建築物環境衛生管理技術者 空気環境の調整

湿り空気線図の読み方|絶対湿度・露点・結露を計算でつなぐ

湿り空気線図は、空気の「温度」と「水蒸気量」を同じ点で読む道具です。乾球温度と相対湿度から状態点を決めれば、絶対湿度、露点温度、比エンタルピーを読み、冷却でいつ結露が始まるかまで追えます。

この記事では、24℃・60%の空気を例に、絶対湿度11.2g/kg(DA)、露点15.8℃、12℃まで冷却したときの除湿量2.5g/kg(DA)を計算します。前記事のU値計算とは役割を分け、湿気側から結露を診断します。

確認日:2026年8月2日。気象庁の湿度用語、国土交通省の防露資料、NISTの湿り空気物性計算法を照合しています。計算は大気圧101.325kPaの近似値です。

最初に「乾球温度」と「水蒸気量」を分ける

同じ相対湿度60%でも、10℃の空気と30℃の空気では含める水蒸気量が違います。相対湿度は、その温度で飽和する水蒸気量に対する割合だからです。加熱しただけで相対湿度が下がっても、水蒸気を取り除いたとは限りません。

状態量 意味 主な単位
乾球温度 通常の空気温度
相対湿度 同温度の飽和量に対する割合
湿度比 乾き空気1kg当たりの水蒸気質量 kg/kg(DA)
露点温度 水蒸気圧一定で飽和する温度
湿球温度 水の蒸発冷却を反映した温度
比エンタルピー 湿り空気がもつ熱量の指標 kJ/kg(DA)

空調分野では湿度比を「絶対湿度」と呼ぶことがあります。一方、気象・計測分野では単位体積当たりの水蒸気質量[g/m³]を絶対湿度と呼ぶ場合もあります。数値だけでなく、kg/kg(DA)かg/m³かを必ず確認します。

湿り空気線図は2つの既知量から状態点を決める

一般的な湿り空気線図は、横軸が乾球温度、縦軸が湿度比です。曲線は相対湿度、左上の境界は相対湿度100%の飽和線、斜線は湿球温度や比エンタルピー等を表します。線図の種類と気圧で目盛が変わるため、使用する線図の凡例を先に確認します。

  1. 横軸で乾球温度を探す
  2. その温度の縦線と相対湿度曲線の交点を取る
  3. 交点から横に読み、湿度比を得る
  4. 交点から湿度比一定で左へ進み、飽和線との交点で露点を読む
  5. 斜線から湿球温度・比エンタルピーを読む

乾球温度・相対湿度のほか、乾球温度・湿球温度など、独立した2量が分かれば状態点を定められます。読み取り値には線の太さによる誤差があるので、精密な設計計算では物性式や計算ソフトを使います。

24℃・60%の絶対湿度と露点を計算する

大気圧101.325kPa、24℃の飽和水蒸気圧を約2.978kPaとします。相対湿度60%なら、水蒸気分圧pvは2.978×0.60=1.787kPaです。

湿度比の近似式

x=0.62198pv÷(P-pv

x:湿度比[kg/kg(DA)]、pv:水蒸気分圧、P:全圧

x=0.62198×1.787÷(101.325-1.787)=0.0112kg/kg(DA)、つまり乾き空気1kg当たり約11.2gの水蒸気です。

同じ水蒸気分圧のまま空気を冷やすと、約15.8℃で相対湿度100%になります。これが露点温度です。比エンタルピーの近似式 h=1.006t+x(2501+1.86t)へ入れると、約52.6kJ/kg(DA)です。

顕熱冷却は左へ、露点を越えると水蒸気量も減る

区間 空気の変化 線図上の読み方
24→15.8℃ 温度低下、水蒸気量一定 湿度比一定で左へ
15.8℃ 飽和し結露開始 飽和線に到達
さらに冷却 温度と湿度比が低下 左下方向へ

12℃の飽和空気の湿度比は約0.0087kg/kg(DA)です。入口の0.0112との差は0.00245kg/kg(DA)なので、理想的に12℃の飽和状態まで冷却すれば、乾き空気1kg当たり約2.5gが凝縮します。

ただし、実際の冷却コイルを通る空気のすべてが表面温度まで下がるわけではありません。コイルを十分に接触せず通過する空気も混ざるため、出口状態は必ず飽和線上になるとは限りません。「露点後は飽和線だけを進む」は理想化であり、実機では風量、コイル表面温度、バイパス、汚れを確認します。

加熱・加湿・混合は矢印を固定暗記しない

  • 顕熱加熱:水蒸気を加えなければ湿度比一定で右へ進み、相対湿度は下がる
  • 蒸気加湿:水蒸気と熱を同時に加えるため、上方向だけでなく温度も変わり得る
  • 水噴霧による断熱加湿:蒸発に顕熱を使うため、湿度比は増え、乾球温度は下がる
  • 2空気の混合:同じ圧力なら、2状態点を結ぶ線上に混合点が現れ、位置は乾き空気質量流量で決まる

「右=加熱、上=加湿」だけでは、装置の動きを説明し切れません。何を加え、どの熱と水分が出入りしたかを先に判断します。

表面結露は露点と表面温度を直接比べる

24℃・60%の室内空気なら露点は約15.8℃です。サッシ表面が14.5℃なら露点を下回るため、結露リスクがあります。17℃ならその時点では露点を上回りますが、測定誤差や局部的な熱橋、家具裏の空気停滞を考えると余裕は大きくありません。

表面温度の求め方は「熱伝導・対流・放射とU値」で扱っています。湿り空気線図は露点を求め、伝熱計算・実測は表面温度を求める――この2つを比較して初めて結露を判定できます。

内部結露は防湿層の位置だけで断定しない

冬期の日本の一般的な断熱構成では、室内の水蒸気が断熱層へ入るのを抑えるため、室内側の防湿層を連続させる考え方が基本です。しかし「防湿層は常に高温側」とだけ覚えると、冷房期、地域、外張り断熱、透湿性の違い、雨水・空気漏れを見落とします。

国土交通省の資料も、内部結露は夏期にも起こり得ること、防湿気密層の連続性、気流止め、換気等を合わせて検討するよう示しています。実務では次を一体で確認します。

  1. 外壁・屋根・配管からの雨水や漏水を切り分ける
  2. 室内外の温湿度と運転時間を記録する
  3. 断熱材、防湿層、防風層、通気層の位置と連続性を図面・開口調査で確認する
  4. コンセント、配管貫通、梁際等の空気漏れを確認する
  5. 層ごとの温度・水蒸気圧と乾燥可能性を専門計算で評価する

壁内へ運ばれる湿気は水蒸気拡散だけではありません。隙間を通る湿った空気は多量の水分を運ぶため、防湿材の種類だけでなく気密の連続が重要です。

結露トラブルは6段階で切り分ける

  1. 現象を記録:水滴、染み、カビ、腐食の位置・時刻・天候を残す
  2. 空気側を測定:室内外の温度・相対湿度から露点を求める
  3. 表面側を測定:窓、吹出口、冷水管、壁隅の表面温度を測る
  4. 水の経路を分ける:表面結露、壁内結露、配管漏水、雨水浸入、ドレン不良を区別する
  5. 設備・構造を確認:換気、加湿、保温材、熱橋、防湿・気密層を点検する
  6. 再測定:是正前後を近い外気・運転条件で比較する

サーキュレーターや除湿だけで水滴が減っても、漏水や壁内の湿潤が解消したとは限りません。原因ごとに、発湿低減、換気・除湿、断熱・保温、気密・防湿、排水・防水を使い分けます。

理解度チェック

【問1】24℃・60%の空気を、水蒸気を加減せず加熱したときの変化として適切なものはどれですか。

  1. 湿度比が増える
  2. 露点が急上昇する
  3. 相対湿度が下がる
  4. 直ちに結露する
  5. 水蒸気分圧がゼロになる
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正解:3
顕熱だけを加えると湿度比と水蒸気分圧はほぼ一定のまま、飽和水蒸気圧が上がるため相対湿度は下がります。

【問2】24℃・60%、露点15.8℃の室内で、窓の最低表面温度が14.5℃でした。最も適切な判断はどれですか。

  1. 乾球温度より低いだけなので安全
  2. 露点を下回るため結露リスクがある
  3. 相対湿度は不要
  4. 内部結露と断定する
  5. 必ず配管漏水である
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正解:2
表面温度14.5℃は露点15.8℃より低いため、窓表面で凝結する条件です。漏水や壁内結露とは場所と水の経路を分けます。

【問3】湿度比0.0112kg/kg(DA)の空気を冷却し、出口が0.0087kg/kg(DA)になりました。乾き空気1kg当たりの除湿量はどれですか。

  1. 0.25g
  2. 2.5g
  3. 11.2g
  4. 19.9g
  5. 25g
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正解:2
差は0.0025kg/kg(DA)です。kgをgへ直すと2.5g/kg(DA)になります。

【問4】壁内の湿潤原因を調べる対応として最も適切なものはどれですか。

  1. 防湿材の製品名だけで安全と判定する
  2. 冬期の室温だけを測る
  3. 表面を乾かして記録を捨てる
  4. 漏水・空気漏れ・層構成・温湿度を分けて確認する
  5. すべて表面結露と扱う
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正解:4
壁内湿潤は水蒸気拡散だけでなく、雨水・漏水や隙間からの湿気移動でも起こります。層構成と乾燥可能性まで合わせて評価します。

公式の確認先

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まとめ|状態点から露点、除湿量、結露診断へ進む

湿り空気線図は、2つの既知量から状態点を定め、温度、水蒸気量、露点、比エンタルピーを一つにつなぐ道具です。24℃・60%なら湿度比は約11.2g/kg(DA)、露点は約15.8℃です。12℃の飽和状態まで冷却する理想例では約2.5g/kg(DA)を除湿します。

結露診断では、室内空気の露点と対象表面の最低温度を比較します。壁内の湿潤は、防湿層の位置だけで決めず、雨水・漏水、空気漏れ、層構成、季節、設備運転を分けて確認してください。

資料確認日/最終更新日:2026年8月2日

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