建築物環境衛生管理技術者 空気環境の調整

空調方式の選び方|CAV・VAV・FCU・パッケージを比較

空調方式に「大規模なら中央、小規模なら個別」という一つの正解はありません。同じ建物でも、外気は中央処理、室内負荷はFCUやパッケージという組合せがあります。方式名より、熱を何で運び、どこまで個別制御し、換気を誰が受け持つかを見ます。

この記事ではCAV・VAV・FCU・パッケージを比較し、風量75%時の理想ファン動力42%を計算。負荷変動、外気処理、同時冷暖房、保守停止範囲から選定・診断する手順を示します。

資料確認日:2026年8月2日。国土交通省の建築設備設計基準、環境省の変風量・ZEB資料、日本冷凍空調工業会の機器資料を照合しています。

空調方式は4つの問いに分解する

  1. 熱源:中央の冷凍機・ボイラか、各系統のヒートポンプか
  2. 搬送:空気、水、冷媒のどれで熱を運ぶか
  3. 末端制御:ゾーンごとに風量、流量、圧縮機能力をどう変えるか
  4. 外気処理:換気、除湿、加湿、ろ過をどの設備が担うか

国土交通省の建築設備設計基準も、空調方式はゾーニング、設置スペース、温湿度条件、省エネルギー性能等を考慮して選定するとしています。機器名だけでなく、用途と運転条件から組み立てます。

中央方式と個別方式の間には多くの組合せがある

代表構成 熱の運び方 外気・ゾーン制御
中央AHU 機械室から調和空気 AHUで外気処理、CAV/VAVで分配
中央熱源+FCU 冷温水+室内循環空気 外気は別系統を組み合わせることが多い
パッケージ・ビル用マルチ 冷媒+室内循環空気 室内機単位で制御、換気は要確認
ハイブリッド 外気・水・冷媒を併用 外気と室内負荷を別設備で処理

中央方式は「1台の大きなAHUで全館」、個別方式は「各室に完全独立した機器」とは限りません。中央熱源から複数FCUへ水を送り、外気だけを中央空調機で処理する構成もあります。ビル用マルチも、1台の室外機を複数の室内機で共有します。

CAVは風量一定、VAVはゾーン負荷で風量を変える

比較点 CAV(定風量) VAV(変風量)
ゾーン風量 原則一定 最大〜最小の間で変化
負荷追従 給気温度、再熱、運転時間等 主に端末風量、必要に応じ再熱
送風動力 低負荷でも残りやすい 可変速ファン連動で低減可能
注意点 過冷却・再熱・同時損失 最低外気量、気流分布、静圧

CAVでも給気温度一定とは限らず、コイル制御、再熱、発停で負荷へ追従できます。VAVでも給気温度を必ず固定するわけではなく、外気条件や負荷に応じた給気温度リセットを行う場合があります。

VAV端末を絞り過ぎると、必要外気量、室圧、吹出口の到達距離、空気混合が不足します。設計最小風量を「ゼロに近づける値」とせず、換気・負荷・気流の必要量から決めます。

風量75%なら理想ファン動力は約42%

同じ送風機を相似運転し、効率等を一定とみなす理想的なファンの法則では、軸動力は回転数または風量比のおおむね3乗に比例します。

風量比75%の理想計算

P₂÷P₁=(Q₂÷Q₁)³=0.75³=0.4219

定格15kWなら15×0.4219=約6.3kW、理想削減量は約8.7kWです。

実機の入力電力が必ず42%になるわけではありません。モーター・インバータ効率、フィルタ抵抗、ダクトの固定圧力損失、静圧設定、VAV端末の絞りが影響します。環境省の試算例も、年間平均風量75%で約57%削減という条件付きの例です。

端末だけを絞り、AHUファンを一定速のままにすると、ダクト静圧が上がり、省エネ効果は限定されます。VAV開度を見ながらファン回転数・静圧設定を下げる制御まで一体で確認します。

FCUは室内空気を水コイルで冷却・加熱する

ファンコイルユニット(FCU)は、送風機と熱交換器を小さなケーシングへ収め、室内空気を冷却・加熱する機器です。中央熱源から冷水・温水を送り、室内側で循環させます。

  • 2管式:同じ往還配管を季節で冷水・温水に切り替える。系統内の自由な同時冷暖房は難しい
  • 4管式:冷水往還と温水往還を別に持つ。ゾーンごとの同時冷暖房へ対応しやすいが、配管・弁・保温が増える

FCUだからダクト不要とは限りません。ダクト接続形もあり、外気を別のAHU・外気処理機から供給するなら外気ダクトが必要です。また、ドレンパン、フィルタ、ファン、コイル、弁、ストレーナの保守スペースを各末端に確保します。

パッケージ空調は冷媒で熱を運ぶ個別熱源方式

パッケージエアコンやビル用マルチは、室外機の冷凍サイクルと室内機を冷媒配管で結びます。小区画ごとの設定・時間帯へ合わせやすく、テナント別計量や段階更新とも相性があります。

ただし、空調運転=換気とは限りません。国土交通省も、家庭用・パッケージ形は室内空気を冷暖房していても換気していない場合があり、別の換気設備を確認するよう案内しています。全熱交換器、外気処理機、換気ファンとの連動・担当範囲を系統図で確認します。

室外機を共有するビル用マルチでは、1台の故障や冷媒漏えいが複数室へ影響します。長い冷媒配管、室外機の吸込み・吹出し短絡、外気温による能力変化、暖房時の除霜、冷媒量とフロン管理も評価対象です。

EHPとGHPは料金だけで決めない

EHPは電動圧縮機、GHPはガスエンジンで圧縮機を駆動する方式です。GHPは受電ピークを抑えやすく、エンジン排熱を暖房運転等へ利用する機種があります。一方で、エンジンオイル、点火系、排気・騒音等の保守が加わります。

どちらが常に安い・高効率とは断定できません。地域の電気・ガス料金、デマンド、冷暖房時間、外気温、部分負荷、更新費、保守契約、排出係数、災害時の供給条件をライフサイクルで比較します。

3つの建物例から方式を組み立てる

  • 小規模テナント・営業時間が別:個別パッケージ+独立した換気。停止範囲と課金を小さくする
  • 大きな事務室・内部負荷が変動:中央AHU+VAV。外気処理と静圧制御をまとめ、周辺部へFCU等を併用
  • ホテル・病院等で方位や時刻により冷暖房要求が混在:4管式FCUや熱回収形システム等を候補にし、衛生・冗長性条件を優先

これは候補を絞る例であり、用途だけで自動決定する表ではありません。室ごとの顕熱・潜熱負荷、必要外気量、温湿度精度、運転時刻、停止許容時間、機械室・天井・シャフトを一覧化して比較します。

方式選定は8項目の要求表で比べる

  1. 最大負荷だけでなく年間の部分負荷と負荷変動
  2. ゾーニング、方位、在室密度、使用時間
  3. 外気量、除湿・加湿、ろ過、室圧
  4. 同時冷暖房の必要性と季節切替期間
  5. 機械室、屋外機置場、天井、配管・ダクトシャフト
  6. 故障時の影響範囲、予備機、更新しながら使えるか
  7. 日常点検、フィルタ・ドレン清掃、法定管理、冷媒回収
  8. 初期費、エネルギー費、保守費、更新費の合計

中央方式は一括管理に向き、個別方式は小区画の発停に向く傾向がありますが、優劣は建物条件で逆転します。COPやAPFだけでなく、実際に長い部分負荷時間と搬送動力を含めて比較します。

不具合は「一室か全系統か」で入口を分ける

  • 一室だけ暑い:設定、窓負荷、VAV風量、FCU弁・ストレーナ、PACフィルタ・エラーを確認
  • 全系統が暑い:熱源能力、冷水温度、AHU給気温度、ダクト静圧、室外機条件を確認
  • 温度は正常でCO₂高値:冷暖房機ではなく、外気処理機・換気ファン・外気ダンパを追う
  • 低負荷時に冷風感:VAV最低風量、給気温度、吹出口到達距離、再熱を確認
  • 冷暖房が打ち消し合う:ゾーン境界、設定値、4管式弁、再熱、外気処理を確認

中央監視画面の指令値だけで結論を出さず、室温、給気温度、風量・水量、弁・ダンパ開度、ファン回転数、機器入力を同時刻で突き合わせます。

改修前は5本の経路を図面と現場で追う

外気、給気・還気、冷温水、冷媒、電源・制御の5経路を色分けすると、更新範囲と残置設備が見えます。天井内のFCUを撤去しても外気ダクトは残す、PACを更新しても換気連動信号は引き継ぐ、といった境界条件を明確にできます。

同時に、機器搬入経路、室外機の熱・騒音、ドレン勾配、点検口、バルブ位置、冷媒回収を確認します。設計性能だけでなく、清掃・交換できる配置かどうかが長期の性能を左右します。

理解度チェック

【問1】同じ送風機を理想的に相似運転し、風量を定格の75%へ下げました。軸動力比に最も近いものはどれですか。

  1. 25%
  2. 42%
  3. 56%
  4. 75%
  5. 100%
解答を見る

正解:2
0.75³=0.421875なので約42%です。実機入力は効率・固定圧損・制御等で変わります。

【問2】VAV端末を絞ったのにAHUファン電力がほとんど下がりません。優先して確認するものはどれですか。

  1. 壁紙の色
  2. 給水残留塩素
  3. ファン回転数とダクト静圧設定
  4. FCUの冷温水切替
  5. 室外機のガス料金
解答を見る

正解:3
端末ダンパだけを絞ってファンが一定速なら、静圧が上がるだけで動力が十分下がりません。可変速・静圧制御を確認します。

【問3】パッケージエアコンで室温は正常ですが、在室時のCO₂が高い状態です。最初に確認するものはどれですか。

  1. 冷媒だけを追加する
  2. 別系統の換気・外気処理設備と連動状態
  3. 室温設定を28℃へ固定する
  4. 室外機を停止する
  5. FCUを4管式へ変更する
解答を見る

正解:2
パッケージ空調は換気をしていない場合があります。換気ファン、全熱交換器、外気処理機、連動スイッチを確認します。

【問4】2管式FCUと4管式FCUの違いとして適切なものはどれですか。

  1. 2管式は必ず換気できる
  2. 4管式は冷媒配管だけを使う
  3. 2管式は同じ往還を冷温水で切り替え、4管式は冷水・温水往還を分ける
  4. 4管式には弁がない
  5. 2管式は中央熱源を使えない
解答を見る

正解:3
2管式は冷水・温水を季節等で切り替えます。4管式は両方の往還を持つため、ゾーン別の同時冷暖房へ対応しやすくなります。

公式の確認先

次に読む記事

まとめ|熱源・搬送・制御・外気処理で選ぶ

CAVは風量一定、VAVは負荷に応じてゾーン風量を変える方式です。理想則では風量75%時のファン動力は約42%ですが、実機では可変速ファンと適切な静圧制御が必要です。FCUは水、パッケージ空調は冷媒で熱を運び、どちらも換気の担当設備を別に確認します。

選定では、ゾーン、部分負荷、温湿度、外気、同時冷暖房、スペース、故障範囲、保守・更新費を並べます。診断では一室か全系統かを分け、空気・水・冷媒・電源制御の経路を実測値で追ってください。

資料確認日/最終更新日:2026年8月2日

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。

-建築物環境衛生管理技術者, 空気環境の調整