建築物環境衛生管理技術者 空気環境の調整

【ビル管理士・空気環境】冷凍機の原理と種類(圧縮式・吸収式・ヒートポンプ・圧縮機の種類)

結論:冷凍機はビルの「冷房の心臓」― 圧縮式と吸収式の2大方式を押さえる

夏のオフィスビルで快適に過ごせるのは、地下の機械室で冷凍機が冷水を作り続けているからです。冷凍機は冷房に必要な冷水(7℃程度)を製造し、AHUやFCUに供給する大型設備です。

ビル管理士試験では、圧縮式冷凍機吸収式冷凍機の2つの原理と特徴が頻出です。第三種冷凍機械責任者の試験で学んだ蒸気圧縮冷凍サイクルの知識がそのまま活きるテーマです。

蒸気圧縮式冷凍機の原理

家庭のエアコンと同じ原理で動く冷凍機です。冷媒を圧縮→凝縮→膨張→蒸発の4つのプロセスで循環させ、蒸発時に周囲から熱を奪って冷却します。

蒸気圧縮冷凍サイクルの4工程

圧縮(圧縮機)→ 凝縮(凝縮器)→ 膨張(膨張弁)→ 蒸発(蒸発器)→ 圧縮へ戻る

圧縮

低温低圧のガス冷媒を
高温高圧に圧縮

凝縮

高温高圧ガスを冷却して
液体に戻す(放熱)

膨張

高圧液を膨張弁で
低温低圧に減圧

蒸発

低温低圧の液冷媒が蒸発
周囲から熱を奪う(冷却)

冷凍サイクルの循環イメージ
圧縮機
高温高圧ガス ↓
↑ 低温低圧ガス
蒸発器
↑ 低温低圧液
凝縮器
高圧液 ↓
膨張弁

ビル空調との接続:蒸発器で作られた冷水(約7℃)がAHUやFCUの冷却コイルに送られ、室内の空気を冷やします。凝縮器で捨てる熱は、冷却塔を通じて大気に放熱されます。

蒸気圧縮冷凍サイクルの詳しい解説は「冷凍の原理と蒸気圧縮冷凍サイクル」で学べます。

圧縮機の種類

種類 特徴
往復動式(レシプロ) ピストンで冷媒を圧縮。小〜中型に使用
スクリュー式 2本のスクリューロータで圧縮。振動が少なく大容量
スクロール式 渦巻き状の部品で圧縮。小型で静か。パッケージエアコンに多い
遠心式(ターボ) 羽根車の遠心力で圧縮。大容量ビル向き。部分負荷効率は低い

現場イメージ:大型ビルの地下機械室に入ると、人の背丈ほどもある巨大な遠心式(ターボ)冷凍機が設置されています。運転中はタービンの回転音が低く響き、冷水配管からは7℃の冷水が各フロアのAHUやFCUに送り出されます。冷凍能力は数百〜数千冷凍トンにもなり、ビル全体の冷房をまかなっています。

吸収式冷凍機の原理

吸収式冷凍機は、圧縮機の代わりに吸収剤と再生器(加熱源)を使って冷凍サイクルを実現します。電力ではなく熱エネルギー(ガス・蒸気・温水)で駆動するのが最大の特徴です。

吸収式冷凍機のポイント

  • 冷媒:水(H2O)
  • 吸収剤:臭化リチウム(LiBr)水溶液
  • 駆動源:ガス・蒸気・温水(電力消費は非常に少ない)
  • 圧縮機不要→ 振動・騒音が小さい

吸収式の仕組み(ざっくり理解)

圧縮式では電気モーターで圧縮機を回して冷媒ガスを圧縮しますが、吸収式では以下の流れで「化学的に」圧縮と同じ効果を生み出します。

工程 内容
蒸発 低圧下で水(冷媒)が蒸発し、周囲から熱を奪う(冷水を作る)
吸収 蒸発した水蒸気を臭化リチウム濃溶液が吸収(低圧を維持)
再生(加熱) 水を吸収して薄まった溶液を加熱して水蒸気を分離。溶液を濃縮して戻す
凝縮 分離された水蒸気を冷却して水(液体)に戻す→蒸発器へ

身近な例で理解:乾燥剤(シリカゲル)が湿気を吸い取ると湿って効果がなくなりますよね。それを天日干しすると水分が飛んで、また湿気を吸えるようになります。吸収式冷凍機もこれと同じ原理で、臭化リチウムが水蒸気を吸い取り→加熱して水蒸気を飛ばし→また吸い取るを繰り返しています。

圧縮式と吸収式の比較(★超頻出★)

比較項目 圧縮式 吸収式
駆動源 電力(モーター) (ガス・蒸気)
冷媒 フロン類(HFC等)
COP(成績係数) 高い(3〜6程度) 低い(0.7〜1.3程度)
騒音・振動 やや大きい(圧縮機) 小さい
電力消費 大きい 非常に小さい
冷却水量 少ない 多い

超頻出ポイント:吸収式のCOPが圧縮式より低いのは、熱エネルギーを直接使うため効率が低いからです。ただし、電力消費が少ないため、夏場の電力ピーク対策(デマンドカット)に有効です。また、冷却水量が多いのは、凝縮だけでなく吸収時にも冷却が必要だからです。

ヒートポンプと冷暖兼用

ヒートポンプとは、冷凍サイクルを逆に利用して暖房を行う仕組みです。冷房時は室内から熱を奪って屋外に放出しますが、暖房時は屋外から熱を汲み上げて室内に放出します。

冷房時

室内の熱を奪い→屋外に捨てる
蒸発器が室内側
凝縮器が屋外側

暖房時(ヒートポンプ)

屋外の熱を汲み上げ→室内に放出
凝縮器が室内側
蒸発器が屋外側

数字で実感:ヒートポンプのCOPは3〜6程度。つまり、電気1kWを使って3〜6kWの熱を室内に供給できます。これは電気ヒーター(COP=1)の3〜6倍の効率です。「0℃の外気からも熱を汲み上げられるの?」と不思議に思うかもしれませんが、冷媒が−10℃以下で蒸発すれば、0℃の外気からでも熱を奪えます。

COP(成績係数)の意味を数値で理解する

COPの公式

COP = 得られる冷房(暖房)能力 ÷ 投入エネルギー

COP = 5 の冷凍機 → 1 kWの電力で5 kW分の冷房ができる

つまりCOPが高いほど少ないエネルギーで大きな冷暖房効果が得られます。ヒートポンプのCOPが3〜6というのは、電気ヒーターの3〜6倍の効率で暖房できるということです。

ビル管理の現場での冷凍機管理

日常管理のチェックポイント:

  • 冷水の出入口温度差 ― 通常は入口12℃→出口7℃(温度差5℃)。温度差が小さいと冷凍機の効率が落ちています
  • 冷却水温度 ― 冷却塔から戻る冷却水温度が高いとCOPが低下。冷却塔の清掃・ファンの確認が必要
  • 吸収式の真空度 ― 吸収式冷凍機は内部が真空。空気が漏れ込むと能力が低下するため、真空度のチェックが重要です
  • フロン漏洩チェック ― フロン排出抑制法により、一定規模以上の機器は定期点検が義務化されています

冷凍機の放熱に使う冷却塔や、暖房で使うボイラとの関係はボイラ・冷却塔・蓄熱槽で詳しく学びます。省エネルギーと維持管理では、冷凍機のCOP改善による省エネ対策も解説しています。

理解度チェック

【問題1】吸収式冷凍機に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)冷媒としてフルオロカーボンを使用する
(2)吸収剤として臭化リチウム水溶液を使用する
(3)圧縮機で冷媒を圧縮する
(4)電力消費量が圧縮式より大きい
(5)COPは圧縮式より高い

解答を見る

正解:(2)
吸収式冷凍機は水を冷媒臭化リチウム水溶液を吸収剤として使用します。圧縮機は不要で、熱エネルギーで駆動します。電力消費は圧縮式より小さく、COPは圧縮式より低いです。

【問題2】圧縮式冷凍機の圧縮機に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)遠心式(ターボ)圧縮機は小容量向きである
(2)スクロール式圧縮機は大型ビルの冷凍機に使用される
(3)遠心式(ターボ)圧縮機は大容量のビル空調に適している
(4)往復動式圧縮機は振動がなく静かである
(5)スクリュー式圧縮機はピストンで冷媒を圧縮する

解答を見る

正解:(3)
遠心式(ターボ)圧縮機は大容量のビル空調に適しています。スクロール式は小型で静かなためパッケージエアコン向きです。往復動式は振動がやや大きいです。スクリュー式はスクリューロータで圧縮し、ピストンは使いません。

【問題3】ヒートポンプに関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)ヒートポンプのCOPは常に1以下である
(2)ヒートポンプは暖房時に屋外に熱を放出する
(3)ヒートポンプは電気ヒーターより暖房効率が高い
(4)ヒートポンプは冷房にしか使用できない
(5)ヒートポンプでは冷房時と暖房時で冷媒の流れ方向は同じである

解答を見る

正解:(3)
ヒートポンプのCOP(暖房時)は3〜6程度で、電気ヒーター(COP=1)の3〜6倍の効率です。暖房時は屋外から熱を汲み上げて室内に放出します。冷房と暖房では蒸発器と凝縮器の役割が入れ替わる(冷媒の流れ方向が変わる)四方弁で切り替えます。

まとめ ― 試験で狙われるポイント

この記事の重要ポイント

  • 圧縮式=電力駆動・フロン冷媒・COP高い
  • 吸収式=駆動・水が冷媒・臭化リチウムが吸収剤・COP低い・電力消費少・冷却水量多
  • 圧縮機の種類:往復動・スクリュー・スクロール・遠心式(ターボ)=大容量ビル向け
  • ヒートポンプ=冷凍サイクルの逆利用で暖房。COP 3〜6で電気ヒーターの数倍の効率
  • 吸収式は電力ピーク対策に有効(電力消費が小さい)

あわせて読みたい関連記事

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。

-建築物環境衛生管理技術者, 空気環境の調整