地震直後の行動は、「全員すぐ避難」「すぐ元栓」「すぐ復電」の一つには決められません。揺れている間は身の安全を優先し、揺れが収まった後に出火、けが、避難路、建物・設備の損傷を確認します。その情報を集めて、施設内待機か避難か、どの系統を復旧できるかを判断します。
この第1回では、0分の安全確保、施設内待機、29電気系統の復旧、86人・3日分の飲料水、26区域の全体確認を5つの時系列事例にしました。
学習の位置づけ:防災管理の対象規模、統括防火管理との違い、同一人物の規定、年1回以上の訓練は「防災管理・統括防火管理」で解説しています。このページは、発災後0〜72時間の判断を練習する第1回事例演習です。続きは「ミニテスト第2回」「ミニテスト第3回」へ進めます。
法令・資料確認日:2026年8月25日。消防法第36条、消防法施行令第45条〜第48条の2、消防法施行規則第51条の8、総務省消防庁の地震防災資料、東京消防庁の職場向け消防計画作成例を照合しました。備蓄量、施設内待機、帰宅困難者対策は、地域の条例・計画、建物用途、在館者、要配慮者、保管条件に合わせてください。
旧稿の訂正|「まず一つの行動」で全建物を扱わない
旧稿は、揺れが収まった直後に「火気の始末とガス元栓を閉め、出口を確保する」を必ず最初に行う正解としていました。しかし、強い揺れの最中は身の安全が第一です。揺れが収まった後も、出火、ガス臭、漏水、落下物、けが人、津波、建物損傷など、目の前の危険で優先順位は変わります。
また、「管理権原者が複数なら統括防火管理者が必要」という説明だけでは不十分です。統括防火管理は、管理権原が分かれていることに加えて、用途、階数・高さ、収容人員などの対象条件を確認します。制度判定は親記事で扱い、このページでは対象と判定済みの建物が、各部分の情報を全体へ集める運用に絞ります。
3日分の備蓄も、全国の全事業所に同じ数量を直接義務付ける一文として暗記しません。消防庁は最低限3日間程度の水・食料を目安として案内し、東京消防庁の事業所向け作成例は発災後3日間を想定した数量例を示しています。所在地の制度と自館の消防計画を確認します。
0〜72時間|行動を時刻と判断条件で分ける
| 時間帯 | 優先すること | 残す記録 |
|---|---|---|
| 揺れの最中 | 身の安全、落下・転倒回避 | 所在・負傷 |
| 直後 | 出火、けが、出口、危険物 | 区域・危険内容 |
| 10〜60分 | 建物、設備、ライフライン | 確認済み・保留 |
| 数時間 | 待機か避難、情報提供 | 判断根拠・人数 |
| 1〜3日 | 備蓄、衛生、時差退社 | 払出し・残量 |
時計は法定の一律期限ではなく、計画を動かす順序の例です。地震の規模、火災、津波、行政の避難情報があれば、その危険を優先します。
施設内待機|「動かない」ではなく安全を確認して決める
| 判断軸 | 確認例 | 待機できない兆候 |
|---|---|---|
| 建物 | 柱・壁・天井・外壁 | 崩落、重大な変形 |
| 火災 | 煙、炎、ガス臭、危険物 | 制御できない拡大 |
| 避難 | 出口、階段、防火戸 | 経路閉塞 |
| 設備 | 電気、ガス、水、消防設備 | 安全機能の喪失 |
| 外部情報 | 津波、火災、道路、避難所 | 公的な避難指示等 |
施設内待機は一斉帰宅を抑える有力な選択肢ですが、建物が危険なら外部の安全な場所へ移します。部分テナントは自分の範囲を確認し、建物全体を管理する側が共用部と全体情報を集約します。
第1問|強い揺れの最中に身の安全を優先する
事務所で強い揺れが続き、棚から物が落下している。地震直後の初動として最も適切なのはどれか。
- 揺れている最中に遠くのガス元栓まで走る
- 全員でエレベーターに乗り、すぐ屋外へ出る
- まず落下・転倒物から身を守り、揺れが収まってから出火・けが・出口などを確認する
- 館内放送があるまで机から出ず、煙があっても待つ
- 建物の写真撮影を最優先にする
第2問|建物チェック後に待機か避難かを決める
鉄道が停止し、従業者86人がいる。火災はないが、天井落下の報告が1区域、共用階段の確認は未完了である。最も適切な判断はどれか。
- 鉄道停止だけを理由に、確認前から全員を必ず3日間待機させる
- 帰宅希望者から順に一斉退社させる
- 危険区域を立入禁止にし、建物・避難路・設備・外部情報を確認して、待機可能区域または避難先を決める
- 火災がないため建物確認は不要
- 各テナントが互いに連絡せず、別々に全館の安全を宣言する
第3問|29系統のうち21系統だけを復電候補にする
停電後、電気29系統の点検結果は安全確認済み21、判定保留5、損傷3だった。復電管理として最も適切なのはどれか。
- 21÷29=72.4%。確認済み21系統だけを手順に沿って復電候補とし、残る8系統を切り離す
- 保留5系統を安全に含め、26÷29=89.7%を一斉復電する
- 29÷21=138.1%として全系統を復電する
- 損傷は3系統だけなので、点検せず主幹を投入する
- 電力会社の送電再開と同時に、建物内の全機器も安全になる
第4問|86人・3日・1人1日3Lを計算する
東京消防庁の事業所向け作成例にならい、従業者86人について、飲料水を1人1日3L・3日分で仮置きする。必要量はいくらか。
- 86L
- 258L
- 516L
- 774L
- この774Lが全国一律の消防法上の法定最低量である
第5問|26区域中22区域の確認率84.6%を読む
管理権原が分かれた建物で、26区域のうち22区域から「出火なし・避難路確認済み」の報告を受け、4区域は未報告である。全体管理として最も適切なのはどれか。
- 22区域が安全なので、確認率100%として全館安全を宣言する
- 22÷26=84.6%。未報告4区域を残し、代替連絡・現地確認・立入制限を行う
- 26÷22=118.2%として未報告を完了にする
- 未報告は異常なしを意味するため、確認しない
- 各部分の管理権原者だけが情報を持ち、全体へ共有しない
地震記録セット|復旧と待機の根拠を後から追えるようにする
- 区域確認票:火災、けが、閉塞、危険物、確認者、時刻
- 設備状態票:停止・保留・損傷・復旧、操作権限、監視
- 在館者名簿:待機、避難、帰宅、要配慮、安否連絡
- 備蓄払出票:人数、配布量、残量、保管場所、期限
- 全体情報板:26区域の報告、外部情報、次回判断時刻
発災時は完璧な文章より、同じ項目を時刻付きで更新できる様式が役立ちます。口頭報告だけで上書きせず、「未確認」を残せるようにしてください。
採点|身の安全から全体確認まで順番を崩さない
| 正解数 | 理解の状態 | 次にすること |
|---|---|---|
| 5問 | 初動・待機・復電・備蓄・全体確認を分離できる | 自館の0〜72時間表へ置換 |
| 3〜4問 | 即時避難か一斉復旧に寄りやすい | 保留条件を追記 |
| 0〜2問 | 旧稿の一律手順で判断 | 親記事と公的資料へ戻る |
公式資料|法定制度と防災上の目安を分けて確認する
- e-Gov法令検索「消防法」(第36条)
- e-Gov法令検索「消防法施行令」(第45条〜第48条の2)
- e-Gov法令検索「消防法施行規則」(第51条の8)
- 総務省消防庁「防災に関する質問」
- 総務省消防庁「感震ブレーカー」
- 総務省消防庁「備蓄品を備える」
- 東京消防庁「職場の地震対策」
- 東京消防庁「消防計画の作成」
地震時の自衛消防組織と訓練は「自衛消防組織と訓練」、消防計画の変更届と版管理は「消防計画ミニテスト第1回」、設備の停止・復旧管理は「消防設備ミニテスト第1回」で確認できます。
まとめ|未確認を安全扱いせず、判断の根拠を残す
強い揺れの最中は、まず身の安全を守ります。揺れが収まったら、出火、けが、出口、建物、設備を確認し、その結果から施設内待機か避難かを決めます。待機も避難も、全員一律ではなく危険情報に基づく判断です。
29電気系統のうち安全確認済み21系統なら復旧候補は72.4%で、保留5と損傷3の計8系統を切り離します。86人分の飲料水を1人1日3L・3日で仮置きすれば774Lです。ただし、これは作成例に沿った計画値で、所在地と自館条件の確認が必要です。
26区域中22区域の報告は84.6%で、未報告4区域を安全扱いしてはいけません。部分の管理権原者、防災管理者、統括する側が同じ情報板を更新し、未確認区域、次回確認時刻、待機・避難・復旧の判断根拠を残してください。
法令・資料確認日/最終更新日:2026年8月25日
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