この記事で分かること
- 拡散燃焼・予混合燃焼・部分予混合の違い
- 逆火、リフト、吹消えが起きる速度関係
- マルチスパッド、パイロット、送風機一体形の位置付け
- 点火シーケンスと火炎不安定の原因切り分け
結論:ガスバーナは油のような霧化が不要な代わりに、燃料ガスと空気を「どこで・どこまで」混ぜるかが性能と安全性を左右します。拡散燃焼はバーナ出口付近で混合し、予混合燃焼は上流で可燃混合気を作ります。
予混合火炎では、混合気の噴出速度と火炎伝播速度の釣り合いが重要です。遅すぎれば逆火、速すぎればリフトから吹消えへ向かいます。旧本文の「拡散燃焼なら逆火も事故もない」「予混合なら常に効率が高い」という読み方は避け、方式ごとの利点と限界を分けて説明します。
公式・一次資料の確認先
資料確認日:2026年7月28日。設備の燃料ガス、圧力、空燃比、点火手順は個別の取扱説明書を優先してください。
拡散燃焼と予混合燃焼は「混ぜる場所」が違う
ガスと空気を別々に供給し、バーナ出口・火炎面で混ぜながら燃やす。上流に可燃予混合気を作らない。
燃焼前にガスと空気を混ぜ、混合気を炎孔から出して燃やす。火炎安定範囲の管理が重要。
| 比較 | 拡散燃焼 | 予混合燃焼 |
|---|---|---|
| 上流の状態 | 燃料と空気は分離 | 可燃混合気が存在 |
| 火炎形状 | 一般に長く、調整自由度を持たせやすい | 一般に短く、均一化しやすい |
| 逆火 | 通常、上流に可燃混合気がなく起こりにくい | 混合気側へ火炎が戻る可能性がある |
| 主な注意 | 混合遅れ、長炎、局所高温 | 逆火、リフト、吹消え、混合器内着火 |
実機には、必要空気の一部だけを先に混ぜる部分予混合や、拡散火炎と予混合火炎を段階的に組み合わせる方式もあります。名称だけで内部構造を決めつけず、ガスと一次・二次空気の流路を図面で確認します。
逆火・リフト・吹消えは速度の釣り合いで考える
予混合火炎の三つの状態
火炎が上流へ進む
→ 逆火
炎孔付近に保持
→ 安定火炎
火炎が浮く→離れる
→ リフト・吹消え
火炎伝播速度はガス組成、空燃比、混合気温度、圧力などで変わります。噴出速度もガス量だけでなく、炎孔の総面積や詰まりで変わります。「ガス圧だけを見ればよい」わけではありません。
独自計算:炎孔が詰まると噴出速度はどう変わるか
直径4mmの炎孔が20個あり、混合気流量が9m³/hとします。密度変化や流量係数を無視した学習用の単純計算です。
炎孔1個の面積=3.14×0.004²÷4=0.00001256m²
20個の総面積=0.0002512m²
流量=9÷3600=0.0025m³/s
平均噴出速度=0.0025÷0.0002512=約9.95m/s
5個が詰まり、同じ流量が残る15個を通ると、総面積は0.0001884m²、平均速度は約13.3m/sになります。実際には圧力・流量も変化しますが、炎孔の汚れや変形が火炎分布と安定性を崩す理由をイメージできます。
代表的なガスバーナの構成
マルチスパッド:多数のガス噴出口で拡散混合
マルチスパッドバーナは、多数のガス噴出口を空気流路内に配置します。ガス噴流を分散し、空気との接触面を増やして火炎形状を整えます。燃焼量調節範囲や火炎長さは、スパッド数だけでなく、空気レジスタ、旋回、ガス圧、炉形状で決まります。
予混合パイロット:主火炎へ確実に点火する
予混合方式は、ボイラーのパイロットバーナに用いられることがあります。パイロットは主バーナへ点火する小火炎ですが、名称だけで安全が保証されるものではありません。指定空燃比、点火位置、火炎検出電流を確認します。
大阪ガスの旋回短炎パイロット資料は、元混合方式との比較で、旋回による保炎、リフト後の復帰性、火炎検出電流による調整を示しています。これは方式だけでなく保炎器と空気流設計が安定性を左右する具体例です。
送風機一体形・デュアルフューエル
送風機をバーナ本体へ組み込むパッケージ形や、ガスと油の両方を扱うデュアルフューエルバーナもあります。ただし、これらは外形・燃料対応の分類であり、拡散か予混合かという燃焼方式とは別の軸です。「ガンタイプだから予混合」のようには判断できません。
保炎は旋回・再循環・一次二次空気で作る
火炎根元へ高温燃焼ガスを戻す再循環域があると、新しい混合気を連続して着火しやすくなります。スワラやスタビライザは空気へ旋回を与え、火炎をバーナ口付近へ保持します。
一次空気は初期燃焼を安定させ、二次空気は旋回・交差流などで混合を進めて燃焼を完結させます。配分が崩れると、局所空気不足によるCOと、過剰空気による排ガス損失が同時に起こり得ます。必要空気量は「燃焼の基礎理論」、通風装置は「通風と通風装置」で確認できます。
低NOx化は火炎温度と酸素分布を整える
| 方法 | ねらい | 注意する変化 |
|---|---|---|
| 二段・多段燃焼 | 空気や燃料を分けて局所高温を抑える | 混合不足、CO、未燃分 |
| 排ガス再循環 | 排ガスで酸素濃度・火炎温度を下げる | 着火性、火炎安定、ファン動力 |
| 希薄予混合 | 均一な希薄混合で温度ピークを抑える | 希薄側の吹消え、燃焼振動 |
「ガス燃料だからNOxが出ない」「低NOx化は空気を増やせばよい」という理解は誤りです。排出物と対策は「大気汚染防止と燃焼障害」で整理します。
点火・失火時は燃焼安全シーケンスを守る
代表的な起動の考え方
弁閉確認 → プレパージ → 点火源確認 → パイロット着火・火炎確認 → 主燃料弁開 → 主火炎確認
必要換気量や時間、弁構成、監視時間は設備固有です。自己流で短縮しません。厚生労働省のボイラー構造規格は、異常消火または燃焼用空気の異常な供給停止を検出し、燃料を直ちに遮断できる燃焼安全装置を求めています。詳しい流れは「点火前の準備と点火」と「自動制御装置と燃焼安全装置」を参照してください。
ガス検知器の位置は「都市ガスなら天井、LPGなら床」とだけで決めません。ガスの密度に加え、換気、噴出方向、天井・ピットの形状、機器仕様を確認します。「都市ガス・LPG・石炭」で判断手順を解説しています。
火炎不安定を症状から切り分ける
| 症状 | 確認する要因 | 安全上の要点 |
|---|---|---|
| 逆火 | 流速低下、混合比、予熱、炎孔損傷 | 燃料遮断後に上流の過熱・損傷を点検 |
| リフト・吹消え | 流速過大、希薄化、強い通風、保炎器汚れ | 失火検出後の再点火手順を守る |
| 着火遅れ | パージ、点火位置、弁漏れ、ガス圧 | 未燃ガスを残したまま再点火しない |
| CO上昇 | 空気不足、局所混合、ノズル詰まり、火炎冷却 | O₂だけで正常判定しない |
理解度チェック
【問1】拡散燃焼の説明として最も適切なものはどれですか。
(1) 上流で全空気と混合する
(2) ガスと空気を別々に供給し、火炎付近で混ぜる
(3) 液体燃料を回転カップで霧化する
(4) 炎孔内に必ず火炎を保持する
(5) 酸素を使わず燃焼する
【問2】予混合火炎で混合気の噴出速度が高すぎると起こりやすい現象はどれですか。
(1) 逆火だけ
(2) 水撃
(3) リフトから吹消え
(4) キャリオーバ
(5) スケール付着
【問3】直径4mmの炎孔20個のうち5個が詰まり、総流量が同じと仮定した場合の変化はどれですか。
(1) 開口総面積が増え、速度が下がる
(2) 開口総面積が減り、残る炎孔の平均速度が上がる
(3) 面積も速度も変わらない
(4) 必ず逆火する
(5) 燃料の発熱量が増える
【問4】ガスバーナの失火後に最も避けるべき操作はどれですか。
(1) 燃料遮断を確認する
(2) 原因を点検する
(3) 指定の再パージを行う
(4) 未燃ガスが残る状態で直ちに再点火を繰り返す
(5) 火炎検出器を確認する
関連学習とまとめ
拡散と予混合は混ぜる場所で区別し、火炎の安定は噴出速度、火炎伝播速度、保炎構造の三つで考えます。失火時は燃焼シーケンスを優先し、未燃ガスを残した再点火をしません。
最終更新日:2026年7月28日
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