保安管理技術 第三種冷凍機械責任者

【第三種冷凍機械責任者・保安管理】冷媒の種類と性質(フルオロカーボン・アンモニア・CO2)と潤滑油

冷媒とは? ─ 冷凍サイクルの「血液」

冷凍サイクルの中をぐるぐる循環して、熱を運ぶ役割をしている物質 ─ それが冷媒(れいばい)です。

冷媒は蒸発器で液体から気体に変わるときに周囲の熱を吸収し、凝縮器で気体から液体に戻るときに熱を放出します。つまり冷凍機の「血液」ともいえる存在です。

冷媒に求められる性質

  • 蒸発圧力が大気圧より高いこと(外部の空気が入りにくい)
  • 凝縮圧力があまり高くならないこと(機器の強度が低くて済む)
  • 蒸発潜熱(液体→気体で吸収する熱)が大きいこと
  • 毒性・可燃性が低いこと(安全性)
  • 化学的に安定していること
  • オゾン層を破壊しない・地球温暖化への影響が少ないこと

冷媒の3つの分類

第三種冷凍の試験で覚えるべき冷媒は、大きく分けて3種類です。

冷媒の3大分類
フルオロカーボン
最も広く使われる
無色・無臭・毒性低い
R410A, R32など
アンモニア(NH3)
大型冷凍に使用
強い刺激臭・毒性あり
R717と表記
二酸化炭素(CO2)
自然冷媒として注目
毒性なし・不燃
R744と表記

フルオロカーボン冷媒 ─ 最も身近な冷媒

フルオロカーボンは、炭素(C)とフッ素(F)を含む化合物の総称です。家庭用エアコンやカーエアコン、業務用冷凍機まで幅広く使われています。

種類 特徴 環境影響
CFC(クロロフルオロカーボン) 塩素を含む。R12など オゾン層破壊大 → 全廃
HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン) 水素も含む。R22など オゾン層破壊小 → 段階的廃止
HFC(ハイドロフルオロカーボン) 塩素を含まない。R410A, R32など オゾン層破壊ゼロ、ただしGWP高め

身近なイメージ
家庭用エアコンの室外機に「R32使用」というシールが貼ってあるのを見たことはありませんか?R32はHFCの一種で、オゾン層を壊さない冷媒です。かつて主流だったR22(HCFC)は、オゾン層を壊すため新規の機器には使えなくなりました。

フルオロカーボン冷媒の共通的な性質:

  • 無色・ほぼ無臭 → 漏れに気づきにくい(漏えい検知器が必要)
  • 毒性が低いが、高濃度では酸欠の危険
  • 一般的に不燃性だが、R32は微燃性に分類される
  • 水分が混入するとフッ化水素酸(腐食性の酸)が生じる → 水分管理が重要
  • 液体のフルオロカーボンは、ゴムや樹脂を膨潤(ぼうじゅん=膨らませる)させることがある

試験のポイント ─ GWPとは?
GWP(地球温暖化係数)は、CO2を基準(GWP=1)として、その冷媒が温暖化に与える影響の大きさを表す数値です。HFC冷媒はオゾン層を壊しませんが、GWPが高い(R410AのGWPは約2090)ため、現在はGWPの低い冷媒への転換が進んでいます。

アンモニア(NH3)冷媒 ─ 大型施設で活躍

アンモニア(NH3、冷媒番号R717)は、古くから大型の冷凍・冷蔵倉庫や製氷工場で使われてきた冷媒です。

項目 アンモニアの特性
臭い 強い刺激臭(漏えいにすぐ気づける)
毒性 あり(目・皮膚・呼吸器に有害)
可燃性 空気中 約15〜28%で燃焼する
オゾン層 ODP=0(オゾン層破壊なし
温暖化 GWP=0(温暖化影響なし
蒸発潜熱 フルオロカーボンより大きい(少ない冷媒量で冷やせる)
金属への影響 銅・銅合金を腐食する → 鉄・鋼の配管を使用
水との関係 水によく溶ける

注意 ─ アンモニアと銅
アンモニアは銅や銅合金(真鍮・青銅)を腐食します。そのため、アンモニア冷凍装置には銅管を使えません。配管や部品にはすべて鉄鋼材料を使います。これは超頻出ポイントです!

現場イメージ
大型の冷凍倉庫やアイスクリーム工場に行くと、独特の刺激臭がすることがあります。これはアンモニア冷凍機のわずかな漏れ。アンモニアは臭いが強いので「あ、漏れてる!」とすぐにわかるのが安全上のメリットです。ただし毒性があるため、一般の人が立ち入らない施設で使われます。

二酸化炭素(CO2)冷媒 ─ 環境にやさしい自然冷媒

二酸化炭素(CO2、冷媒番号R744)は、アンモニアと並ぶ「自然冷媒」の一つで、環境にやさしい冷媒として近年注目されています。

項目 CO2の特性
毒性 なし(ただし高濃度で酸欠の危険)
可燃性 不燃(燃えない)
環境影響 ODP=0、GWP=1(基準値そのもの)
圧力 他の冷媒に比べて非常に高い
臨界温度 約31℃と非常に低い

試験のポイント ─ CO2の高圧と臨界温度
CO2は運転圧力が非常に高くなるため、高い耐圧性能を持つ機器が必要です。また、臨界温度が約31℃と低いため、外気温が高い条件では超臨界状態(気体と液体の区別がつかない状態)になることがあります。

身近なイメージ
コンビニやスーパーのショーケースで「ノンフロン」と書かれたシールを見たことはありませんか?これはCO2を冷媒に使った冷凍機を採用している証。環境に配慮した設備として急速に普及しています。

冷媒の比較まとめ

項目 フルオロカーボン アンモニア
臭い ほぼ無臭 強い刺激臭
毒性 低い あり
可燃性 一般に不燃(R32は微燃性) あり
配管材料 銅管OK 銅管NG(鉄鋼)
水分の影響 腐食性の酸が生成 水によく溶ける
漏えい検知 検知器が必要 臭いでわかる

潤滑油(じゅんかつゆ) ─ 圧縮機を守る「血液」のパートナー

冷凍機の圧縮機には、機械部品の摩擦を減らし、寿命を延ばすために潤滑油(冷凍機油)が使われています。

役割 具体的な効果
潤滑 摩擦を減らし摩耗を防ぐ
密封(シール) ピストンとシリンダの隙間をふさぎ、冷媒ガスの漏れを防ぐ
冷却 摩擦熱を吸収して機械を冷やす

冷凍機油に求められる性質:

  • 流動点が低いこと:低温でも固まらずサラサラ流れる
  • 引火点が高いこと:高温でも引火しにくい
  • 冷媒と適度に混ざること(相溶性)
  • 水分を含まないこと(水分は凍結やサビの原因)

試験のポイント ─ 冷媒と油の相溶性
フルオロカーボン冷媒の種類によって使用する潤滑油が異なります。HFC冷媒(R410A, R32など)には合成油(エステル油やエーテル油)を使います。従来のHCFC冷媒(R22)には鉱油が使えましたが、HFCには使えません。また、油が冷媒に溶けすぎると蒸発器に油が溜まって伝熱を妨げるため、適切な油戻しが必要です。

現場イメージ
圧縮機の点検口を開けると、金色〜琥珀色のオイルが見えます。このオイルの色や量を定期的にチェックするのが現場の日常業務。油が黒く濁っていたら劣化のサイン、量が減っていたらどこかで油漏れが起きている可能性があります。

よくある疑問・間違い

Q. フルオロカーボン冷媒は完全に安全?

毒性は低いですが、完全に安全というわけではありません。大量に漏えいすると酸欠になる危険があります。また、裸火に触れると有毒ガス(ホスゲンなど)が発生するため、火気の近くでの漏えいには注意が必要です。

Q. なぜフルオロカーボン冷媒に水分が入るとダメなの?

水分が混入すると、低温部で氷結して膨張弁を詰まらせたり、フルオロカーボンと反応してフッ化水素酸(金属を腐食する酸)が生成されます。だからフルオロカーボン冷凍装置にはドライヤ(乾燥器)を設置して水分を除去します。

Q. アンモニアは危険なのに、なぜ今も使われているの?

アンモニアはオゾン層破壊がゼロ(ODP=0)、温暖化影響もゼロ(GWP=0)という環境性能に加え、蒸発潜熱が大きいので冷却能力が高く、大型施設に向いています。毒性は換気設備や漏えい検知器で安全に管理できるため、産業用途では現在も広く使われています。

理解度チェック

【問1】フルオロカーボン冷媒の一般的な性質として、誤っているものはどれか。

(1)無色でほぼ無臭である
(2)一般に毒性が低い
(3)漏えいした場合、臭いですぐに気づくことができる
(4)水分が混入するとフッ化水素酸が生じる
(5)液体のフルオロカーボンはゴムを膨潤させることがある

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正解:(3)漏えいした場合、臭いですぐに気づくことができる
フルオロカーボン冷媒はほぼ無臭のため、漏えいしても臭いでは気づけません。漏えい検知器(リークディテクタ)が必要です。臭いで漏れがわかるのはアンモニアの特長です。

【問2】アンモニア冷媒の性質として、正しいものはどれか。

(1)無色・無臭で漏えいに気づきにくい
(2)銅や銅合金を腐食しないので銅管が使える
(3)毒性はないが可燃性がある
(4)強い刺激臭があり、銅や銅合金を腐食する
(5)オゾン層破壊係数(ODP)が大きく、環境に悪い

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正解:(4)強い刺激臭があり、銅や銅合金を腐食する
アンモニアの最大の特徴は、強い刺激臭があること(漏れにすぐ気づける)と、銅・銅合金を腐食すること(鉄鋼の配管を使用)です。ODP=0でオゾン層を破壊しません。

【問3】冷凍機の潤滑油に求められる性質として、誤っているものはどれか。

(1)流動点が低いこと
(2)引火点が高いこと
(3)適度な水分を含んでいること
(4)冷媒との相溶性が適切であること
(5)化学的に安定であること

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正解:(3)適度な水分を含んでいること
潤滑油に水分が混入すると、低温部で凍結したり金属の腐食が進んだりするため、水分は含まないことが求められます。「水分を含むのがよい」というのは誤りです。

【問4】二酸化炭素(CO2)冷媒の性質として、誤っているものはどれか。

(1)毒性がなく不燃性である
(2)GWP=1で環境にやさしい
(3)運転圧力が他の冷媒に比べて非常に高い
(4)臨界温度が非常に高く、凝縮しやすい
(5)ODP=0でオゾン層を破壊しない

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正解:(4)臨界温度が非常に高く、凝縮しやすい
CO2の臨界温度は約31℃で非常に低いです。臨界温度が低いということは、外気温が高い条件では超臨界状態になってしまい、通常の凝縮ができなくなる場合があります。「非常に高く、凝縮しやすい」は逆です。

まとめ

この記事のポイント

  • フルオロカーボン:無色・無臭、毒性低い、水分混入で腐食性の酸が生成
  • CFC → 全廃、HCFC → 段階的廃止、HFC(R410A, R32)→ 現行主流
  • アンモニア:刺激臭あり、毒性あり、銅を腐食、環境影響ゼロ
  • CO2:毒性なし・不燃、GWP=1、圧力が非常に高い、臨界温度が低い
  • 潤滑油:流動点が低い・引火点が高い・水分を含まない・冷媒との相溶性が大切
  • HFC冷媒には合成油(エステル油・エーテル油)を使用

前の記事 → 熱の移動の基礎(熱伝達・熱伝導・熱通過・平均温度差)

次回はブラインの種類と性質(塩化カルシウム・エチレングリコール等)を解説します。

試験頻出ポイント

  • フルオロカーボン冷媒の分類:CFC(全廃)・HCFC(規制中)・HFC(現在主流)
  • アンモニア冷媒:毒性・可燃性ありだがGWP=0で環境にやさしい
  • ODP(オゾン破壊係数)とGWP(地球温暖化係数)の意味
  • 冷媒と潤滑油の相溶性(溶け合うかどうか)が重要
  • R404A・R410Aなどの非共沸混合冷媒は温度勾配が生じる

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