ボイラーの燃料 ─ 液体燃料がメイン!
ボイラーは水を加熱して蒸気をつくる装置ですが、その「加熱」のために必要なのが燃料です。ボイラーの燃料には液体・気体・固体の3種類がありますが、日本で最も多く使われているのが液体燃料(特に重油)です。
現場イメージ
ビルや工場のボイラー室に行くと、大きな燃料タンクがあることが多いです。その中に入っているのがA重油やC重油。トラックで定期的に配達されて補充されます。最近は都市ガスを使うボイラーも増えていますが、試験では重油の知識が非常に重要です。
この記事では、液体燃料の種類と性質について、特に重油を中心に解説します。「燃料及び燃焼」科目の基礎中の基礎です!
液体燃料の種類
ボイラーに使われる液体燃料には、主に以下のものがあります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 灯油 | きれいに燃える。小型ボイラーや家庭用に使用 |
| 軽油 | ディーゼルエンジンの燃料として有名。ボイラーにも使用可 |
| A重油 | 最も一般的なボイラー燃料。比較的サラサラしている |
| B重油 | A重油とC重油の中間。あまり使われない |
| C重油 | ドロドロで粘り気が強い。大型ボイラーや船舶用。加熱が必要 |
重油のランク ─ A・B・Cの違い
重油は原油を精製する過程で残った重い(粘度が高い)部分からつくられます。A・B・Cは粘度と品質で分類されています。
重油のランクイメージ
A重油:サラサラ寄り。硫黄分が少ない。加熱不要で使える
B重油:A とCの中間。あまり使用されない
C重油:ドロドロ。硫黄分が多い。加熱して粘度を下げないと使えない
現場イメージ
A重油はサラダ油くらいの粘度で扱いやすいですが、C重油は冬場だとハチミツよりドロドロです。C重油を使うボイラーでは、タンクやパイプに「加温装置」が付いていて、常に温めながら燃料を送っています。
重油の成分
重油はさまざまな成分で構成されています。それぞれの成分がボイラーの運転にどう影響するか見ていきましょう。
| 成分 | 影響 |
|---|---|
| 炭素(C) | 燃えてCO₂(二酸化炭素)になる。発熱量の源 |
| 水素(H) | 燃えてH₂O(水蒸気)になる。発熱量が大きい |
| 硫黄(S) | 燃えてSO₂(亜硫酸ガス)になる。大気汚染や低温腐食の原因。少ないほど良い |
| 窒素(N) | 燃焼時にNOx(窒素酸化物)を発生。大気汚染物質 |
| 灰分 | 燃えても残る不純物。伝熱面への付着・摩耗の原因 |
| 水分 | 発熱量を下げる。多いと燃焼が不安定になる。息つき燃焼の原因 |
特に注意すべき成分 ─ 硫黄
硫黄は燃焼すると亜硫酸ガス(SO₂)→さらに酸化されて三酸化硫黄(SO₃)→水と結合して硫酸(H₂SO₄)になり、低温腐食や大気汚染の原因になります。C重油はA重油より硫黄分が多いため、低温腐食のリスクが高いです。
発熱量 ─ 高発熱量と低発熱量
燃料が燃えたときに出す熱のことを発熱量といいます。発熱量には2種類あります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 高発熱量 (総発熱量) |
燃焼で生じた水蒸気がすべて水に戻ったときの熱量を含む(水蒸気の凝縮熱を含む) |
| 低発熱量 (真発熱量) |
高発熱量から水蒸気の凝縮熱を引いたもの。実際にボイラーで利用できる熱量 |
かんたんイメージ
燃料中の水素が燃えると水蒸気(H₂O)になります。この水蒸気が冷えて水に戻るとき、潜熱(熱と蒸気の基礎で学びましたね!)を放出します。高発熱量はこの潜熱も含んだ値ですが、ボイラーの排ガスは高温のまま出ていくので実際には回収できません。だから実用的には低発熱量を使います。
試験のポイント
「ボイラーの効率計算に使うのはどちらの発熱量か?」→ 低発熱量(真発熱量)。「高発熱量と低発熱量の差は何か?」→ 水蒸気の凝縮熱(潜熱)。この2つは頻出です!
引火点と着火温度(発火温度)
燃料の安全管理において重要な2つの温度があります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 引火点 | 燃料の蒸気に火を近づけると引火する最低温度。火種が必要 |
| 着火温度 (発火温度) |
火種がなくても燃料が自然に燃え出す温度。引火点より高い |
かんたんイメージ
引火点=「マッチの火を近づけると燃え出す温度」。着火温度=「マッチなしでも勝手に燃え出す温度」。引火点のほうが低い温度で、着火温度のほうが高い温度です。
重油の引火点は60〜150℃程度(A重油は60℃以上)。燃料の保管や取扱いの際に、引火点以上に加熱しないよう注意が必要です。
動粘度と加熱 ─ C重油は温めないと使えない!
粘度とは液体の「ネバネバ度」のこと。粘度が高い(ドロドロ)ほど、パイプの中を流れにくく、バーナでの霧化(細かい粒にすること)も困難になります。
試験では動粘度(mm²/sまたはcSt)という単位で表されます。
| 重油の種類 | 加熱の必要性 |
|---|---|
| A重油 | 通常は加熱不要(粘度が低い) |
| B重油 | 50〜60℃程度に加熱することがある |
| C重油 | 80〜105℃に加熱して粘度を下げる必要がある |
試験のポイント
「C重油の加熱温度は?」→ 80〜105℃。「なぜ加熱するのか?」→ 粘度を下げて、バーナでの霧化を良くするため。ただし引火点を超えない温度にすることが重要です!
加熱しすぎに注意!
燃料の加熱温度が引火点に近づくと危険です。引火点以上に加熱すると、燃料蒸気に引火する恐れがあります。加熱温度は引火点より十分に低く設定します。
比重
重油の比重(密度を水と比べた値)は0.85〜0.95程度で、水より軽いです。
現場イメージ
重油が水に浮くのは、タンカー事故で海面に油が広がるのと同じ原理です。ボイラーの燃料タンクに水が混入すると、水は底にたまり、重油はその上に浮きます。タンクの底のドレン弁から定期的に水抜きを行います。
残留炭素分
残留炭素分とは、燃料を蒸発させたときに残る炭素質の量です。残留炭素分が多い燃料は、バーナのノズルにカーボン(炭素の塊)が付着しやすく、すすやばいじんの発生量も多くなります。
一般にC重油>B重油>A重油>灯油の順で残留炭素分が多くなります。
燃料の性質まとめ比較表
液体燃料の性質比較
灯油:粘度低い・硫黄少ない・きれいに燃える・加熱不要
A重油:最もポピュラー・比較的扱いやすい・加熱不要
B重油:A とCの中間・あまり使われない
C重油:粘度高い・硫黄多い・灰分多い・80〜105℃に加熱が必要
液体燃料の取扱いと貯蔵の注意点
燃料の安全な管理のため、以下の点に注意します。
- 燃料タンクの底にたまった水を定期的に排出する(水が混じると燃焼が不安定になる)
- C重油のタンクには加温装置を設ける
- 燃料の温度管理を行い、引火点以上に加熱しない
- ストレーナ(こし器)でゴミや不純物を除去してからバーナに送る
- 燃料配管の漏れを定期的にチェックする
現場イメージ
ボイラー技士の日常業務のひとつが燃料管理です。タンクの残量チェック、水抜き、ストレーナの清掃、温度チェック。地味ですが、これをサボると燃焼不良やトラブルの原因になります。
理解度チェック
ここまでの内容を3つの問題で確認しましょう!
Q1. ボイラーの効率を計算するときに用いる発熱量はどれか。
(1)高発熱量 (2)低発熱量 (3)理論発熱量 (4)平均発熱量 (5)総発熱量
Q2. C重油をバーナで燃焼させるために加熱する温度として、最も適切なものはどれか。
(1)30〜50℃ (2)50〜70℃ (3)80〜105℃ (4)120〜150℃ (5)200℃以上
Q3. 重油中の硫黄分が多いと起きやすい障害はどれか。
(1)キャリオーバ (2)ウォーターハンマー (3)低温腐食 (4)苛性脆化 (5)ピッチング
まとめ
この記事のポイント
- ボイラーの液体燃料は重油(A/B/C)、灯油、軽油がある
- 重油の成分:炭素・水素・硫黄(低温腐食・大気汚染の原因)・窒素・灰分・水分
- 発熱量は高発熱量と低発熱量があり、ボイラー効率には低発熱量を使う
- 引火点(火を近づけて引火する温度)<着火温度(自然に燃え出す温度)
- C重油は80〜105℃に加熱して粘度を下げてから使用する
- 重油の比重は水より軽い(0.85〜0.95程度)
- 残留炭素分が多い燃料はすすが出やすい
液体燃料の知識は「燃料及び燃焼」科目の土台です。次の記事では気体燃料と固体燃料の種類と性質について学びます!
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