保安管理技術 第三種冷凍機械責任者

【第三種冷凍機械責任者・保安管理】熱の移動の基礎(熱伝達・熱伝導・熱通過・平均温度差)

冷凍機の性能は「熱の移動」で決まる

冷凍機の仕事は「熱を低温側から高温側に移動させる」こと。この熱の移動がスムーズに行われるかどうかが、冷凍機の性能を左右します。

この記事では、熱が物質の中や表面をどうやって移動するかの基本を学びます。凝縮器蒸発器の設計に直結する内容で、試験でもよく出題されます。

熱の移動 ─ 押さえるべき4つの用語

① 熱伝導(ねつでんどう):固体の中を熱が伝わること
② 熱伝達(ねつでんたつ):固体の表面と流体(液体・気体)の間で熱がやりとりされること
③ 熱通過(ねつつうか):流体A → 固体壁 → 流体B と熱が通り抜けること
④ 平均温度差:熱交換器の両端の温度差の平均値

熱伝導 ─ 固体の中を熱が伝わる

熱伝導(ねつでんどう)とは、固体の中を高温側から低温側へ熱が伝わる現象です。物質を構成する分子の振動が隣の分子に伝わることで、熱が移動します。

身近なイメージ
鉄のフライパンを火にかけると、取っ手まで熱くなりますよね?これが熱伝導です。火に当たっている底面の分子が激しく振動し、その振動が隣の分子へ、さらに隣へ…と伝わって、やがて取っ手まで熱くなります。木製の取っ手が熱くならないのは、木は熱伝導率(ねつでんどうりつ)が低いからです。

熱伝導のしやすさを表すのが熱伝導率(記号:λ ラムダ)で、単位はW/(m・K)です。値が大きいほど熱を通しやすい材料です。

材料 熱伝導率の目安 特徴
約 390 W/(m・K) 非常に熱を通しやすい(伝熱管に使用)
鋼(鉄) 約 50 W/(m・K) 銅より低いがそこそこ熱を通す
ステンレス 約 16 W/(m・K) 鋼の約1/3しか熱を通さない

試験のポイント
熱伝導率は金属が最も大きく、液体、気体の順に小さくなります。冷凍機の伝熱管に銅管が多く使われるのは、熱伝導率が高いからです。また、霜(しも)や油膜、スケールが伝熱管に付着すると、これらの熱伝導率が金属より低いため、熱の伝わりが悪くなります。

熱伝達 ─ 壁と流体の間の熱のやりとり

熱伝達(ねつでんたつ)とは、固体の壁面と、それに接触する流体(液体や気体)の間で熱が移動する現象です。「対流熱伝達」ともいいます。

身近なイメージ
お風呂のお湯に手を入れると、お湯の熱が手の表面(皮膚)に伝わって温かく感じますよね。これが熱伝達。扇風機に当たると涼しく感じるのも、体の表面の熱を空気が受け取る(熱伝達する)からです。風が強い=流体の流れが速いほど、熱伝達の効率が上がります。

熱伝達のしやすさを表すのが熱伝達率(記号:α アルファ)で、単位はW/(m2・K)です。

条件 熱伝達率 理由
流体の流速が速い 大きい 常に新しい流体が壁面に接触するため
蒸発・凝縮を伴う 非常に大きい 相変化に伴う潜熱の移動があるため
油膜が付着 小さくなる 油膜が熱の伝わりを妨げるため

試験のポイント
冷凍サイクルでは、蒸発器と凝縮器の中で冷媒が蒸発・凝縮しますが、この相変化(液体⇔気体)を伴う熱伝達は、単なる流体の接触よりはるかに効率がよいです。試験では「蒸発・凝縮を伴う熱伝達率は大きい」という点がよく問われます。

熱通過 ─ 流体から壁を通って反対側の流体へ

熱通過(ねつつうか)は、ある流体から固体の壁を挟んで反対側の流体まで、熱が「通り抜ける」現象です。実は熱伝達+熱伝導+熱伝達の3段階をまとめたものです。

熱通過の3段階
Step 1 ─ 熱伝達
高温の流体A
→ 壁の表面に
熱が移る
Step 2 ─ 熱伝導
壁の表面
→ 壁の内部を通って
反対面へ
Step 3 ─ 熱伝達
壁の反対面
→ 低温の流体Bに
熱が移る

現場イメージ
凝縮器の中を想像してください。管の内側を冷媒ガスが流れ、外側を冷却水が流れています。冷媒の熱は ① まず管の内壁に伝わり(熱伝達)、② 管の金属壁を通り抜け(熱伝導)、③ 管の外壁から冷却水に渡されます(熱伝達)。この一連の流れが「熱通過」です。

熱通過のしやすさを表すのが熱通過率(記号:K)で、単位はW/(m2・K)です。熱通過率が大きいほど熱交換器の性能がよいことを意味します。

熱通過の公式

Φ = K × A × Δtm

Φ(ファイ):交換される熱量(W)
K:熱通過率(W/(m2・K))
A:伝熱面積(m2
Δtm:平均温度差(K)

試験のポイント
この公式は超重要!熱通過率Kは、3段階(熱伝達+熱伝導+熱伝達)の中で最も抵抗が大きいところ(最もボトルネックになるところ)に強く影響されます。つまり、3つの段階のうち1つでも熱が伝わりにくいと、全体の熱通過率が下がります。

平均温度差 ─ 熱交換器の両端の温度差の平均

凝縮器や蒸発器では、冷媒と冷却水(または空気)が熱交換します。このとき、熱交換器の入口と出口では温度差が異なるため、単純に引き算するのではなく「平均温度差」を使います。

一般的には対数平均温度差(LMTD)という方法で計算しますが、第三種冷凍の試験では凝縮や蒸発が行われる部分では冷媒の温度が一定であることが多いため、比較的シンプルな計算になります。

身近なイメージ
お風呂の追い焚き(おいだき)を想像してください。最初はぬるいお湯(大きな温度差)→ 少しずつ温まる(温度差が小さくなる)→ 設定温度に近づく(温度差がほぼゼロ)。追い焚き全体の効率を知りたい場合、入口と出口の温度差を平均的に考える必要があります。これが平均温度差の考え方です。

試験のポイント
凝縮器・蒸発器内で冷媒が相変化している間は冷媒の温度は一定です(飽和温度で凝縮・蒸発するため)。そのため、平均温度差は冷媒の飽和温度と冷却水(または被冷却物)の温度差で考えることが多いです。

熱の伝わりを悪くするもの ─ 汚れの影響

凝縮器や蒸発器の伝熱管に汚れが付着すると、熱通過率が下がり、冷凍機の性能が低下します。試験でもこの「汚れ」の影響はよく問われます。

汚れの種類 発生場所 影響
スケール(水あか) 水冷凝縮器の冷却水側 熱伝導率が低く、熱通過率を大きく下げる
油膜 蒸発器・凝縮器の冷媒側 熱伝達率を下げる
霜(しも) 蒸発器の空気側 断熱材のように熱を遮断し、風の通りも悪くなる

注意
霜の付着は「二重の悪影響」があります。① 霜自体の熱伝導率が低く伝熱を妨げる、② 霜がフィン(ひれ)の隙間をふさいで空気の通りを悪くし、さらに熱交換効率が下がる。だから定期的なデフロスト(除霜運転)が必要になります。

現場イメージ
冷蔵倉庫の蒸発器を見ると、冬に窓ガラスに付く霜のように白くなっていることがあります。霜がびっしり付くと、いくら冷凍機を回しても温度が下がりにくくなる。業務用冷凍庫では1日に数回、自動でデフロスト(除霜)運転を行って霜を溶かしています。

熱通過率を大きくする工夫

冷凍機の効率を上げるには、凝縮器や蒸発器の熱通過率を大きくすることが大切です。具体的な工夫を見てみましょう。

工夫 効果
流体の流速を上げる 熱伝達率が上がる
管にフィン(ひれ)をつける 伝熱面積が増える
スケール・油膜・霜を除去する 熱の抵抗が減り熱通過率が回復する
熱伝導率の高い材料(銅など)を使う 管壁の熱伝導が良くなる

よくある疑問・間違い

Q. 熱伝達と熱伝導の違いがわかりません。

「熱伝導」は固体の内部を熱が通り抜けること(フライパンの底→取っ手)。「熱伝達」は固体の表面と流体の間で熱がやりとりされること(フライパンの表面→フライパンの上の空気)。壁の「中」か「外」かの違いです。

Q. 熱通過率は熱伝達率や熱伝導率より大きくなることはある?

いいえ。熱通過率は3段階の抵抗を「直列」で合計したものなので、どの段階の値よりも必ず小さくなります。電気回路で直列抵抗を足すと全体の抵抗が大きくなるのと同じイメージです。

Q. なぜ凝縮器の冷却水側にスケールが付くの?

冷却水(特に循環式の冷却塔を使う場合)には、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが含まれています。水が蒸発すると濃縮されてスケール(水あか)として伝熱管に付着します。家庭のケトルの内側に白い汚れが付くのと同じ原理です。

理解度チェック

【問1】熱通過について、正しいものはどれか。

(1)熱通過は固体内部だけの現象である
(2)熱通過は流体間で直接行われる現象である
(3)熱通過は熱伝達と熱伝導が組み合わさった現象である
(4)熱通過率は常に熱伝達率より大きい
(5)熱通過では壁面の汚れは影響しない

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正解:(3)熱通過は熱伝達と熱伝導が組み合わさった現象である
熱通過は「流体A → 壁面(熱伝達)→ 壁内部(熱伝導)→ 壁面(熱伝達)→ 流体B」と3段階で熱が通り抜ける現象です。熱伝達と熱伝導の両方が関わっています。

【問2】蒸発器の伝熱管の表面に霜が付着した場合の影響として、正しいものはどれか。

(1)冷凍能力が増加する
(2)熱通過率が大きくなる
(3)伝熱面積が実質的に増加する
(4)熱通過率が小さくなり冷凍能力が低下する
(5)霜は伝熱に影響しない

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正解:(4)熱通過率が小さくなり冷凍能力が低下する
霜は熱伝導率が低いため、伝熱管表面に付着すると断熱材のような役割を果たし、熱の伝わりを妨げます。さらにフィン間の空気の通りも悪くなり、冷凍能力が低下します。

【問3】熱伝達率を大きくする方法として、正しいものはどれか。

(1)流体の流速を遅くする
(2)伝熱管の肉厚を厚くする
(3)流体の流速を速くする
(4)伝熱管の材質をステンレスに変更する
(5)伝熱管の表面に油膜を付着させる

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正解:(3)流体の流速を速くする
流体の流速を速くすると、常に新しい流体が壁面に接触するため、壁面付近の温度境界層が薄くなり、熱伝達率が大きくなります。扇風機に当たると涼しく感じるのと同じ原理です。

【問4】凝縮器や蒸発器の熱通過に関する記述として、誤っているものはどれか。

(1)水冷凝縮器の冷却水側にスケールが付着すると、熱通過率は低下する
(2)蒸発器の冷媒側に油膜が付着すると、熱伝達が悪くなる
(3)蒸発・凝縮を伴う熱伝達の熱伝達率は、伴わない場合より大きい
(4)伝熱管にフィンをつけると伝熱面積が増え、交換熱量が増加する
(5)熱通過率は、熱伝達率より常に大きくなる

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正解:(5)熱通過率は、熱伝達率より常に大きくなる
これは逆です。熱通過率は「熱伝達+熱伝導+熱伝達」の3段階の抵抗を直列で合計したものなので、各段階の熱伝達率・熱伝導率よりも必ず小さくなります。

まとめ

この記事のポイント

  • 熱伝導:固体の中を熱が伝わる(熱伝導率λ)
  • 熱伝達:壁面と流体の間の熱のやりとり(熱伝達率α)
  • 熱通過:熱伝達+熱伝導+熱伝達の3段階(熱通過率K)
  • Φ = K × A × Δtm(交換熱量 = 熱通過率 × 面積 × 平均温度差)
  • 流速を上げる・フィンをつける → 熱交換効率アップ
  • スケール・油膜・霜の付着 → 熱通過率ダウン
  • 蒸発・凝縮を伴う熱伝達の熱伝達率は非常に大きい

前の記事 → p-h線図の読み方と冷凍能力・成績係数(COP)の計算

次回は冷媒の種類と性質(フルオロカーボン・アンモニア・CO2)と潤滑油を解説します。

試験頻出ポイント

  • 熱の移動3形態:熱伝導熱伝達(対流)放射(ふく射)
  • 熱通過率 K = 壁の両側を含めた総合的な伝熱の指標
  • 凝縮器・蒸発器の伝熱面積の計算に対数平均温度差を使用
  • 熱伝導率:金属>液体>気体の順に小さくなる
  • 水あか・油膜・霜は熱伝達を妨げる(熱抵抗が増加)

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-保安管理技術, 第三種冷凍機械責任者