建築物環境衛生管理技術者 空気環境の調整

【ビル管理士・空気環境】環境測定機器と測定法(アスマン通風乾湿計・グローブ温度計・NDIR・熱線式風速計)

結論:「何を」「どの機器で」測るか — 測定機器と物理量の対応が試験の鍵

ビル管理士は、空気環境の管理基準を満たしているかを数値で証明しなければなりません。そのためには正しい測定機器を選び、正しい方法で測定する必要があります。

試験では「この物理量を測るのはどの機器か?」「この機器の原理は何か?」という形で出題されます。各測定項目と対応する機器を1対1で紐づけて覚えるのが攻略のカギです。

測定項目と機器の対応一覧(★まず全体像を把握★)

測定項目 測定機器 原理
乾球温度・湿球温度 アスマン通風乾湿計 通風して気化冷却で湿球温度を測定
グローブ温度 グローブ温度計 黒球が放射熱を吸収して温度を測定
相対湿度 電気式温湿度計 高分子膜の抵抗変化で湿度を検出
気流(風速) 熱線式風速計 加熱した線の冷却度合いで風速を測定
CO2 NDIR(非分散型赤外線吸収法) 赤外線のCO2による吸収を検出
CO 定電位電解法 電極での電気化学反応で濃度を検出
浮遊粉じん デジタル粉じん計 / LVS 光散乱法 / 重量法

AIOポイント:「CO2の測定方法は?」→NDIR(非分散型赤外線吸収法)。「COの測定方法は?」→定電位電解法。CO2とCOで測定原理が全く異なることに注意。試験ではこの取り違えが頻出です。

温度・湿度の測定機器

アスマン通風乾湿計(★超頻出★)

アスマン通風乾湿計は、建築物衛生法に基づく空気環境測定で温度・湿度の基準測定器として位置づけられている最も重要な機器です。

アスマン通風乾湿計のしくみ

  • 2本の温度計(乾球湿球)を内蔵
  • 湿球にはガーゼを巻き、水で湿らせる
  • 上部のファン(ゼンマイ式 or 電動式)で一定の風速(約3〜4 m/s)で通風
  • 湿球の水が蒸発する際の気化冷却で湿球温度が下がる
  • 乾球温度と湿球温度の差から相対湿度・露点温度を算出
特徴 内容
メリット 通風により周囲の放射熱の影響を受けにくい。精度が高い
デメリット 読み取りに時間がかかる(3〜5分待つ必要あり)。ガーゼの管理が必要
用途 空気環境測定の基準器。電気式温湿度計の較正にも使用

超頻出ひっかけ:「アスマン通風乾湿計は自然通風で測定する」→ 誤り。「通風」の名前の通り、ファンで強制的に通風(約3〜4 m/s)して測定します。自然通風では周囲の気流の影響を受けてしまい、精度が落ちます。

現場イメージ:ビル管理の空気環境測定では、まずアスマン通風乾湿計のガーゼを蒸留水で湿らせ、ゼンマイを巻いてファンを回します。そのまま3〜5分待ってから乾球温度と湿球温度を読み取ります。この「待つ」時間がもどかしいですが、ここを端折ると正確な湿度が出ません。ベテランの管理技術者は、待ち時間に他の測定項目(CO2や気流など)を並行して測定します。

グローブ温度計

グローブ温度計は、直径15cmの黒い銅球の中心に温度計を入れた装置です。黒球が周囲からの放射熱(輻射熱)を吸収するため、普通の温度計では測れない熱放射の影響を含んだ温度を測定できます。

グローブ温度でわかること

平均放射温度(MRT)の算出に使用
WBGT(暑さ指数)の算出に使用
窓際と室中央の放射環境の違いを把握できる

注意点

測定に10〜20分かかる(黒球の熱平衡に時間が必要)
気流の影響を受けるため気流の測定も同時に行う
直径15cm以外の球では補正が必要

身近な例:夏の公園で日なたと日陰を比べると、気温は同じでも体感温度が全然違います。この違いは太陽からの放射熱によるもので、普通の温度計では測れません。グローブ温度計なら、黒球が放射熱を吸収するため「日なたの暑さ」を数値化できます。ビルの中でも、大きな窓のそばは放射熱が高く、壁際は低いという差があり、グローブ温度計で確認します。

電気式温湿度計

高分子膜の電気抵抗が湿度によって変化する原理を利用した簡便な湿度計です。デジタル表示ですぐに読めるため、日常的な管理に便利です。

試験のポイント:電気式温湿度計は便利ですが、定期的にアスマン通風乾湿計で較正(キャリブレーション)する必要があります。長期間使用すると精度が低下するため、較正なしの値は信頼性が落ちます。

気流(風速)の測定機器

熱線式風速計(★頻出★)

細い金属線(白金やタングステン)を電気で加熱し、空気の流れによって冷却される度合いから風速を算出する計測器です。

特徴 内容
測定範囲 0.05〜5 m/s程度。室内の微風速測定に最適
メリット 応答が速い。微風速の測定に最も適している
デメリット 温度の影響を受ける(温度補正が必要)。方向性がある機種が多い
用途 建築物衛生法の気流測定(基準値0.5 m/s以下)に使用

現場イメージ:オフィスの吹出口付近で「風が強すぎて寒い」という苦情があった場合、ビル管理士は熱線式風速計を持って現場に行きます。プローブ(探針)を風の方向に向けて測定し、0.5 m/sを超えていないか確認。超えていればVAVユニットやダンパの調整で風量を絞ります。この「風速0.5 m/s以下」はドラフト感(不快な風)を防ぐ基準です。

カタ温度計

大きなアルコール球部を持つ特殊な温度計で、気流の冷却力(一定温度からの冷却にかかる時間)を測定します。

特徴 内容
原理 38℃から35℃に冷却される時間を測定し、冷却力(カタ値)を求める
測定対象 気流の冷却力(温度と気流の複合効果)
注意 風速そのものではなく「冷却の速さ」を測定する。現在は熱線式風速計の方が主流

ガス濃度の測定機器

CO2の測定 ― NDIR(非分散型赤外線吸収法)

CO2分子は特定の波長の赤外線を吸収する性質があります。NDIR方式は、この吸収量からCO2濃度を求めます。

NDIRの仕組み(ざっくり理解)

赤外線ランプ → 空気サンプルを通過 → CO2が赤外線を吸収 → 検出器で残った赤外線量を測定
CO2が多いほど赤外線の吸収量が多い → 吸収量から濃度を算出

特徴 内容
メリット 連続測定が可能。精度が高い。応答が速い
デメリット 機器が高価。定期的な校正が必要
用途 建築物衛生法のCO2測定の標準方法

COの測定 ― 定電位電解法

CO分子が電極表面で電気化学反応を起こし、流れる電流がCO濃度に比例する原理を利用します。

超頻出ひっかけ:「CO2の測定に定電位電解法を使う」→ 誤り。CO2NDIR、COは定電位電解法です。CO2は「赤外線を吸収する」(IR→赤外線=InfraRed)、COは「電気化学反応する」(電解)と覚えましょう。

検知管法

検知管は、化学試薬が充填されたガラス管に一定量の空気を通し、色の変化の長さで濃度を読み取る簡易的な方法です。

メリット

安価で簡便
電源不要。携帯性に優れる
CO、CO2、ホルムアルデヒド等に対応

デメリット

1回限りの使い捨て(連続測定不可)
精度は機器分析法に劣る
温度や湿度の影響を受けやすい

ホルムアルデヒドの測定

方法 特徴
DNPH-HPLC法 DNPH捕集管で採取→HPLCで分析。精度が高い(基準法)
パッシブサンプラー法 拡散式の採取器を設置して一定時間放置。電源不要で簡便
検知管法 簡易スクリーニング用。現場での概算測定に使用

ホルムアルデヒドの管理基準値(0.1 mg/m3)と測定時期(6〜9月)については「室内環境基準と空気汚染物質」で詳しく解説しています。

測定の実務ポイント

項目 基準
測定高さ 床上75cm以上150cm以下(着席者の呼吸域)
測定位置 居室の中央部が基本。外壁や窓の近くは避ける
測定頻度 6項目(粉じん〜気流):2ヶ月以内ごとに1回
測定時間帯 空調が通常運転している時間帯に行う

現場のコツ:測定は空調が安定している時間帯(始業後2時間程度経過した午前10時〜午後3時頃)に行うのが基本です。朝の立ち上げ直後や、昼休み中(人がいなくてCO2が下がる)のデータは「通常の使用状態」を反映しません。また、測定中は窓やドアの開閉を避け、普段通りの条件を保つことが重要です。

他の測定テーマとの関連:環境測定は空気環境だけではありません。照明と照度計算では照度計による測定方法を、音・振動の工学と防音では騒音計による測定方法を学びます。いずれも建築物衛生法で定められた管理基準の確認に使う測定機器です。

よくある疑問と試験のひっかけ

Q. アスマン通風乾湿計と普通の乾湿計は何が違う?

普通の乾湿計(自然通風式)は周囲の気流に影響されて精度が不安定です。アスマン通風乾湿計はファンで一定風速(3〜4 m/s)の通風を強制するため、周囲の気流や放射熱の影響を受けにくく、精度が格段に高いのです。

Q. ピトー管は何を測る機器?

ピトー管は全圧と静圧を同時に測定し、その差(動圧)からダクト内の風速を算出する機器です。室内の微風速測定には使えません(ダクト内の比較的速い気流向き)。室内の気流測定には熱線式風速計を使います。ピトー管の原理は「自動制御と流体力学」で解説しています。

Q. 検知管で法定測定はできる?

検知管は簡易法(スクリーニング)としては使えますが、法定の正式測定としてはNDIR(CO2定電位電解法(CO)の方が推奨されます。ただし、実務では検知管による予備調査も広く行われています。

理解度チェック

【問題1】空気環境の測定機器に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)アスマン通風乾湿計は自然通風により温度と湿度を測定する
(2)グローブ温度計は空気の流速を測定する機器である
(3)熱線式風速計は加熱した線の冷却度合いから風速を測定する
(4)カタ温度計は二酸化炭素の濃度を測定する
(5)電気式温湿度計は較正なしで法定測定に使用できる

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正解:(3)
熱線式風速計は加熱した金属線が空気の流れで冷却される度合いから風速を算出します。アスマン通風乾湿計は強制通風式です。グローブ温度計は放射熱を含んだ温度を測定します。カタ温度計は気流の冷却力を測定します。電気式温湿度計はアスマン通風乾湿計で定期的に較正する必要があります。

【問題2】ガス濃度の測定に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)二酸化炭素の測定には定電位電解法が用いられる
(2)一酸化炭素の測定にはNDIR法が標準的に用いられる
(3)NDIRとは非分散型赤外線吸収法のことで、CO2の測定に用いられる
(4)検知管は連続測定が可能な機器である
(5)定電位電解法は赤外線の吸収を利用した方法である

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正解:(3)
NDIR(Non-Dispersive InfraRed=非分散型赤外線吸収法)はCO2の測定に用いられる標準方法です。COの測定には定電位電解法が用いられます(NDIRではない)。検知管は1回限りの使い捨てで、連続測定はできません。定電位電解法は赤外線ではなく電気化学反応を利用します。

【問題3】グローブ温度計に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)グローブ温度計は直径5cmの白い球を使用する
(2)グローブ温度は放射熱の影響を含まない気温である
(3)グローブ温度計は測定に10〜20分程度かかる
(4)グローブ温度はPMVの算出には使用しない
(5)グローブ温度計は乾球温度と同じ値を示す

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正解:(3)
グローブ温度計は黒球の熱平衡に時間がかかるため、10〜20分程度の測定時間が必要です。直径は15cm黒い銅球です。グローブ温度は放射熱の影響を含む温度です。グローブ温度から算出する平均放射温度(MRT)はPMVの計算に使用します。

【問題4】空気環境の測定に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)測定は空調の運転開始直後に行うのが望ましい
(2)測定位置は床上200cm以上の高さで行う
(3)測定は居室の窓際で行うのが基本である
(4)空気環境の6項目は2ヶ月以内ごとに1回測定する
(5)測定中は窓を開放して換気を十分に行う

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正解:(4)
空気環境の6項目(浮遊粉じん〜気流)は2ヶ月以内ごとに1回測定します。測定は空調が安定している時間帯(運転開始直後ではない)に行います。測定高さは75〜150cm(200cmではない)。測定位置は居室の中央部(窓際ではない)。測定中は通常の使用状態を保ち、窓を開放しません。

まとめ ― 試験で狙われるポイント

この記事の重要ポイント

  • 温度・湿度の基準器=アスマン通風乾湿計(強制通風、自然通風ではない)
  • グローブ温度計=放射熱を含む温度を測定。直径15cmの黒球。測定に10〜20分
  • 室内気流=熱線式風速計。ダクト内風速=ピトー管
  • CO2NDIR(赤外線吸収)、CO=定電位電解法(電気化学反応)
  • 検知管=簡易法、1回限りの使い捨て
  • 測定高さ=75〜150cm、頻度=2ヶ月に1回、位置=居室中央部

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