保安管理技術 第三種冷凍機械責任者

【第三種冷凍機械責任者・保安管理】圧縮機の構造と特徴(往復・回転・スクリュー・スクロール・体積効率)

圧縮機は冷凍サイクルの「心臓」

冷凍サイクルの4つの機器(圧縮機・凝縮器・膨張弁・蒸発器)の中で、唯一電気エネルギーを消費して動くのが圧縮機(あっしゅくき)です。

圧縮機の仕事は、蒸発器で蒸発した低温・低圧の冷媒ガスを吸い込み、高温・高圧のガスに圧縮して凝縮器へ送り出すこと。人間の体に例えるなら、血液(冷媒)を全身に送り出す「心臓」の役割です。

圧縮機の2つの大分類

① 容積式:一定の空間にガスを閉じ込め、体積を小さくして圧縮する
② 遠心式(ターボ式):羽根車の遠心力でガスを加速・圧縮する(大型向け)
第三種冷凍の試験では容積式がメインです。

容積式圧縮機の種類

容積式圧縮機にはいくつかのタイプがあります。試験で問われる主な4タイプを見ていきましょう。

容積式圧縮機の4タイプ
往復式
ピストンが
往復運動で
ガスを圧縮
ロータリー式
ローラーが
回転運動で
ガスを圧縮
スクリュー式
2本のネジ状
ロータが回転
で圧縮
スクロール式
渦巻き状の
部品が旋回
運動で圧縮

往復式(レシプロ)圧縮機

往復式圧縮機(おうふくしきあっしゅくき)は、シリンダの中をピストンが往復運動して冷媒ガスを圧縮するタイプです。自動車のエンジンと同じ原理。

身近なイメージ
自転車の空気入れを思い出してください。ハンドルを押すとピストンが下がり、空気がタイヤに押し込まれます。これが圧縮。ハンドルを引くと新しい空気を吸い込む。この「押す(圧縮)→ 引く(吸い込み)」の繰り返しが往復式圧縮機の動作そのものです。

項目 往復式の特徴
構造 ピストン・シリンダ・吸込弁・吐出弁で構成
容量制御 アンローダ(吸込弁を開放して一部のシリンダを休止させる)
振動・騒音 ピストンの往復運動のため振動が大きい
液圧縮の危険 液体を圧縮すると弁や部品が破損する(液圧縮に弱い)

注意 ─ 液圧縮とは?
液体の冷媒がそのまま圧縮機に入ってしまうことを液圧縮(液バック)といいます。液体はほとんど圧縮できないため、ピストンや弁に非常に大きな力がかかり、破損の原因になります。往復式は特に液圧縮に弱いため、蒸発器出口で冷媒を確実に蒸発させる(過熱度をとる)ことが重要です。

ロータリー式(回転式)圧縮機

ロータリー式圧縮機は、円筒形のシリンダの中でローラー(回転子)が偏心回転し、ガスを圧縮するタイプです。

項目 ロータリー式の特徴
構造 シリンダ内でローラーが偏心回転。ベーン(仕切り板)で吸込側と吐出側を分離
振動・騒音 回転運動なので往復式より振動が少ない
主な用途 家庭用ルームエアコン、小型冷凍機
吸込弁 吸込弁がない(ローラーの回転で自然に吸い込む構造)

現場イメージ
家庭用エアコンの室外機を分解すると、中にあるのがロータリー圧縮機。小型でパワーがあり、振動も少ないので、住宅用に最適。室外機が「ウーン」と低い音で回っているのが、ローラーが回転している音です。

スクリュー式圧縮機

スクリュー式圧縮機は、2本のネジ(スクリュー)状のロータをかみ合わせて回転させ、歯溝の空間を縮小してガスを圧縮するタイプです。

項目 スクリュー式の特徴
構造 雄ロータ(凸)と雌ロータ(凹)がかみ合って回転
容量制御 スライド弁で吸込量を変えて10〜100%の無段階制御が可能
振動 回転運動のため振動が少ない
吸込弁・吐出弁 ない(弁がないため弁の破損がない)
液圧縮 往復式より液圧縮に強い(ただしゼロではない)
潤滑油 ロータの隙間のシール・冷却のため大量の油を噴射する(油冷式)

現場イメージ
スーパーマーケットの冷凍・冷蔵設備や中規模のビル空調でよく使われているのがスクリュー圧縮機。機械室に入ると「シューッ」という連続的な音が聞こえますが、これがスクリューの回転音。往復式のような「ガタンガタン」という断続的な振動がなく、滑らかに運転できるのが特長です。

試験のポイント ─ スクリュー式の油噴射
スクリュー圧縮機では、雄ロータと雌ロータの隙間から冷媒ガスが漏れないように潤滑油を噴射してシール(密封)します。この油は冷媒の圧縮熱も吸収するので「油冷式」とも呼ばれます。吐出後は油分離器で油と冷媒ガスを分離し、油を圧縮機に戻します。

スクロール式圧縮機

スクロール式圧縮機は、渦巻き(スクロール)状の2枚の部品を組み合わせ、一方を旋回運動させてガスを圧縮するタイプです。

項目 スクロール式の特徴
構造 固定スクロールと旋回(せんかい)スクロールの2枚
振動・騒音 非常に少ない(4タイプ中で最も静か)
吸込弁・吐出弁 ない
トルク変動 小さい(滑らかな運転)
主な用途 家庭用・業務用エアコン、ヒートポンプ

身近なイメージ
2枚の渦巻き模様のお皿を重ね合わせた状態を想像してください。下のお皿(固定スクロール)は動かず、上のお皿(旋回スクロール)だけが小さな円を描くように動きます。すると、2枚の渦巻きの間に挟まれた空間がだんだん中心に向かって小さくなり、中のガスが圧縮されます。

開放型・半密閉型・密閉型

圧縮機は、モーター(電動機)と圧縮機本体の関係によって3つのタイプに分かれます。

タイプ 構造 特徴
開放型 モーターと圧縮機が別体(軸で接続) 軸封装置が必要(冷媒漏れの可能性)。アンモニア冷凍機に多い
半密閉型 モーターと圧縮機が同一ケーシング内だがボルトで分解可能 修理可能。中型の冷凍機に多い
密閉型(全密閉型) モーターと圧縮機が溶接されたケーシング内に密封 冷媒漏れなし。修理不可(交換)。家庭用エアコン・冷蔵庫に多い

試験のポイント
密閉型圧縮機のモーターは吸い込み冷媒ガスで冷却されます。そのため、冷媒が不足するとモーターが過熱して焼損する危険があります。開放型は外部の空気でモーターを冷却するため、この問題はありません。

体積効率 ─ 圧縮機の「実力」を示す値

体積効率(たいせきこうりつ)とは、圧縮機が理論的に吸い込めるガスの量に対して、実際に吸い込めたガスの量の割合です。記号はηv(イータ・ブイ)。

体積効率の定義

ηv = 実際に吸い込んだガスの体積 ÷ ピストン押しのけ量

100%にならない理由:シリンダ内のすきま(クリアランスボリューム)に残ったガスが再膨張し、新しいガスを吸い込む量が減るため。

条件 体積効率 理由
圧縮比が大きい 低下する 残留ガスの再膨張量が増えるため
蒸発温度が低い 低下する 蒸発圧力が下がり圧縮比が大きくなるため
凝縮温度が高い 低下する 凝縮圧力が上がり圧縮比が大きくなるため

身近なイメージ
自転車の空気入れで例えると、タイヤの空気圧が低いうちは「スコスコ」楽に空気が入ります(圧縮比が小さい=体積効率が高い)。でもパンパンに膨らんだタイヤにさらに空気を入れようとすると、ハンドルが重くなり、1回の押しで入る量がガクンと減りますよね(圧縮比が大きい=体積効率が低い)。

よくある疑問・間違い

Q. 往復式とスクリュー式、どっちが優れている?

一概には言えません。往復式は小〜中型で実績豊富、スクリュー式は中〜大型で振動が少なく連続運転に強い。用途に応じて使い分けます。

Q. 液圧縮はなぜ危険なの?

液体は気体と違ってほとんど圧縮できません。圧縮できないものを無理に圧縮しようとすると、弁やピストン、コネクティングロッドに衝撃的な力がかかり、破損します。これを液ハンマー(ウォーターハンマー)ともいいます。

Q. 容量制御ってなぜ必要?

冷凍の負荷は季節や時間帯で変わります。真夏と冬では必要な冷凍能力が全然違いますよね。圧縮機をフルパワーで回し続けると電気の無駄。負荷に応じて容量を調整することで、省エネ適切な温度維持を両立できます。

理解度チェック

【問1】スクリュー圧縮機の特徴として、誤っているものはどれか。

(1)雄ロータと雌ロータがかみ合って回転する
(2)スライド弁により無段階の容量制御が可能である
(3)往復式に比べて振動が少ない
(4)吸込弁と吐出弁を備えている
(5)ロータの隙間シールのために潤滑油を噴射する

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正解:(4)吸込弁と吐出弁を備えている
スクリュー圧縮機には吸込弁も吐出弁もありません。ロータの回転によって連続的に吸込・圧縮・吐出が行われます。弁がないため弁の破損がなく、液圧縮にも比較的強いのが特長です。

【問2】往復式圧縮機の体積効率について、正しいものはどれか。

(1)圧縮比が大きくなると体積効率は上がる
(2)蒸発温度が低くなると体積効率は上がる
(3)凝縮温度が低くなると体積効率は上がる
(4)体積効率は常に100%である
(5)クリアランスボリュームは体積効率に影響しない

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正解:(3)凝縮温度が低くなると体積効率は上がる
凝縮温度が低くなると凝縮圧力が下がり、圧縮比(吐出圧力÷吸込圧力)が小さくなります。圧縮比が小さくなると、クリアランスボリューム内の残留ガスの再膨張量が減り、体積効率は上がります。

【問3】密閉型圧縮機の特徴として、正しいものはどれか。

(1)モーターと圧縮機が別体で、軸で接続されている
(2)分解修理が容易にできる
(3)モーターは吸込冷媒ガスで冷却される
(4)アンモニア冷凍装置で主に使用される
(5)軸封装置を必要とする

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正解:(3)モーターは吸込冷媒ガスで冷却される
密閉型圧縮機はモーターと圧縮機が溶接された密閉ケーシング内にあるため、外気でモーターを冷やせません。代わりに吸い込んだ冷媒ガスでモーターを冷却します。冷媒が不足するとモーターが過熱する危険があります。

【問4】スクロール圧縮機の特徴として、誤っているものはどれか。

(1)固定スクロールと旋回スクロールの2枚の渦巻きで構成される
(2)振動や騒音が非常に少ない
(3)吸込弁と吐出弁がない
(4)トルク変動が大きく運転が不安定になりやすい
(5)家庭用エアコンやヒートポンプに多く使われている

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正解:(4)トルク変動が大きく運転が不安定になりやすい
スクロール圧縮機はトルク変動が小さく、滑らかで安定した運転ができます。これは渦巻きの複数箇所で同時に圧縮が進行するためです。「トルク変動が大きい」は逆です。

まとめ

この記事のポイント

  • 往復式:ピストン往復、振動大きい、液圧縮に弱い、アンローダで容量制御
  • ロータリー式:ローラー回転、振動少ない、吸込弁なし、小型向け
  • スクリュー式:2本のロータ回転、弁なし、スライド弁で無段階制御、油噴射
  • スクロール式:渦巻き旋回、振動・騒音が最も少ない、弁なし
  • 開放型:モーター別体、半密閉型:分解修理可能、密閉型:冷媒ガスで冷却
  • 体積効率:圧縮比が大きいほど低下する(蒸発温度↓ or 凝縮温度↑)

前の記事 → ブラインの種類と性質(塩化カルシウム・エチレングリコール等)

次回は凝縮器の種類と特徴(水冷シェルアンドチューブ・空冷・蒸発式)を解説します。

試験頻出ポイント

  • 往復圧縮機:ピストンとシリンダで圧縮。小〜中規模で多用
  • 体積効率=実際の吸込み量÷ピストン押しのけ量(圧力比が大きいほど低下)
  • スクリュー圧縮機:2本のロータで連続圧縮。振動が少ない
  • スクロール圧縮機:うず巻き形。振動・騒音が小さく家庭用エアコンに多用
  • 多気筒圧縮機のアンローダ(容量制御装置)の仕組み

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