換気計算では、外気量、換気回数、1人当たり外気量を分けてください。空調機の送風量が大きくても、その大半が還気なら換気量は増えません。また、第1〜3種という名称だけで正圧・負圧が保証されるわけではなく、給排気の実測バランスと空気の通り道が重要です。
この記事では、12人の事務室を例に、CO₂収支から必要外気量393m³/h、室容積134.4m³から換気回数2.92回/hを計算し、CO₂が上がったときの診断手順までつなげます。
確認日:2026年8月2日。厚生労働省の建築物環境衛生管理基準、国土交通省の換気資料、現行の建築基準法施行令、CDC/NIOSHの換気資料を照合しています。
換気は「室内空気を動かすこと」ではなく外気と入れ替えること
換気量は、室内へ取り入れた外気、または室外へ排出した空気の量です。室内機やファンコイルユニットが室内空気を循環させても、外気が加わらなければ換気には数えません。
| 量 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| 外気量Q | 1時間に導入・排出する外気 | m³/h |
| 換気回数n | 外気量を室容積で割った値 | 回/h |
| 1人当たり外気量q | 外気量を在室人数で割った値 | m³/(h・人) |
| 総送風量 | 外気と還気を含む吹出し量 | m³/h |
たとえば総送風量5,000m³/hの空調機でも、外気が500m³/hなら外気量は500m³/hです。フィルタを通した還気は粒子を減らせても、在室者由来のCO₂を屋外へ捨てる働きはありません。
自然換気と第1〜3種機械換気を整理する
自然換気は風圧差や室内外温度差を利用します。風向、外気温、開口、建物高さで量と向きが変わるため、設計値どおりかは条件付きです。機械換気は送風機の置き方で3種類に分けます。
| 方式 | 機械で動かす側 | 圧力の傾向 |
|---|---|---|
| 第1種 | 給気・排気 | 風量差で調整可能 |
| 第2種 | 給気 | 正圧になりやすい |
| 第3種 | 排気 | 負圧になりやすい |
第2種は清浄側から周囲へ空気を流したい室、第3種は臭気・湿気・汚染空気を周囲へ漏らしたくない室で使われます。ただし、ドア開放、隙間、風、煙突効果、隣室の排気で圧力は変わります。「第2種だから必ず正圧」「第3種だから必ず負圧」とせず、差圧と気流方向を測ります。
給気と排気の差から空気の流れを読む
ある室への機械給気が500m³/h、機械排気が420m³/hなら、定常時は差の約80m³/hがドア隙間等から外へ出る方向です。逆に給気420m³/h、排気500m³/hなら、不足する約80m³/hが周囲から入る方向になります。
これは風量収支の第一近似です。実際には、ダクト漏れ、隣室との移送空気、外壁の浸入・漏出、扉の開閉も収支へ入ります。感染隔離室やクリーンルームのように圧力管理が重要な場所は、風量差だけでなく差圧計とスモーク等で方向を確認します。
CO₂収支から必要換気量を求める
室内でCO₂が一様に混ざり、発生量と外気量が一定で、定常状態に近いと仮定すると、必要外気量は次式で求められます。
定常CO₂収支
Q=K÷(Ci-Co)
Q:外気量[m³/h]、K:室内CO₂発生量[m³/h]、Ci・Co:室内・外気の体積比
例として、在室者12人、1人のCO₂発生量を0.018m³/h、室内目標1,000ppm、同時に測った外気450ppmとします。0.018はこの計算例の条件で、代謝量、体格、活動によって変わります。
- K=0.018×12=0.216m³/h
- 濃度差=(1,000-450)×10-6=0.00055
- Q=0.216÷0.00055=392.7m³/h
必要外気量は約393m³/h、1人当たりでは393÷12=32.8m³/(h・人)です。ppmをそのまま分母へ入れず、10-6の体積比に直します。
外気CO₂を400ppmへ固定しない
外気濃度Coは地域、時間、交通、外気取入口の位置で変わります。問題文の値か、外気取入口付近で同時に測った値を使います。外気値をゼロにすれば必要量を過小評価し、いつでも400ppmと固定すれば現場測定とのずれが生じます。
室内1,000ppmは、特定建築物の空調・機械換気設備で「おおむね適合」させる建築物環境衛生管理基準です。急性中毒の境界や、感染者の有無を示す値ではありません。CO₂は在室者と外気導入の変化を調べる手掛かりですが、感染性粒子、VOC、CO、粉じんを直接測るものではありません。
換気回数は外気量を室容積で割る
先ほどの部屋を床8m×6m、天井高2.8mとすると、室容積Vは8×6×2.8=134.4m³です。
換気回数
n=Q÷V=393÷134.4=2.92回/h
理想的に混合したとき、室容積の約2.92倍に相当する外気を1時間に供給する量です。
「2.92回で室内空気が全部新品になる」という意味ではありません。混合、滞留域、給排気の短絡があるからです。また、同じ2.92回/hでも在室密度が違えば1人当たり外気量は変わります。用途・発生源に応じて、m³/h、回/h、m³/(h・人)を使い分けます。
建築基準法の2つの換気量を混同しない
建築基準法施行令には、居室の必要有効換気量をV=20Af÷Nで求める規定があります。Afは床面積、Nは実況に応じた1人当たり占有面積です。Af=120m²、N=6m²/人なら、V=20×120÷6=400m³/hです。
一方、シックハウス対策の常時機械換気は、住宅等の居室で0.5回/h以上、その他の居室では原則0.3回/h以上という区分があります。「建築基準法はどの居室も0.5回/h」と一括しません。さらに、これらの設計基準と、特定建築物のCO₂ 1,000ppm以下という維持管理基準は別の入口です。
CO₂が高いときはセンサーから風量まで順に調べる
- 測定を確認:校正状態、測定位置、呼気・窓・吹出口の直撃、外気値を確認する
- 人数を確認:実在室者、会議・イベント、利用時間を記録する
- 外気経路を確認:外気ダンパ、フィルタ、給排気ファン、ベルト、インバータ指令を点検する
- 風量を測る:設計値・試運転値と、外気・給気・排気・移送空気を比較する
- 分布を確認:給気が排気へ短絡していないか、家具・間仕切りで滞留域がないかを見る
- 制御を確認:VAV最低風量、CO₂需要制御、運転時刻、全熱交換器の状態を調べる
壁付けCO₂センサーが1台だけなら、室全体を代表しないことがあります。外気や吹出口の直風で低く出る場合、混雑部から離れて高濃度を見逃す場合があります。センサー値だけで風量を絞らず、最低外気量と他室への配分を守ります。
換気回数と換気効率は別の指標
換気回数は量を示しますが、給気がどこまで届いたかは示しません。給気口の近くから排気口へ直行すれば、室奥の空気齢は長いままです。
- 空気齢:外気が給気されてから、その場所へ届くまでの時間
- 空気余命:その場所から排気されるまでの残り時間
- 局所平均空気齢:室内の特定点における空気の新しさを表す指標
異常時はCO₂分布やトレーサー測定を使い、吹出口・吸込口、間仕切り、熱上昇流を合わせて見ます。置換換気が常に混合換気より優れるとも限らず、冷暖房負荷、汚染源位置、給気温度、室形状に合う方式を選びます。
理解度チェック
【問1】総送風量5,000m³/h、外気量500m³/h、残りが還気の空調機があります。換気量として扱う値はどれですか。
- 0m³/h
- 500m³/h
- 4,500m³/h
- 5,000m³/h
- 5,500m³/h
【問2】12人、1人当たりCO₂発生量0.018m³/h、室内1,000ppm、外気450ppmの定常必要外気量に最も近いものはどれですか。
- 39m³/h
- 216m³/h
- 393m³/h
- 550m³/h
- 1,000m³/h
【問3】室容積134.4m³、外気量393m³/hの換気回数に最も近いものはどれですか。
- 0.34回/h
- 1.00回/h
- 1.46回/h
- 2.92回/h
- 5.85回/h
【問4】第3種換気の室で臭気が廊下へ漏れています。最初の診断として適切なものはどれですか。
- 第3種なので負圧と決める
- 室温だけを上げる
- 給排気風量・差圧・扉開閉・移送経路を確認する
- CO₂だけで臭気源を特定する
- 給気口をすべて塞ぐ
公式の確認先
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まとめ|量・人数・流れの3面で換気を評価する
換気量は外気のm³/h、換気回数は外気量÷室容積、1人当たり外気量は外気量÷人数です。12人の例では、CO₂収支から約393m³/h、室容積134.4m³なら約2.92回/hとなりました。
現場では、方式名やCO₂の一点測定だけで結論を出しません。外気値、人数、外気ダンパ、フィルタ、給排気風量、差圧、空気分布、制御を順に確認し、必要量が実際の呼吸域へ届いているかまで閉じてください。
制度・資料確認日/最終更新日:2026年8月2日
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