建築物環境衛生管理技術者 空気環境の調整

冷凍機・ヒートポンプの運転診断|COP・冷水ΔT・吸収式

冷凍機の性能は、銘板COPや「冷水7℃」だけでは判断できません。同じ時刻の冷水流量、往還温度、熱源機入力、冷水・冷却水ポンプ、冷却塔ファンをそろえ、どの範囲を分母にしたCOPかを明確にします。

この記事では、冷水172m³/h・温度差5Kから冷凍能力を約1,000kWと計算。熱源機単体COP5.00が補機込みでは3.70になる例を使い、圧縮式・吸収式・ヒートポンプの原理、運転診断、フロン点検までつなげます。

資料確認日:2026年8月2日。日本冷凍空調工業会のターボ冷凍機ハンドブック2025・吸収式資料、ヒートポンプ・蓄熱センター、環境省のフロン排出抑制法資料を照合しています。

冷凍機は「冷熱を作る側」と「熱を捨てる側」を持つ

ビルの中央熱源では、蒸発器で冷水から熱を取り、冷水ポンプがAHU・FCUへ送ります。水冷式なら凝縮器で冷却水へ熱を渡し、冷却水ポンプと冷却塔で大気へ放熱します。空冷式なら、凝縮器ファンが外気へ直接放熱します。

利用側
AHU・FCU
冷水から冷熱を受け取る
熱源機
蒸発器・圧縮機・凝縮器
低温側から高温側へ熱を移す
放熱側
冷却塔または空冷凝縮器
冷房負荷+入力を捨てる

冷水の設計温度は機器・システムごとに違います。7℃送水・12℃還水は代表例であって、すべての建物の正常値ではありません。設計図書と季節別設定を基準にします。AHU・FCU側の処理は「空気調和機(AHU)とFCUの構造|加湿量・差圧・法定点検」で分けています。

蒸気圧縮式は4機器を冷媒が循環する

  1. 蒸発器:低圧冷媒が蒸発し、冷水・空気等から熱を取る
  2. 圧縮機:冷媒蒸気へ仕事を与え、高圧側へ送る
  3. 凝縮器:冷媒が冷却水・外気へ熱を渡して凝縮する
  4. 膨張装置:高圧液を低圧側へ絞り、蒸発器へ戻す

この記事ではビルの熱源運転に焦点を当てます。p-h線図と各工程の状態変化は「冷凍の原理と蒸気圧縮冷凍サイクル」、容積形圧縮機の詳細は「圧縮機の構造と特徴」を参照してください。

冷水流量と温度差から実冷凍能力を求める

水の密度と比熱をまとめた係数1.163を使うと、冷水側の熱量は次式で概算できます。

冷水側の実冷凍能力

Q=1.163×流量(m³/h)×温度差(K)

=1.163×172×(12-7)=約1,000kW

水の物性を一定とした概算です。流量計と温度計は同時刻値を使い、センサー誤差も確認します。

温度差が小さいだけで「冷凍機効率が悪い」とは決められません。負荷が小さい、流量が過大、バイパス弁が開く、二方弁制御が崩れる、温度計がずれる等でも温度差は縮みます。能力は流量との積で判断します。

機器COP5.00でも補機込みなら3.70になる

上の実冷凍能力を1,000kW、冷凍機入力を200kWとします。冷水ポンプ25kW、冷却水ポンプ30kW、冷却塔ファン15kWも同時に運転している例です。

評価範囲 入力 COP
冷凍機単体 200kW 1,000÷200=5.00
熱源システム 200+25+30+15=270kW 1,000÷270=3.70

COPが違う原因は故障ではなく、評価境界の違いです。BEMSで「熱源COP」を比較するときは、どのポンプ・ファンを含むか、台数制御、計測間隔を統一します。ヒートポンプ・蓄熱センターも、最大COP運転は熱源補機を含む熱源システムで考えるべきとしています。

凝縮器は冷房負荷より大きい熱を捨てる

電動圧縮式の単純な熱収支では、凝縮器の放熱量は蒸発器の冷凍能力と圧縮機入力のおおむね合計です。上の例なら、1,000+200=約1,200kWです。

冷却水温度差を5Kとすれば、必要冷却水量の概算は1,200÷(1.163×5)=約206m³/hです。冷却塔は「室内から取った熱」だけでなく、圧縮機が加えた仕事も捨てます。冷却塔・水質・レジオネラ管理は「ボイラ・冷却塔・蓄熱槽」へ分けます。

圧縮機は容量だけでなく運転領域を見る

形式 圧縮の仕組み 運転で見る点
往復動 ピストンの往復 弁、脈動、油、アンローダ
スクロール 渦巻き間の容積縮小 複数台制御、液戻り、発停
スクリュー ロータ間の容積縮小 油、内容積比、スライド弁・回転数
遠心(ターボ) 羽根車の速度を圧力へ変換 揚程、サージ、ガイドベーン・回転数

「ターボは部分負荷効率が低い」と一律には言えません。可変速機、冷却水温度、必要揚程、最小能力、台数制御で特性は変わります。遠心式は低流量・高揚程側でサージ領域へ近づくため、機器の運転マップと最小流量条件を守ります。

スクロールやスクリューも小型・大型だけで固定できません。モジュール化、複数圧縮機、インバータで適用範囲は広がっています。形式名より、年間負荷率、最低負荷、停止許容範囲、保守体制で選定します。

吸収式は熱で吸収液を再生する

空調用の臭化リチウム吸収式では、一般に水を冷媒、臭化リチウム水溶液を吸収剤に使います。蒸発器で水冷媒を低圧蒸発させ、吸収器で水蒸気を溶液へ吸収して低圧を維持します。薄くなった溶液を発生器で加熱し、水蒸気を分離して濃溶液へ戻します。

これは化学反応で冷媒を「圧縮」する装置というより、吸収・再生と溶液ポンプで冷媒を循環させる熱駆動サイクルです。熱源には直だきガス、蒸気、温水、排熱等があり、単効用・二重効用等で構成も変わります。

  • 吸収器:吸収熱を冷却水へ捨てる。冷却不足は能力低下につながる
  • 発生器:熱を加えて水冷媒を分離する。燃焼・蒸気条件を管理する
  • 真空:不凝縮ガスの侵入で伝熱・蒸発が悪化するため抽気・気密を確認
  • 吸収液:濃度、腐食抑制、結晶、汚れをメーカー手順で管理する

圧縮式COPと吸収式COPは入力の種類が違う

指標 主な分母 比較時の注意
圧縮式の冷房COP 圧縮機等の電力 ポンプ・塔ファンを含むか確認
吸収式の冷房COP 発生器へ入れる熱量 補機電力、燃料発熱量の基準を確認
ヒートポンプ暖房COP 圧縮機等の電力 外気・温水温度、除霜で変化

圧縮式COPと吸収式COPの数字をそのまま並べて優劣を決められません。電気と熱で分母が異なるため、一次エネルギー、料金、排出係数、排熱の価値、補機、年間負荷で比較します。吸収式は電力デマンドを抑えられる場合がありますが、燃料・蒸気・冷却水を含む総合評価が必要です。

ヒートポンプは低温側から高温側へ熱を運ぶ

ヒートポンプは、空気、水、地中等の低温側から熱を集め、高温側へ利用できる温度で渡す技術です。暖房では凝縮器側の熱が目的になります。冷暖房切替機には四方弁で冷媒経路を切り替えるものがありますが、すべてのヒートポンプが同じ構成・同じ流れ方向ではありません。

同じ運転点での熱収支

低温側から4kWを取り、圧縮機へ1kW入力

高温側は4+1=5kW、暖房COP=5÷1=5

冷房COP4に1を足せば常に暖房COP5、という機種カタログの換算ではありません。同一境界・同一状態の理想的な熱収支例です。

実運転では、外気低下、温水設定上昇、熱交換器着霜、除霜、ポンプ・ファン入力でCOPが変わります。「定格COPが高い」ことと、年間の各運転点で高効率なことを分けます。

COP低下は温度差より先に評価条件をそろえる

  1. 時刻:熱量と電力を同じ集計間隔にする
  2. 境界:熱源機単体か、補機・蓄熱を含むか決める
  3. 負荷:冷水流量×往還温度差で実能力を求める
  4. リフト:蒸発側温度と凝縮側温度の差を確認する
  5. 水系:冷水・冷却水流量、汚れ、バイパス、塔能力を確認する
  6. 機器:冷媒、油、不凝縮ガス、圧縮機制御、吸収液を機種別に見る

冷却水温度が高い、または冷水設定が低過ぎると必要な圧力差が大きくなり、一般に入力は増えます。ただし、流量を増やせば必ず改善するわけでもありません。ポンプ動力と熱交換改善の両方を含むシステムCOPで判断します。

症状から熱源側・水側・負荷側を分ける

症状 候補 確認値
冷水送水温度が上がる 能力不足・凝縮条件悪化 負荷率、冷却水温度、入力
冷水ΔTが小さい 低負荷・過流量・バイパス 流量、弁開度、末端温度
電力だけ増える リフト増・汚れ・制御 冷水/冷却水温度、圧力、COP
吸収式の能力低下 真空・冷却水・吸収液 抽気、温度、濃度、燃焼
空冷HP暖房が周期低下 着霜・除霜・外気条件 外気、霜、除霜時間、温水温度

単一の瞬時値では、正常な容量制御と故障を分けにくくなります。外気温・負荷率ごとの正常時ベースラインを作り、同条件の前年値・整備前後値と比較します。

フロン機器は点検区分と修理前充塡を確認する

フロン類を冷媒に使う業務用冷凍空調機器の管理者には、フロン排出抑制法上の点検・記録等があります。簡易点検は原則3か月に1回以上です。一定規模以上では、十分な知見を持つ者による定期点検も必要です。

  • 空調機器・圧縮機電動機7.5kW以上50kW未満:定期点検3年に1回以上
  • 空調機器・50kW以上:定期点検1年に1回以上
  • 冷凍冷蔵機器・7.5kW以上:定期点検1年に1回以上

7.5kWは冷房能力ではなく圧縮機の電動機定格出力で判断します。常時監視システムを用いた措置等の扱い、複数圧縮機、用途区分は現行手引きで確認してください。漏えいを確認したときは、原則として修理前の追加充塡はできません。機種が吸収式で水冷媒なら、このフロン機器点検表をそのまま当てはめない点にも注意します。

理解度チェック

【問1】冷水流量172m³/h、往還温度差5Kです。係数1.163で求める冷凍能力に最も近いものはどれですか。

  1. 200kW
  2. 430kW
  3. 860kW
  4. 1,000kW
  5. 1,720kW
解答を見る

正解:4
1.163×172×5=約1,000kWです。温度差だけでなく流量との積で能力を求めます。

【問2】冷凍能力1,000kW、冷凍機200kW、3つの補機合計70kWです。適切な説明はどれですか。

  1. 機器COPもシステムCOPも5.00
  2. 機器COP5.00、システムCOP約3.70
  3. 機器COP3.70、システムCOP5.00
  4. 温度差がないので計算不能
  5. 補機はCOPへ含めてはならない
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正解:2
1,000÷200=5.00、1,000÷270=3.70です。比較前に評価境界をそろえます。

【問3】臭化リチウム吸収式冷凍機の説明として適切なものはどれですか。

  1. 冷媒は必ずHFCである
  2. 圧縮機だけで水蒸気を圧縮する
  3. 水を冷媒、臭化リチウム水溶液を吸収剤とし、熱で溶液を再生する
  4. 吸収器では冷却水が不要である
  5. 圧縮式とCOPの分母は必ず同じである
解答を見る

正解:3
吸収・再生と溶液ポンプで循環させます。吸収熱と凝縮熱を捨てる冷却水も重要です。

【問4】フロン類を使う業務用空調機器で、圧縮機電動機定格出力が30kWです。定期点検の頻度として適切なものはどれですか。

  1. 毎月1回以上
  2. 半年に1回以上
  3. 1年に1回以上
  4. 3年に1回以上
  5. 定期点検は一切不要
解答を見る

正解:4
空調機器の7.5kW以上50kW未満は3年に1回以上です。別に簡易点検は原則3か月に1回以上あります。

公式の確認先

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まとめ|実能力・入力・評価境界を同時にそろえる

冷凍機の実能力は冷水流量と往還温度差から求めます。例では172m³/h・5Kで約1,000kW、冷凍機入力200kWなら機器COP5.00、補機70kWを含むシステムCOPは3.70でした。

圧縮式、吸収式、ヒートポンプは入力エネルギーと利用側が異なります。形式名や定格値だけで比べず、冷水・冷却水、リフト、補機、年間負荷、法定点検を同じ境界で確認してください。

資料確認日/最終更新日:2026年8月2日

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