保安管理技術 第三種冷凍機械責任者

【第三種冷凍機械責任者・保安管理】p-h線図の読み方と冷凍能力・成績係数(COP)の計算

p-h線図ってなに? ─ 冷凍サイクルを「見える化」するグラフ

前回の記事で、冷凍サイクルは「圧縮→凝縮→膨張→蒸発」の4ステップだと学びました。でも、冷媒の状態変化を頭の中だけで追いかけるのは大変ですよね。

そこで登場するのがp-h線図(ピー・エイチせんず)です。これは冷凍サイクルの4つのステップを1枚のグラフ上に描いて「見える化」したもの。試験では計算問題の土台になる超重要グラフです。

p-h線図のひとこと定義

縦軸に圧力(p)横軸に比エンタルピー(h)をとったグラフ。
冷媒が冷凍サイクルの中でどう状態変化するかを1枚で表せる。

p-h線図の基本構造 ─ 3つのエリアを押さえよう

p-h線図には「釣り鐘」のような形をした曲線が描かれています。この曲線を飽和曲線(ほうわきょくせん)といい、グラフを3つのエリアに分けます。

エリア 冷媒の状態 イメージ
左側(飽和液線の左) 過冷却液 完全な液体(冷えきった水のイメージ)
中央(釣り鐘の内側) 湿り蒸気 液体と気体が混ざった状態(霧のイメージ)
右側(飽和蒸気線の右) 過熱蒸気 完全な気体(湯気が見えなくなった状態)

身近なイメージ
やかんでお湯を沸かすとき、最初は液体の水(過冷却液に相当)。沸騰し始めると水と水蒸気が混ざったブクブク状態(湿り蒸気)。そして完全に蒸発して見えなくなった水蒸気が過熱蒸気です。p-h線図はこの3つの状態を左・中・右に分けて表示しています。

冷凍サイクルをp-h線図に描くと?

冷凍サイクルの4ステップをp-h線図に描くと、四角形に近い図形になります。各ステップがどんな線になるか見ていきましょう。

ステップ p-h線図での線 ポイント
① 圧縮 右上がりの曲線(等エントロピー線に沿う) 圧力もエンタルピーも上がる
② 凝縮 左向きの水平線(高圧側) 圧力一定でエンタルピーが減る(放熱)
③ 膨張 下向きの垂直線 エンタルピー一定で圧力だけ下がる(等エンタルピー変化)
④ 蒸発 右向きの水平線(低圧側) 圧力一定でエンタルピーが増える(吸熱)

試験のポイント
膨張弁では「エンタルピーが変わらない(垂直線)」、凝縮と蒸発では「圧力が変わらない(水平線)」ということを押さえましょう。特に膨張弁の「等エンタルピー変化」は超頻出です。

p-h線図の4つの点を覚えよう

冷凍サイクルをp-h線図に描くと、4つの「角」ができます。それぞれの点が冷媒のどんな状態かを整理します。

p-h線図の4つの状態点
点A(圧縮機入口)
低温・低圧の
過熱蒸気
(蒸発器出口)
点B(圧縮機出口)
高温・高圧の
過熱蒸気
(凝縮器入口)
点C(凝縮器出口)
高圧の
過冷却液
(膨張弁入口)
点D(膨張弁出口)
低温・低圧の
湿り蒸気
(蒸発器入口)

比エンタルピーとは? ─ 計算の基本

p-h線図の横軸にある比エンタルピー(ひエンタルピー)は、冷媒1kgあたりが持っている熱量のことです。単位はkJ/kg(キロジュール毎キログラム)。

冷媒が蒸発器で周囲から吸い取る熱量や、凝縮器で外に捨てる熱量は、この比エンタルピーの差(引き算)で求められます。これがp-h線図を使った計算の基本中の基本です。

身近なイメージ
「エンタルピー」という言葉は難しそうですが、要するに「冷媒が持っている熱エネルギーの量」です。預金通帳の残高のようなもの ─ 蒸発器で熱を吸収すれば残高が増え(エンタルピー増加)、凝縮器で熱を捨てれば残高が減ります(エンタルピー減少)。

冷凍能力の計算 ─ 冷凍機がどれだけ冷やせるか

冷凍能力(れいとうのうりょく)とは、冷凍機が単位時間あたりにどれだけの熱を奪えるか(=どれだけ冷やせるか)を表す値です。記号はΦ0(ファイゼロ)、単位はkW(キロワット)です。

冷凍能力の公式

Φ0 = qmr ×(hA − hD

qmr:冷媒循環量(kg/s)
hA:蒸発器出口の比エンタルピー(kJ/kg)
hD:蒸発器入口の比エンタルピー(kJ/kg)
(hA − hD)を冷凍効果(れいとうこうか)といいます

身近なイメージ
冷凍能力は「冷やすパワー」のこと。水道に例えると、冷凍効果(hA − hD)が「蛇口1回ひねりで出る水の量」、冷媒循環量(qmr)が「1秒間にひねる回数」。両方をかけ算すると「1秒あたりに出る水の総量」=冷凍能力になるイメージです。

凝縮負荷と圧縮機の仕事

冷凍サイクルでは、冷凍能力以外にも2つの重要な値を計算できます。

名称 公式 意味
凝縮負荷 Φk qmr ×(hB − hC 凝縮器で外に捨てる熱量(kW)
圧縮機の仕事 P qmr ×(hB − hA 圧縮機に必要なエネルギー(kW)

試験のポイント ─ エネルギー保存則
冷凍サイクルではΦk = Φ0 + P という関係が成り立ちます。「凝縮器で捨てる熱量 = 蒸発器で吸収した熱量 + 圧縮機が加えたエネルギー」ということ。エネルギーが消えたり増えたりしないので、出入りが必ず釣り合います。

成績係数(COP)の計算 ─ 冷凍機の「燃費」

成績係数(せいせきけいすう)は、英語でCOP(Coefficient of Performance)と呼ばれます。これは圧縮機に投入したエネルギーに対して、どれだけ冷やせるかの効率を表す数値です。

COPの公式

COP = Φ0 ÷ P =(hA − hD)÷(hB − hA

Φ0:冷凍能力(蒸発器で奪った熱量)
P:圧縮機の仕事(圧縮に使ったエネルギー)

身近なイメージ ─ 車の燃費
COPは車の燃費のようなもの。ガソリン1リットル(=圧縮機の仕事P)で30km走れる車(=冷凍能力Φ0)なら、燃費は「30km/L」。同じように、COP = 5 なら「電気エネルギー1に対して5倍の冷却効果がある」という意味。COPの値が大きいほど効率が良い冷凍機です。

計算例で練習してみよう

p-h線図から以下の値が読み取れたとします。実際に計算してみましょう。

位置 比エンタルピー
A(蒸発器出口) 圧縮機入口 400 kJ/kg
B(圧縮機出口) 凝縮器入口 440 kJ/kg
C(凝縮器出口) 膨張弁入口 240 kJ/kg
D(膨張弁出口) 蒸発器入口 240 kJ/kg

注目:CとDの比エンタルピーが同じ(240 kJ/kg)!これは膨張弁で「等エンタルピー変化」が起こるからです。

冷凍効果 = hA − hD = 400 − 240 = 160 kJ/kg

圧縮機の仕事 = hB − hA = 440 − 400 = 40 kJ/kg

凝縮負荷 = hB − hC = 440 − 240 = 200 kJ/kg

COP = 160 ÷ 40 = 4.0

検算:凝縮負荷 200 = 冷凍効果 160 + 圧縮の仕事 40 → ピッタリ合いますね!

試験のポイント ─ CとDのエンタルピーが同じ理由
膨張弁は小さな穴(絞り)で冷媒の圧力を下げるだけ。外部との熱のやりとりも、外部への仕事もないため、エンタルピーは変化しません。だからp-h線図では垂直線になり、CとDの横軸の値が同じになります。

COPに影響する条件 ─ 蒸発温度と凝縮温度

COPの値は、運転条件によって変わります。試験でよく問われるのが以下の2つです。

条件変化 COPへの影響 理由
蒸発温度が上がる COP上がる 蒸発圧力と凝縮圧力の差が小さくなり、圧縮の仕事が減る
凝縮温度が上がる COP下がる 圧力差が大きくなり、圧縮の仕事が増える

現場イメージ
真夏の猛暑日にエアコンが効きにくくなった経験はありませんか?外気温が高い=凝縮温度が上がる=COPが下がる、ということ。逆に涼しい日はエアコンがよく効く=COPが高い状態です。実務でも冷却水温度や外気温の管理がCOPに直結します。

過冷却度と過熱度

実際の冷凍サイクルでは、2つの「余裕」をとることが一般的です。

用語 意味 メリット
過冷却(かれいきゃく) 凝縮器出口で液体をさらに冷やすこと 冷凍効果が増加し、COPが向上する
過熱(かねつ) 蒸発器出口でガスをさらに温めること 液体の冷媒が圧縮機に入るのを防止(液圧縮防止)

試験のポイント
過冷却度をつけると冷凍効果が増えてCOPが向上します。一方、過熱度をつける主な目的は液圧縮の防止であり、COPの向上が主目的ではありません。この違いを正確に区別しましょう。

よくある疑問・間違い

Q. p-h線図の「p」と「h」は何の略?

p は pressure(圧力)、h は specific enthalpy(比エンタルピー)の頭文字です。「p-h線図」は日本語で「圧力-比エンタルピー線図」ともいいます。

Q. COPは1を超えることがあるの?

はい、普通に超えます。家庭用エアコンのCOPは3〜6程度。つまり電気エネルギー1の投入で3〜6倍の冷却効果が得られます。これは「エネルギーを生み出している」のではなく、「熱を移動させている」から可能なのです。ヒートポンプの原理ですね。

Q. 膨張弁を通過するとき、温度はどう変化するの?

温度は下がります。エンタルピーは変わりませんが、圧力が下がることで液体の一部が蒸発し、その蒸発潜熱によって冷媒全体の温度が下がります。

理解度チェック

【問1】p-h線図の縦軸と横軸の組み合わせとして、正しいものはどれか。

(1)縦軸:温度、横軸:圧力
(2)縦軸:圧力、横軸:温度
(3)縦軸:圧力、横軸:比エンタルピー
(4)縦軸:比エンタルピー、横軸:圧力
(5)縦軸:温度、横軸:比エンタルピー

解答を見る

正解:(3)縦軸:圧力、横軸:比エンタルピー
p-h線図は、縦軸に圧力(p = pressure)、横軸に比エンタルピー(h = specific enthalpy)をとったグラフです。冷凍サイクルの状態変化を1枚で表現できます。

【問2】冷凍サイクルにおいて、膨張弁での冷媒の変化として正しいものはどれか。

(1)等圧変化で比エンタルピーが増加する
(2)等エントロピー変化で圧力が上昇する
(3)等エンタルピー変化で圧力が低下する
(4)等温変化で比エンタルピーが減少する
(5)等圧変化で温度が上昇する

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正解:(3)等エンタルピー変化で圧力が低下する
膨張弁では、冷媒が絞りを通過して圧力が急激に低下します。このとき外部との熱のやりとりがないため、比エンタルピーは変化しません(等エンタルピー変化)。p-h線図では垂直線で表されます。

【問3】冷凍サイクルの成績係数(COP)を求める式として、正しいものはどれか。ただし、Φ0は冷凍能力、Φkは凝縮負荷、Pは圧縮機の仕事とする。

(1)COP = P ÷ Φ0
(2)COP = Φk ÷ P
(3)COP = Φ0 ÷ Φk
(4)COP = Φ0 ÷ P
(5)COP = P ÷ Φk

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正解:(4)COP = Φ0 ÷ P
成績係数(COP)は「冷凍能力 ÷ 圧縮機の仕事」で求めます。車の燃費と同じ考え方で、投入したエネルギー(P)に対してどれだけの冷凍効果(Φ0)が得られるかを表します。値が大きいほど効率がよい冷凍機です。

【問4】蒸気圧縮冷凍サイクルにおいて、蒸発温度を一定のまま凝縮温度を高くした場合の変化として、正しいものはどれか。

(1)成績係数(COP)は大きくなる
(2)成績係数(COP)は変わらない
(3)圧縮機の仕事は小さくなる
(4)冷凍能力は大きくなる
(5)成績係数(COP)は小さくなる

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正解:(5)成績係数(COP)は小さくなる
凝縮温度が上がると凝縮圧力も上がり、蒸発圧力との差が大きくなります。その結果、圧縮機がより多くの仕事をしなければならず、COP = Φ0 ÷ P の分母(P)が大きくなるため、COPは小さくなります。真夏にエアコンの効きが悪くなるのはこの原理です。

まとめ

この記事のポイント

  • p-h線図は縦軸=圧力、横軸=比エンタルピーのグラフ
  • 飽和曲線で過冷却液・湿り蒸気・過熱蒸気の3エリアに分かれる
  • 膨張弁は等エンタルピー変化(垂直線)、凝縮・蒸発は等圧変化(水平線)
  • 冷凍能力 Φ0 = qmr ×(hA − hD
  • 成績係数 COP = Φ0 ÷ P(大きいほど高効率)
  • 蒸発温度↑ → COP↑、凝縮温度↑ → COP↓
  • 過冷却はCOP向上に有効、過熱は液圧縮防止が主目的

前の記事 → 冷凍の原理と蒸気圧縮冷凍サイクル

次回は熱の移動の基礎(熱伝達・熱伝導・熱通過・平均温度差)を解説します。

試験頻出ポイント

  • p-h線図の横軸=比エンタルピー(h)、縦軸=圧力(p)
  • 冷凍能力 q₀ = h₁ − h₄(蒸発器の入口と出口のエンタルピー差)
  • 成績係数 COP = 冷凍能力 ÷ 圧縮仕事(= q₀ ÷ w)
  • 膨張弁の過程=等エンタルピー変化(p-h線図で垂直線)
  • 圧縮機の仕事 w = h₂ − h₁(吐出しエンタルピー − 吸込みエンタルピー)

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