気体燃料と固体燃料 ─ 重油以外の燃料も知っておこう
前回の記事(液体燃料の種類と性質)では、ボイラーの主力燃料である重油について学びました。今回は気体燃料(都市ガス・LPG)と固体燃料(石炭・コークス)の特徴を解説します。
最近のボイラーでは都市ガスを燃料に使うタイプがどんどん増えています。環境にやさしく、取り扱いも比較的簡単だからです。試験でも気体燃料の出題が増えているので、しっかり押さえておきましょう!
気体燃料の種類
ボイラーに使われる主な気体燃料は以下の通りです。
| 種類 | 主成分 | 特徴 |
|---|---|---|
| 天然ガス (都市ガス13A) |
メタン (CH₄) |
空気より軽い。硫黄分がほとんどない |
| LPG (液化石油ガス) |
プロパン・ブタン (C₃H₈・C₄H₁₀) |
空気より重い。ボンベで供給される |
| LNG (液化天然ガス) |
メタン (CH₄) |
天然ガスを-162℃で液化したもの |
天然ガス(都市ガス)の特徴
日本の都市ガスの多くは13Aという規格で、主成分はメタン(CH₄)です。天然ガス(LNG)を気化して供給されています。
天然ガスの主な特徴
- 主成分はメタン:最も単純な炭化水素。分子が小さい
- 空気より軽い:比重は空気の約0.55(空気を1とする)。漏れると上に上がっていく
- 硫黄分がほとんどない:SOx(硫黄酸化物)の発生がなく、低温腐食の心配も少ない
- ばいじん(すす)が出にくい:きれいに燃焼する
- 燃焼制御がしやすい:流量の調整が簡単
環境にやさしい理由
天然ガスは液体燃料に比べてCO₂排出量が少ない(水素の割合が高いため)。さらに硫黄分がないのでSOxが発生せず、ばいじんも出ない。環境規制が厳しくなる中、都市ガスボイラーが増えているのはこのためです。
現場イメージ
都市部のビルでは、地下の配管を通じて都市ガスが供給されるので、燃料タンクが不要です。燃料の配達・保管の手間がないのも大きなメリット。ただし、ガス管が通っていない場所ではLPGボンベや重油を使うことになります。
LPG(液化石油ガス)の特徴
LPG(Liquefied Petroleum Gas)は、プロパン(C₃H₈)とブタン(C₄H₁₀)を主成分とするガスです。常温では気体ですが、少し加圧すると液体になるため、ボンベやタンクに液体の状態で貯蔵・運搬されます。
LPGの主な特徴
- 空気より重い:プロパンの比重は空気の約1.5倍、ブタンは約2倍
- 漏れると床面(低い場所)にたまる:これが最大の注意点!
- 発熱量が大きい:天然ガスよりも単位体積あたりの発熱量が大きい
- 硫黄分が少ない:天然ガス同様、環境負荷が小さい
- 都市ガスが通っていない地域でよく使われる
LPGの最大の注意点 ─ ガス漏れ時は床面にたまる!
LPGは空気より重いため、漏れると床面や地下ピットなど低い場所にたまります。そこに火気があると爆発の危険があります。LPGを使う場所では、ガス検知器を床面近くに設置し、換気を十分に行うことが重要です。
試験のポイント
「天然ガスとLPGの比重の違い」は最頻出テーマのひとつ!
・天然ガス(メタン)→ 空気より軽い → 漏れると上にいく
・LPG(プロパン・ブタン)→ 空気より重い → 漏れると下にたまる
この違いは確実に覚えましょう!
天然ガスとLPGの比較
| 項目 | 天然ガス(都市ガス) | LPG |
|---|---|---|
| 主成分 | メタン(CH₄) | プロパン・ブタン |
| 空気との比重 | 軽い(約0.55) | 重い(約1.5〜2倍) |
| ガス漏れ時 | 上にいく(天井付近) | 下にたまる(床面) |
気体燃料の共通メリット
液体燃料(重油)と比べたときの気体燃料の共通メリットをまとめます。
気体燃料のメリット
① 空気との混合が容易(燃焼の基礎理論で詳しく解説):気体同士なので均一に混ざりやすい
② 燃焼制御がしやすい:流量調整弁だけで細かい制御が可能
③ ばいじん(すす)が少ない:すす吹き(スートブロー)の頻度が減る
④ 硫黄分が少ない:SOxの発生が少なく、低温腐食のリスクも低い
⑤ 灰分がない:灰の処理が不要
現場イメージ
重油ボイラーからガスボイラーに切り替えた現場のボイラー技士がよく言うのが「スートブローの回数が激減した」「煙突から黒い煙が出なくなった」ということ。燃焼がクリーンになるのが実感できるそうです。
気体燃料の注意点
メリットが多い気体燃料ですが、注意点もあります。
- ガス漏れによる爆発の危険:目に見えないため検知が重要
- 逆火(バックファイア)の危険:燃焼速度と送風のバランスが崩れると火炎がバーナ内に逆戻りすることがある
- 供給圧力の管理が必要:圧力が低下すると不完全燃焼や失火の原因になる
固体燃料の基礎知識
固体燃料は現在のボイラーではあまり使われなくなりましたが、試験では基本的な知識が出題されることがあります。
石炭
石炭は古くからボイラーの燃料として使われてきた固体燃料です。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 無煙炭 | 炭素含有率が高い。煙が少ない。火がつきにくいが長く燃える |
| 瀝青炭(れきせいたん) | 最も一般的な石炭。揮発分が適度にあり、燃焼しやすい |
| 褐炭(かったん) | 水分が多く発熱量が低い。品質の低い石炭 |
石炭の分析方法には工業分析と元素分析があります。
| 分析方法 | 測定する項目 |
|---|---|
| 工業分析 | 水分・灰分・揮発分・固定炭素の4項目 |
| 元素分析 | 炭素(C)・水素(H)・酸素(O)・窒素(N)・硫黄(S)の割合 |
試験のポイント
石炭の工業分析で測定する4項目「水分・灰分・揮発分・固定炭素」はセットで覚えましょう。元素分析との違いを問う問題が出ることがあります。
コークス
コークスは石炭(主に瀝青炭)を乾留(空気を遮断して高温で加熱)してつくった燃料です。揮発分が少なく、炭素がほとんどの状態です。高炉製鉄などに使われますが、ボイラー燃料としてはあまり使われません。
固体燃料の特徴(液体・気体との比較)
固体燃料のポイント
・燃焼に時間がかかる(燃焼速度が遅い)
・灰の処理が必要
・取扱い・保管に場所をとる
・燃焼制御が液体・気体に比べて難しい
・ばいじん(すす・灰)の発生量が多い
3種類の燃料を比較しよう
| 比較項目 | 気体 | 液体 |
|---|---|---|
| 空気との混合 | 容易 | 霧化が必要 |
| 燃焼制御 | しやすい | 比較的しやすい |
| ばいじん | 少ない | やや多い |
固体燃料は気体・液体と比較して、空気との混合が難しく、燃焼制御もしにくく、ばいじんも多いです。そのため現在のボイラーでは気体燃料や液体燃料が主流となっています。
理解度チェック
ここまでの内容を3つの問題で確認しましょう!
Q1. 気体燃料に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)液体燃料に比べて、空気との混合が容易(燃焼の基礎理論で詳しく解説)である (2)燃焼制御がしやすい (3)ばいじんの発生が少ない (4)LPGは空気より軽いため、漏れると天井付近にたまる (5)天然ガスは硫黄分がほとんどない
Q2. 都市ガス13Aの主成分はどれか。
(1)プロパン (2)ブタン (3)エタン (4)メタン (5)アセチレン
Q3. 石炭の工業分析で測定する項目の組合せとして正しいものはどれか。
(1)炭素・水素・酸素・窒素 (2)水分・灰分・揮発分・固定炭素 (3)発熱量・粘度・比重・引火点 (4)炭素・硫黄・灰分・水素 (5)揮発分・窒素・酸素・灰分
まとめ
この記事のポイント
- 天然ガス(都市ガス13A):主成分メタン。空気より軽い。硫黄分ほぼゼロ
- LPG:主成分プロパン・ブタン。空気より重い。漏れると床面にたまる
- 気体燃料の共通メリット:空気との混合が容易(燃焼の基礎理論で詳しく解説)・燃焼制御しやすい・ばいじん少ない・硫黄分少ない
- 石炭の種類:無煙炭・瀝青炭・褐炭
- 石炭の工業分析:水分・灰分・揮発分・固定炭素
- 石炭の元素分析:C・H・O・N・S
- 固体燃料は燃焼制御が難しく、ばいじんが多い
気体燃料は環境にやさしく扱いやすい燃料(ガスバーナの種類も参照)ですが、ガス漏れの危険性には十分な注意が必要です。特に天然ガスとLPGの比重の違いは試験の超頻出テーマなので、絶対に覚えてくださいね!
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