建築物環境衛生管理技術者 空気環境の調整

空気調和機(AHU)とFCUの構造|加湿量・差圧・法定点検

AHUは「大きな箱」、FCUは「小さな箱」と覚えるだけでは、設備も試験問題も正しく判断できません。外気と還気をどこで混ぜ、フィルタ・コイル・加湿器・送風機をどの順に通し、室内へ何を供給するかを系統で追います。

この記事では、AHUとFCUの役割を分け、5,000m³/hの空気を湿度比4g/kg(DA)から7g/kg(DA)へ加湿する能力を18kg/hと計算します。加湿装置の月次点検・年次清掃、フィルタ差圧、ドレン異常まで実務につなげます。

資料確認日:2026年8月2日。厚生労働省の建築物環境衛生管理基準・維持管理基準、国土交通省の公共建築設備資料、日本冷凍空調工業会の機器資料を照合しています。

AHUは空気を処理し、FCUは室内負荷を受け持つ

空気調和機(AHU:Air Handling Unit)は、送風機、熱交換器、ケーシング等で構成され、室内空気の再循環、外気取入れ、または両方を行う機器です。冷却・減湿、加熱、加湿、除じん等の必要な機能を組み合わせます。

ファンコイルユニット(FCU)は、ファンと水コイルを中心に室内空気を循環し、主にゾーンの顕熱負荷を処理します。ただし「AHUなら必ず外気を取る」「FCUなら必ずダクトがない」とは限りません。外気処理機からFCU系統へ外気を供給する構成や、ダクト接続形FCUもあります。

方式全体を選ぶ話は「空調方式の選び方|CAV・VAV・FCU・パッケージを比較」、この記事は選んだ機器の中で空気と水がどう動くか、という分担です。

AHUの並びは一例であり、図面で確認する

1 外気・還気
ダンパで混合
必要外気量と室圧を調整
2 ろ過
プレ・主フィルタ
差圧とバイパスを確認
3 コイル
冷却・除湿/加熱
ドレンを排出
4 加湿
蒸気・気化・噴霧
吸収距離を確保
5 送風
給気ダクトへ圧送
風量・静圧を制御

これは代表的な処理順です。実機には、送風機をコイル上流へ置く押込み形、下流へ置く吸込み形、予熱コイル、再熱コイル、全熱交換器を持つ構成があります。保守では名称から決めつけず、機器表、系統図、点検扉の流れ方向を突き合わせます。

コイルでは顕熱と潜熱を分けて見る

処理 湿度比 確認点
加熱 原則ほぼ不変 温度上昇で相対湿度は下がる
露点より上まで冷却 原則ほぼ不変 顕熱中心、結露なし
表面を露点未満へ冷却 低下 凝縮水、ドレン、バイパスファクタ
加湿 上昇 方式により温度・エンタルピーも変化

冷却コイルへ冷水を送っただけで必ず除湿できるわけではありません。コイル表面温度が流入空気の露点を下回り、凝縮水が排出されて初めて湿度比が下がります。コイルが汚れて熱交換が悪い、冷水温度が高い、風量が過大という条件では、室温は下がっても除湿不足になることがあります。

露点・湿度比の求め方は「湿り空気線図の読み方|絶対湿度・露点・結露を計算でつなぐ」で分けて解説しています。

加湿方式は「蒸気」と「水の気化」を分ける

方式 空気側の変化 主な管理点
蒸気式 水分と熱を加える 蒸気質、弁、ドレン、未吸収蒸気
気化式 空気の熱で水を蒸発 加湿材、給水、排水、風速
水噴霧式 微滴を気化させる ノズル、エリミネータ、飛滴、吸収距離
超音波式 微滴を発生させる 水質、槽内衛生、白粉、飛散

蒸気式を「完全な等温加湿」と断定するのは正確ではありません。蒸気は水分とエンタルピーを加えるため、入口状態や蒸気条件で乾球温度も動きます。一方、外部加熱のない理想的な気化加湿は、おおむね等エンタルピーに近い変化となり、乾球温度が下がります。

蒸気式も自動的に衛生上安全とは限りません。蒸気源に薬品が含まれないか、分離器から凝縮水を抜けるか、噴霧後に完全吸収できる直管長があるかを確認します。水方式では給水、停滞水、スライム、排水、加湿材が重点です。

必要加湿量は相対湿度ではなく湿度比差で計算する

給気量5,000m³/h、乾き空気密度を1.2kg(DA)/m³、加湿前後の湿度比を4g/kg(DA)と7g/kg(DA)と仮定します。

加湿能力の概算

乾き空気量=5,000×1.2=6,000kg(DA)/h

必要蒸発量=6,000×(0.007-0.004)=18kg/h

水方式で供給水の85%だけが実際に蒸発する仮定なら、供給水量は18÷0.85=約21.2kg/hです。

18kg/hはこの運転点の水蒸気増加量です。実際の選定では外気と還気の混合状態、室内発湿、漏気、運転率、吸収距離、制御余裕を反映します。設定相対湿度だけを掛け算しても加湿量は求まりません。

相対湿度40〜70%は居室の測定値で評価する

建築物環境衛生管理基準では、空気調和設備を設けている場合の居室の相対湿度は40%以上70%以下です。これは加湿器出口の設定値ではなく、通常使用中の居室で測る空気環境基準です。

冬に40%未満でも、すぐ加湿弁を全開にしません。外気量過大、加湿能力不足、給水停止、蒸気圧不足、加湿材乾燥、センサーずれ、運転時間を順に確認します。測定位置と頻度は「空気環境測定の基準と実務|CO 6ppm・18〜28℃・粉じん計」を参照してください。

加湿装置には月次点検と年次清掃がある

特定建築物の空気調和設備では、冷却塔と加湿装置へ供給する水を水道法第4条の水質基準に適合させる措置が必要です。加湿装置は、使用開始時と使用期間中1か月以内ごとに1回、汚れを点検し、必要に応じて清掃・換水等を行います。さらに、1年以内ごとに1回の清掃が必要です。

月次点検と年次清掃は置き換えられません。点検時は、スプレーノズルの閉塞、エリミネータの汚れ・損傷、噴霧状態、水・蒸気経路の析出物、補給水槽、排水受け、気化式加湿材を確認します。設備を1か月超使用しない期間の扱い等、適用条件も公式基準で確認します。

給気の異臭やスライムを見つけた場合は、単に設定値を下げるのではなく、運転停止範囲、汚染源、清掃方法を施設手順に沿って判断します。レジオネラを含む設備側の初動は「ビルの感染症対策|レジオネラ・結核・カビの初動と法定管理」へ分けています。

フィルタ交換は一律の「差圧2倍」で決めない

厚生労働省の技術上の基準は、ろ材・集じん部の汚れと、ろ材前後の気圧差等を定期に点検し、必要に応じて性能検査・取替えを行うよう求めています。交換判断は、機器表またはメーカーが定める最終圧力損失、風量、室内粉じん、運転時間、外観を組み合わせます。

  • 差圧が徐々に上昇:粉じん堆積、風量低下、ファン動力増を確認
  • 差圧が急に低下:ろ材破損、枠の外れ、バイパス漏れ、測定管外れを疑う
  • 差圧は正常でも粉じん高値:外気量、発生源、フィルタ効率、シール、測定器を確認

高性能フィルタへ交換すると捕集性能だけでなく圧力損失も変わり得ます。既設ファンの余力、フィルタ枠の密閉、実風量を確認せずに高性能化すると、必要換気量を失う場合があります。HEPA、活性炭、電気集じん器の使い分けは「熱交換器と空気浄化装置」で扱います。

コイル・ドレンパン・FCUは同じ水漏れでも原因が違う

  • 冷却不足:コイル汚れ、冷水温度・流量、二方弁、エア噛み、風量を確認
  • ドレンあふれ:排水口閉塞、トラップ封水、勾配、負圧、パン腐食を確認
  • FCUから漏水:結露水、配管継手、弁、保温欠損を別々に追う
  • 異臭:フィルタ、コイル、ドレンパン、加湿材、外気取入口を確認

冷却コイルとドレンパンは微生物が増えやすい湿潤部です。表面を見える範囲だけ拭くのではなく、フィン間の汚れ、排水経路、トラップ、点検後の風量・水漏れまで確認します。

異常は「空気・水・制御」の3経路で切り分ける

症状 最初の確認 次の実測
室温・湿度とも高い 給気温度、冷水弁 冷水往還温度、風量、露点
温度正常・湿度が低い 加湿許可信号、給水 湿度比、加湿量、外気量
給気風量が少ない フィルタ差圧、ダンパ ファン回転数、静圧、実風量
吹出口から水滴 加湿過多、ドレン 吸収距離、給気露点、パン負圧
一室だけ能力不足 FCUフィルタ・弁 水温・流量、吸込吹出温度差

中央監視の開度表示だけでは、弁が実際に動いたか、フィルタから空気が漏れていないかは分かりません。指令値、実測値、現場状態を同じ時刻で記録すると、熱源側・AHU側・末端側の境界が見えます。

理解度チェック

【問1】給気量5,000m³/h、乾き空気密度1.2kg(DA)/m³、加湿前4g/kg(DA)、加湿後7g/kg(DA)です。必要な水蒸気増加量はどれですか。

  1. 3kg/h
  2. 6kg/h
  3. 12kg/h
  4. 18kg/h
  5. 36kg/h
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正解:4
5,000×1.2×(0.007-0.004)=18kg/hです。相対湿度の差ではなく湿度比差を使います。

【問2】AHUとFCUの判断として最も適切なものはどれですか。

  1. AHUは必ず外気だけを処理する
  2. FCUには必ずダクトがない
  3. AHUは再循環・外気取入れ・両方の構成があり、FCUの外気経路も系統図で確認する
  4. FCUは冷媒だけを使う
  5. AHUには送風機がない
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正解:3
名称だけで外気・ダクトの有無を固定せず、構成と系統を確認します。FCUは一般に冷温水コイルを使います。

【問3】運転中のフィルタ差圧が前回より急に低くなり、室内粉じんが増えました。優先確認として適切なものはどれですか。

  1. 差圧が低いので正常と判断する
  2. ろ材破損・枠外れ・バイパス・差圧管を確認する
  3. 加湿弁を全開にする
  4. 冷水温度だけを下げる
  5. 最終圧力損失を一律2倍にする
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正解:2
差圧の急低下は、空気がろ材を通らず漏れている可能性や測定異常を示します。差圧だけで正常・異常を決めません。

【問4】特定建築物の空気調和設備にある加湿装置の管理として適切なものはどれですか。

  1. 年1回清掃すれば使用期間中の点検は不要
  2. 使用開始時だけ点検する
  3. 汚れは臭いが出てから確認する
  4. 使用開始時と使用期間中1か月以内ごとに汚れを点検し、1年以内ごとに清掃する
  5. 井戸水なら水質基準の確認は不要
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正解:4
月次の汚れ点検と年次清掃は別の管理です。供給水にも水道法の水質基準へ適合させる措置が必要です。

公式の確認先

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まとめ|機器名ではなく処理状態と点検値を追う

AHUとFCUは大きさだけでなく、外気・還気、熱媒、ゾーン制御の担当で見分けます。コイルの冷却が露点未満なら除湿が起こり、加湿は湿度比差から能力を求めます。例では5,000m³/hに対して18kg/hでした。

保守ではフィルタ差圧、コイル前後温度、冷水往還温度、加湿量、ドレンを同時刻で記録します。加湿装置は月次点検と年次清掃を分け、異常を空気・水・制御の3経路で切り分けてください。

資料確認日/最終更新日:2026年8月2日

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