保安管理技術 第三種冷凍機械責任者

【第三種冷凍機械責任者・保安管理】冷媒の種類・安全区分と冷凍機油

この記事で分かること

  • R410A・R32・アンモニア・CO₂の環境性、安全区分、運転上の特徴
  • CFC・HCFC・HFCと、現在進む低GWP・ノンフロン化の関係
  • 純冷媒・混合冷媒と温度グライドの違い
  • 冷媒に合う冷凍機油を選ぶ理由と、油戻り・水分管理の考え方

結論:冷媒は熱性能・安全・環境・材料・油を一組で選ぶ

冷媒は蒸発器で低温側の熱を受け取り、凝縮器やガスクーラで高温側へ渡す作動流体です。理想的には潜熱が大きく、圧力が扱いやすく、化学的に安定し、毒性・燃焼性・環境影響が小さいことが望まれます。

しかし、すべてを満たす万能冷媒はありません。R32は低GWP化に有利でもA2L、アンモニアは熱性能に優れてもB2L、CO₂はGWP1でも高圧というように、長所と安全対策を対で覚えます。冷媒だけを入れ替えるのではなく、機器、材料、冷凍機油、施工方法まで適合させる必要があります。

安全区分は「毒性の文字+燃焼性の数字」で読む

ISO 817やASHRAE Standard 34の安全区分では、A/Bが許容暴露濃度に基づく毒性区分、1・2L・2・3が燃焼性区分を表します。Aは無毒、1は絶対安全という意味ではありません。高濃度漏えいによる酸欠・健康影響、熱分解生成物、圧力の危険は別に評価します。

安全区分 読み方 代表例
A1 低毒性側・火炎伝播なし R410A、CO₂(R744)
A2L 低毒性側・微燃性 R32、R1234yf
B2L 高毒性側・微燃性 アンモニア(R717)

2Lは「燃えない」ではなく、一定条件で火炎伝播するものの燃焼速度が小さい区分です。充塡量、部屋容積、換気、検知、着火源管理など、冷媒と機器に指定された安全対策を守ります。

CFC・HCFC・HFCは塩素と環境影響で区別する

分類 特徴 現在の整理
CFC 塩素を含みODPが大きい。R12など 生産・消費を全廃
HCFC 塩素を含むがCFCよりODPが小さい。R22など 日本は2019年から生産全廃。既設機器と市中在庫の使用まで直ちに禁止されたわけではない
HFC 塩素を含まずODP0。R32、R410Aなど 温室効果があるため生産・消費削減と低GWP転換を進行

「R22機器は2019年から使用禁止」という説明は誤りです。一方、HFCも「オゾン層を壊さないから環境影響ゼロ」ではありません。2026年現在、フロン排出抑制法の指定製品制度では、製品区分ごとにGWP目標値と目標年度が設定されています。

R410AとR32:GWPと燃焼性のトレードオフ

R410A

R32/R125=50/50質量%の混合冷媒。安全区分A1。指定製品制度のGWPは2090。温度グライドは非常に小さい。

R32

単一成分のHFC。安全区分A2L。指定製品制度のGWPは675。R410Aより低GWPだが、微燃性対策が必要。

独自計算例:制度上のGWP値をR32=675、R125=3500として、R410Aを質量比50%ずつで計算すると、675×0.5+3500×0.5=2087.5≒2090です。混合冷媒のGWPは各成分の質量比で加重平均します。

GWPは参照する評価報告書や制度により値が更新・併記されることがあります。試験や法令判断では、問題が指定する基準または適用制度の値を使います。

混合冷媒は沸点と露点の差を見る

純冷媒は一定圧力の相変化中、飽和温度が1つです。非共沸混合冷媒では、液が沸き始める沸点温度と蒸気が凝縮し始める露点温度が異なり、その差を温度グライドといいます。

代表的な違い

R32・R717・R744:単一成分で温度グライドなし
R410A:混合冷媒だが標準沸点・露点差は約0.1Kと非常に小さい
R407C:沸点・露点差が数Kあり、温度グライドを無視できない

混合冷媒は気相と液相で組成がずれることがあるため、メーカー手順に従い液相側から充塡します。「混合冷媒はすべて同じ温度勾配」とまとめず、冷媒ごとの物性表を確認します。

アンモニアR717:高性能だが毒性・微燃性・材料適合に注意

アンモニアは蒸発潜熱が大きく、熱伝達特性にも優れ、GWPは1未満とされる自然冷媒です。一方、安全区分はB2Lで、刺激臭、毒性、微燃性があります。水に非常によく溶け、湿った状態では銅・銅合金を侵すため、一般にアンモニア冷媒回路へ銅材料は使用しません。

漏えい時の考え方:刺激臭は早期発見の手掛かりですが、「少し臭うのは正常」ではありません。臭気や警報を認めたら近づかず、設備の緊急手順に従って退避・通報し、訓練を受けた担当者が保護具と検知器を用いて対応します。

アンモニア設備の材料を「すべて鉄鋼」と一律に決めるのも不正確です。鋼材を中心に、圧力・温度・水分・油・シール材との適合性を、法令、規格、メーカー仕様で確認します。

CO₂ R744:A1・GWP1だが高圧と酸欠を管理する

CO₂は安全区分A1で火炎伝播がなく、GWPの基準値は1です。ただし「毒性がないから無害」とは表現できません。高濃度では呼吸・循環へ影響し、空気を押しのけて酸欠も招くため、換気と漏えい検知が必要です。

臨界温度は約31.05℃、臨界圧力は約7.38MPaです。高温側が臨界温度を超える運転では、凝縮器で液化させる通常サイクルではなく、ガスクーラで超臨界流体を冷却する遷臨界サイクルになります。停止中も周囲からの入熱で圧力が上がるため、CO₂用に設計された高耐圧機器と圧力保護が欠かせません。

CO₂用小形冷凍装置の安全規格も機器ごとに定められています。高圧側・低圧側の設計や安全装置は「安全装置と圧力試験」で整理します。

冷凍機油は冷媒名だけでなく圧縮機仕様まで合わせる

冷凍機油は、軸受や摺動部の潤滑、すきまの密封、熱の持出し、機種によっては容量制御や油圧作動も担います。冷媒と直接接触するため、一般の機械油よりも適合性の条件が厳しくなります。

確認項目 合わないと起きること 管理の要点
溶解性・相溶性 油戻り不良、二層分離、粘度低下 冷媒・圧縮機指定の油だけを使用
粘度 油膜不足、摩耗、密封不良 冷媒が溶けた運転時粘度で考える
水分・安定性 加水分解、酸生成、腐食、氷結、絶縁低下 開放時間を短くし、真空乾燥・ドライヤ管理
油循環量 蒸発器の油膜で伝熱低下、圧縮機で油不足 油分離・配管流速・油戻りを確認

HFC空調機ではPOEやPVE、カーエアコンではPAGなどの合成油が代表例ですが、例外もあります。アンモニアやCO₂も機種により鉱油、PAO、PAG、POEなどの選択が異なります。「HFCなら必ずPOE」「CO₂なら必ずPAG」と固定せず、銘板・サービス資料・メーカー指定を優先してください。

異なる冷媒・油を混ぜると、相溶性、粘度、電気絶縁性、シール材適合が崩れるおそれがあります。R22機からR410A/R32機へ更新する場合も、既設配管を無条件に流用しません。

試験で狙われる入れ替え

  • A1は無毒・完全安全:誤り。区分の意味は限定的で、高濃度漏えい・酸欠・圧力などは別に管理します。
  • R32はR410AよりGWPが低く不燃:GWPは低いですがA2Lです。
  • 2019年からR22機器は使用禁止:生産全廃と既設機器の使用を混同しています。
  • CO₂は低圧で扱いやすい:逆です。運転・停止中とも高圧への配慮が必要です。
  • アンモニア臭は漏れを発見できるから放置してよい:漏えいの警告として退避・通報します。
  • 冷媒が同じなら油は何でもよい:圧縮機形式とメーカー指定まで一致させます。

理解度チェック

【問1】冷媒の安全区分について正しいものはどれですか。

(1) Aは無毒を保証する
(2) 1は高濃度でも酸欠を起こさない
(3) A2Lは低毒性側・微燃性の区分である
(4) B2Lは不燃性を表す
(5) 安全区分が同じなら運転圧力も同じである

解答を見る

正解:(3)
R32などのA2Lは低毒性側・微燃性です。安全区分だけで酸欠、圧力、材料適合まで判断できません。

【問2】R410Aの制度上のGWPを、R32=675、R125=3500、質量比50%ずつとして求めた値はどれですか。

(1) 675
(2) 1412.5
(3) 2087.5
(4) 3500
(5) 4175

解答を見る

正解:(3)
675×0.5+3500×0.5=2087.5で、指定製品制度の表示値では約2090です。

【問3】アンモニア冷媒について最も適切なものはどれですか。

(1) A1で無臭である
(2) 銅管を優先して使う
(3) 刺激臭を感じても微量なら放置する
(4) B2Lで、一般に冷媒回路へ銅・銅合金を用いない
(5) GWPがR410Aより大きい

解答を見る

正解:(4)
アンモニアはB2Lで、刺激臭・毒性・微燃性があります。臭気は漏えい警告として扱います。

【問4】冷媒と冷凍機油について正しいものはどれですか。

(1) 冷媒が油に溶けても粘度は変化しない
(2) 油が蒸発器へ多く回ると伝熱を妨げることがある
(3) HFCにはすべて同じPOE油を使える
(4) 油に水分が多いほど化学安定性が上がる
(5) 異なる冷凍機油を混ぜても問題ない

解答を見る

正解:(2)
蒸発器の油膜は熱抵抗になります。油種は冷媒名だけでなく圧縮機・機器メーカーの指定まで確認します。

次に読む記事

まとめ

R410AはA1・GWP2090、R32はA2L・GWP675、アンモニアR717はB2L・GWP1未満、CO₂ R744はA1・GWP1です。数値だけで優劣を決めず、燃焼性、毒性、高圧、材料適合まで一組で判断します。

冷凍機油は潤滑だけでなく、密封・冷却・油圧作動を担い、冷媒との溶解性や相溶性が油戻りと運転粘度を左右します。冷媒転換や補充では、冷媒・圧縮機・油のメーカー指定を必ず一致させましょう。

最終更新日:2026年7月28日

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。

-保安管理技術, 第三種冷凍機械責任者