建築物の環境衛生 建築物環境衛生管理技術者

消毒法と希釈計算|次亜塩素酸ナトリウム・ppm・紫外線を使い分け

消毒は「強い薬剤を濃く使う」ほどよいわけではありません。対象となる微生物、手指・床・飲料水などの用途、製品の有効成分、必要濃度と接触方法を先に決めます。その後で、原液量を計算します。

希釈計算の基本は C1V1=C2V2 です。ただし、計算が合っていても用途を取り違えれば安全な消毒にはなりません。この記事では、選定から調製・確認までを一つの手順にします。

確認日:2026年8月2日。厚生労働省の消毒・除菌情報、ノロウイルスQ&A、建築物衛生の技術基準、水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針、現行の水道法施行規則を照合しています。

結論|方法より先に「何を、何のために」を決める

確認すること 判断例 間違えやすい点
対象 細菌・ウイルス・原虫 微生物を一括りにする
場所・物 手指・床・器具・飲料水 手指用を設備へ流用する
製品 有効成分・濃度・期限 商品名だけで判断する
処理条件 濃度・量・時間・温度 濃度だけ合わせる
処理後 水拭き・すすぎ・測定 残留や腐食を確認しない

洗浄と消毒も別の工程です。汚物や有機物が残れば薬剤が消費され、対象面へ十分に届きません。先に汚れを安全に除去し、指定された方法で消毒します。患者発生時の設備側の初動は「ビルの感染症対策」も確認してください。

物理的方法と化学的方法の役割

物理的方法
加熱、紫外線、ろ過など。薬剤の残留を避けられる一方、温度・照射量・濁り・孔径などの条件管理が必要です。
化学的方法
エタノール、次亜塩素酸ナトリウムなど。対象、材質、濃度、接触、換気、残留を製品表示と公的手順に合わせます。

「この方法ならすべての微生物に効く」という覚え方は危険です。例えばノロウイルス対策では、厚生労働省は調理器具等を十分に洗浄した後の約200ppm次亜塩素酸ナトリウムや、85℃以上・1分以上の加熱などを示しています。一方、手指には石けんと流水による手洗いが基本です。

次亜塩素酸ナトリウムは用途ごとの濃度を使う

次亜塩素酸ナトリウムは塩素系漂白剤などの有効成分です。酸化作用を利用しますが、必要濃度は用途で異なります。次の数値を「万能の推奨濃度」として流用しないでください。

公的情報の例 示される濃度 用途・条件
ノロ対策 約200ppm 洗浄後の器具・床等
ノロ汚物廃棄 約1,000ppm 袋内で廃棄物を浸す例
物品の新型コロナ対策 0.05% 拭いた後に水拭き

200ppmは0.02%、1,000ppmは0.1%です。ただし、汚物の処理方法、防護具、接触のさせ方、すすぎや水拭きまで含めて公的手順と製品表示に従います。酸性洗剤等と混ぜると有害な塩素ガスが発生します。換気を行い、皮膚や目を保護し、他の薬剤と混合しません。

次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水は別物

項目 次亜塩素酸Na 次亜塩素酸水
性質 代表的にはアルカリ性 次亜塩素酸を主成分とする酸性溶液
管理 製品の有効塩素を確認 製法・pH・有効塩素・期限を確認
注意 酸性製品と混ぜない 他製品と混合・併用しない

名前が似ていても同じ液ではありません。次亜塩素酸ナトリウムを水で薄めただけでは、次亜塩素酸水にはなりません。「塩素系だから同じ濃度で同じ使い方ができる」と判断せず、製品の区分と使用方法を読みます。

エタノールは対象と濃度範囲を確認する

厚生労働省は、新型コロナウイルス対策の手指や物品について、濃度70%以上95%以下のエタノールを示しています。70%以上を入手しにくい場合は、60%台でも一定の有効性があるとの補足があります。

これは「70〜80%だけがあらゆる微生物に最も効く」という意味ではありません。ノロウイルス、芽胞、汚れた表面などでは別の判断が必要です。引火性があるため火気から離し、空間噴霧は行いません。使用対象と製品表示を確認します。

紫外線は波長だけでなく照射量と水質を見る

水道のクリプトスポリジウム等対策指針は、対象となる紫外線処理設備について253.7nm付近を使い、水量の95%以上へ10mJ/cm²以上を確保する要件を示しています。さらに、濁度2度以下、色度5度以下、紫外線透過率75%超などの水質条件があります。

したがって、ランプが点灯しているだけでは処理成立を確認できません。流量、紫外線強度、濁度、透過率、ランプ・石英管の汚れを監視します。紫外線には配管下流まで続く残留効果がないため、処理後の再汚染防止も必要です。

希釈計算は4ステップで解く

希釈の基本式

C1V1=C2V2

C1:原液濃度、V1:原液量、C2:調製後濃度、V2:調製後の全量

  1. 用途に合う目標濃度C2を公的手順・製品表示で決める
  2. 原液ラベルの有効成分濃度C1を確認する
  3. %同士、mL同士など、濃度と容量の単位をそろえる
  4. V1=C2V2÷C1で求め、水を足して最終量V2にする

例1|6%原液から200ppmを10L作る

200ppm=0.02%、10L=10,000mLです。

V1=0.02×10,000÷6=33.3mL

原液を約33.3mL量り、水を加えて全量を10Lにします。「10Lの水へ加える」と最終量が10Lを超えるため、試験では問題文の表現にも注意します。

例2|5%原液から1,000ppmを2L作る

1,000ppm=0.1%、2L=2,000mLです。

V1=0.1×2,000÷5=40mL

原液40mLを使い、水を加えて全量2Lにします。現場では、保管中に有効塩素濃度が下がる可能性があるため、開封日・保管条件・期限と製品指示も確認します。

ppm・%・mg/Lを混同しない

表し方 関係 注意
%とppm 1%=10,000ppm 同じ濃度基準で換算
ppmとmg/L 希薄な水溶液で概ね同値 密度・定義を確認
希釈倍率 原液濃度÷目標濃度 「水の量」と混同しない

質量分率なら1%は10,000ppmです。希薄な水溶液では1mg/Lを概ね1ppmとして扱えますが、濃い原液や密度が1と異なる液では自動的に同じとは限りません。試験問題の定義、製品表示、調製手順を優先します。

貯水槽清掃は「薬液を作る」だけで終わらない

厚生労働大臣が定める技術上の基準では、貯水槽清掃後に塩素剤を用いて2回以上槽内を消毒し、使用した塩素剤を完全に排除します。水張り後は給水栓と槽内で検査し、遊離残留塩素0.2mg/L以上、結合残留塩素1.5mg/L以上を確認します。

通常の水道法施行規則第17条が給水栓で求める値は、遊離残留塩素0.1mg/L以上、結合残留塩素0.4mg/L以上です。汚染のおそれがある場合は0.2mg/L・1.5mg/L以上です。通常時の基準と、貯水槽清掃後の確認値を分けて覚えます。空調・給水全体の頻度は「建築物環境衛生管理基準」で整理しています。

調製時の安全チェック

  1. 製品名、有効成分、原液濃度、期限、対象用途を確認する
  2. 換気し、表示に従う手袋・保護眼鏡等を着用する
  3. 酸性洗剤、アンモニア系製品、他の消毒剤と混ぜない
  4. 飛散させず、計量器を用途別に管理する
  5. 容器へ名称、濃度、調製日時、用途、注意事項を表示する
  6. 接触後の水拭き・すすぎ・測定を手順どおり行う

計算値は作業許可ではありません。施設の感染対策手順、SDS、製品ラベル、対象材質、関係機関の指示がある場合は、それらを優先します。

理解度チェック

【問1】6%の次亜塩素酸ナトリウム原液から200ppmの液を10L調製します。必要な原液量に最も近いものはどれですか。

  1. 3.3mL
  2. 20mL
  3. 33.3mL
  4. 60mL
  5. 120mL
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正解:3
200ppmを0.02%、10Lを10,000mLへそろえます。V1=0.02×10,000÷6=33.3mLです。水を加えて最終量10Lにします。

【問2】次亜塩素酸ナトリウムの調製・使用として適切なものはどれですか。

  1. 酸性洗剤と混ぜる
  2. 用途を問わず濃いほどよい
  3. 空間へ噴霧する
  4. 有効成分・用途・期限を確認する
  5. 金属へ使用後も拭き取らない
解答を見る

正解:4
製品の有効成分、濃度、期限、対象用途を確認します。酸性製品との混合は塩素ガスの危険があり、金属腐食や人体への影響にも注意が必要です。

【問3】水道のクリプトスポリジウム等対策に用いる紫外線処理設備の判断として適切なものはどれですか。

  1. ランプが点灯すれば水質は問わない
  2. 253.7nm付近の照射量と濁度等を監視する
  3. 処理後も配管内で効果が残留する
  4. 流量が増えても照射量は変わらない
  5. 石英管の汚れは影響しない
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正解:2
対象設備では253.7nm付近の照射量、水量、濁度、色度、透過率、紫外線強度を条件として管理します。紫外線に残留効果はありません。

【問4】貯水槽清掃後の水張りで確認する遊離残留塩素として、技術上の基準に合うものはどれですか。

  1. 0mg/L以上
  2. 0.01mg/L以上
  3. 0.05mg/L以上
  4. 0.1mg/L以上
  5. 0.2mg/L以上
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正解:5
清掃・消毒後の水張りでは、給水栓と槽内で遊離残留塩素0.2mg/L以上を確認します。通常の給水栓基準0.1mg/L以上と混同しないようにします。

公式の確認先

まとめ|用途を決めてから濃度を計算する

消毒法の選定は、対象微生物、場所・物、製品、濃度・時間、処理後確認の順です。次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水を混同せず、紫外線は波長だけでなく照射量と水質まで見ます。

計算ではC1V1=C2V2を使い、%、ppm、mLをそろえます。最後に製品表示と公的手順へ戻り、混合禁止、換気、保護具、表示、測定まで確認して作業を閉じましょう。

制度・資料確認日/最終更新日:2026年8月2日

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