自衛消防は、名簿の班名ではなく「同じ時間帯に4業務を動かせるか」で評価します。法定の自衛消防組織は、消防計画で広く編成する自衛消防隊と同義ではありません。まず用途・階数・面積で設置対象を判定し、管理権原者、要員、勤務表、訓練実測へ進みます。
この第1回では、13階14,200㎡の事務所、複数テナントの共同設置、4業務と夜間6人、飲食店の訓練回数、参加率82.3%・点呼405秒を5つの現場事例にしました。
学習の位置づけ:法定組織と一般の自衛消防隊、設置規模、4業務、昼夜体制、訓練記録の基本は「自衛消防組織と訓練」で解説しています。このページは勤務表と秒数を読む第1回事例演習です。続きは「ミニテスト第2回」「ミニテスト第3回」へ進めます。
法令・資料確認日:2026年8月25日。消防法第8条・第8条の2の5、消防法施行令第4条の2の4〜第4条の2の8、消防法施行規則第3条・第4条の2の10・11、消防庁と東京消防庁の現行訓練資料を照合しました。複合用途の床面積、権原範囲、訓練の届出方法は所轄消防署へ確認してください。
最初の区別|法定組織が不要でも自衛消防活動は必要
| 呼び方 | 判定の入口 | 確認すること |
|---|---|---|
| 法第8条の2の5の自衛消防組織 | 対象用途+階数・面積 | 共同設置、統括管理者、要員 |
| 消防計画上の自衛消防隊等 | 各建物の防火管理 | 通報・消火・避難等の役割 |
小規模建物が法定組織の面積基準に届かなくても、消防計画に基づく通報・消火・避難訓練や、火災時の役割分担が不要になるわけではありません。「法定組織の対象外=自衛消防活動なし」と短縮しないでください。
設置規模|用途を確認してから3つの面積基準へ進む
| 地階を除く階数 | 延べ面積の基準 | 今回の例 |
|---|---|---|
| 11階以上 | 1万㎡以上 | 13階・14,200㎡ |
| 5〜10階 | 2万㎡以上 | 8階・21,500㎡ |
| 4階以下 | 5万㎡以上 | 4階・52,000㎡ |
| 地下街 | 1,000㎡以上 | (16の2)項 |
事務所は施行令別表第一(15)項で対象用途に含まれます。複合用途は、対象用途部分がどの階にあり、その床面積がいくらかを別に確認します。建物全体の延べ面積だけを表へ当てはめられない場合があります。
法定4業務|班名より業務と活動範囲を先に決める
施行規則第4条の2の11は、次の各業務にそれぞれおおむね2人以上の要員を置くよう定めています。
| 業務 | 訓練で確かめる行動 | 停止しやすい条件 |
|---|---|---|
| 初期消火 | 安全判断、設備選択、中止 | 退路喪失、煙、要員不在 |
| 情報・設備監視 | 収集、伝達、119番、設備状態 | 受信機と通報の競合 |
| 避難誘導 | 経路判断、滞留解消、区域報告 | 担当区域過大、無線不感 |
| 救出・救護 | 安全な救出、応急手当、引継ぎ | 無理な進入、情報不足 |
4業務だけで活動要員は計おおむね8人が目安です。これは「8人いれば自動合格」という意味ではありません。組織全体の統括、内部組織の責任者、交代・代行、区域の広さも考慮し、業務内容と活動範囲を明確にします。
夜間6人|目安8人に対する75%をどう読むか
昼15人・夜6人の建物なら、夜間は4業務の活動要員目安8人に対して6÷8×100=75.0%です。この75%は当サイトで勤務差を見える化した比率であり、法定の合格率ではありません。
| 夜間に競合する場面 | 同時に必要な行動 | 見直す資源 |
|---|---|---|
| 受信機が火災表示 | 監視を残し現場確認・通報 | 代行、遠隔情報、応援 |
| 避難と初期消火 | 退路を守り別要員で実施 | 委託範囲、勤務配置 |
| 負傷者が発生 | 救護と消防隊引継ぎ | 優先順位、救護資器材 |
一人の名前を複数班へ書くだけでは、同時発生した業務を処理できません。管理権原者へ不足を報告し、勤務配置、委託、設備連動、応援連絡を再設計して所轄へ確認します。
第1問|13階・14,200㎡の事務所
地階を除く階数13、延べ面積14,200㎡の単一用途の事務所について、法定の自衛消防組織の設置判定として最も適切なのはどれか。
- 事務所は対象用途に含まれないので不要
- 11階以上は5万㎡以上の場合だけ対象
- 事務所は対象用途で、11階以上かつ1万㎡以上なので設置対象
- 収容人員が1万人以上の場合だけ対象
- 地下街ではないため対象外
第2問|管理権原者が3者に分かれる
設置対象の複合ビルで、対象用途部分の管理権原者がオーナーと2テナントの計3者に分かれている。自衛消防組織の置き方として最も適切なのはどれか。
- 各者が相互に関係なく別組織を作り、全体調整はしない
- 最大面積のテナントだけが置き、他の管理権原者は関与しない
- 複数の管理権原者が共同して自衛消防組織を置き、業務・指揮・権原範囲を消防計画でつなぐ
- 消防署が要員を雇用して組織を置く
- 統括管理者を定めれば各者の責任は全て消える
第3問|昼15人・夜6人の勤務表
対象建物で昼15人、夜6人が勤務し、夜間欄には昼と同じ4業務を兼務で割り当てていた。最初の改善として最も適切なのはどれか。
- 夜6人は目安8人の75%だが、75%を法定合格率としてそのまま承認する
- 一人を全4業務へ記載し、同時作業は検証しない
- 夜間は火災が起きない前提で組織図を空欄にする
- 不足と同時作業の競合を可視化し、勤務配置・委託・設備・応援を再設計して管理権原者と所轄へ確認する
- 昼の訓練記録を夜間訓練として複写する
第4問|飲食店の消火・避難訓練
防火管理者を置く飲食店で、施行規則第3条第10項に該当する訓練を計画する。最も適切な内容はどれか。
- 避難訓練だけを3年に1回実施する
- 消火訓練と避難訓練を年2回以上実施し、あらかじめ消防機関へ通報する
- 消防用設備等点検を行えば訓練を全て省略できる
- 法定自衛消防組織の設置対象外なら訓練も不要
- 119番を無断で使ってから消防署へ事後報告する
第5問|参加153人・通報82秒・点呼405秒
参加予定186人のうち153人が参加。模擬119番開始82秒、第一放送134秒、最後の区域報告292秒、点呼集約405秒だった。評価として最も適切なのはどれか。
- 参加率は153%なので自動合格
- 参加率82.3%、通報から放送まで52秒。全国一律の合否線とはせず、不参加33人の役割と最後の区域報告の遅れを調べる
- 参加率33.0%で、全記録を無効とする
- 点呼405秒だけを残し、中間時刻と不参加者を削除する
- 全員が最終的に集まれば事前通報や改善記録は不要
訓練タイムライン|405秒を5つの区間に分解する
| 記録点 | 経過時間 | 改善の問い |
|---|---|---|
| 火災表示 | 0秒 | 誰が何を読み取ったか |
| 模擬119番 | 82秒 | 住所・火点・逃げ遅れを言えたか |
| 第一放送 | 134秒 | 52秒の間に何を待ったか |
| 最後の区域報告 | 292秒 | 担当・無線・鍵・経路はどうか |
| 点呼集約 | 405秒 | 113秒の名簿照合を短縮できるか |
総時間だけを競うと、無理な初期消火や確認省略を誘発します。通報の正確さ、安全な中止判断、未確認区域、誤操作、要配慮者支援など、速さと同時に守る条件を訓練目的へ書きます。
改善票|「遅かった」を次の担当と期限へ変える
- 訓練条件:日時、勤務人数、在館者、出火区域、停止設備
- 法定4業務:担当者、代行、活動範囲、指揮命令
- 時刻:発見、119番、放送、初期消火、区域報告、点呼
- 安全:退路、消火中止、避難困難者、負傷者引継ぎ
- 結果:参加・不参加、未確認区域、誤操作、情報欠落
- 是正:担当、期限、暫定措置、完了確認、次回の再測定
「訓練実施済み」で台帳を閉じず、夜間要員、無線不感区域、鍵、放送文、名簿を修正し、次回に同じ指標で再確認します。改善完了までが訓練の一周期です。
採点|組織図・勤務表・時刻表を一致させる
| 正解数 | 理解の状態 | 次にすること |
|---|---|---|
| 5問 | 制度・要員・訓練を分けて判定 | 夜間勤務表で図上訓練 |
| 3〜4問 | 共同設置または数値評価に弱点 | 誤答の権原・時刻を確認 |
| 0〜2問 | 班名と回数だけで完了と判断 | 親記事の規模・4業務へ戻る |
公式資料|設置・要員・訓練の根拠を確認する
- e-Gov法令検索「消防法」(第8条・第8条の2の5)
- e-Gov法令検索「消防法施行令」(第4条の2の4〜第4条の2の8)
- e-Gov法令検索「消防法施行規則」(第3条・第4条の2の10・11)
- 総務省消防庁「自衛消防訓練関係」
- 総務省消防庁「シナリオ非提示型図上訓練」
- 東京消防庁「自衛消防組織の設置」
- 東京消防庁「自衛消防訓練」
制度全体は「自衛消防組織と訓練」、夜間体制と消防計画は「消防計画の作り方」、地震・特殊災害の防災管理は「防災管理・統括防火管理」、選任後の台帳は「防火管理者の実務」で確認できます。
まとめ|13階・夜6人・405秒を同じ計画でつなぐ
単一用途の事務所が13階・14,200㎡なら、対象用途、11階以上、1万㎡以上を満たします。管理権原者が複数なら共同して組織を置き、4業務にそれぞれおおむね2人以上を配置します。
夜6人は活動要員目安8人の75%ですが、これは法定合格率ではありません。不足する同時業務を勤務配置・委託・設備・応援で再設計します。参加153/186=82.3%、通報82秒、放送134秒、点呼405秒を区間に分け、改善担当と期限まで残せることが第1回の到達点です。
法令・資料確認日/最終更新日:2026年8月25日
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