建築物環境衛生管理技術者 建築物衛生行政概論

【ビル管理士・行政概論】建築物環境衛生管理技術者の職務と選任(免状・届出・帳簿書類)

結論:ビル管理士は「ビルの衛生管理の責任者」

建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)は、特定建築物の衛生環境を管理する国家資格者です。ビル管理士試験を受けているあなたは、まさにこの資格を取ろうとしているわけですから、自分の将来の姿を学ぶ気持ちで読んでください。

試験では「管理技術者の選任義務」「職務権限」「届出」「帳簿書類」が毎年1〜2問出題されます。ここでは3つのカテゴリに分けて整理します。

選任と免状

誰が・いつ・どうやって
管理技術者になるか

職務と権限

何をする人なのか
どこまで権限があるか

帳簿書類と図面

何を記録し
いつまで保存するか

選任と免状 ― 誰が管理技術者を選ぶのか

選任義務

特定建築物の所有者等は、建築物環境衛生管理技術者の免状を持つ者を管理技術者として選任しなければなりません。

項目 内容
選任義務者 特定建築物の所有者等(所有者、または全部の管理権原を有する者)
選任の要件 建築物環境衛生管理技術者免状の交付を受けている者
選任人数 特定建築物ごとに1人
兼任の制限 原則として、同時に2以上の特定建築物の管理技術者となることはできない

ひっかけ注意:管理技術者は原則として兼任できません。「1人の管理技術者が複数のビルを掛け持ちできる」は誤りです。ただし、やむを得ない事由がある場合には例外的に兼任が認められることがあります。

免状の取得方法

管理技術者の免状を取得するには、2つのルートがあります。

ルート①:国家試験に合格

建築物環境衛生管理技術者試験(ビル管理士試験)に合格し、免状の交付を受ける。
受験資格:用途に該当する建築物の環境衛生上の維持管理に関する実務経験2年以上

ルート②:講習会を修了

日本建築衛生管理教育センターが実施する登録講習会を修了し、免状の交付を受ける。
受講資格:学歴に応じた実務経験(1年〜5年)が必要

試験の出題ポイント:「免状の交付を行うのは誰か?」→ 答えは厚生労働大臣です。「都道府県知事」や「日本建築衛生管理教育センター」ではありません。試験実施は教育センターが行いますが、免状の交付権限は厚生労働大臣にあります。

職務と権限 ― 管理技術者は何をする人なのか

管理技術者の職務

管理技術者の仕事は、一言でいうと「特定建築物の衛生環境を維持管理するための監督」です。具体的には次のことを行います。

  • 建築物環境衛生管理基準に従って、維持管理が適正に行われるよう監督する
  • 環境衛生上の維持管理に必要な各種の測定・検査の実施とその結果の評価
  • 環境衛生上の維持管理に関する計画の立案と実施

意見を述べる権限(意見具申権)

管理技術者には、特定建築物の維持管理が環境衛生上適正を欠くと認めるときに、所有者等に対して意見を述べることができる権限があります。

項目 内容
権限の内容 所有者等その他の関係者に対し、環境衛生上の維持管理に関し意見を述べることができる
尊重義務 所有者等は、管理技術者の意見を尊重しなければならない

実務ではこうなる:たとえば管理技術者が「空調のフィルターが汚れていて空気環境が基準を満たせません。フィルターの交換が必要です」とビルオーナーに進言した場合、オーナーはその意見を尊重する義務があります。ただし「命令」ではなく「意見」なので、最終的な判断はオーナーに委ねられます。

ひっかけ注意:「管理技術者は所有者等に対し指示することができる」「所有者等は管理技術者の意見に従わなければならない」はいずれも誤りです。正しくは「意見を述べる」+「尊重しなければならない」です。

帳簿書類と図面 ― 何を記録し、いつまで保存するか

帳簿書類の備え付け義務

特定建築物の所有者等は、環境衛生上の維持管理に関する帳簿書類を備えておかなければなりません。

帳簿書類の記載事項 具体的内容
空気環境の測定結果 6項目の測定値と日時・場所
飲料水の水質検査結果 残留塩素・水質検査の結果
雑用水の水質検査結果 雑用水の検査結果
排水管理の状況 排水設備の清掃記録等
清掃の状況 日常清掃・大掃除の実施記録
ねずみ等の防除の状況 調査・防除の実施記録

帳簿書類の保存期間

保存期間は5年間

帳簿書類は5年間保存する義務があります。

ひっかけ注意:「帳簿書類の保存期間は3年間」は誤りです。正しくは5年間。「3年」「10年」など数字を変えた選択肢がよく出ます。「帳簿はGO(5)年」と語呂で覚えましょう。

図面等の備え付け

帳簿書類とは別に、特定建築物の設備の配置図や系統図も備えておく必要があります。

  • 空気調和設備の配置図・系統図
  • 給排水設備の配置図・系統図
  • その他の環境衛生上の維持管理に必要な図面

実務ではこうなる:たとえば空調のダクトがどこを通っているか、給水管がどの系統でつながっているかがわからないと、故障やトラブルの際に対処できません。図面はビルの「設計図」であり、管理技術者にとって必須のツールです。

管理業務の委託 ― 全部を自分でやらなくてもOK

特定建築物の所有者等は、維持管理の業務を登録業者(事業登録を受けた業者)に委託することができます。ただし、重要な注意点があります。

項目 内容
委託できること 維持管理の実務(清掃・空調管理・水質検査等)
委託できないこと 管理技術者の選任義務そのものは委託できない。委託しても管理技術者は必ず選任が必要

かみ砕くと:清掃会社やビル管理会社に作業を外注するのはOK。でも「うちは全部外注しているから管理技術者は置かなくていい」はNG。外注していても、全体を監督する管理技術者は必ず選任しなければなりません。

ビル管理の現場での管理技術者の役割

管理技術者の実際の業務:

  • 環境衛生管理基準に基づく定期測定の計画・実施・記録
  • 測定結果が基準を逸脱した場合の原因調査と是正措置
  • 事業登録業者への清掃・害虫駆除等の委託管理
  • 帳簿書類(5年間保存)の整備と保健所への報告

まとめ ― 試験で狙われるポイント

この記事の重要ポイント

  • 管理技術者は特定建築物ごとに1人選任。原則兼任不可
  • 免状の交付者は厚生労働大臣
  • 受験資格:実務経験2年以上
  • 管理技術者は意見を「述べる」ことができ、所有者等はそれを「尊重」する義務がある
  • 帳簿書類の保存期間は5年間
  • 業務を委託しても管理技術者の選任義務はなくならない

理解度チェック

ここまでの内容が頭に入っているか、4問でチェックしましょう。

【問題1】建築物環境衛生管理技術者の免状の交付を行う者として、正しいものはどれか。

(1)都道府県知事
(2)厚生労働大臣
(3)日本建築衛生管理教育センター理事長
(4)保健所長
(5)環境大臣

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正解:(2)厚生労働大臣
建築物環境衛生管理技術者の免状は厚生労働大臣が交付します。試験の実施は日本建築衛生管理教育センターが行いますが、免状の交付権限は厚生労働大臣にあります。

【問題2】建築物環境衛生管理技術者に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)管理技術者は、所有者等に対し維持管理に関する指示をすることができる
(2)所有者等は、管理技術者の意見に従わなければならない
(3)管理技術者は、所有者等に対し維持管理に関する意見を述べることができる
(4)管理技術者は、都道府県知事に直接改善を命じることができる
(5)管理技術者の意見に法的拘束力がある

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正解:(3)管理技術者は、所有者等に対し維持管理に関する意見を述べることができる
管理技術者の権限は「意見を述べる」ことであり、「指示」や「命令」ではありません。所有者等はその意見を「尊重しなければならない」ですが、「従わなければならない」ではありません。

【問題3】特定建築物に関する帳簿書類の保存期間として、正しいものはどれか。

(1)1年間
(2)3年間
(3)5年間
(4)7年間
(5)10年間

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正解:(3)5年間
特定建築物の環境衛生上の維持管理に関する帳簿書類は5年間保存する義務があります。「帳簿はGO(5)年」と覚えましょう。

【問題4】建築物環境衛生管理技術者の選任に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)特定建築物ごとに選任しなければならない
(2)免状の交付を受けている者のうちから選任する
(3)維持管理業務をすべて外部に委託していれば、選任は不要である
(4)原則として、同時に2以上の特定建築物の管理技術者を兼ねることはできない
(5)選任義務者は特定建築物の所有者等である

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正解:(3)維持管理業務をすべて外部に委託していれば、選任は不要である
これは誤りです。維持管理の実務を外部委託することは可能ですが、管理技術者の選任義務はなくなりません。業務を委託していても、特定建築物の衛生管理を監督する管理技術者は必ず選任する必要があります。

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