結論:AHUは空調の「心臓」、加湿装置は冬場の「命綱」
空気調和機(AHU: Air Handling Unit)は、空気の温度・湿度・清浄度をコントロールする中央空調の中核設備です。フィルタ・冷却コイル・加熱コイル・加湿器・送風機などを1つのケーシングに収めた大型装置で、ビルの機械室に設置されます。
冬場のオフィスでは湿度が下がりやすく、加湿装置の選定と管理がビル管理士の腕の見せどころ。試験では加湿方式の種類と特徴、それぞれのメリット・デメリットが頻出です。
空気調和機(AHU)の構成
AHUの中には、空気を処理するための各種ユニットが並んでいます。空気は以下の順番で処理されるのが基本です。
取入
除じん
冷却/加熱
調湿
圧送
→各室
| 構成要素 | 役割 |
|---|---|
| エアフィルタ | ホコリ・粉じんを除去。プレフィルタ+中性能フィルタの組み合わせが多い |
| 冷却コイル | 冷水を流して空気を冷却。同時に除湿も行われる(冷却除湿) |
| 加熱コイル | 温水や蒸気を流して空気を加熱 |
| 加湿器 | 空気に水蒸気を加えて湿度を上げる |
| 送風機(ファン) | 処理した空気をダクトに送り出す |
| ケーシング | 上記を収める外箱。断熱・防音構造 |
現場イメージ:ビルの地下機械室に入ると、冷蔵庫くらいの大きさ(場合によってはもっと大きい)の金属製の箱が並んでいます。これがAHUです。前面のパネルを開けると、中にフィルタやコイルが見えます。ゴーッという送風音が響く中、管理技術者はフィルタの汚れ具合や冷却コイルの水漏れがないかを点検しています。
現場の保守ポイント:AHUの日常点検では、フィルタの差圧チェックが基本です。差圧が設計値の2倍になったらフィルタ交換の目安です。また、冷却コイルに使う冷水は冷凍機から供給され、処理した空気はダクトで各室に届けられます。AHUはこれらの設備のハブとなる存在です。
AHUとFCUの違い
AHU(空気調和機)
機械室に設置する大型装置
外気を取り入れて処理(換気機能あり)
フィルタ・コイル・加湿器・送風機を内蔵
ダクトで各室に配風
FCU(ファンコイルユニット)
各室に設置する小型装置
室内空気を循環させるだけ(換気機能なし)
ファンとコイルのみのシンプル構造
ダクト不要(配管のみ)
各空調方式の全体像は「空調方式の種類と特徴」で詳しく解説しています。
加湿装置の種類と特徴(★超頻出★)
冬のオフィスビルでは、外気が乾燥しているうえに暖房で空気を加熱すると相対湿度がさらに下がります。建築物衛生法の管理基準40%以上を維持するために、加湿装置は欠かせません。
加湿方式は大きく蒸気方式と水方式の2つに分かれます。
蒸気方式
| 方式 | 仕組みと特徴 |
|---|---|
| 蒸気吹込み式 | ボイラーからの蒸気をダクト内に直接噴射 加湿量の制御がしやすい ボイラー設備が必要 衛生的(高温の蒸気なので細菌が繁殖しにくい) |
| 電熱式(電極式) | 電気で水を加熱して蒸気を発生させる ボイラー不要で設置が簡単 小規模施設向き 衛生的 |
水方式
| 方式 | 仕組みと特徴 |
|---|---|
| 水噴霧式 | 水をノズルで細かい霧にして空気中に噴霧 気化熱で空気が冷却される(冷却加湿) 水の管理が不十分だと細菌繁殖のリスク |
| 気化式 | 湿ったエレメント(加湿材)に空気を通過させて蒸発 気化熱で空気が冷却される(冷却加湿) 水噴霧式より飛散粒子が少ない |
| 超音波式 | 超音波振動で水を微細な霧にして放出 消費電力が小さい 水中のミネラル分も飛散するため白い粉が付着することがある 衛生管理が最も重要 |
蒸気方式と水方式の比較
蒸気方式の特徴
等温加湿(空気温度がほとんど変わらない)
衛生的(高温なので細菌リスク低い)
加湿量の制御が容易
エネルギーコストは高め
水方式の特徴
冷却加湿(気化熱で空気温度が下がる)
衛生管理に注意が必要(水が常温のため細菌繁殖しやすい)
エネルギーコストは低め
水質管理と定期清掃が重要
超頻出ポイント:蒸気方式=等温加湿(温度変化なし)、水方式=冷却加湿(温度が下がる)。これは湿り空気線図でも問われます。蒸気加湿は線図上で水平方向に移動(温度一定で湿度だけ上昇)、水噴霧加湿は湿球温度一定の線に沿って移動します。「結露の原理と湿り空気線図」の知識と合わせて覚えましょう。
現場での注意点:水方式の加湿器はレジオネラ属菌の温床になることがあります。特に超音波式は水を加熱しないため、水槽の清掃を怠ると細菌が繁殖し、微細な霧とともに室内にまき散らされます。ビル管理士として、水方式の加湿器を使用する場合は水の交換と水槽の清掃を徹底することが重要です。
除湿の方法
加湿の反対である除湿も、夏場の空調では重要な処理です。
| 方式 | 仕組み |
|---|---|
| 冷却除湿 | 冷却コイルで空気を露点温度以下まで冷やし、水蒸気を凝縮させて除去 最も一般的な除湿方法。AHUの冷却コイルで自動的に行われる |
| 吸収式除湿 | 塩化リチウム等の吸湿剤(液体)に水分を吸収させる デシカント空調に使用される |
| 吸着式除湿 | シリカゲル等の吸着剤(固体)に水分を吸着させる デシカント空調に使用される |
覚え方のコツ
吸収=液体(塩化リチウム)が水分を吸い込む
吸着=固体(シリカゲル)の表面に水分がくっつく
「液体は吸収、固体は吸着」と覚えましょう。
エアフィルタの種類と性能
AHUに内蔵されるエアフィルタは、空気中のホコリや粉じんを除去する重要な部品です。
| 種類 | 特徴・用途 |
|---|---|
| プレフィルタ(粗じんフィルタ) | 大きな粒子を除去。主フィルタの前段に設置 捕集効率:計重法で60〜90% |
| 中性能フィルタ | 一般的なオフィスビルで使用 捕集効率:比色法で60〜95% |
| HEPAフィルタ | 0.3µmの粒子を99.97%以上捕集 クリーンルーム・病院の手術室など |
| ULPAフィルタ | 0.15µmの粒子を99.9995%以上捕集 半導体工場など超清浄環境 |
| 活性炭フィルタ | ガス状の汚染物質(臭い・VOC等)を吸着除去 粒子の捕集ではなく化学物質の除去が目的 |
試験のポイント:フィルタの性能試験法には計重法(重量で評価)、比色法(色の変化で評価)、計数法(DOP法)(粒子の数で評価)の3つがあります。粗じんフィルタは計重法、中性能フィルタは比色法、HEPAフィルタは計数法で評価するのが基本です。
理解度チェック
【問題1】加湿方式に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)蒸気方式は空気温度を下げながら加湿する冷却加湿である
(2)水噴霧方式は等温加湿である
(3)蒸気方式は等温加湿であり、衛生的である
(4)超音波式は蒸気方式に分類される
(5)気化式は空気温度を上げながら加湿する
【問題2】空気調和機(AHU)に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)AHUは各室に設置する小型の空調装置である
(2)AHUには外気を取り入れる機能がない
(3)AHUの冷却コイルでは冷房と同時に除湿が行われる
(4)AHUにはエアフィルタが不要である
(5)AHUの送風機はダクトを介さずに直接室内に空気を送る
【問題3】エアフィルタに関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)HEPAフィルタの性能試験は計重法で行う
(2)活性炭フィルタは粒子状物質の除去に用いる
(3)HEPAフィルタは0.3µmの粒子を99.97%以上捕集できる
(4)プレフィルタの性能試験は計数法(DOP法)で行う
(5)中性能フィルタはクリーンルームの最終段フィルタとして使用される
【問題4】除湿方式に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)冷却除湿は空気を露点温度以上に加熱して水分を除去する方式である
(2)吸収式除湿はシリカゲル等の固体吸着剤を用いる
(3)吸着式除湿は塩化リチウム等の液体吸湿剤を用いる
(4)冷却除湿は冷却コイルで空気を露点温度以下に冷却して水分を凝縮させる方式である
(5)吸収式と吸着式は同じ原理である
ビル管理の現場での加湿管理
冬場のオフィスビルでは乾燥クレームが最も多い苦情の一つです。加湿装置の管理はビル管理士の重要な実務です。
実務で押さえるポイント:
- 蒸気式が衛生面で最も安心。ただし蒸気配管の管理コストが高い
- 気化式・水噴霧式は水の衛生管理が命。レジオネラ菌の繁殖を防ぐため、定期的な清掃・消毒・水の交換が必須です
- 建築物衛生法の湿度基準は40〜70%。冬場は40%を下回りやすいので加湿器の運転管理が重要です
- 加湿は湿り空気線図上で「上方向への移動」。等温加湿(蒸気式)は真上に、冷却加湿(水方式)は左上に移動します
まとめ ― 試験で狙われるポイント
この記事の重要ポイント
- AHUはフィルタ・コイル・加湿器・送風機を内蔵した大型空調機。換気機能あり
- FCUは小型で各室設置。換気機能なし
- 蒸気方式=等温加湿(衛生的)、水方式=冷却加湿(衛生管理要注意)
- 冷却除湿=露点温度以下に冷却。吸収=液体、吸着=固体
- フィルタ性能試験:粗じん=計重法、中性能=比色法、HEPA=計数法
- HEPAフィルタ=0.3µmを99.97%以上捕集
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