建築物環境衛生管理技術者 給水及び排水の管理

雑用水・排水再利用・雨水利用|水質5項目と水量収支

雑用水は「飲めない水」ではなく、用途を限定し、飲料水系統から分離して管理する水です。水洗便所用と、散水・修景・清掃用では法定の水質項目が同じではありません。残留塩素、pH、臭気、外観、大腸菌を管理し、散水等には濁度2度以下も加わります。

この記事では、排水32m³/日を回収率75%で処理して24m³/日を再利用し、需要30m³/日に対する再利用率80%を求めます。降雨30mm、初期雨水2mmを除外し、屋根1,500m²・集水係数0.85なら集水量は35.7m³です。水質と水量を同じ運転記録で診断します。

制度・資料確認日:2026年8月4日。厚生労働省の建築物環境衛生管理基準・維持管理マニュアル、国土交通省の雨水利用・排水再利用設備計画基準と雨水利用ガイドラインを照合しています。自治体条例、下水道条件、用途、水源、処理方式によって追加基準があるため、個別施設は確認図書と所管行政庁の指導を優先してください。

結論|原水・処理・用途・系統分離を一組で管理する

雑用水の品質は、処理装置の出口だけで決まりません。どの排水・雨水を集め、どの処理を通し、槽で何時間滞留し、どの用途へ送り、飲料水系統とどう縁を切るかで決まります。

管理点 確認する事実 主な異常
原水 雨水・雑排水・再生水 油・し尿・薬品混入
処理 ろ過・生物処理・消毒 能力不足・短絡流
用途 便所・散水・修景・清掃 基準・曝露の不一致
配管 系統図・表示・吐水口空間 誤接合・逆流
水量 製造・補給・使用・排水 不足・越流・漏水

建築物環境衛生管理基準が対象とする雑用水は、水道法上の給水装置以外の設備で、雨水や下水処理水等を散水、修景、清掃、水洗便所へ使う場合です。水道水だけを使う系統は、この雑用水管理の枠組みとは区別します。

水洗便所と散水等では水質項目が違う

項目 水洗便所 散水・修景・清掃
pH 5.8〜8.6 5.8〜8.6
臭気・外観 異常なし・ほぼ無色 異常なし・ほぼ無色
大腸菌 検出されない 検出されない
濁度 法定表に項目なし 2度以下

旧稿は濁度2度以下をすべての雑用水へ一律に適用していました。厚生労働省の公表表では、濁度は散水・修景・清掃用水の項目です。水洗便所用にはpH、臭気、外観、大腸菌を適用します。ただし、設計仕様や自治体基準が追加の濁度管理を求める場合は、その条件を守ります。

散水・修景・清掃用水には、し尿を含む水を原水として使用しません。水洗便所用は、便器洗浄だけに供給するのかを確認します。手洗い付き洗浄タンクや洗浄便座へ同じ水が回る場合、その部分は飲料水としての適用を受けます。

残留塩素は全用途で給水栓0.1mg/L以上

給水栓における遊離残留塩素は0.1mg/L以上、結合残留塩素なら0.4mg/L以上に保持します。病原生物による著しい汚染のおそれがある場合等は、遊離0.2mg/L以上、結合1.5mg/L以上です。処理槽出口だけでなく、最遠端や低使用箇所で残っているかを測ります。

検査 頻度 対象
残留塩素 7日以内ごと 全雑用水用途
pH・臭気・外観 7日以内ごと 便所・散水等
大腸菌 2月以内ごと 便所・散水等
濁度 2月以内ごと 散水・修景・清掃

残留塩素0.1mg/L以上は飲料水と同じ数値ですが、これだけで飲用可能という意味ではありません。用途制限、原水、処理、誤接合防止、表示まで満たして雑用水として安全に使います。水道水の基準と雑用水の基準は「水道の分類と52項目の水質基準」で分けて確認してください。

個別・地区・広域循環は供給範囲で分ける

個別循環
一つの建物内で処理・利用
地区循環
複数建物で処理水を共同利用
広域循環
下水処理場等から広域供給

国土交通省の計画基準は、個別循環を個別建物の原水を処理して同じ建物で利用する方式、地区循環を比較的まとまった地区の複数建物で処理水を共同利用する方式、広域循環を公共下水処理場等の処理水を広域へ送る方式と定義します。

規模が大きいほど必ず安価・省エネとは限りません。個別方式は原水と需要が近い一方、小流量時の処理安定性と専門保守が課題です。地区・広域方式は共用処理の利点がある一方、送水エネルギー、供給契約、停止時の代替水、建物側の受入槽・消毒管理が加わります。

処理方式は「原水が比較的きれい」で決めない

原水の性状を、浮遊物、有機物、油脂、洗剤、窒素、塩類、微生物、温度、変動幅で調べ、利用用途の水質まで下げる処理を組み合わせます。

  • 雨水:落葉、砂、鳥獣ふん、屋根材由来物質、初期雨水を管理する
  • 洗面・浴室排水:毛髪、石けん、有機物、微生物を処理する
  • 厨房排水:油脂と高い有機物負荷を前処理する
  • 冷却塔ブロー:濃縮塩類、水処理薬品、微生物、導電率を確認する
  • 下水再生水:供給水質と建物内での再汚染・残留消毒を管理する

旧稿は冷却塔ブロー水を「汚染度が低く簡単に処理できる」としましたが、濃縮した塩類や薬剤は用途・処理設備に負荷を与えます。水源名だけで処理しやすさを順位づけせず、実測と処理試験で判断します。

一般的な処理列は、スクリーン・沈砂、流量調整、生物処理、ろ過、消毒、貯留です。すべての施設に全工程が必要とは限らず、逆に透明に見える雨水でも消毒・水質管理が不要とは限りません。

排水回収24m³/日|需要30m³/日の収支

雑排水32m³/日を原水とし、処理設備の回収率を75%とします。処理水の製造量は次のとおりです。

再生水量=32×0.75=24m³/日

処理残さ・逆洗等を含む損失=8m³/日

需要は便所20m³/日、清掃4m³/日、散水6m³/日の合計30m³/日です。再生水だけでは6m³/日不足し、需要に対する再利用率は24÷30×100=80%です。

散水需要は季節・天候で変わり、原水量は建物利用率で変わります。日量が合っていても、朝の需要ピーク前に槽が空になることがあります。時間別の原水、処理、槽水位、使用、補給、越流を記録し、槽容量と補給開始水位を決めます。

雨水集水35.7m³|初期雨水と空き容量を引く

降雨量30mm、初期雨水2mmを排除、屋根面積1,500m²、集水係数0.85とします。利用可能な集水量の概算は次のとおりです。

V=(30-2)÷1,000×1,500×0.85

利用可能な雨水=35.7m³

雨水槽の空き容量が24m³なら、計算上11.7m³は貯留できず、適切な排水先へ越流します。実際は降雨強度、集水開始・停止、屋根の濡れ損失、目詰まり、ポンプ能力、降雨前の槽水位で変わります。

雨水利用は水資源の有効利用と、下水道・河川への集中的流出の抑制に役立ちます。ただし、水道料金だけを見て「雨は無料」と評価せず、槽、処理、ポンプ、消毒、清掃、更新の費用と電力を含めます。貯留による流出抑制と、日常利用のための水量確保は、槽の空き容量をめぐって競合するため、制御目的を明確にします。

飲料水補給は吐水口空間で物理的に縁を切る

渇水や処理停止時に飲料水を補給する場合も、飲料水管と雑用水管を弁や一般の逆止弁で直結しません。雑用水槽の越流面に対して吐水口空間を確保し、空気で物理的に縁を切ります。

  • 飲料水・雑用水・給湯等の系統図と配管配列を現況に合わせる
  • 管に「雑用水」と表示し、施設仕様で定めた識別色・テープを用いる
  • 一般利用者が触れる水栓を避け、必要時は鍵と飲用禁止表示を設ける
  • 竣工時・改修後は雑用水へ着色して通水し、飲料水器具へ出ないことを確認する

「雑用水は茶、飲料水は青」が全国一律の法定色という旧稿の断定は撤回します。厚生労働省のマニュアルは、雑用水表示と飲料水とは異なる識別色を求めていますが、具体色は設計・施設の識別基準を確認します。色だけでなく文字、流れ方向、系統名、弁札を併用し、色覚や保温被覆にも配慮します。

クロスコネクションと逆流の考え方は「クロスコネクション・逆流・水撃の診断」で詳しく扱っています。

メーター収支で漏水・越流・不明使用を見つける

一日当たり、再生水製造24m³、飲料水補給6m³、用途別使用量合計22m³、槽水位変化0m³、記録された越流0m³なら、8m³/日が説明できません。

不明水量=24+6-22-0-0=8m³/日

メーター時刻と積算単位をそろえたうえで、未計測用途、漏水、越流センサー不良、逆洗排水、メーター誤差、槽水位換算を確認します。水質が合格でも、大量の不明水量は設備の健全性と費用対効果を損ないます。

日常点検は水質・機器・使用場所を同時に見る

  • 水質:残留塩素、pH、臭気、外観、大腸菌、用途別濁度
  • 水量:原水、製造水、補給水、用途別使用、槽水位、越流、排水
  • 機器:処理差圧、薬注量、ポンプ圧・電流・振動、計器校正
  • 衛生:水槽亀裂・漏水、スライム、死水部、害虫、エアロゾル
  • 系統:表示、鍵、吐水口空間、工事履歴、着色水試験、弁状態

厚生労働省のマニュアルは、誤接合・逆流等を年1回、着色水試験や残留塩素測定等で確認する例を示しています。改修・テナント工事後は年次点検を待たず、新設時に準じて確認します。東京都の公表事例でも、保温材の色を取り違え、確認用バルブも取り違えたことで、色分けと試験が同時に破られたクロスコネクションが報告されています。

健康被害のおそれを知ったら供給停止と周知

大腸菌検出、著しい濁り・臭気、誤接合、薬品混入、利用者の健康被害など、雑用水が人の健康を害するおそれを知ったときは、直ちに供給を停止し、危険であることを関係者へ周知します。

  1. 影響する用途・区域を止め、飲用・接触・エアロゾル曝露を防ぐ
  2. 施設責任者、保健所、供給事業者等へ連絡する
  3. 処理・水質・水量・工事・弁操作の記録と現状を保全する
  4. 原因除去、洗浄・消毒、採水、再検査を計画する
  5. 再開条件を確認し、利用者へ復旧範囲を周知する

残留塩素だけを上げて供給を続けたり、透明だから安全と判断したりしません。飲料水へ混入が疑われる場合は、雑用水だけでなく飲料水側も停止・周知の対象として判断します。

理解度チェック

【問1】建築物環境衛生管理基準の雑用水について、濁度2度以下が法定表で適用される用途はどれですか。

  1. 水洗便所だけ
  2. 飲料水だけ
  3. 散水・修景・清掃
  4. 給湯だけ
  5. すべての水に一律
解答を見る

正解:3
濁度2度以下は散水・修景・清掃用水に適用されます。水洗便所用の法定表には濁度がありませんが、設計仕様や自治体が追加管理を求めることはあります。

【問2】降雨30mmから初期2mmを除外し、屋根1,500m²、集水係数0.85としたときの集水量はどれですか。

  1. 3.57m³
  2. 24.0m³
  3. 28.0m³
  4. 35.7m³
  5. 45.0m³
解答を見る

正解:4
(30-2)÷1,000×1,500×0.85=35.7m³です。槽の空き容量が24m³なら、全量は貯留できません。

【問3】原水32m³/日、回収率75%、雑用水需要30m³/日のとき、需要に対する再利用率はいくらですか。

  1. 60%
  2. 75%
  3. 80%
  4. 106.7%
  5. 125%
解答を見る

正解:3
再生水は32×0.75=24m³/日、再利用率は24÷30×100=80%です。残る6m³/日は補給等が必要です。

【問4】雑用水設備の飲料水補給と改修後確認の組合せとして最も適切なものはどれですか。

  1. 仕切弁で直結し目視だけ
  2. 逆止弁で直結し色だけ確認
  3. ホースで直結し残留塩素だけ測定
  4. 吐水口空間で縁を切り、着色水試験で誤接合を確認
  5. 同じ管色にして図面だけ保管
解答を見る

正解:4
飲料水補給は吐水口空間で物理的に縁を切ります。竣工・改修後は雑用水を着色して通水し、飲料水器具へ着色水が出ないことを確認します。

公式の確認先

まとめ|水質合格と水量成立の両方を確認する

雑用水は、原水、処理、用途、飲料水との系統分離を一組で管理します。残留塩素は7日以内ごと、pH・臭気・外観も7日以内ごと、大腸菌は2月以内ごとです。濁度2度以下は散水・修景・清掃用に適用され、水洗便所用とは分けます。

例では排水再生水24m³/日、需要30m³/日で再利用率80%、雨水集水量35.7m³でした。日量だけでなく時間別の槽水位・補給・越流を確認します。飲料水補給は吐水口空間で縁を切り、改修後は着色水試験で誤接合を確認します。

排水管・トラップの設計と封水診断は「排水設備とトラップ」、復習は「雑用水設備と排水再利用 ミニテスト第1回」へ進んでください。

制度・資料確認日/最終更新日:2026年8月4日

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。

-建築物環境衛生管理技術者, 給水及び排水の管理