ボイラーの取扱い

【二級ボイラー技士・取扱い】点火前の準備と点火の手順(油だき・ガスだき)

結論:ボイラーの点火は「準備が8割」

ボイラーを安全に点火するには、点火前の準備を確実に行うことが何より大切です。

料理に例えると、「材料の下ごしらえ」がしっかりできていれば、あとは手順どおりに調理するだけでおいしい料理ができますよね。ボイラーも同じで、準備を怠ると爆発や空だきなどの重大事故につながります。

この記事では、まず点火前に行う準備作業を一つずつ確認し、次に油だき・ガスだきそれぞれの点火手順を解説します。

重要:点火の手順を誤ると炉内爆発逆火(バックファイア)といった大事故が起きる可能性があります。二級ボイラー技士の試験でも「点火前の準備」「点火の手順」は非常に出題頻度が高いテーマです。

点火前の準備 ― 7つの確認事項

ボイラーに火を入れる前に、以下の項目を一つずつ確認していきます。

①水位の確認

最初に行うのがボイラー内の水位の確認です。

  • 水面計の水位が常用水位(正常水位)にあるか確認する
  • 水位が低い場合は給水して適正水位にする
  • 水面計の機能試験(水面計のドレンコックを開閉して、水面計が正しく動くか確認)を行う

なぜ最初に水位?
水位が低い状態で点火すると、ボイラーの金属部分が蒸気にさらされて過熱し、空だき事故につながります。空だきはボイラー事故の中でも最も危険な部類です。だから、まず水が十分にあることを確認するのが鉄則です。

②圧力計・水高計の確認

  • 圧力計の指針がゼロを指しているか確認(前回の運転で蒸気圧力が残っていないか)
  • コック・弁が開いていることを確認

③弁の開閉状態の確認

ボイラーにはたくさんの弁が付いています。点火前に、それぞれの弁が正しい状態かを確認します。

弁の種類 状態 理由
主蒸気弁 まだ蒸気を送り出さないため
空気抜き弁 ボイラー内の空気を逃がすため
吹出し弁(ブロー弁) ボイラー水が漏れないようにするため

特に重要なのは空気抜き弁を開けておくことです。ボイラー内に空気が残っていると、加熱時に空気が膨張して内圧が異常に上がったり、蒸気と混ざって熱伝導を妨げたりします。

④給水装置の確認

⑤燃料系統の確認

  • 油だきの場合:燃料油の量が十分か油の温度が適正か(重油は予熱が必要)、油こし器のストレーナに詰まりがないか
  • ガスだきの場合:ガスの元弁が閉まっていることを確認、ガス漏れがないか

⑥煙道・通風装置の確認

  • 煙道のダンパ(排ガスの通り道を調整する板)が開いていることを確認
  • 通風装置(ファン)が正常に動作するか確認

⑦安全装置の確認

  • 安全弁が正常か(手動レバーで弁座に固着していないか確認)
  • フレームアイ(火炎検出器)が清掃されているか
  • 各種インタロックが正常に機能するか

現場イメージ:ボイラー運転員の朝は早いです。出勤したらまずボイラー室に直行し、上の7項目を一つずつチェックリストで確認していきます。ベテランの運転員は「指差し確認」をしながら回ります。地味な作業ですが、この準備をサボると最悪の場合、爆発事故につながるため、もっとも重要な業務の一つです。

プレパージ(前掃気)― 炉内を換気して安全を確保

点火前の準備が終わったら、いきなり点火するのではなく、まずプレパージ(前掃気)を行います。

「自動制御装置と燃焼安全装置」で学んだように、プレパージとは炉内と煙道を換気して、残留している可燃性ガスや蒸気を排出する操作です。

通風装置(ファン)を運転して炉内に空気を送り込み、炉内の空気を十分に入れ替えます

プレパージを省略すると何が起きる?
前回の運転で炉内に未燃焼のガスや油蒸気が残っていることがあります。その状態で点火すると、残留ガスに引火して炉内爆発が起きます。プレパージは「安全に点火するための絶対条件」です。

油だきボイラーの点火手順

油だきボイラー(重油や灯油を燃料とするボイラー)の点火手順を、順番に見ていきましょう。

油だきボイラーの点火手順

  1. 点火前の準備(7項目の確認)を完了する
  2. プレパージを行う(炉内の換気)
  3. 燃焼用空気量を点火時の適正な空気量に調整する(空気が多すぎると火がつきにくい)
  4. パイロットバーナ(点火用の小さなバーナ)に点火する
  5. パイロットバーナの火炎が安定したことを確認する
  6. 燃料弁を開いて、メインバーナに燃料を送る
  7. メインバーナに着火する(パイロットバーナの火で点火される)
  8. メインバーナの火炎が安定したことをフレームアイで確認
  9. 燃焼量を徐々に上げていく

重要ポイント:「まずパイロットバーナに火をつけてから、メインバーナの燃料を出す」という順序が鉄則です。もしメインバーナの燃料を先に出してしまうと、炉内に霧状の燃料油がたまり、そこにパイロットバーナで火をつけた瞬間に爆発します。

重油の場合の追加ポイント

重油は常温では粘度が高く(ドロドロしている)、そのままではバーナからうまく霧化できません。そのため、あらかじめ加熱して粘度を下げてからバーナに送ります。

  • C重油:80〜105℃程度に加熱
  • A重油:加熱不要(粘度が低い)

ガスだきボイラーの点火手順

ガスだきボイラー(都市ガスやLPGを燃料とするボイラー)の点火手順は、基本的に油だきと同じ流れですが、ガス特有の注意点があります。

ガスだきボイラーの点火手順

  1. 点火前の準備(7項目の確認)を完了する
  2. プレパージを行う(炉内の換気)
  3. 燃焼用空気量を点火時の適正な空気量に調整する
  4. パイロットバーナに点火する
  5. パイロットバーナの火炎が安定したことを確認する
  6. ガス元弁→ガス操作弁の順に開いて、メインバーナにガスを送る
  7. メインバーナに着火
  8. メインバーナの火炎が安定したことを確認
  9. 燃焼量を徐々に上げていく

ガスだき特有の注意点

ガス漏れに要注意:ガスは目に見えないため、ガス漏れに気づきにくいです。点火前には必ずガス漏れ検知を行います。また、点火に失敗した場合(火がつかなかった場合)は、すぐに再点火してはいけません。まず燃料ガスの供給を止め、再度プレパージ(炉内の換気)を行ってから、もう一度最初から点火手順をやり直します。

失敗した点火をそのまま再試行すると、炉内にたまったガスに引火して爆発する恐れがあります。「点火失敗 → 燃料停止 → 再パージ → 再点火」の流れは必ず覚えておきましょう。

点火手順のまとめ比較

手順 油だき ガスだき
燃料の予熱 重油は加熱が必要 不要
プレパージ 必須 必須
点火順序 パイロット → メイン パイロット → メイン
点火失敗時 燃料停止 → 再パージ 燃料停止 → 再パージ

試験で狙われるポイント

  • プレパージ(前掃気)は点火前の絶対条件 — 残留ガスを排出して爆発を防止する。出題頻度が非常に高い
  • 点火順序はパイロットバーナ→メインバーナ — 逆順は爆発の危険。「小さい火から大きい火へ」が鉄則
  • 点火失敗時の対処 — 即座に燃料停止→再パージ→やり直し。すぐに再点火は厳禁
  • 重油の予熱温度 — C重油は80〜105℃程度。温度が低いと噴霧不良、高すぎると発火の危険
  • 油だきとガスだきの手順の違い — ガスだきに予熱は不要だがプレパージは必要

理解度チェック

ここまでの内容を3問でチェックしてみましょう!

Q1. ボイラーの点火前に空気抜き弁を開けておく理由は?

解答を見る

正解:ボイラー内の空気を逃がすため
ボイラー内に空気が残っていると、加熱時に空気が膨張して内圧が異常に上がったり、蒸気と混ざって熱伝導を妨げたりします。空気抜き弁を開けてボイラー内の空気を排出します。

Q2. 油だきボイラーの点火で、パイロットバーナとメインバーナはどちらを先に点火するか?その理由も答えなさい。

解答を見る

正解:パイロットバーナを先に点火する
メインバーナの燃料を先に出すと、炉内に霧状の燃料油がたまり、パイロットバーナで火をつけた瞬間に爆発する危険があります。必ずパイロットバーナの火炎が安定してからメインバーナの燃料を開きます。

Q3. ガスだきボイラーで点火に失敗した場合、正しい対処手順は?

解答を見る

正解:燃料ガスの供給を停止 → 再度プレパージ(炉内換気) → 最初から点火手順をやり直す
すぐに再点火してはいけません。炉内にたまったガスに引火して爆発する危険があります。必ず燃料を止めて炉内を換気してから、再度点火手順を最初から行います。

まとめ

今回は、ボイラーの点火前の準備と点火手順を学びました。

  • 点火前の準備は7項目:水位→圧力計→弁の開閉→給水装置→燃料系統→煙道・通風→安全装置
  • プレパージ(前掃気)は点火前の絶対条件。炉内の残留ガスを排出する
  • 点火はパイロットバーナ→メインバーナの順。逆にすると爆発の危険
  • 点火失敗時はすぐに再点火しない。燃料停止→再パージ→やり直し
  • 重油は予熱が必要(C重油:80〜105℃程度)

次の記事では、点火後の圧力上昇時の取扱いと送気開始の手順を学びます。

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