保安管理技術 第三種冷凍機械責任者

【第三種冷凍機械責任者・保安管理】冷凍装置の運転管理と保守(運転操作・不凝縮ガス排除・冷媒充填・水分管理)

冷凍装置の運転管理 — 安全で効率のよい運転を続けるために

冷凍装置は「スイッチを入れたら放っておけばいい」という機械ではありません。正しい手順で起動・停止し、運転中のトラブル(不凝縮ガスの混入、冷媒の過不足、水分の混入など)に適切に対処する必要があります。

自動車に例えると、エンジンの始動手順、走行中の油圧・水温計のチェック、定期的なオイル交換に相当します。冷凍装置にも同じような「運転管理」と「保守」が欠かせないのです。

試験のポイント
第三種冷凍機械責任者の試験では、不凝縮ガスが凝縮圧力を上昇させることポンプダウン運転の目的と手順水分がもたらすトラブル(膨張弁の凍結・銅メッキ)が繰り返し出題されます。

冷凍装置の起動と停止

起動時の手順

冷凍装置を起動するときは、いきなり全力運転しません。以下のような手順で慎重に始めます。

  • 冷却水の確認:水冷凝縮器の場合、冷却水がちゃんと流れているか確認する
  • 油量の確認圧縮機のクランクケース内に潤滑油が十分あるか確認する
  • 弁の確認:吐出し弁・吸込み弁が正しく開いているか確認する
  • 圧縮機の起動:電動機を始動させる
  • 圧力・温度の監視:運転が安定するまで吐出し圧力・吸込み圧力・油圧を監視する

停止時の手順とポンプダウン運転

冷凍装置を停止するときに重要なのがポンプダウン運転です。

試験必出!ポンプダウン運転とは
ポンプダウン運転は、低圧側(蒸発器側)の冷媒を高圧側(受液器側)に回収する操作です。

具体的には、液管の電磁弁を閉じてから圧縮機を運転し続けます。すると、低圧側の冷媒が圧縮されて高圧側に送られ、低圧側が空になります。低圧側の圧力が十分に下がったら圧縮機を停止します。

ポンプダウン運転の目的は、蒸発器や低圧配管の修理をするときに冷媒を安全に高圧側に回収することです。冷媒を大気に放出せずに作業できるので、環境にもやさしい方法です。

ポンプダウン運転の流れ

①液管の電磁弁
を閉じる

②圧縮機を
運転し続ける

③低圧側の冷媒が
高圧側に移動

④低圧が下がったら
圧縮機を停止

※ 冷媒を大気放出せず、装置内で回収できる環境にやさしい方法

真空運転の防止

低圧側の圧力が大気圧以下(真空)になるまで圧縮機を運転してしまうことを真空運転と言います。

真空運転が危険な理由
低圧側が真空になると、配管の接合部や軸封部から外部の空気が装置内に漏れ込みます。空気中の水分や酸素が冷凍装置に入ると、さまざまなトラブルの原因になります。
低圧遮断装置を設置して、低圧側が設定圧力以下になったら圧縮機を自動停止させます。

不凝縮ガスの影響と排除

不凝縮ガス(ふぎょうしゅくガス)とは?

不凝縮ガスとは、冷凍装置の中に混入した空気や窒素など、凝縮器で液化しないガスのことです。冷媒は凝縮器で冷やされると液体に戻りますが、空気は冷やしても液体になりません。だから「凝縮しないガス」=「不凝縮ガス」と呼ばれます。

試験必出!不凝縮ガスの悪影響
不凝縮ガスが冷凍装置に混入すると、凝縮圧力が上昇します。

なぜ? → 凝縮器の中で、冷媒ガスと不凝縮ガスが一緒にいると、全体の圧力は「冷媒の圧力 + 不凝縮ガスの圧力」になります(ドルトンの分圧の法則)。つまり、不凝縮ガスの分だけ余計に圧力が高くなるのです。

凝縮圧力が上がると → 圧縮機の動力が増え、効率が低下します。電気代が上がり、装置にも負担がかかります。

不凝縮ガスの混入原因

  • 装置の組み立てや修理のとき、配管内の空気の排出(真空引き)が不十分だった
  • 低圧側が真空になり、外部から空気が漏れ込んだ

不凝縮ガスの排除方法

不凝縮ガスは凝縮器の上部(ガスが溜まりやすい場所)から排出します。装置を運転しながら凝縮器の上部にある排気弁(パージバルブ)を少しずつ開けて、不凝縮ガスを外に出します。

現場イメージ
コップに炭酸水を入れると、泡(ガス)が上のほうに集まりますよね。凝縮器の中でも不凝縮ガスは軽いので上部に溜まります。だから排気弁も凝縮器の上部に付いているのです。

冷媒の過充填・不足の影響

冷媒が多すぎる場合(過充填)

  • 受液器に液冷媒が溜まりすぎて、凝縮器の有効な伝熱面積が減少する
  • 凝縮圧力が上昇し、効率が下がる

冷媒が不足している場合

  • 蒸発器に流れる冷媒が不足し、冷凍能力が低下する
  • 蒸発器出口の過熱度が大きくなる
  • ひどくなると低圧側が異常に低くなり、真空運転の危険がある

冷媒漏えいの検知

冷媒が漏れているかどうかは、以下の方法でチェックします。

  • ハロゲンリークディテクタフルオロカーボン冷媒の漏れを検知する専用機器
  • 石けん水:配管の接続部に塗って泡で漏れを確認する
  • サイトグラス:液管に取り付けたのぞき窓で、泡が見えたら冷媒不足のサイン

水分管理と油管理

水分の影響

冷凍装置の中に水分が入ると、深刻なトラブルを引き起こします。

試験必出!水分がもたらすトラブル
1. 膨張弁の凍結(氷結)
膨張弁の絞り部分で急激に温度が下がると、冷媒に含まれた微量の水分が凍って氷の粒になり、弁を詰まらせます。

2. 銅メッキ現象(カッパープレーティング)
水分があると、フルオロカーボン冷媒が分解して酸を生じます。この酸が銅部品を溶かし、溶けた銅が鉄の表面に付着(メッキ)します。圧縮機のピストンやシリンダーに銅が付着すると、摩耗や動作不良の原因になります。

3. スラッジ(汚泥)の発生
水分・酸・冷凍機油が反応して、ドロドロの汚泥(スラッジ)が発生し、配管や弁を詰まらせます。

水分の除去方法

冷凍装置から水分を除去するにはフィルタドライヤ(乾燥器)を使います。フィルタドライヤは液管に取り付けて、内部の乾燥剤(シリカゲルやモレキュラーシーブ)が水分を吸着します(附属機器の記事で解説)。

また、装置を新設・修理した後の真空引き(真空乾燥)も重要です。真空ポンプで配管内の空気を抜くと同時に、残留水分も蒸発させて除去できます。

油管理

圧縮機の潤滑油(冷凍機油)は、冷媒と一緒に装置内を循環しています。適切な油管理のポイントは以下の通りです。

  • 油量の確認:圧縮機のクランクケースの油面を定期的にチェックする
  • 油の汚れ:油が黒く変色したり、酸性度が上がったりしたら交換時期
  • 油の温度:油温が上がりすぎると潤滑性が低下する
  • 油の戻り:配管内に油が溜まらないように、適切な勾配と流速を確保する(配管の記事で解説)

実務・日常での具体例

現場イメージ:ポンプダウン運転の場面
ビルの冷凍機の蒸発器から冷媒漏れが見つかった場合を想像してください。修理するには蒸発器を開ける必要がありますが、冷媒が入ったまま開けると大量の冷媒が噴き出してしまいます。そこで、まずポンプダウン運転で低圧側の冷媒を受液器に回収し、それから安全に修理作業を始めるのです。
現場イメージ:サイトグラスで冷媒チェック
液管に取り付けたサイトグラス(のぞき窓)をのぞくと、正常なら透明な液冷媒が見えます。もし泡がブクブクと見えたら、それは冷媒が不足しているか、フラッシュガスが発生しているサインです。ビルメンの現場では、定期巡回のときにサイトグラスをチェックするのが日課になっています。
現場イメージ:膨張弁の凍結トラブル
冷凍機が急に冷えなくなった!調べてみると、膨張弁が氷で詰まっていた……これは冷凍装置内に水分が混入したときの典型的なトラブルです。フィルタドライヤの乾燥剤が劣化していたり、修理後の真空引きが不十分だったりすると発生します。

よくある疑問・間違い

Q. ポンプダウンと真空引きは同じ?

違います!ポンプダウンは「低圧側の冷媒を高圧側に移す」操作で、冷凍装置の圧縮機を使います。真空引きは「配管内の空気と水分を抜く」操作で、真空ポンプを使います。目的も使う機器も異なります。

Q. 不凝縮ガスが入ると冷凍能力は上がる?下がる?

下がります。不凝縮ガスが入ると凝縮圧力が上がり、圧縮機の仕事量が増えます。しかし冷凍能力は増えず、むしろ凝縮器の伝熱面積が不凝縮ガスで覆われて熱交換効率が落ちるため、全体として冷凍能力は低下します。

Q. 冷媒の過充填と不足、どちらが危険?

どちらも問題です。過充填は凝縮圧力の異常上昇、不足は冷凍能力の低下や真空運転の危険があります。適正量を守ることが大切で、サイトグラスや運転圧力から充填量を判断します。

理解度チェック(4問)

五肢択一で実力を確認しましょう!

【第1問】ポンプダウン運転に関する記述として、正しいものはどれか。

(1)高圧側の冷媒を低圧側に回収する操作である。
(2)液管の電磁弁を開いてから圧縮機を停止する。
(3)低圧側の冷媒を高圧側(受液器側)に回収する操作である。
(4)冷媒を大気中に放出する操作である。
(5)真空ポンプを使って行う操作である。

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正解:(3)低圧側の冷媒を高圧側(受液器側)に回収する操作である。
ポンプダウン運転は、液管の電磁弁を閉じて圧縮機を運転し、低圧側の冷媒を高圧側に送って回収する操作です。(1)逆です。(2)電磁弁は閉じてから運転します。(4)大気に放出するのではなく装置内で回収します。(5)圧縮機を使います。

【第2問】不凝縮ガスに関する記述として、誤っているものはどれか。

(1)不凝縮ガスは凝縮器で液化しないガスである。
(2)不凝縮ガスが混入すると凝縮圧力が上昇する。
(3)凝縮圧力が上昇すると圧縮機の動力が増加する。
(4)不凝縮ガスは凝縮器の下部に溜まりやすい。
(5)真空運転により外部から空気が漏れ込むと不凝縮ガスになる。

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正解:(4)不凝縮ガスは凝縮器の下部に溜まりやすい。
不凝縮ガスは液冷媒より軽いため、凝縮器の上部に溜まります。だから排気弁も上部に設置されています。(1)〜(3)および(5)はすべて正しい記述です。

【第3問】冷凍装置内の水分に関する記述として、正しいものはどれか。

(1)水分が混入しても冷凍装置の運転に影響はない。
(2)水分は膨張弁の絞り部分で凍結して弁を詰まらせることがある。
(3)銅メッキ現象は水分とは無関係に発生する。
(4)フィルタドライヤは吐出し管に取り付ける。
(5)真空引きでは水分を除去できない。

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正解:(2)水分は膨張弁の絞り部分で凍結して弁を詰まらせることがある。
(1)水分は膨張弁の凍結、銅メッキ、スラッジの発生など深刻な影響を及ぼします。(3)銅メッキ現象は水分があることで冷媒が分解して酸を生じ、その酸が原因で発生します。(4)フィルタドライヤは液管に取り付けます。(5)真空引きで残留水分を蒸発除去できます。

【第4問】冷凍装置の運転管理に関する記述として、誤っているものはどれか。

(1)冷媒が不足すると蒸発器出口の過熱度が大きくなる。
(2)冷媒の過充填は凝縮圧力を上昇させる原因になる。
(3)サイトグラスに泡が見えたら冷媒不足のサインである。
(4)真空運転になると外部から空気が漏れ込む危険がある。
(5)冷媒が不足すると凝縮圧力が上昇する。

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正解:(5)冷媒が不足すると凝縮圧力が上昇する。
冷媒が不足すると凝縮器に送られる冷媒量が減り、凝縮圧力は低下します(上昇ではありません)。凝縮圧力が上昇するのは、冷媒の過充填不凝縮ガスの混入が原因です。(1)〜(4)はすべて正しい記述です。

まとめ

この記事で学んだこと

  • ポンプダウン運転:液管の電磁弁を閉じて圧縮機を運転し、低圧側の冷媒を高圧側に回収する操作
  • 真空運転の防止:低圧遮断装置で圧縮機を停止させ、空気の漏れ込みを防ぐ
  • 不凝縮ガス:凝縮圧力を上昇させ、効率を低下させる。凝縮器上部から排出
  • 冷媒の過充填:凝縮圧力の上昇。冷媒不足:冷凍能力の低下
  • 水分のトラブル:膨張弁の凍結、銅メッキ現象、スラッジの発生
  • フィルタドライヤ:液管に設置して水分を除去する
  • 油管理:油量・油温・油の汚れを定期チェック

前の記事 → 安全装置と圧力試験

保安管理技術はこの記事で最後です。次は法令:高圧ガスの製造の許可と届出に進みましょう。

試験頻出ポイント

  • ポンプダウン運転:電磁弁を閉じて圧縮機を運転 → 低圧側の冷媒を高圧側(受液器)に回収
  • 真空運転は外部から空気が漏れ込む危険 → 低圧遮断装置で防止
  • 不凝縮ガス凝縮圧力が上昇(ドルトンの分圧の法則)。凝縮器上部から排出
  • 冷媒過充填→凝縮圧力上昇 / 冷媒不足→冷凍能力低下・サイトグラスに泡
  • 水分のトラブル3つ:膨張弁の凍結・銅メッキ現象・スラッジの発生
  • 水分除去 → フィルタドライヤ(液管に設置)+ 真空引き(真空乾燥)

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-保安管理技術, 第三種冷凍機械責任者