結論:光は「快適」にも「健康被害」にもなる
光はオフィスの快適性に直結する環境要素です。適切な照明は作業効率を上げますが、不適切な光環境は眼精疲労・頭痛・VDT障害の原因になります。また、紫外線や電離放射線など目に見えない電磁波も健康に影響を与えます。
試験では毎年1〜2問出題されます。この記事で科目2「建築物の環境衛生」の最後のテーマを仕上げましょう。
光の基礎用語 ― 4つの量を整理しよう
| 用語 | 単位 | 意味 |
|---|---|---|
| 光束 | lm(ルーメン) | 光源から出る光の総量 |
| 光度 | cd(カンデラ) | ある方向への光の強さ |
| 照度 | lx(ルクス) | 面に届く光の明るさ(1 lx=1 lm/m2) |
| 輝度 | cd/m2 | 光源や面の「まぶしさ」。グレア(まぶしさ)の評価に使う |
覚え方のコツ:「照度(lx)=机の上がどれだけ明るいか」「輝度(cd/m2)=光源がどれだけまぶしいか」と覚えましょう。ビル管理で主に測定・管理するのは照度です。
照度の目安
| 場所・作業 | 推奨照度(JIS Z 9110) |
|---|---|
| 一般的な事務作業 | 300〜750 lx |
| 精密な事務作業(設計・製図等) | 750〜1,500 lx |
| 廊下・階段 | 50〜100 lx |
| 便所・洗面所 | 100〜200 lx |
事務所衛生基準規則の照度基準:精密な作業=300 lx以上、普通の作業=150 lx以上、粗な作業=70 lx以上。建築物衛生法の管理基準にはない(事務所衛生基準規則の数値)ので注意。
グレア(まぶしさ)と光環境の質
グレアとは、視野の中に極端に明るい部分があることで生じる不快感やまぶしさのことです。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 不快グレア | 不快感・疲労を引き起こす(例:窓からの直射光) |
| 減能グレア | ものが見えにくくなる(例:対向車のヘッドライト) |
ビル管理との関係:オフィスの照明設計ではグレアの防止が重要です。照明器具にルーバー(遮光板)を付けたり、パソコン画面への映り込みを防ぐ配置にしたりすることで、グレアを軽減できます。
紫外線と赤外線
| 種類 | 波長 | 作用・影響 |
|---|---|---|
| 紫外線(UV) | 100〜400 nm | 殺菌作用(253.7 nm)、皮膚の日焼け・皮膚がん、白内障、ビタミンD合成促進 |
| 可視光線 | 380〜780 nm | 人間の目で見える光 |
| 赤外線(IR) | 780 nm〜 | 熱作用(体を温める)、白内障(ガラス工の白内障) |
ひっかけ注意:紫外線も赤外線も白内障の原因になります。ただし原因は異なり、紫外線は水晶体のタンパク質変性、赤外線は熱による損傷です。「白内障の原因は紫外線のみ」は誤り。
VDT作業(情報機器作業)と健康
VDT(Visual Display Terminal)作業、現在は情報機器作業と呼ばれるパソコン等のディスプレイを使った作業は、現代のオフィスで避けられません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 健康影響 | 眼精疲労(ドライアイ)、肩こり・腰痛、頭痛、精神的ストレス |
| 画面の照度 | 500 lx以下(画面への反射を防ぐため明るすぎない方が良い) |
| 書類・キーボードの照度 | 300 lx以上 |
| 作業時間管理 | 1時間連続作業ごとに10〜15分の休憩を取ることが望ましい |
試験のポイント:VDT作業の照度は「画面は500 lx以下」「書類は300 lx以上」です。画面は明るすぎると反射が起きて見づらくなるため、通常のオフィスの照度(300〜750 lx)の中でバランスを取ります。
電離放射線と非電離放射線
電磁波はエネルギーの大きさ(周波数の高さ)によって電離放射線と非電離放射線に分けられます。
| 分類 | 種類 | 健康影響 |
|---|---|---|
| 電離放射線 (原子を電離する力あり) |
α線、β線 | 細胞の直接損傷 |
| γ線、X線 | 透過力が強い。被ばくで白血病・がんのリスク増加 | |
| 中性子線 | 非常に透過力が強い | |
| 非電離放射線 (電離する力なし) |
紫外線 | 皮膚がん、白内障 |
| 可視光線・赤外線 | 熱作用 | |
| マイクロ波・電波 | 電子レンジ等に利用 |
ひっかけ注意:紫外線は非電離放射線です。「紫外線は電離放射線である」は誤り。紫外線はエネルギーが電離放射線ほど大きくないため、原子を電離する力はありません。
電離放射線の被ばくによる健康影響
確定的影響
一定の線量(しきい値)を超えると必ず発生
例:脱毛、皮膚の紅斑、白内障、不妊
確率的影響
しきい値がなく、線量が増えると発生確率が上がる
例:がん、白血病、遺伝的影響
電磁波スペクトルの全体像 ― 位置関係を整理
電磁波の波長と分類(短い波長 → 長い波長)
電離放射線
γ線・X線
紫外線
100-400nm
可視光線
380-780nm
赤外線
780nm〜
マイクロ波・電波
長波長
← 波長が短い(エネルギー大)|波長が長い(エネルギー小)→
紫外線から右はすべて非電離放射線です。γ線・X線が電離放射線。
ビルの現場で「なぜ光環境の管理が必要か」― 実務の視点
ビル管理の仕事では、テナントからの照明に関するクレームや相談は意外と多いものです。実務で知っておくべきポイントを整理します。
現場でよくある光環境のトラブル
- 照度不足のクレーム:蛍光灯やLEDの経年劣化で照度が落ちていることに気づかないケースが多い。定期的な照度測定が重要
- 窓際のグレア問題:西日がきつい部屋では、パソコン画面が見づらいという声が出やすい。ブラインドの角度調整やフィルムの貼付で対応
- VDT作業環境の配置ミス:窓に向かってパソコンを配置すると逆光になり、目が疲れやすくなる。照明の配置とデスクの向きを合わせて計画する
- 非常灯・誘導灯の点検:停電時の避難経路確保のため、非常用照明の照度基準(床面で1 lx以上)を定期点検で確認する
試験では「VDT作業の照度基準」「紫外線と赤外線の健康影響の違い」「電離と非電離の区別」が最頻出です。特にVDTの数字(画面500 lx以下・書類300 lx以上)は丸暗記で対応できるので、確実に得点しましょう。
関連記事で知識を広げよう
光・電磁波の知識は、消毒法や音環境の分野ともつながります。あわせて学習すると理解が深まります。
- 音・振動と健康 ― 光以外の物理的環境要因。騒音レベルや振動の健康影響を学ぶ
- 消毒法と溶液濃度計算 ― 紫外線消毒(253.7nm)の詳しい特性と限界を確認する
- 温熱環境と体温調節 ― 赤外線の熱作用と関連。放射温度の概念をあわせて学ぶ
- 光・電磁波・放射線と健康 ミニテスト【第1回】 ― この記事の内容を5問で復習
- 【午前科目】科目1・2・3の出題傾向と攻略法 ― 科目2全体の勉強法はこちら
まとめ ― 試験で狙われるポイント
この記事の重要ポイント
- 照度(lx)=面の明るさ、輝度(cd/m2)=まぶしさ
- VDT作業:画面500 lx以下、書類300 lx以上、1時間ごとに10〜15分休憩
- 紫外線の殺菌波長=253.7 nm。紫外線も赤外線も白内障の原因
- 紫外線は非電離放射線(電離放射線ではない)
- 電離放射線:確定的影響(しきい値あり)と確率的影響(しきい値なし)
- グレア(まぶしさ)は不快グレアと減能グレアの2種類
理解度チェック
【問題1】光に関する用語と単位の組み合わせとして、正しいものはどれか。
(1)照度 ―― cd(カンデラ)
(2)光束 ―― lx(ルクス)
(3)輝度 ―― lm(ルーメン)
(4)照度 ―― lx(ルクス)
(5)光度 ―― lm(ルーメン)
【問題2】VDT作業(情報機器作業)に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)ディスプレイ画面の照度は1,000 lx以上が望ましい
(2)書類やキーボード上の照度は300 lx以上が望ましい
(3)連続作業時間に制限はない
(4)画面への反射(映り込み)は作業効率に影響しない
(5)VDT作業による健康影響は視覚のみである
【問題3】電磁波に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)紫外線は電離放射線に分類される
(2)赤外線は白内障の原因にはならない
(3)X線は非電離放射線に分類される
(4)紫外線は非電離放射線に分類される
(5)マイクロ波は電離放射線に分類される
【問題4】電離放射線の健康影響に関する記述のうち、正しいものはどれか。
(1)確定的影響にはしきい値がない
(2)確率的影響にはしきい値がある
(3)がんや白血病は確定的影響に分類される
(4)がんや白血病は確率的影響に分類される
(5)放射線被ばくによる脱毛は確率的影響である
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。