防火管理者

【防火管理者】防火対象物と防火管理者の制度(甲種・乙種の違い・選任基準・届出)

結論:「建物の規模と用途」で必要な防火管理者が決まる

防火管理者の講習を受ける前に、まず知っておきたいのが「自分が管理する建物に、どのレベルの防火管理者が必要なのか」ということ。これは建物の用途規模(収容人員・面積)で決まります。

甲種防火管理者

大きい・人が多い建物
すべての防火対象物で選任OK

乙種防火管理者

小さい建物に限定
比較的小規模な建物のみ

この記事では、防火対象物の分類から甲種・乙種の違い、選任基準、届出手続きまでを丁寧に解説します。

防火対象物とは? ― 消防法が守る「建物」のこと

防火対象物の定義

防火対象物とは、消防法で火災予防の対象となる建築物やその他の工作物のことです。簡単に言えば、「消防法のルールが適用される建物」のことです。

山林や船舶、車両を除く、ほぼすべての建築物が防火対象物に該当します。オフィスビル、商業施設、病院、学校、工場、共同住宅……身の回りの建物のほとんどが防火対象物です。

特定防火対象物と非特定防火対象物

防火対象物は大きく2種類に分けられます。この区分は防火管理者の選任基準に直結するので、しっかり理解しましょう。

区分 特徴 具体例
特定防火対象物 不特定多数の人が利用する建物、または自力避難が困難な人がいる建物 劇場、飲食店、ホテル、病院、百貨店、老人ホームなど
非特定防火対象物 利用者がおおむね決まっている建物 事務所、工場、学校、共同住宅、倉庫、神社など

なぜ分けるの?
特定防火対象物は、初めて来た人(建物の構造を知らない人)が多いため、火災時に避難が難しくなります。また、病院や老人ホームのように自力で逃げられない人がいる施設は、より厳しい防火管理が必要です。だから特定防火対象物にはより厳しい基準が適用されるのです。

消防法施行令 別表第一 ― 用途の一覧

防火対象物の用途は、消防法施行令の別表第一に詳しく分類されています。主な用途を見てみましょう。

用途 区分
(1) 劇場・映画館・公会堂 特定
(2) キャバレー・遊技場・カラオケボックス 特定
(3) 飲食店・料理店 特定
(4) 百貨店・マーケット・物品販売店舗 特定
(5)イ 旅館・ホテル・宿泊所 特定
(5)ロ 寄宿舎・共同住宅 非特定
(6) 病院・診療所・老人ホーム・幼稚園 特定
(7) 小学校・中学校・高校・大学 非特定
(9)イ 公衆浴場(蒸気浴場・熱気浴場) 特定
(15) 事務所・オフィスビル 非特定
(16)イ 複合用途(特定用途を含む) 特定

※上記は主な用途の抜粋です。全用途は消防法施行令 別表第一を参照してください。

実務のポイント:ビルメンが管理するテナントビルは、1階に飲食店やコンビニが入っていることが多いですよね。このような複合用途ビルは(16)イ(特定防火対象物)に該当します。つまり、事務所だけのビルよりも厳しい基準が適用されるのです。

甲種防火管理者と乙種防火管理者の違い

2つの資格の比較

項目 甲種防火管理者 乙種防火管理者
講習期間 2日間(約10時間) 1日(約5時間)
選任可能な建物 すべての防火対象物 比較的小規模な建物のみ
再講習 特定防火対象物(収容人員300人以上)は5年ごと なし
消防計画 詳細な消防計画の作成が必要 簡易な消防計画でOK

かみ砕くと:甲種は「オールマイティ」、乙種は「小さい建物限定」です。迷ったら甲種を取りましょう。講習が1日多いだけで、どんな建物でも対応できるようになります。ビルメンの仕事では甲種がほぼ必須と考えてください。

防火管理者の選任基準 ― いつ・どの建物に必要?

収容人員による選任義務

防火管理者を選任するかどうかは、建物の用途と収容人員で決まります。

建物の種類 選任が必要な
収容人員
特定防火対象物(一般) 30人以上
特定防火対象物(入所型福祉施設等) 10人以上
非特定防火対象物 50人以上

甲種と乙種の振り分け

選任義務があるとわかったら、次は「甲種か乙種か」の判定です。建物の延べ面積がポイントになります。

建物の種類 延べ面積 必要な資格
特定防火対象物 300m²以上 甲種
特定防火対象物 300m²未満 甲種 or 乙種
非特定防火対象物 500m²以上 甲種
非特定防火対象物 500m²未満 甲種 or 乙種
入所型福祉施設等 面積にかかわらず 甲種のみ

覚え方のコツ:特定300・非特定500」と覚えましょう。特定防火対象物は300m²以上で甲種が必須、非特定防火対象物は500m²以上で甲種が必須です。入所型の福祉施設は面積に関係なく甲種が必要なので注意してください。

管理権原者と防火管理者の関係

管理権原者とは?

消防法では、防火管理の最終責任者「管理権原者」と呼びます。

建物の形態 管理権原者
自社ビル 会社の代表者(社長など)
テナントビル 各テナントの責任者 + ビルオーナー
分譲マンション 管理組合の理事長

管理権原者と防火管理者の役割分担

管理権原者(オーナー等)

  • 防火管理者を選任する義務
  • 防火管理に必要な予算・権限を与える
  • 防火管理者の業務遂行を監督
  • 消防署への届出(選任届・消防計画)

防火管理者

  • 消防計画の作成・変更
  • 消火・通報・避難訓練の実施
  • 消防用設備等の点検・整備の管理
  • 火気使用設備の日常管理
  • 避難施設の維持管理

かみ砕くと:管理権原者は「防火管理をやらせる人」、防火管理者は「実際にやる人」です。防火管理の最終責任は管理権原者にあります。防火管理者は管理権原者から委任を受けて実務を行う立場です。

防火管理者の届出手続き

届出の流れ

防火管理者を選任したら、管理権原者が消防署に届出を行います。届出には以下の2種類があります。

届出書類 いつ届出? 届出先
防火管理者選任(解任)届出書 選任・解任があったとき遅滞なく 管轄の消防署(消防長または消防署長)
消防計画作成(変更)届出書 消防計画を作成・変更したとき 管轄の消防署(消防長または消防署長)

実務のポイント:ビルメンの現場で防火管理者が交代するケースはよくあります。前任者の解任届と新任者の選任届を忘れずに提出しましょう。また、テナントビルではテナントごとに防火管理者の選任が必要です。テナント入替時の届出漏れは査察で指摘されやすいポイントです。

防火管理者の資格要件

防火管理者になるためには、以下の2つの条件を両方満たす必要があります。

条件1:資格

防火管理講習の修了者
(または一定の学識経験を有する者)

条件2:地位

管理的または監督的な地位にある者
(防火管理業務を遂行できる権限が必要)

つまり、講習を受けただけでは防火管理者になれません。その建物で実際に防火管理の権限を行使できる立場にあることが必要です。

甲種防火管理者の再講習

甲種防火管理者には、一定の条件で再講習の義務があります。

項目 内容
対象者 特定防火対象物収容人員300人以上の建物の防火管理者
頻度 最初の講習から5年以内ごと
講習内容 法令改正の概要、火災事例の研究(約2時間・半日)

注意:再講習を受けないと、防火管理者の資格が失効するわけではありませんが、消防署から指導を受けることがあります。大規模な特定防火対象物を管理している場合は、再講習の期限管理を忘れないようにしましょう。

まとめ ― この記事のポイント

この記事で学んだこと

  • 防火対象物は特定(不特定多数が利用)と非特定(利用者が決まっている)に分かれる
  • 特定防火対象物は収容人員30人以上、非特定は50人以上で防火管理者が必要
  • 甲種・乙種は延べ面積で区分(特定300m²・非特定500m²が境界線)
  • 甲種はすべての防火対象物に対応、乙種は小規模のみ
  • 防火管理の最終責任は管理権原者にある(防火管理者は実務担当)
  • 選任届と消防計画は管轄の消防署に届出が必要
  • 甲種の再講習は特定防火対象物・300人以上で5年ごと

確認問題 ― 理解度をチェック!

【問題1】特定防火対象物に該当するものはどれか。

(1)事務所ビル
(2)小学校
(3)共同住宅
(4)百貨店
(5)工場

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正解:(4)百貨店
百貨店は不特定多数の人が利用する施設であり、特定防火対象物に該当します。事務所ビル・小学校・共同住宅・工場はいずれも利用者がおおむね決まっているため、非特定防火対象物です。

【問題2】防火管理者の選任が必要となる収容人員の基準について、正しいものはどれか。

(1)特定防火対象物は50人以上で選任が必要
(2)非特定防火対象物は30人以上で選任が必要
(3)特定防火対象物は30人以上、非特定防火対象物は50人以上で選任が必要
(4)すべての防火対象物は100人以上で選任が必要
(5)収容人員にかかわらず、すべての建物に防火管理者が必要である

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正解:(3)特定防火対象物は30人以上、非特定防火対象物は50人以上で選任が必要
特定防火対象物は収容人員30人以上(入所型福祉施設等は10人以上)、非特定防火対象物は50人以上で防火管理者の選任が必要です。

【問題3】甲種防火管理者と乙種防火管理者について、正しいものはどれか。

(1)乙種防火管理者はすべての防火対象物で選任できる
(2)甲種防火管理者の講習は1日で終わる
(3)特定防火対象物で延べ面積300m²以上の建物には甲種防火管理者が必要
(4)甲種防火管理者に再講習の義務はない
(5)乙種防火管理者は入所型福祉施設でも選任できる

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正解:(3)特定防火対象物で延べ面積300m²以上の建物には甲種防火管理者が必要
乙種はすべての防火対象物では選任できません(小規模のみ)。甲種の講習は2日間です。甲種には再講習義務があります(特定防火対象物・収容人員300人以上で5年ごと)。入所型福祉施設は面積に関係なく甲種のみです。

【問題4】防火管理者の届出について、誤っているものはどれか。

(1)防火管理者の選任届は管轄の消防署に届け出る
(2)消防計画の作成届は管轄の消防署に届け出る
(3)届出義務があるのは管理権原者である
(4)テナントビルでは、ビルオーナーだけが防火管理者を選任すればよい
(5)防火管理者を解任した場合も届出が必要である

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正解(誤り):(4)テナントビルでは、ビルオーナーだけが防火管理者を選任すればよい
テナントビルでは、ビルオーナーだけでなく各テナントの管理権原者もそれぞれ防火管理者を選任する必要があります。テナントごとに管理権原者がいるため、それぞれが防火管理者の選任義務を負います。

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