地震対策は「耐震・免震・制振」の名称だけでは点検できません。設備に働く慣性力、階の相対変位、免震層の移動空間、鋼材の残存厚さ、ダンパーの作動痕跡を数値と現物で確認します。
この第1回は、設備の慣性力1.53kN・転倒1.84kN·m、層間変形角1/167、免震クリアランス90mm不足、鋼板減肉16.7%、地震後の制振ダンパー初動を扱う独自5択5問です。
資料確認日:2026年8月9日。国土交通省の耐震・免震・官庁施設基準、e-Govの耐震改修促進法、建築研究所資料を照合しました。耐震・免震・制振の仕組み、中性化、クリープ、耐火被覆、ガラスは「耐震・免震・制振と材料診断」で解説し、このページは別の数値と地震後判断に特化しています。
解く前の3分整理|加速度・変形・変位・劣化を分ける
| 対象 | 主な確認値 | 見落とし |
|---|---|---|
| 耐震 | 力・層間変形・損傷 | 設備・天井・外装 |
| 免震 | 加速度・免震層変位 | 障害物・可とう接続 |
| 制振 | 作動・ストローク・取付部 | 漏れ・座屈・残留変形 |
| 鋼材 | 最小厚・腐食範囲 | 平均値だけの評価 |
| 復旧 | 人命・二次災害・機能 | 外観だけの再稼働 |
最大加速度が小さくても相対変位が大きい場合があり、構造体が立っていても設備・非構造部材が機能を失う場合があります。設計図書、維持管理計画、装置メーカーの判定基準を優先し、このページの数値だけで立入・再稼働を決めません。
第1問|850kg設備・1.8m/s²なら転倒1.84kN·m
質量850kgの盤に水平加速度1.8m/s²が作用し、その慣性力が床から高さ1.2mの重心へ集中すると単純化する。水平慣性力F=maと盤脚元の転倒モーメントM=Fhの組合せに最も近いものはどれか。
- 0.47kN・0.56kN·m
- 1.53kN・1.28kN·m
- 1.53kN・1.84kN·m
- 8.34kN・10.0kN·m
- 15.3kN・18.4kN·m
第2問|階高4m・相対変位24mmは層間変形角1/167
地震時に上下階の水平方向相対変位が24mm、階高が4.0mだった。層間変形角R=相対変位÷階高に最も近いものはどれか。
- 1/1,667
- 1/667
- 1/250
- 1/167
- 1/24
第3問|免震層は必要340mmに対し250mmで90mm不足
ある免震建物の維持管理計画では、一方向の設計相対変位320mmに施工・管理余裕20mmを加え、平常位置から片側340mmを障害物のない範囲として保つ。後置き棚との実測離隔が250mmだった。判定として最も適切なものはどれか。
- 70mm余裕があるため適合
- 20mmだけ不足する
- 90mm不足するため、棚を移動し計画値どおりの範囲を回復する
- 250mmあれば設計変位320mmも吸収できる
- 免震装置があるためクリアランスは不要
第4問|鋼板9.0mmが局部7.5mmなら減肉16.7%
設計・健全部の基準厚さ9.0mmの鋼板を同一測線で測ると、8.4、8.1、7.8、7.5mmだった。局部減肉率を(基準厚-最小厚)÷基準厚×100で表すとき、値と初動の組合せとして最も適切なものはどれか。
- 5.6%/平均厚さだけ記録して終える
- 8.3%/塗装だけ上塗りする
- 11.7%/最小値は測定誤差として捨てる
- 16.7%/最小位置と腐食範囲を再測定し、部材・接合への影響を専門評価へつなぐ
- 83.3%/直ちに建物全体を解体する
第5問|漏油・すべり跡・限界ストロークなら再稼働を急がない
大きな地震後、制振用オイルダンパー周辺に新しい油膜、取付部ボルトのすべり跡、ストローク指標の限界到達痕が見つかった。人命・火災等の緊急確認後の初動として最も適切なものはどれか。
- 油を拭き、指標を戻して通常運用する
- ダンパーだけ外し、建物を無条件で使用する
- 外観写真を削除し、次回定期点検まで待つ
- 異常位置・量・変形・時刻を記録し、範囲を隔離して計画・メーカー基準に従う専門点検と復旧判定へつなぐ
- 制振部材は消耗しないため異常ではない
採点|方式名を点検項目へ変換できたか
| 正解数 | 判定 | 復習の焦点 |
|---|---|---|
| 5問 | 地震後診断は安定 | 建物別計画へ |
| 4問 | 1境界を再確認 | 変位か減肉 |
| 2~3問 | 名称暗記が残る | 力・変形・点検 |
| 0~1問 | 親記事から復習 | 耐震・免震・制振 |
耐震改修促進法は、建築物の地震に対する安全性向上を目的とします。官庁施設の基準では構造体だけでなく、建築非構造部材と建築設備にも耐震安全性の目標を設けます。ビル管理では「倒壊しないか」だけでなく、落下、火災、漏電、漏水、機能継続、復旧手順まで見ます。
材料診断の補足|無色・ひび割れ・錆汁を単独判定しない
コンクリートのフェノールフタレイン無色部は、pHの高い呈色域ではないことを示す調査結果であって、鉄筋腐食や構造危険の確定ではありません。中性化深さ、実測かぶり、含水、塩化物、錆汁、浮き、剝離、鉄筋状態を合わせて評価します。
鋼材も赤錆の色だけで残存性能は決まりません。厚さ、孔食深さ、範囲、部材位置、接合、荷重、原因を記録します。地震後に新しく生じた変状か、既往劣化かを過去写真・測定値と照合してください。
間違えた分野の戻り先
- 耐震・免震・制振、中性化、耐火被覆:耐震・免震・制振と材料診断
- 荷重経路・偏心・設備集中荷重:建築構造と荷重経路
- 非常電源・消防・昇降機の機能継続:受変電・非常用電源・消防・昇降機
- 防振支持と振動の伝達経路:騒音・振動の診断
追加演習
三方式の比較、コンクリート強度、中性化速度、石膏ボードは「耐震・免震・制震と建築材料ミニテスト第2回」、耐震構造、アルカリ性、ガラス、石綿は「耐震・免震・制震と建築材料ミニテスト第3回」で確認できます。
公式資料の確認先
- e-Gov法令検索「建築物の耐震改修の促進に関する法律」
- 国土交通省「建築物の耐震改修の促進に関する法律等」
- 国土交通省「免震建築物の構造方法に関する安全上必要な技術的基準」
- 国土交通省「官庁営繕の技術基準」
- 国土交通省「官庁施設の総合耐震・対津波計画基準」
- 建築研究所「建築物の地震後の機能維持・早期回復」
まとめ|転倒1.84kN·mから地震後復旧までつなぐ
850kg設備へ1.8m/s²が作用すると水平慣性力1.53kN、重心高1.2mなら転倒モーメント1.84kN·mです。階高4mで相対変位24mmなら層間変形角は1/167。免震層の必要範囲340mmに対して実測250mmなら90mm不足です。
9.0mm鋼板の局部最小厚7.5mmは減肉16.7%でした。地震後に制振ダンパーの漏油、すべり跡、限界ストローク痕を見つけたら、清掃・再稼働を急がず記録、隔離、専門点検へつなぎます。方式名ではなく、力、変形、移動空間、劣化、機能を建物ごとの基準で確認してください。
資料確認日/最終更新日:2026年8月9日
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