建築物の構造概論 建築物環境衛生管理技術者

【ビル管理士・構造概論】建築設備(受変電・非常用電源・消防設備・エレベータ・エスカレータ)

ビルには、電気を届ける受変電設備、停電時に備える非常用電源、火災から命を守る消防設備、そして人や荷物を運ぶエレベータ・エスカレータという4種類の建築設備があります。

ビル管理士試験では、それぞれのしくみ・役割・安全基準がよく問われます。この記事では「電気・消防・搬送」の3本柱に分けて、実務イメージを交えながらわかりやすく解説していきます。

前回の記事「耐震・免震・制震と建築材料」では建物の構造そのものを学びました。今回は建物の中にある「設備」にフォーカスします。

足切り注意! 建築設備は数値がポイント

科目4「建築物の構造概論」は15問しかなく、足切りライン40%=6問正解が必要です。建築設備の分野は数値を覚えるだけで正解できる問題が多いので、得点源にしましょう。「40秒」「1lx」「30m/min」「30度」がキーナンバーです。

⚠ 足切り注意科目! 科目4「構造概論」は全7科目中最少の15問。合格には40%以上(6問正解)が必要です。問題数が少ないぶん1問の重みが大きく、油断すると科目不合格で全体が不合格になります。

結論:ビルの設備は「電気・消防・搬送」の3本柱

ビルの建築設備は、大きく分けると次の3つのグループに整理できます。

グループ 主な設備 ひとことで言うと
電気系 受変電設備・非常用電源 電気を届け、停電に備える
消防系 スプリンクラー・消火栓・火災報知設備 火災を感知し、消す
搬送系 エレベータ・エスカレータ 人や荷物を運ぶ

ビルの建築設備 全体イメージ

電力会社

6,600V送電

受変電設備

100V/200Vに変換

各フロアへ

照明・コンセント・設備

停電時

自家発(40秒)+UPS(瞬時)

消防設備

感知器→報知→スプリンクラー

搬送設備

EV(ロープ式)・エスカレータ

試験対策としては、各設備の数値(電圧・起動時間・速度など)を覚えることが得点につながります。それでは順番に見ていきましょう。

受変電設備

みなさんの家のコンセントは100Vですよね。でも、電力会社から届く電気は6,600V(6.6kV)というとても高い電圧です。

なぜ高い電圧で送るかというと、電圧が高いほど送電中のロス(電力損失)が少ないからです。しかし6,600Vのままでは照明やコンセントには使えません。そこで、ビルの中で電圧を下げる設備が必要になります。これが受変電設備です。

変圧器(トランス)

変圧器(トランス)は、高い電圧を100Vや200Vに変換する装置です。ビルの地下や屋上にある「キュービクル」と呼ばれる金属製の箱の中に収められていることが多いです。

実務のイメージとしては、ビルの地下にある電気室に入ると「ブーン」という低い音が聞こえますが、あれが変圧器の動作音です。

遮断器と断路器

受変電設備には、電気を安全に管理するためのスイッチ類もあります。

名称 役割 ポイント
遮断器(しゃだんき) 事故時に電流が流れている状態で回路を切る ショートや過電流を即座に遮断
断路器(だんろき) 電流が流れていない状態で回路を開く 点検・保守のときに使う

イメージとしては、遮断器は「緊急ブレーキ」、断路器は「エンジンを切ってからドアを開ける」ような関係です。断路器は負荷電流を切ることはできないので、必ず遮断器で電流を止めてから操作します。

進相コンデンサ(力率改善)

力率(りきりつ)とは、電力がどれだけ有効に使われているかを示す数値です。力率が低いと、電気料金が割増になったり、送電ロスが大きくなったりします。

進相コンデンサは、この力率を改善(1.0に近づける)するために使う装置です。モーターやエアコンなど誘導性の負荷が多いビルでは特に重要で、電力会社からのペナルティ料金を避けるためにも設置されています。

非常用電源

ビルで停電が起きたらどうなるでしょうか? エレベータは止まり、真っ暗になり、消防設備も動かなくなってしまいます。そんな事態を防ぐために、ビルには非常用電源が用意されています。

自家発電設備

自家発電設備は、停電時にビル自前のエンジンで電気を作る装置です。主にディーゼルエンジンガスタービンが使われます。

種類 特徴 起動時間
ディーゼルエンジン 効率が高い・小〜中規模ビル向け 40秒以内
ガスタービン 振動が少ない・大規模ビル向け 40秒以内

消防法では、非常用発電設備は停電後40秒以内に電圧を確立することが求められています。この「40秒」は試験でもよく出る数値です。

実務では、ビルの防災センターで月に1回程度、自家発電設備の試運転を行います。「ゴゴゴゴ…」というエンジン音がビル中に響くので、テナントへの事前告知が欠かせません。

UPS(無停電電源装置)

UPS(Uninterruptible Power Supply=無停電電源装置)は、停電が起きた瞬間に電力を供給する装置です。自家発電設備は起動に40秒かかりますが、UPSは蓄電池を使って瞬時に(数ミリ秒で)切り替わります。

サーバールームや医療機器など、一瞬たりとも電気が切れてはいけない機器に接続されています。パソコンを使っている方なら、家庭用の小型UPSを見たことがあるかもしれません。ビル用はそれの巨大版です。

蓄電池

蓄電池は電気を貯めておく装置で、UPSの電源としても使われます。主に鉛蓄電池アルカリ蓄電池が使われ、定期的な点検と交換(寿命は5〜7年程度)が必要です。

非常用照明や誘導灯にも内蔵型の蓄電池が使われており、停電時に自動的に点灯するしくみになっています。

消防設備

火災からビルの利用者を守る消防設備は、大きく分けると「消火するもの」と「知らせる・逃がすもの」に分類できます。

スプリンクラー設備

スプリンクラーは、天井に取り付けられた散水ヘッドから自動的に水を撒いて火を消す設備です。

一般的なオフィスビルで使われるのは閉鎖型スプリンクラーです。ヘッドの中に感熱体(ヒュージブルリンクやガラス球)が入っていて、火災の熱で溶けたり割れたりすると水が出ます。つまり、火災が起きた場所のヘッドだけが作動するしくみです。

一方、開放型スプリンクラーは感熱体がなく、一斉に散水します。劇場の舞台や危険物を扱う場所など、広い範囲を一気に消火する必要がある場所に使われます。

屋内消火栓

屋内消火栓は、ビルの廊下などに設置されている赤い箱の中に入っているホースと筒先の消火設備です。

種類 操作人数 特徴
1号消火栓 2人で操作 放水量が多い・水圧が強い
2号消火栓 1人で操作 操作が簡単・一般の人でも使いやすい

「1号は2人、2号は1人」という数字の組み合わせは試験の定番です。2号消火栓は誰でも使えるように操作を簡略化したタイプで、ホースも軽くなっています。

自動火災報知設備

自動火災報知設備は、火災を自動的に感知して警報を鳴らす設備です。天井に付いている丸い「感知器」がセンサーの役割をしています。

感知器には主に次の3種類があります。

種類 感知するもの 設置場所の例
差動式スポット型 急激な温度上昇 一般的な居室・オフィス
定温式スポット型 一定温度以上になったとき 厨房・ボイラー室(普段から高温の場所)
煙感知器(光電式) 廊下・階段・寝室

差動式は「急に温度が上がったら反応」、定温式は「○○℃を超えたら反応」という違いです。厨房のように普段から温度変化が激しい場所には定温式を使います(差動式だと調理のたびに鳴ってしまいますからね)。

火災発生時の設備連動フロー

火災発生

感知器が検知
(熱 or 煙)

受信機に信号
(防災センター)

警報ベル鳴動
+館内放送

防火戸閉鎖

排煙設備起動

スプリンクラー散水
(閉鎖型:火元のみ)

消防隊到着

誘導灯と非常用照明

誘導灯は、緑色の「非常口」マークのことです。常時点灯していて、停電時も内蔵蓄電池で20分以上(大規模建物は60分以上)点灯し続けます。

非常用照明は、停電時に自動的に点灯し、避難経路の床面で1lx(ルクス)以上の明るさを確保する設備です。1lxは「月明かりよりは明るく、足元がなんとか見える程度」の明るさです。照明の基本については「照明と照度計算」の記事も参考にしてください。

エレベータとエスカレータ

高層ビルに欠かせないエレベータエスカレータ。試験では、駆動方式や安全装置についてよく出題されます。

エレベータの駆動方式

方式 しくみ 使われる場所
ロープ式(トラクション式) ワイヤーロープとカウンターウエイト(つり合いおもり)で昇降 高層ビル(最も一般的)
油圧式 油圧ジャッキでかごを押し上げる 低層ビル(5階程度まで)

ロープ式は、かごと反対側にカウンターウエイト(つり合いおもり)をつけることで、モーターの負担を減らしています。ちょうど「シーソー」のような原理ですね。高層ビルのほとんどがこの方式です。

油圧式は機械室を最上階に設置する必要がないため、低層の建物や荷物用エレベータに採用されます。

エレベータの安全装置

エレベータには、万が一の事故を防ぐためにさまざまな安全装置が備わっています。

安全装置 役割
調速機(ガバナ) かごの速度が異常に速くなったとき、非常止め装置を作動させて停止
緩衝器(バッファ) かごが最下階を通り越したとき、衝撃を吸収する(ピットの底に設置)
戸開走行保護装置(UCMP) ドアが開いたまま走行することを検知して停止させる

戸開走行保護装置(UCMP)は、2009年の建築基準法改正で新設されたエレベータに義務化された装置です。ドアが開いた状態でかごが動いてしまう重大事故を防ぎます。

エスカレータ

エスカレータの速度は建築基準法で30m/min以下と定められています。時速に換算すると約1.8km/hで、ゆっくり歩くくらいの速さです。

ちなみに、勾配(傾斜角度)は30度以下と定められています。「エスカレータは30ずくめ」(30m/min、30度)と覚えると忘れにくいですね。

建築設備の重要数値まとめ(試験頻出)

6,600V

電力会社からの供給電圧
→ 100V/200Vに変換して使用

40秒

自家発電設備の起動時間
停電後40秒以内に電圧確立

1lx

非常用照明の床面照度
避難に必要な最低限の明るさ

30m/min

エスカレータの最高速度
時速約1.8km(ゆっくり歩く速さ)

30度

エスカレータの最大勾配
「30ずくめ」で覚える

20分

誘導灯の点灯持続時間
(大規模建物は60分以上)

ビル管理の実務でどう関わるか

ビルメンの日常業務と建築設備

  • 受変電設備の月次点検:変圧器の温度確認、異音チェック、絶縁抵抗の測定。キュービクルの鍵管理もビルメンの重要な仕事です。
  • 自家発電設備の試運転:月1回程度、実際にエンジンを回して動作確認。燃料(軽油)の残量チェックも忘れずに。テナントへの事前告知も必要です。
  • 消防設備の法定点検:年2回の消防設備点検(機器点検+総合点検)の立会い。感知器の汚れや誘導灯の球切れチェックは日常巡回でも行います。
  • エレベータの法定検査:年1回の定期検査報告と、月1回程度の保守点検。閉じ込め事故が起きたときの救出手順も把握しておく必要があります。

理解度チェック

ここまでの内容を4問のチェック問題で確認しましょう。

【第1問】

受変電設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1)変圧器は、電力会社から送られてくる6,600Vの電圧を100Vや200Vに変換する装置である。
(2)遮断器は、事故時に電流が流れている状態で回路を遮断できる。
(3)断路器は、負荷電流が流れている状態で回路を開くことができる。
(4)進相コンデンサは、力率を改善するために設置される。
(5)力率が低いと、電力損失が大きくなる。

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答え:(3)

断路器は電流が流れていない状態で回路を開く装置です。負荷電流を遮断する機能はありません。電流を止めるのは遮断器の役割で、断路器はあくまで点検時などに回路を物理的に切り離すために使います。

【第2問】

非常用電源に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1)自家発電設備は、停電後40秒以内に電圧を確立することが求められる。
(2)ディーゼルエンジンは、ガスタービンに比べて振動が少ない。
(3)UPS(無停電電源装置)は、蓄電池を利用して瞬時に電力を供給する。
(4)UPSは、サーバールームなど瞬断が許されない設備に使用される。
(5)非常用照明は、停電時に床面で1lx以上の照度を確保する。

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答え:(2)

振動が少ないのはガスタービンのほうです。ディーゼルエンジンはピストンの往復運動があるため振動が大きく、ガスタービンは回転運動のため振動が少ないという特徴があります。

【第3問】

消防設備に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。

(1)閉鎖型スプリンクラーは、すべてのヘッドが一斉に散水する方式である。
(2)1号消火栓は、1人で操作できるように設計されている。
(3)差動式スポット型感知器は、一定の温度に達したときに作動する。
(4)定温式スポット型感知器は、厨房など普段から温度変化が激しい場所に適している。
(5)誘導灯は、停電時のみ点灯する設備である。

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答え:(4)

定温式は「あらかじめ設定された温度を超えたら作動する」タイプなので、普段から温度変化が激しい厨房やボイラー室に適しています。(1)一斉散水は開放型。(2)1号消火栓は2人操作。(3)差動式は「急激な温度上昇」で作動。(5)誘導灯は常時点灯です。

【第4問】

エレベータ及びエスカレータに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1)ロープ式エレベータは、カウンターウエイトを利用して効率的に昇降する。
(2)油圧式エレベータは、高層ビルに最も多く採用されている方式である。
(3)調速機(ガバナ)は、かごの速度が異常に速くなったときに非常止め装置を作動させる。
(4)戸開走行保護装置は、ドアが開いたままかごが走行することを防止する。
(5)エスカレータの速度は、30m/min以下と定められている。

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答え:(2)

高層ビルに最も多く採用されているのはロープ式(トラクション式)です。油圧式は5階程度までの低層建物に適した方式で、高層ビルには向いていません。

まとめ

今回は、ビル管理士試験の科目4「建築物の構造概論」から建築設備について学びました。

テーマ 覚えておきたいポイント
受変電設備 6,600V→100/200V変換、遮断器と断路器の違い、進相コンデンサで力率改善
非常用電源 自家発電は40秒以内起動、UPSは瞬時切替
消防設備 閉鎖型=個別散水、1号消火栓=2人、感知器3種類の使い分け
エレベータ ロープ式が主流、安全装置3つ(調速機・緩衝器・UCMP)
エスカレータ 速度30m/min以下、勾配30度以下

数値を問う問題が多いので、「40秒」「1lx」「30m/min」「30度」などをしっかり覚えておきましょう。

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