建築物環境衛生管理技術者 建築物衛生行政概論

建築物環境衛生管理基準|空気・水・清掃の数値と頻度

結論から言うと、管理基準は「数値」だけでなく、測る・検査する・点検する・清掃するの4動作で整理すると間違いにくくなります。空気環境は原則2か月、残留塩素は7日、排水・大掃除・ねずみ等の調査は6か月、貯水槽は1年が基本です。

ただし、雑用水のpH・臭気・外観や冷却塔の点検など、旧稿の早見表から抜けていた頻度があります。この記事では現行条文に合わせ、対象設備と動作までセットで整理します。

制度確認日:2026年8月1日。厚生労働省の法律・施行令・施行規則・管理基準解説と、環境省の現行水質基準を確認しています。

この基準がビル管理士の中心になる理由

衛生行政の全体像」で確認した理念を、建物の管理値と作業頻度へ落とすのが建築物環境衛生管理基準です。特定建築物の維持管理権原者には同基準に従う義務があり、建築物環境衛生管理技術者は測定・検査結果を評価して改善へつなげます。

対象建物の用途・面積・届出は「建築物衛生法と特定建築物」で先に判定してください。本記事は対象と分かった後、何をどの基準で管理するかに集中します。

法令は「義務・数値・方法」の順に読む

階層 主な内容 確認する問い
法律第4条 管理基準に従う義務 誰が管理するか
施行令第2条 空気等の基準値 どの状態を保つか
施行規則 測定方法・回数 いつ、どこで測るか
技術上の基準 設備の維持管理方法 どう点検・清掃するか

「基準値以内なら記録不要」「一度測ればよい」という制度ではありません。測定条件、結果、異常時の措置を追えるようにして初めて、維持管理の説明ができます。

空気調和設備の基準値は7項目

項目 現行基準 判定の注意
浮遊粉じん 0.15mg/m3以下 量の上限
一酸化炭素(CO) 6ppm以下 10ppmは2022年3月まで
二酸化炭素(CO2 1,000ppm以下 COと混同しない
温度 18℃以上28℃以下 17℃は2022年3月まで
相対湿度 40%以上70%以下 下限と上限がある
気流 0.5m/s以下 上限
ホルムアルデヒド 0.1mg/m3以下 0.08ppm相当

旧情報に注意:2022年4月1日から、COは10ppm以下から6ppm以下へ、温度下限は17℃から18℃へ改正されています。外気COが高い場合の旧特例も廃止されました。

上の7項目は空気調和設備を設ける場合の整理です。温度・湿度を調節する機能を持たない機械換気設備では、浮遊粉じん、CO、CO2、気流、ホルムアルデヒドの5項目が対象です。設備名称ではなく、浄化・温度・湿度・流量の機能から判定します。

空気は測定位置と頻度まで一組で覚える

空気環境の定期測定は、通常の使用時間中に、各階ごと、居室の中央部、床上75cm以上150cm以下の位置で行います。浮遊粉じん、CO、CO2、温度、相対湿度、気流は2か月以内ごとに1回です。

ホルムアルデヒドは同じ周期ではありません。建築、増築、大規模修繕または大規模模様替え後、使用開始時点から直近の6月1日から9月30日までの期間に1回測定します。超過時は低減策を講じ、翌年の同期間にも再測定が必要です。

また、粉じん・CO・CO2は1日の使用時間中の平均値で基準と比較します。「測定器が一度示した瞬間値」と「法令上の比較値」を混同しないことも大切です。

冷却塔・加湿装置は月次点検と年次清掃を分ける

  • 冷却塔・冷却水:使用開始時と、使用期間中1か月以内ごとに汚れを点検。必要に応じて清掃・換水
  • 冷却塔・冷却水の水管:1年以内ごとに1回清掃
  • 加湿装置:使用開始時と、使用期間中1か月以内ごとに汚れを点検。1年以内ごとに1回清掃
  • 空調設備内の排水受け:使用開始時と、使用期間中1か月以内ごとに汚れ・閉塞を点検

1か月を超えて使用しない期間は月次点検の対象外です。「毎月必ず清掃」ではなく、点検は月次、清掃・換水は必要に応じて、定期清掃は年次と動作を分けます。

飲料水は残留塩素・水質検査・貯水槽を分ける

管理項目 基準・頻度 現場で残すもの
遊離残留塩素 0.1mg/L以上、7日以内ごと 給水栓・値・日時
結合残留塩素 0.4mg/L以上、7日以内ごと 測定方式・値
定期水質検査 主要16項目を6か月以内ごと 水源・採水点・検査結果
消毒副生成物12項目 毎年6月1日~9月30日に1回 採水日・全結果
貯水槽の清掃 1年以内ごとに1回 作業・点検・復旧記録

水道または専用水道から供給される水だけを水源にする場合の定期検査を、旧稿の「11項目」ではなく現在の表に合わせて整理しています。色・濁り・臭い・味などに異常を認めた場合は必要項目をその都度検査し、健康被害のおそれを知った場合は直ちに給水停止と関係者への周知を行います。

2026年のPFOS・PFOA基準をどう読むか

2026年4月1日、PFOSとPFOAが水道水質基準へ追加され、基準は合算で0.00005mg/L以下(50ng/L以下)、水質基準は全52項目になりました。地下水などを水源の全部または一部に用いる建築物が給水開始前に行う全項目検査にも、この基準が反映されます。

一方、水道事業者等に対する「おおむね3か月に1回以上」というPFOS・PFOA検査頻度を、すべてのビルの受水槽以降へ一律に当てはめるのは不正確です。水源、給水設備の区分、建築物衛生法上の検査表を確認して計画を作ります。

雑用水は用途により検査項目が変わる

雨水、下水処理水などを散水・修景・清掃・水洗便所に用いる場合の雑用水が対象です。水道水を雑用水として使う場合は、この雑用水規定の対象外です。

検査項目 基準 頻度
遊離残留塩素 0.1mg/L以上 7日以内ごと
pH 5.8以上8.6以下 7日以内ごと
臭気・外観 異常なし・ほぼ無色透明 7日以内ごと
大腸菌 検出されない 2か月以内ごと
濁度 2度以下 2か月以内ごと

濁度は散水・修景・清掃用水の項目で、水洗便所用水の表にはありません。旧稿のように「残留塩素以外はすべて2か月」とまとめると、pH・臭気・外観の7日周期を落とします。

排水・清掃・ねずみ等は6か月を起点にする

  • 排水設備の清掃:6か月以内ごとに1回
  • 日常清掃:日常に行う
  • 大掃除:6か月以内ごとに1回、定期・統一的に行う
  • ねずみ等の統一的調査:発生場所、生息場所、侵入経路、被害状況を6か月以内ごとに1回
  • 防除措置:調査結果に基づき、その都度必要な措置を行う

「ねずみ等を6か月ごとに薬剤駆除する」は誤りです。定期なのは調査であり、防除は調査結果に基づきます。不必要な薬剤散布を避けるIPMの考え方にもつながります。

年間管理表は頻度だけでなく動作を書く

周期 代表項目 動作
7日以内 残留塩素、雑用水pH等 検査
1か月以内 冷却塔・加湿装置・排水受け 点検
2か月以内 空気環境、雑用水大腸菌等 測定・検査
6か月以内 飲料水主要項目、排水、大掃除、ねずみ等 検査・清掃・調査
1年以内 貯水槽、冷却水管、加湿装置 清掃

実務の台帳には、期限だけでなく、対象設備、場所、担当、実施日、結果、判定、是正、再確認を残します。基準逸脱時は、測定条件の確認、応急措置、原因調査、再測定、恒久対策の順で追える形にします。

理解度チェック

【問1】空気調和設備がある居室で、現行基準に適合する組合せはどれですか。

  1. CO 10ppm以下・温度17~28℃
  2. CO 6ppm以下・温度18~28℃
  3. CO 6ppm以下・温度17~30℃
  4. CO 1,000ppm以下・温度18~28℃
  5. CO 0.15ppm以下・温度20~26℃
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正解:2
2022年4月以降、COは6ppm以下、温度は18℃以上28℃以下です。旧基準値を使わないようにします。

【問2】温度・湿度の調節機能がない機械換気設備で、空気環境の法定測定対象に含まれない組合せはどれですか。

  1. 浮遊粉じん・CO
  2. CO・CO2
  3. 温度・相対湿度
  4. 気流・ホルムアルデヒド
  5. 浮遊粉じん・気流
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正解:3
機械換気設備は温度・湿度の調節機能を持たないため、この2項目は対象に含まれません。

【問3】散水に使う雑用水の定期検査として正しいものはどれですか。

  1. pHは2か月以内ごと
  2. 臭気は6か月以内ごと
  3. 外観は1年以内ごと
  4. pH・臭気・外観は7日以内ごと
  5. 大腸菌は毎日
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正解:4
pH・臭気・外観は7日以内ごと、大腸菌・濁度は2か月以内ごとです。

【問4】冷却塔を4か月連続使用する設備で、基本の管理として適切なものはどれですか。

  1. 4か月後に初めて点検する
  2. 使用開始時と使用中1か月以内ごとに汚れを点検する
  3. 毎週水管を清掃する
  4. 点検せず毎月薬剤だけを投入する
  5. 水管の定期清掃は5年以内ごとでよい
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正解:2
汚れの点検は使用開始時と使用期間中1か月以内ごとです。水管の清掃は1年以内ごとに1回行います。

【問5】2026年4月以降のPFOS・PFOAについて正しいものはどれですか。

  1. 水質基準はPFOS単独で50mg/L
  2. 水質基準項目から削除された
  3. 合算50ng/L以下で、水質基準は52項目
  4. すべてのビルで毎日検査する
  5. 建築物の空気環境基準に追加された
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正解:3
PFOS・PFOAは合算0.00005mg/L以下、つまり50ng/L以下です。建物側の検査計画は水源と法令上の区分から判断します。

公式確認先

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まとめ|値・対象・動作・頻度を一組にする

空気環境は現行のCO 6ppm、温度18~28℃を使い、設備区分と測定位置まで確認します。給水は残留塩素、水質検査、貯水槽清掃を分け、雑用水はpH等の7日周期と大腸菌等の2か月周期を区別します。

排水・大掃除・ねずみ等の調査は6か月が軸ですが、行う動作は同じではありません。年間管理表に「測定・検査・点検・清掃・調査」を書き分け、結果から是正と再確認まで追える記録にしてください。

制度確認日/最終更新日:2026年8月1日

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