排水臭の診断は、臭う場所へ水を足すだけでは終わりません。封水深を同じ位置・同じ時刻で測り、どの器具の使用と同期したか、排水管内の圧力、横管の高さ、直接接続の有無を一つの時系列で追います。
この第1回は、封水が78mmから46mmへ下がる事例、圧力差360Paに相当する水頭36.7mm、呼び径75・長さ14mの必要落差140mm、蒸発記録から決める点検周期、間接排水の不良を扱う独自5択5問です。
資料確認日:2026年8月11日。厚生労働省が公開する昭和50年建設省告示第1597号の通知、建築物維持管理マニュアル、国土交通省の公共建築工事標準仕様書を照合しました。構造・基準の解説は「排水設備とトラップの診断」にまとめ、このページでは別条件の測定・計算・初動判断を練習します。
解く前の3分整理|封水・圧力・高さ・接続を別々に記録する
| 観測値 | 計算・比較 | 判断できること |
|---|---|---|
| 封水深 | 使用前後の差 | 破封の有無 |
| 圧力差 | p÷ρg | 水頭の大きさ |
| 管の高さ | 長さ×勾配 | 必要落差 |
| 未使用日数 | 減水量÷日数 | 点検周期 |
| 排水接続 | 直結の有無 | 逆流汚染経路 |
厚生労働省の公表通知では、一般の排水トラップの封水深は50mm以上100mm以下です。通気管は、排水管内と大気の圧力差でトラップが破封しないよう有効に設けます。ただし、圧力を水頭へ換算した値は診断の目安であり、封水が同じ量だけ失われると決める式ではありません。
第1問|78mmから46mmへ32mm低下、他器具との同期を追う
3階洗面器の封水深は使用前78mmだった。洗面器自体は使わず、同じ立て管につながる5階便器を連続洗浄した直後に46mmとなり、ゴボゴボ音も記録した。最も適切な判定はどれか。
- 46mmは一般トラップの範囲内なので正常
- 32mm増加しているため、はね出しだけを疑う
- 32mm低下して50mm未満。誘導サイホンや通気不良を優先して調べる
- 洗面器を使っていないので自己サイホンと断定する
- 蒸発だけが原因なので、上階便器との同期は無視する
第2問|圧力差360Paは水頭36.7mm、封水損失とは断定しない
トラップ近傍で室内に対する排水管内の負圧の最大値360Paを測定した。水の密度1,000kg/m³、重力加速度9.81m/s²とすると、相当する圧力水頭と解釈の組合せはどれか。
- 0.37mm・封水への影響はない
- 36.7mm・圧力規模の換算値であり、実封水損失は別に測る
- 36.7mm・封水は必ず36.7mm失われる
- 367mm・通気管を閉じて再測定する
- 3,600mm・圧力の継続時間は確認不要
第3問|呼び径75・14m・勾配1/100なら必要落差140mm
呼び径75の屋内横走り排水管を14.0m敷設する。採用する最小勾配を1/100とし、実測した始点と終点の高低差は128mmだった。必要落差と不足量の組合せはどれか。
- 必要70mm・58mm過大
- 必要128mm・不足なし
- 必要140mm・128mm不足
- 必要140mm・12mm不足
- 必要1,400mm・1,272mm不足
第4問|14日で10mm減るなら、残り16日を超える前に再確認
空室の床排水で、封水深が初日72mm、14日後62mmだった。漏れや器具使用はなく、今後も同じ平均速度で直線的に減ると仮定する。50mm未満になる前に確認するには、14日後の測定日から最大何日後を目安にすべきか。
- 16日後
- 20日後
- 30日後
- 50日後
- 62日後
第5問|製氷機排水と水槽越流管は直結を外し、空間を確保する
点検で、製氷機の排水管と飲料用水槽のオーバーフロー管が、それぞれ汚水管へ密閉状態で直接接続されていた。最も適切な是正方針はどれか。
- 接続部へ逆止弁だけを追加して直結を残す
- 臭気止めのため各系統へトラップを二つ直列に付ける
- オーバーフロー管だけ直結を残し、製氷機側だけ開放する
- 製氷機排水だけ直結を残し、水槽側だけ開放する
- 両方の直結を解消し、受け側との排水口空間を確保して下流も点検する
採点|計算値を現象と接続できたか
| 正解数 | 判定 | 復習の焦点 |
|---|---|---|
| 5問 | 診断順序は安定 | 実測波形へ |
| 4問 | 1条件を再確認 | 単位か接続 |
| 2〜3問 | 暗記に偏りあり | 圧力・勾配 |
| 0〜1問 | 親記事から復習 | 封水・間接排水 |
臭気診断チェック|時刻を合わせて再現する
- 安全:強い硫化水素臭、酸欠のおそれ、体調異常があれば退避・換気・専門対応を優先する
- 発生点:床排水、器具、掃除口、貫通部、排水槽を区別する
- 水位:同じ基準面から封水深を測り、写真と時刻を残す
- 再現:自器具、上階器具、排水ポンプ、強風、降雨との同期を見る
- 流路:通気、二重トラップ、逆勾配、閉塞、直接接続、改修履歴を図面と現物で照合する
- 確認:是正直後だけでなく、ピーク時と数日後に封水・臭気を再確認する
補水で臭気が止まることは、封水経路を疑う材料にはなります。しかし、蒸発・漏れ・毛管現象・負圧・正圧のどれかまでは決まりません。操作時刻と測定値をそろえ、再現しない推測は点検記録上も区別します。
間違えた分野の戻り先
- 封水深、二重トラップ、破封原因:排水設備とトラップの診断
- 通気圧力、排水槽、ポンプ制御:通気設備と排水槽の管理
- 貯水槽のオーバーフローと排水口空間:貯水槽の構造と管理
- 上水・雑用水の逆流防止:給水配管と給水設備の保守
追加演習
トラップ形式・横管勾配・誘導サイホンの基礎は「排水設備とトラップ ミニテスト第2回」、破封・通気・阻集器の追加確認は「排水設備とトラップ ミニテスト第3回」へ進んでください。
公式資料の確認先
- 厚生労働省「建築物の給排水配管を安全・衛生上支障のない構造とする基準」
- 厚生労働省「建築物における維持管理マニュアル 第4章」
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」
まとめ|32mm低下・36.7mm水頭・12mm不足を一つの診断へ
上階便器の使用後、封水が78mmから46mmへ32mm下がるなら、一般トラップの下限を下回り、誘導サイホンと通気不良を優先確認します。圧力差360Paは水頭36.7mm相当ですが、実際の封水損失と同一ではありません。圧力波形と水位を同期して測ります。
呼び径75・14m・勾配1/100の必要落差は140mmで、実測128mmなら12mm不足です。14日で10mm減る床排水は、一定減少の仮定では測定日から16日後までに再確認します。製氷機排水と水槽越流管の直結は解消し、排水口空間で汚染経路を切ります。
資料確認日/最終更新日:2026年8月11日
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