建築物環境衛生管理技術者 空気環境の調整

【ビル管理士・空気環境】空調方式の種類と特徴(CAV・VAV・FCU・パッケージ・中央方式と個別方式)

結論:空調方式は「中央方式」と「個別方式」の2系統で整理する

ビルの空調は大きく、機械室に大型の空調機を置いて建物全体を制御する「中央方式」と、各部屋にエアコン等を設置する「個別方式」に分けられます。

中央方式にも定風量(CAV)・変風量(VAV)・ファンコイルユニット方式などさまざまな種類があり、試験ではそれぞれの特徴・メリット・デメリットが毎年のように問われます。科目3で最も配点の多い分野の一つです。

中央方式と個別方式 ― まず大分類を押さえよう

中央方式(セントラル方式)

機械室の大型空調機(AHU)で空気を処理し、ダクトで各室に送る
大規模ビル・病院・劇場に採用
メリット:一括管理、騒音が少ない
デメリット:ダクトスペースが必要、初期コスト大

個別方式

各室または各ゾーンにパッケージエアコン(PAC)等を設置
小〜中規模ビル・テナントビルに採用
メリット:ダクト不要、増設・移動が容易
デメリット:換気機能がない機種が多い

身近な例:家庭のルームエアコンは「個別方式」の典型です。一方、大きなデパートやホテルのロビーでは天井に吹出口だけがあってエアコン本体は見えません。これが「中央方式」で、地下の機械室から処理された空気がダクトを通って送られてきています。

中央方式の分類 ― 全空気方式・空気-水方式・全水方式

中央方式はさらに何を使って熱を運ぶかによって3つに分かれます。

分類 熱の搬送手段 代表的な方式
全空気方式 空気のみで熱を搬送 単一ダクト方式(CAV・VAV)
二重ダクト方式
空気-水方式 空気+水の両方で搬送 ファンコイルユニット+外気処理
放射冷暖房+外気処理
全水方式 水のみで熱を搬送 ファンコイルユニット単独
(換気は別途必要)
空調方式の分類ツリー

空調方式

中央方式(セントラル)

機械室に集中設置

全空気方式
CAV / VAV / 二重ダクト

空気-水方式
FCU+外気処理AHU

全水方式
FCU単独(換気不可)

個別方式(パッケージ)

各フロア・各室に設置

パッケージエアコン
(PAC)

ビルマルチエアコン
(VRF)

試験のポイント:「全水方式は換気ができない」が頻出。水だけで熱を運ぶので新鮮な外気を取り入れる機能がありません。換気が必要な場合は別途換気設備を設ける必要があります。

定風量方式(CAV)と変風量方式(VAV)(★超頻出★)

全空気方式の代表格が、定風量方式(CAV: Constant Air Volume)変風量方式(VAV: Variable Air Volume)です。この2つの違いは最頻出テーマです。

定風量方式(CAV)

送風量は一定のまま、送風温度を変えて温度調整
構造がシンプルで信頼性が高い
換気量が安定する
部屋ごとの温度制御は苦手
各室の負荷が均一な場所(劇場・工場)向き

変風量方式(VAV)

送風温度は一定のまま、送風量を変えて温度調整
各室にVAVユニット(風量調整装置)を設置
個別温度制御が可能
低負荷時に送風量が減り省エネ
事務所ビルで最も一般的

覚え方のコツ

CAV(Constant = 一定)→ 風量が一定、温度を変える
VAV(Variable = 可変)→ 風量を変える、温度は一定
「何が変わるか」=名前の頭文字の反対と覚えると間違えます。名前はAir Volume(風量)のことなので、CAVは「風量が一定」、VAVは「風量が可変」です。

CAVとVAVの比較表

比較項目 CAV(定風量) VAV(変風量)
温度調整方法 送風温度を変える 送風量を変える
個別制御 困難 可能
省エネ性 低い 高い(低負荷時に風量削減)
換気量の安定性 安定 低負荷時に不足の恐れ
適用先 劇場、工場 事務所ビル

超頻出ひっかけ:VAV方式の弱点は「低負荷時に送風量が減って換気不足になる恐れがある」こと。送風量を絞りすぎると外気量も減ってしまい、CO2濃度が上昇します。これを防ぐために最低風量の設定外気量の最低保証が必要です。

ファンコイルユニット(FCU)方式

ファンコイルユニット(FCU)は、小型のファン(送風機)と熱交換コイル(冷温水が流れるパイプ)を組み合わせた装置です。各部屋の天井裏や窓際に設置し、冷温水で空気を冷やしたり暖めたりします。

FCUの特徴

  • 空気-水方式の代表(外気処理用AHUと組み合わせて使う)
  • 各室ごとに個別の温度制御が可能
  • ダクトが不要(配管のみ)→ 天井裏のスペースが小さくて済む
  • 換気機能がないため、新鮮空気の供給には別途外気処理が必要
  • ホテルの客室、病院の病室などに多く採用

現場イメージ:ホテルに泊まると、窓際の天井付近や壁面に小さな空調ユニットがあり、自分で温度を調節できることがあります。あれがFCUです。ホテルでは各客室で好みの温度が異なるため、部屋ごとに制御できるFCUが最適なのです。ただし、FCU単体では外気を取り入れられないので、廊下側のダクトから別途新鮮な空気が供給されています。

冷温水の配管方式

配管方式 特徴
2管式 往き管1本+還り管1本。冷水か温水のどちらか一方のみ流せる
冷暖房の同時運転は不可(季節ごとに切替)
4管式 冷水用2本+温水用2本の計4本。冷暖房の同時運転が可能
コスト・スペースは大きいが快適性は最高
3管式 往き管2本+還り管1本(共通還り)。冷暖同時可能だがエネルギーロスが大きい
現在はほとんど採用されない

もっと詳しく:FCUやAHU(エアハンドリングユニット)の具体的な構造や加湿装置については、空気調和機と加湿装置の記事で詳しく解説しています。

二重ダクト方式

二重ダクト方式は、冷風ダクト温風ダクトの2本を各室まで引き、混合ボックスで両者を混ぜて好みの温度にする方式です。

メリット

各室で冷暖房の同時運転が可能
きめ細かい温度制御ができる

デメリット

ダクトが2本必要(スペース大)
冷温風の混合でエネルギーロスが大きい
設備コストが高い

試験のポイント:二重ダクト方式の最大の欠点はエネルギーロスです。冷たい空気と暖かい空気を混ぜるため、せっかく冷やした(暖めた)エネルギーが無駄になります。省エネの観点から、新しいビルではほとんど採用されません。

個別方式の種類

方式 特徴
パッケージエアコン(PAC) 圧縮機・凝縮器・蒸発器を一体化した空調機
天井カセット型・壁掛け型・床置き型など
ダクト不要で施工が簡単
マルチパッケージ(ビルマルチ) 1台の室外機に複数の室内機を接続
各室で個別に冷暖房を制御可能
中小規模のテナントビルに普及
GHP(ガスヒートポンプ) ガスエンジンで圧縮機を駆動
電力消費が少なくデマンド対策に有効
排熱を暖房に利用できる

現場イメージ:最近のテナントビルで屋上を見ると、大型の室外機1台から何本もの冷媒配管が出ているのが見えることがあります。これがビルマルチです。テナントごとに独立して温度制御でき、入退去時の増設・撤去も比較的簡単なため、テナントビルの空調は中央方式からビルマルチへの移行が進んでいます。

各方式の比較まとめ(試験対策)

方式 個別制御 換気
CAV(定風量) × 困難 ○ 安定
VAV(変風量) ○ 可能 ▵ 低負荷時注意
FCU+外気処理 ○ 可能 ○(外気処理で対応)
二重ダクト ○ 可能 ○ 安定
パッケージ(PAC) ○ 可能 × なし(別途必要)

よくある疑問と試験のひっかけ

Q. VAV方式がCAVより省エネなのはなぜ?

CAVは常に同じ量の空気を送り続けるため、部屋が涼しくてもファンは全力で回っています。一方VAVは負荷が小さいときは風量を絞るので、ファンの消費電力が大幅に減少します。ファンの消費電力は風量の3乗に比例するため、風量を半分にすると電力は約1/8になります。

Q. FCUだけで空調は完結する?

いいえ。FCUは室内空気を循環させて冷暖房するだけで、新鮮な外気を取り入れる機能はありません。建築物衛生法の換気基準を満たすには、別途外気処理用のAHU(空気調和機)やダクトが必要です。換気量の計算については「換気の基礎と換気量計算」を参照してください。

理解度チェック

【問題1】変風量(VAV)方式に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)送風温度を変化させて室温を制御する方式である
(2)各室ごとの個別温度制御はできない
(3)低負荷時に送風量を減らすことで省エネになる
(4)定風量方式より換気量が安定している
(5)劇場や工場に最も適した方式である

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正解:(3)
VAV方式は送風温度を一定にして風量を変えて室温を制御します。各室のVAVユニットで個別に風量を調整できるため個別制御が可能です。低負荷時は風量を減らして省エネになりますが、その分換気量が不足するリスクがあります。劇場は均一空調が求められるためCAVが適しています。

【問題2】ファンコイルユニット(FCU)に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)FCU単体で十分な換気が可能である
(2)FCUは全空気方式に分類される
(3)FCUは各室ごとの温度制御が可能である
(4)FCUにはダクトの敷設が必要である
(5)FCUは冷房専用の機器である

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正解:(3)
FCUは各室に設置して個別に温度制御できます。ただし換気機能はないため、外気処理用AHUとの併用が必要です。FCUは空気-水方式(または全水方式)に分類され、冷温水を切り替えることで冷暖房の両方に対応します。ダクトは不要で、冷温水の配管のみで済みます。

【問題3】空調方式に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)全水方式は換気と空調を同時に行える方式である
(2)二重ダクト方式はエネルギー効率が高い省エネ方式である
(3)パッケージエアコンには換気機能が内蔵されている
(4)4管式FCUは冷暖房の同時運転が可能である
(5)CAV方式は各室の個別温度制御に優れている

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正解:(4)
4管式FCUは冷水と温水を別々の配管で供給するため、冷暖房の同時運転が可能です。全水方式は換気ができません。二重ダクト方式は冷温風を混合するためエネルギーロスが大きいです。パッケージエアコンには一般的に換気機能はありません。CAV方式は個別制御が困難です。

【問題4】中央方式の空調に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)全空気方式は空気と水の両方で熱を搬送する
(2)空気-水方式の代表的なものがFCUと外気処理AHUの併用である
(3)中央方式は個別方式よりも設備費が安い
(4)中央方式はダクトスペースが不要である
(5)全空気方式は配管のみで熱を搬送する

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正解:(2)
空気-水方式はFCU(水による冷暖房)と外気処理用AHU(空気による換気)を組み合わせた方式です。全空気方式は空気のみで熱を搬送し、全水方式は水のみです。中央方式はダクトスペースが必要で、設備費は個別方式より高いのが一般的です。

ビル管理の現場での空調方式の選び方

実際のビルでは、フロアや用途によって複数の空調方式を組み合わせるのが一般的です。

実務での使い分け:

  • 事務室フロア → VAV方式やFCU+外気処理方式が主流。各部屋の温度を個別に調整できることが重視されます
  • ホール・会議室 → CAV方式。大空間で均一な温度が求められる場所に向いています
  • サーバールーム → PAC(パッケージ)の冷房専用機。24時間365日の確実な冷却が必要です
  • テナントビル → ビルマルチ(VRF)が増加中。テナントごとの個別空調と課金管理が可能です

ビル管理士として日常点検では、冷凍機ダクト・送風機の状態確認が欠かせません。空調方式の全体像を理解したうえで、各機器の保守管理に進みましょう。

まとめ ― 試験で狙われるポイント

この記事の重要ポイント

  • 空調方式は中央方式(全空気・空気-水・全水)と個別方式(PAC・ビルマルチ)に大別
  • CAV:風量一定+温度可変。VAV:温度一定+風量可変(省エネ、個別制御可)
  • VAVは低負荷時に換気不足のリスクがある
  • FCUは換気機能なし→外気処理AHUとの併用が必要
  • 2管式=冷暖切替のみ、4管式=冷暖同時運転可能
  • 二重ダクト方式はエネルギーロスが大きい(冷温風の混合)
  • 全水方式は換気ができない

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