この記事で分かること
- 圧力・水位・燃焼を単独ではなく相互関係で監視する方法
- 負荷変動時のスウェル・シュリンクと給水の判断
- 燃焼量を増減するときの燃料・空気の操作順序
- 排ガスO₂から空気比を概算する方法と低水位時の判断
結論:運転中は「現在値」だけでなく、圧力・2個の水面計・蒸気流量・給水流量・燃料・空気・排ガスの変化方向を組み合わせて見ます。急な負荷増加では圧力が下がる一方、ドラム水位は一時的に上がることがあります。表示値だけに反応して給水や燃焼を急変させず、原因と時間差を読んで調整します。
公式資料の確認先
- 厚生労働省:ボイラー及び圧力容器安全規則 第25・28・32条
- 安全衛生技術試験協会:令和8年4月掲載 二級ボイラー技士公表問題(PDF)
- 安全衛生技術試験協会:二級ボイラー技士公表問題(運転・緊急停止)
- 厚生労働省:低水位検出・監視不良を含む災害事例資料
法令・公表問題確認日:2026年7月28日。警報値、操作順序、記録間隔、緊急時措置は設備固有の手順を優先してください。
法令が求める監視は圧力・水位・燃焼の3本柱
ボイラー及び圧力容器安全規則第25条は、ボイラー取扱作業主任者の職務として、圧力・水位・燃焼状態の監視、急激な負荷変動の回避、最高使用圧力を超えない管理、安全弁・給水装置・自動制御装置の機能保持、異常時の必要な措置と記録などを定めています。
圧力
負荷と燃焼の
つり合い
水位
蒸発と給水
気泡量の影響
燃焼
燃料・空気
火炎と排ガス
補機・配管
給水、通風
漏れ・振動
自動制御が正常でも、検出器のずれ、弁の固着、配管閉塞があれば誤った操作を続けます。現場計器、制御盤表示、運転記録、実際の火炎・音・漏れを相互に照合します。
圧力は負荷と燃焼量の収支で読む
| 変化 | まず疑うこと | 同時に見る値 |
|---|---|---|
| 圧力上昇 | 負荷減少、蒸気弁閉止、燃焼過多、圧力調節異常 | 蒸気流量、燃料量、主蒸気弁、安全弁 |
| 圧力低下 | 負荷増加、燃焼不足、蒸気漏れ、伝熱低下 | 蒸気流量、燃料・空気、排ガス温度、漏れ |
圧力が上がるときは燃焼を抑え、圧力調節器と燃料遮断が追従しているか確認します。安全弁は常用の圧力調節器ではなく、過圧から守る最後の保護です。安全弁が作動したら、負荷側弁の閉止、燃焼制御、設定値を含む原因を調べます。
圧力が下がるときも、直ちに燃料だけを大幅に増やしません。蒸気漏れや送気先の急開、空気量不足、バーナ異常、すす付着が原因なら、燃料増加は不完全燃焼や水位変動を悪化させます。
水位は「水の量」と「気泡の体積」を分ける
ドラム水位は、水の質量だけでなくボイラー水中の蒸気泡の体積でも変わります。急な負荷変動では、見えている水位と実際の水の収支が一時的に逆方向へ動くことがあります。
負荷変動と一時的なドラム水位
負荷が急増:スウェル
圧力低下 → 気泡が膨張・増加 → 水位は一時上昇。
ただし蒸気流出で水の質量は減る方向。
負荷が急減:シュリンク
圧力上昇 → 気泡が縮小・凝縮 → 水位は一時低下。
蒸気需要が減ったこととは逆向きに見える。
水位だけで給水量を決める一要素制御は、この一時変化の影響を受けます。蒸気流量と給水流量も使う二要素・三要素制御は、負荷変動を先に捉えて補正します。運転員も同様に、2個の水面計、蒸気流量、給水流量、給水弁出力を組み合わせて見ます。
低水位の原因を給水・流出・表示に分ける
| 区分 | 例 | 確認 |
|---|---|---|
| 給水不足 | ポンプ停止、弁・ストレーナ閉塞、タンク低水位 | 給水圧力・流量、電流、弁出力 |
| 流出増加 | 蒸気大量供給、吹出し弁の閉止不良、逆流 | 蒸気・吹出し流れ、逆止め弁 |
| 表示異常 | 水面計・連絡管の閉塞、コック誤位置 | 2個の水面計、機能試験、検出器 |
低水位時は「確認できる水位」と「過熱の疑い」で判断する
一律に「給水する/しない」と決めない:まず燃料を遮断または燃焼を抑え、2個の水面計と低水位警報、給水系統を確認します。水面が見えず、火に触れる伝熱面が露出・過熱した疑いがある場合は、慌てて給水せず緊急手順に従います。急冷による損傷の危険があるためです。
一方、一般的な緊急停止手順には、燃料停止と炉・煙道の換気、主蒸気弁の閉止に続き、給水が必要なときは必要水位を維持する操作も含まれます。したがって「低水位なら原因に関係なく絶対に給水禁止」も誤りです。水位が確認できるか、過熱の疑いがあるか、設備手順が何を定めるかで判断します。
水面測定装置の法定点検頻度
ボイラー取扱作業主任者は、原則として水面測定装置の機能を1日1回以上点検します。所定の認定を受けた自動制御装置を備えるボイラーには、3日に1回以上とできる例外があります。ドレンコックを一度開閉するだけでは蒸気側・水側の通りを切り分けられないため、所定の機能試験手順は「水面計の機能試験」で確認してください。
燃焼量の変更は空気と燃料の順序が重要
燃焼量を増やす
空気を先に増やし、燃料を後から増やす
燃料先行による一時的な空気不足・黒煙を防ぐ。
燃焼量を減らす
燃料を先に減らし、空気を後から減らす
空気を先に絞って不完全燃焼にしない。
自動燃焼制御でも、燃料・空気のリンク機構やクロスリミットがこの安全側の順序を作ります。燃焼量を変えたら、火炎が炉壁・伝熱面へ接触していないか、失火・脈動がないかも確認します。
火炎の色だけでなく排ガスを測って判断する
| 指標 | 読み方 | 注意 |
|---|---|---|
| O₂ | 高いと過剰空気または空気漏入を疑う | 測定位置・負荷をそろえて比較 |
| CO | 上昇は空気不足、混合・霧化不良など | O₂があっても局所不良で発生する |
| CO₂ | 同じ燃料・負荷で空気比の変化を見る | 高いだけで完全燃焼とは断定しない |
| ばい煙・火炎 | 黒煙、火炎形状、接触、脈動を確認 | 色は燃料・バーナ・負荷で変わる |
油火炎を一律に「輝白色なら正常」、ガス火炎を一律に「青なら正常」と決めるのは危険です。公表問題では、適量空気の油火炎を「短い輝白色」とする説明が誤りとして出題されています。製造者の基準火炎と、O₂・CO・ばい煙・通風圧を合わせて判断します。
排ガスO₂から空気比を概算する
乾き排ガスのO₂濃度から、完全燃焼・空気漏入なしと仮定した概算空気比を次式で求められます。
概算空気比 m = 21 ÷(21 − 排ガスO₂%)
例:O₂=3.5%なら、m=21÷17.5=1.20。理論空気量より約20%多い空気です。
この式は簡易推定です。燃料組成、不完全燃焼、煙道への空気漏入、湿り・乾き基準、測定位置で結果が変わります。「空気比は常に1.1〜1.3が正解」と固定せず、燃料・バーナ・負荷ごとのO₂管理値とCO・ばい煙の上限を守ります。
補機と運転記録から異常を早く見つける
給水ポンプ出口圧力とボイラー圧力の差が平常より増える場合、給水管路や弁・ストレーナの抵抗増加を疑います。差が小さくなり給水量も落ちる場合は、ポンプ能力低下、吸込不良、逆止め弁なども確認します。
同じ負荷で比較する記録
- 蒸気圧力・流量、水位、給水流量・圧力
- 燃料流量、空気量、O₂・CO、排ガス温度、通風圧
- ポンプ電流、弁開度、差圧、警報・自動停止履歴
- 漏れ、振動、異音、火炎・ばい煙の観察結果
記録間隔は事業場の運転基準で定めます。法令は水面測定装置の日次機能点検のほか、定期自主検査を原則1か月以内ごとに行い、その結果を3年間保存することを定めています。
理解度チェック
【問1】蒸気負荷が急増した直後のドラム水位として起こり得るものはどれですか。
(1) 気泡膨張により一時的に上昇する
(2) 必ずゼロになる
(3) 圧力と無関係に一定
(4) 給水弁を閉じれば必ず正常
(5) 水面計2個とも逆向きに動く
【問2】燃焼量を増やすときの一般的な操作順序はどれですか。
(1) 燃料を先に増やし、空気を後から増やす
(2) 空気を先に増やし、燃料を後から増やす
(3) 空気だけを増やす
(4) 燃料だけを増やす
(5) 主蒸気弁を閉じる
【問3】排ガスO₂が高いときの判断として適切なものはどれですか。
(1) 必ず完全燃焼している
(2) 必ず燃料が多すぎる
(3) 過剰空気または煙道への空気漏入を疑う
(4) CO測定は不要
(5) 火炎を見なくてよい
【問4】水面が見えず、伝熱面の過熱が疑われる低水位時の対応として適切なものはどれですか。
(1) 直ちに大量給水する
(2) 燃焼を続ける
(3) 燃料を停止し、慌てて給水せず緊急手順で状態を確認する
(4) 安全弁を固定する
(5) 水面計を無視する
関連学習とまとめ
圧力は負荷と燃焼、水位は水の量と気泡量、燃焼は燃料・空気と排ガスの関係で読みます。負荷急増時の水位上昇を「水が余った」と決めつけず、流量と時間変化を確認します。燃焼増加は空気先行、減少は燃料先行です。異常時は自動制御任せにせず、最初の変化と警報を記録して原因を切り分けましょう。
最終更新日:2026年7月28日
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