜1.3」とせず、試験では関係式、実機ではメーカー基準と排ガス測定値を優先します。

燃焼の三要素と「完全燃焼」の意味

燃焼を続ける三つの条件

燃料
重油・都市ガスなどの可燃物
酸素
通常は燃焼用空気から供給
温度
着火温度以上。着火後は炎の熱で維持

完全燃焼とは、燃料中の可燃成分が十分に酸化され、炭素が主にCO₂、水素がH₂O、硫黄がSO₂になる状態です。不完全燃焼ではCO、すす、未燃炭化水素などが生じ、燃料が持つ熱を十分に取り出せません。

空気量だけで完全燃焼が決まるわけではありません。全体の空気比が1を超えていても、噴霧不良、混合不良、火炎温度低下、滞留時間不足があれば局所的にCOやすすが発生します。これは排ガスを読むときの重要な前提です。

理論空気量は「必要酸素量÷0.21」

乾燥空気を体積比で酸素21%、窒素79%と近似します。燃料の完全燃焼に必要な酸素が2.24m³なら、必要な空気は2.24m³ではありません。空気のうち酸素は21%なので、0.21で割ります。

理論空気量 A₀ = 理論酸素量 ÷ 0.21

2.24 ÷ 0.21 = 10.67m³/kg(燃料)

液体・固体燃料では、元素分析値の炭素C、水素H、硫黄Sが酸素を消費し、燃料自身に含まれる酸素Oは必要酸素量から差し引きます。標準状態で1kmolの気体を22.4m³とする場合、燃料1kg当たりの式は次の形です。

元素 反応の要点 必要酸素量 m³/kg(燃料)
炭素 c C+O₂→CO₂ 22.4c÷12
水素 h H₂+0.5O₂→H₂O 22.4h÷4
硫黄 s S+O₂→SO₂ 22.4s÷32
燃料中酸素 o 燃料が既に持つ酸素 22.4o÷32を差し引く

A₀={22.4(c/12+h/4+s/32-o/32)}÷0.21
c、h、s、oは燃料1kg中の各元素の質量割合。燃料中の水分や窒素を含む詳細式では項が増えます。

空気比・実際空気量・過剰空気率

空気比mは、理論空気量に対して実際に何倍の空気を供給したかを表します。

空気比 m = 実際空気量 A ÷ 理論空気量 A₀

実際空気量 A = m × A₀

過剰空気率 = (m-1)×100%

理論空気量10.67m³/kg、空気比1.25なら、実際空気量は10.67×1.25=13.34m³/kg、過剰空気は13.34-10.67=2.67m³/kg、過剰空気率は25%です。

状態 起こりやすいこと 確認項目
空気が不足側 CO、すす、未燃分、火炎不安定 O₂だけでなくCO、煙色、炎、燃料圧力
空気が適正 完全燃焼と排ガス損失の両立 メーカー基準、負荷、測定位置
空気が過多側 排ガス量が増え、余分な空気を加熱する損失 O₂上昇、炉内への空気漏入、ダンパ

空気過多では排ガスのが増えるため、排ガス損失が増えます。排ガス温度は伝熱状態や負荷にも左右されるので、「空気比が上がれば必ず温度も上がる/下がる」と単純化しません。厚生労働省の省エネルギー実施要領でも、過剰空気を加熱する分が損失になるという関係が示されています。

乾き燃焼ガスと湿り燃焼ガス

燃焼ガス量は、水蒸気を含めるかで二つに分かれます。計算の基準が違う値を、そのまま比較しないことが大切です。

乾き燃焼ガス
CO₂、SO₂、N₂、余ったO₂など。H₂Oを除いた基準で、排ガス分析値の整理に使う。
湿り燃焼ガス
乾き燃焼ガスに、水素の燃焼や燃料中水分などから生じるH₂Oを加えたもの。

完全燃焼を仮定すると、実際の乾き燃焼ガス量Vdは、理論乾き燃焼ガス量Vd₀に過剰空気分を加えて求められます。

Vd₀=0.79A₀+22.4c/12+22.4s/32

Vd=Vd₀+(m-1)A₀

Vw=Vd+22.4h/2(燃料中水分を無視した簡略式)

独自計算例:元素分析から燃焼ガス量まで

学習用の仮想燃料1kgを、C=0.84、H=0.12、S=0.02、O=0.02とし、空気比m=1.25で完全燃焼させます。空気はO₂ 21%、N₂ 79%、気体1kmol=22.4m³、燃料中水分は無視します。

段階 計算 結果
1 理論酸素量 22.4×(0.84/12+0.12/4+0.02/32-0.02/32) 2.24m³/kg
2 理論空気量A₀ 2.24÷0.21 10.67m³/kg
3 理論乾きガスVd₀ 0.79×10.67+1.568+0.014 10.01m³/kg
4 実際乾きガスVd 10.01+(1.25-1)×10.67 12.68m³/kg
5 実際湿りガスVw 12.68+22.4×0.12/2 14.02m³/kg

実際乾き燃焼ガス中のCO₂濃度は、CO₂量1.568m³/kgをVd 12.68m³/kgで割り、約12.4%です。空気比が増えるほど分母に過剰空気が加わるため、同じ燃料・完全燃焼という条件ではCO₂濃度は下がります。

排ガスO₂・CO₂・COの読み方

測定値 基本的な読み方 断定できない理由
O₂が高い 過剰空気または下流からの空気漏入 測定位置で値が変わる
CO₂が低い 過剰空気による希釈の可能性 燃料組成や不完全燃焼でも変わる
COが出る 不完全燃焼の兆候 m>1でも混合不良・低温部で発生し得る

完全燃焼と空気漏入が小さいことを仮定した簡便式として、乾き排ガス中O₂濃度からm=21÷(21-O₂)で空気比を推定できます。O₂=4.0%なら、m=21÷17=約1.24です。実機調整ではこの推定値だけで空気を絞らず、CO、ばいじん、火炎、炉内圧、負荷、メーカー基準も同時に確認します。

理解度チェック

【問1】燃料の理論酸素量が2.10m³/kgのとき、理論空気量は約何m³/kgですか。空気中の酸素は21%とします。

(1) 0.44
(2) 2.10
(3) 4.41
(4) 10.0
(5) 21.0

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正解:(4)
2.10÷0.21=10.0m³/kgです。必要酸素量をそのまま空気量にしないことがポイントです。

【問2】空気比m=1.18のとき、過剰空気率はいくらですか。

(1) 8%
(2) 18%
(3) 82%
(4) 118%
(5) 180%

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正解:(2)
(1.18-1)×100=18%です。空気比118%ではなく、空気比は無次元の1.18と表します。

【問3】乾き燃焼ガスと湿り燃焼ガスの違いとして正しいものはどれですか。

(1) 乾きガスにはN₂を含まない
(2) 湿りガスにはCO₂を含まない
(3) 湿りガスは乾きガスにH₂Oを加えた基準である
(4) 乾きガスは理論空気量と同じである
(5) 両者の体積は必ず同じである

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正解:(3)
湿り燃焼ガスは水蒸気を含む基準です。問題文が乾き・湿りのどちらかを必ず確認します。

【問4】排ガス中にO₂とCOが同時に検出された場合の判断として最も適切なものはどれですか。

(1) 完全燃焼なので調整不要
(2) 空気比は必ず1未満
(3) O₂計が必ず故障している
(4) 混合不良や局所的な酸素不足も確認する
(5) 空気を無条件で最大まで増やす

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正解:(4)
燃料と空気が均一に混ざらなければ、全体にO₂が残っていても火炎内の一部でCOが生じます。噴霧・混合・温度・滞留時間も点検します。

関連学習とまとめ

燃焼計算は、理論酸素量から順番に追い、空気比を掛ける場所と、水蒸気を加える場所を分ければ解けます。排ガス分析では「O₂があるから完全燃焼」と単独指標で決めず、COと燃焼状態をセットで確認します。

最終更新日:2026年7月28日

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