建築物環境衛生管理技術者 空気環境の調整

照度計算と照明診断|必要24台・平均516lx・LED更新

照明は「平均照度だけ」で良否を決めません。光束・配光・距離・入射角から作業面へ届く光を計算し、照度分布、輝度、グレア、色の見え方、ちらつき、保守性まで確認します。

この記事では、目標500lx・床面積120m²の室に必要な器具を24台、維持平均照度を約516lxと計算します。設計値と実測値が違うときに、汚れ・光束低下・調光・配置のどこから調べるかも整理します。

法令・資料確認日:2026年8月2日。現行の事務所衛生基準規則、CIEの国際照明用語、日本照明工業会、経済産業省の公開資料を照合しています。

光束・光度・照度・輝度は観測する場所が違う

単位 何を表すか
光束 Φ lm 人の明所視で重み付けした光の量
光度 I cd 特定方向の単位立体角当たり光束
照度 E lx 面へ入射する単位面積当たり光束
輝度 L cd/m² 面の特定方向への光度密度

CIEの定義では、照度は面へ入る光束の面密度で、1lx=1lm/m²です。光度は方向を含み、1cd=1lm/srです。器具の全光束が同じでも、狭い角度へ集光する器具と広く拡散する器具では、机上面の照度分布が変わります。

輝度は単なる「まぶしさの数値」ではありません。高輝度の光源が視野のどこに、どれほどの大きさで見え、背景との対比がどうなっているか等が重なってグレアが生じます。照度計で測ったlxを、そのままcd/m²へ読み替えることはできません。

点光源の直下192lx、30度では166lxになる

十分小さい点光源とみなせ、途中の反射を無視できるとき、面上の照度は E=I cosθ÷r² で表せます。Iは測定点方向の光度、rは光源から点までの距離、θは入射光と面の法線の角度です。

逆二乗則と余弦則の計算

直下:1,200cd÷2.5²=192lx

入射角30度:1,200×cos30度÷2.5²≒166lx

距離が2倍なら、同じ方向の照度は理想条件で1/4です。斜めから当たるほど同じ光が広い面へ分散します。ただし、実際の室内では器具の大きさ、複数器具、壁・天井の反射があるため、器具の配光データを使った照明計算が必要です。

法令の300lxと設計目標を混同しない

事務所衛生基準規則第10条は、一般的な事務作業の作業面を300lx以上、付随的な事務作業を150lx以上とします。著しい明暗差とまぶしさを避け、照明設備を6か月以内ごとに1回点検する規定もあります。

数値の種類 役割 使い方
法令の最低照度 守るべき下限 作業区分と作業面で判定
JIS等の推奨値 用途別の設計水準 最新版と対象空間を確認
設計照度 案件ごとの目標 作業・利用者・制御を反映
実測照度 現在の状態 位置・時刻・点灯条件を記録

「事務所なら一律750lx」ではありません。また、6か月以内ごとの義務は照明設備の点検であり、「建築物衛生法で照度を6か月ごとに測る」という説明へ置き換えないでください。測定の要否・頻度は、適用法令、社内基準、用途、苦情や変更履歴から決めます。

光束法で必要器具数24台を求める

全般照明の維持平均照度を概算する光束法は、E=N×F×U×M÷Aです。Nは器具数、Fは1器具当たり光束、Uは照明率、Mは保守率、Aは対象面積です。

  • 照明率U:器具から出た光束のうち作業面へ届く割合。配光、室指数、天井・壁・床の反射率等で変わる
  • 保守率M:光源の光束低下、器具・室の汚れ等を保守計画に応じて見込む係数
  • F:ランプ単体ではなく、計算条件に合う器具光束かを確認する

床面積120m²、目標維持平均照度500lx、器具光束5,200lm、照明率0.62、保守率0.80とします。

必要器具数と端数処理

N=500×120÷(5,200×0.62×0.80)=23.26台

必要数は切り上げて24台

E=24×5,200×0.62×0.80÷120=515.84≒516lx

23.26台を23台へ丸めると約494lxとなり、設定した500lxを下回ります。ただし24台を均等に並べれば全点が十分とは限りません。器具間隔、壁際、什器の影、非常用照明との干渉を配光計算と平面図で確認します。

照明率と保守率は都合のよい調整値ではない

照明率を上げれば計算上は器具数が減りますが、器具配光や室形状から根拠なく選べません。メーカーの測光データ、室の寸法、取付高さ、反射率をそろえて求めます。間口・奥行・高さや反射率が変われば同じ器具でも照明率は変わります。

保守率も「古いから0.7」と一律に置く係数ではありません。光束維持特性、清掃周期、環境の汚れ、交換方式を分けて設定します。設計時に想定した清掃をしなければ、維持照度の前提が崩れます。

平均440lxでも最小310lxなら分布を先に見る

先ほどの設計維持平均516lxに対し、同じ点灯条件で実測平均が440lx、最小点が310lxだったとします。

実測平均÷設計維持平均=440÷516=85.3%

最小÷平均=310÷440=0.705

85.3%という比率だけで光源寿命とは断定できません。全体が同程度に低いなら調光設定、電源、器具汚れ、光束低下、測定条件を確認します。一部だけ低いなら不点灯、配置、棚・間仕切り、受光部への影、測定点のずれを優先します。最小÷平均は分布を比較する指標になりますが、合否の限界値は適用する設計基準で確認します。

照度測定は再現できる条件を残す

  1. 評価する作業面と測定格子を平面図へ示す
  2. 点灯状態、調光率、点灯後の安定時間をそろえる
  3. 昼光を含むなら時刻、天候、ブラインド状態を記録する
  4. 受光部を水平にし、測定者や什器の影を避ける
  5. 平均・最小・最大と位置を残し、対策後も同じ条件で測る

照度計は分解能だけで選ばず、測定範囲、斜入射光への応答、分光応答、校正状態を確認します。校正と現場測定条件の違いは「環境測定器の選び方」で詳しく扱っています。

LEDは光束・電力・配光・色・制御を一組で選ぶ

仕様 確認する理由 注意点
器具光束・配光 照度と均斉度を左右 ランプ単体光束と区別
入力電力・効率 消費電力を比較 lm/Wだけで快適性は決まらない
色温度・演色 見え方と用途に関係 Raだけで色品質全体は表せない
調光・ちらつき 制御時の品質に関係 制御方式と適合性を確認
寿命・保守 交換計画に必要 光源寿命と器具寿命を区別

LEDも電力の一部は器具内部で熱になります。「赤外放射が少ない」ことと「発熱しない」ことは別です。周囲温度、放熱、電源装置の状態は寿命へ影響します。40,000時間等の表示は、所定条件における光束維持の定格であり、全器具がその時間まで故障しない保証ではありません。

一般演色評価数Raは現在も広く使われますが、CIEは色の忠実度をより適切に扱うRfの併記・移行を推奨しています。「白熱電球はRa100だから、あらゆる色品質で必ず最高」「LEDはRa80〜90」と光源方式だけで固定しないことが大切です。

蛍光ランプの規制は使用禁止ではない

経済産業省によると、一般照明用蛍光ランプは種類により2026年から2027年末までに製造・輸出入が段階的に規制されます。規制開始後も、既存品の継続使用や在庫の売買・使用まで一律に禁止されるわけではありません。

更新時は直管LEDランプだけを既存器具へ入れる前に、安定器との適合、給電方式、器具劣化、配線工事の要否を確認します。器具ごと交換する場合も、単純なW数比較ではなく、配光、実測照度、制御、非常回路、保守部品まで確認します。電力量削減の評価は「省エネルギーと維持管理」で分けて解説します。

グレアは光源・反射面・視線で診断する

  • 直接グレア:高輝度の光源や窓が直接視野に入る。遮光、取付位置、視線方向を確認
  • 反射グレア:画面、光沢紙、机へ光源が映る。器具と作業面の位置、反射特性を確認
  • 明暗差:作業面だけ明るく周囲が暗い。壁・天井の明るさと背景を確認

照度不足の苦情に器具を追加すると、グレアが悪化する場合があります。「どの席で、どの向きを見たとき、どの時間帯に見づらいか」を聞き、照度分布と視野内の高輝度部を一緒に確認します。光の健康面と情報機器作業は「光環境・電磁波・放射線の基礎」へ分けています。

理解度チェック

【問1】面へ入射する単位面積当たりの光束を表す量と単位の組合せはどれですか。

  1. 光束・cd
  2. 光度・lm
  3. 照度・lx
  4. 輝度・lx
  5. 照度・cd/m²
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正解:3
照度は面へ入る光束の面密度で、単位はlx=lm/m²です。

【問2】光度1,200cdの点光源から2.5m離れた直下の照度は、理想条件でいくらですか。

  1. 76.8lx
  2. 120lx
  3. 192lx
  4. 300lx
  5. 480lx
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正解:3
E=I/r²=1,200÷2.5²=192lxです。斜め入射ではさらにcosθを掛けます。

【問3】目標500lx、面積120m²、器具光束5,200lm、照明率0.62、保守率0.80です。必要器具数はどれですか。

  1. 20台
  2. 22台
  3. 23台
  4. 24台
  5. 26台
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正解:4
N=500×120÷(5,200×0.62×0.80)=23.26台なので、目標を下回らないよう24台へ切り上げます。

【問4】平均照度が設計値より低い場合の診断として最も適切なものはどれですか。

  1. 平均値だけで全光源の寿命と断定する
  2. 最小値と測定位置は記録しない
  3. 照明率を根拠なく大きく書き換える
  4. 分布、調光、汚れ、光束低下、測定条件を切り分ける
  5. 輝度と照度を同じ単位で比較する
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正解:4
全体低下か局所低下かを分け、点灯・調光、清掃、器具、配置、昼光、測定手順を同じ条件で照合します。

公式の確認先

まとめ|光量・配光・分布・保守をつなぐ

光束は光の量、光度は方向ごとの強さ、照度は面へ入る光、輝度は面の特定方向への明るさです。点光源の例では直下192lx、30度で166lxとなり、距離と入射角の影響を確認できました。

光束法では500lx・120m²の室に24台が必要で、維持平均照度は約516lxです。現場では平均値だけでなく最小値と位置を残し、設計との差を調光、汚れ、光束低下、配光、測定条件へ分解します。LED更新も、W数ではなく器具光束・配光・色・制御・寿命を一組で比較してください。

制度・資料確認日/最終更新日:2026年8月2日

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