電路の絶縁は、電気が本来の通り道から漏れ、感電や火災につながるのを防ぐためのものです。低圧の配線では絶縁抵抗、高圧・特別高圧の電路では異常電圧にも耐える絶縁性能を確認します。
数字を覚える前に、「どの電路に適用する基準か」を確かめましょう。同じ200Vでも対地電圧で絶縁抵抗の基準が変わり、同じ高圧設備でも配線と変圧器では参照する条文が変わります。
1.省令と解釈の役割を分ける
電技と呼ばれる省令の正式名称は「電気設備に関する技術基準を定める省令」です。第4条は感電・火災などを防ぐこと、第5条は電路の絶縁を求めています。ここでいう電路は、通常の使用状態で電気が通じているところです。配線だけでなく機械器具の内部も含むため、「電線路」と同じ意味ではありません。
| 資料 | 読むときの役割 |
|---|---|
| 電気設備に関する技術基準を定める省令 | 設備に求める安全上の性能を定める。絶縁抵抗は第58条、電圧の区分は第2条に規定。 |
| 電気設備の技術基準の解釈 | 省令の要件を満たすと認められる具体的な内容を示す。低圧電路は第14条、高圧・特別高圧電路は第15条、機械器具等は第16条で確認。 |
解釈の冒頭には、十分な保安水準を確保できる技術的根拠があれば、解釈に書かれた方法以外でも省令に適合すると判断される旨が示されています。これは根拠なしに方法を省略できるという意味ではありません。学習では、まず省令と解釈が示す標準的な条件を正確に押さえます。
例えばビルの受電設備には、高圧ケーブル、変圧器、低圧配線があります。「同じビルの電気設備だから同じ試験でよい」とせず、部位ごとに基準を選ぶことが出発点です。
2.低圧・高圧・特別高圧の境界
省令第2条では、直流と交流で低圧の上限が異なります。「以下」は境界の値を含み、「超える」は含みません。
| 区分 | 交流 | 直流 |
|---|---|---|
| 低圧 | 600V以下 | 750V以下 |
| 高圧 | 600V超、7,000V以下 | 750V超、7,000V以下 |
| 特別高圧 | 7,000V超 | 7,000V超 |
交流600Vは低圧、交流750Vは高圧、直流750Vは低圧です。7,000Vちょうどは交流・直流とも高圧です。「高圧」という日常的な呼び方ではなく、条文の区切りで判定します。
また、低圧という分類は、触れても安全という意味ではありません。100Vの回路でも感電や漏電火災を防ぐ設備が必要です。
3.使用電圧・対地電圧・最大使用電圧を区別する
| 用語 | 意味と使いどころ |
|---|---|
| 使用電圧 (公称電圧) |
電路を代表する線間電圧。線間とは電線同士の間。解釈第1条第1号。 |
| 対地電圧 | 接地式電路では電線と大地の間の電圧。省令第58条では、非接地式電路の場合は線間電圧を用いる。 |
| 最大使用電圧 | 通常の使用状態で加わる最大の線間電圧。解釈第1条第2号の方法で求め、絶縁耐力の区分・計算に使う。 |
中性線を接地した単相3線式100/200Vでは、外線同士は200Vですが、各外線と大地との間は100Vです。この200V回路の絶縁抵抗を選ぶとき、対地電圧を200Vに置き換えてはいけません。
一方、非接地式の200V回路では、省令第58条の判定に使う対地電圧は線間電圧の200Vです。「単相なら100V」「三相なら200V」と相数だけで決めず、接地方式と回路の条件を読みましょう。
省令第2条第2項には、高圧・特別高圧の中性線を持つ多線式電路について、中性線と他の一線に接続した設備でも、元の多線式電路の使用電圧・最大使用電圧を用いる規定があります。中性線との間だけを測って、勝手に低い区分へ移すことはできません。
4.低圧の絶縁抵抗|300Vで分けてから150Vを見る
省令第58条が対象にするのは、電気使用場所の低圧電路です。開閉器又は過電流遮断器で区切れる電路ごとに、電線相互間と電路・大地間の絶縁抵抗を確認します。建物全体の測定値を平均してよいわけではありません。
| 使用電圧 | 対地電圧の条件 | 絶縁抵抗の下限 |
|---|---|---|
| 300V以下 | 150V以下 | 0.1MΩ |
| 300V以下 | 上記以外 | 0.2MΩ |
| 300V超の低圧 | この行では条件を分けない | 0.4MΩ |
抵抗は表の値以上が必要です。MΩ(メガオーム)は抵抗の単位で、1MΩ=1,000,000Ωです。0.1MΩは100,000Ω、0.2MΩは200,000Ω、0.4MΩは400,000Ωになります。
判定は二段階です。まず使用電圧が300Vを超える低圧なら0.4MΩ。300V以下の場合に、対地電圧150V以下かどうかで0.1MΩ・0.2MΩを選びます。「対地電圧150V以下なら無条件に0.1MΩ」と短縮しないでください。
判定練習|同じ200Vでも基準は同じか
A〜Cは別々の低圧配線です。解釈第14条の適用除外に当たらず、絶縁抵抗による判定を行うものとします。示した値は、その区間で必要な測定箇所のうち最も小さい値です。省令第58条の表に照らし、各区間が基準値を満たすか考えてください。
- A:中性線接地の単相3線式100/200Vの200V回路。対地電圧100V、測定値0.12MΩ。
- B:非接地式の200V回路。測定値0.18MΩ。
- C:使用電圧400V、対地電圧約230Vの回路。測定値0.35MΩ。
測定が困難な場合と、別の基準を使う電路
解釈第14条第1項第2号では、絶縁抵抗測定が困難な場合に、使用電圧を加えた状態の漏えい電流が1mA以下であるという方法を示しています。1mAは0.001Aです。「抵抗測定の結果が悪かったら、理由なく別の測り方へ置き換える」という規定ではありません。
経済産業省の解説では、漏えい電流には絶縁抵抗を通る成分のほか、対地静電容量による成分も含まれ、単純には抵抗値へ換算できないことを説明しています。測定方法で確認できる範囲も異なるため、抵抗値・漏えい電流・漏電遮断器の定格感度電流を同じ数字として扱わないでください。
解釈第14条は、第13条の絶縁の例外部分、第16条の機械器具等の電路、遊戯用電車内の電路とその接触電線、直流電車線、鋼索鉄道の電車線を除外しています。第16条には変圧器・回転機・整流器・太陽電池モジュールなどの規定があります。0.1・0.2・0.4MΩを、あらゆる低圧機器の内部へ一律に当てはめないことが大切です。
なお、解釈第14条第2項は電気使用場所以外の低圧電路についても第1項に準じるとしていますが、電線路の電線などの除外があります。どこに施設される電路かも確認します。
5.高圧・特別高圧の絶縁耐力|倍率には適用条件がある
絶縁抵抗は電流の漏れにくさを抵抗値で見るものです。絶縁耐力は、所定の電圧に一定時間耐えられる性能を指します。高圧の電路で低圧用の絶縁抵抗基準を満たしていても、それだけで必要な絶縁耐力があるとはいえません。
解釈第15条は、高圧・特別高圧の電路を対象とします。ただし、第13条の例外部分、第16条の機械器具等の電路、直流電車線は対象外です。以下は第15条第1号・15-1表のうち、最大使用電圧60,000V以下の区分を整理したものです。記号Uは最大使用電圧を表します。
| 対象となる電路 | 試験電圧 |
|---|---|
| Uが7,000V以下の交流電路 | 交流で1.5×U |
| Uが7,000V以下の直流電路 | 直流で1.5×U、又は交流で1.0×U |
| Uが7,000V超〜15,000V以下で、中性線を有し、その中性線に多重接地する中性点接地式電路 | 0.92×U |
| Uが7,000V超〜60,000V以下で、上の多重接地の区分以外 | 1.25×U。計算値が10,500V未満なら10,500V |
第1号の方法では、電路と大地との間に連続10分間加えて耐える性能を求めます。多心ケーブルでは心線相互間と心線・大地間が対象です。上の表の0.92倍は「接地していれば全部」という条件ではなく、中性線の有無・多重接地・電圧の範囲までそろえる必要があります。
60,000Vを超える場合は、接地方式や整流器への接続などによってさらに分かれます。例えば整流器に接続しない中性点非接地式は1.25倍です。一方、中性点接地式には1.1倍で下限75,000Vの区分や、170,000Vを超える直接接地で0.72倍・0.64倍となる区分があります。高い電圧ほど一つの倍率で済ませず、15-1表の該当行を確認してください。
変圧器の巻線は第16条・16-1表を使います。例えば同表の7,000V以下の巻線には、1.5倍の計算値が500V未満の場合に500Vとする下限があります。この500Vの下限を第15条の全電路へ書き足すことも、両方を同じ表として扱うこともできません。
6,600Vの計算|公称電圧から順に求める
解釈第15条の対象となる交流電路で、使用電圧は標準電圧の公称6,600Vとします。計算・実績から、以下で求める値を上回る電圧は想定されない条件です。
解釈第1条第2号イ・1-1表では、指定された標準電圧に当たる使用電圧が1,000Vを超え500,000V未満の場合、係数1.15/1.1を使います。まず最大使用電圧を求めます。
最大使用電圧U
=6,600V×1.15/1.1
=6,000V×1.15
=6,900V
6,900Vは7,000V以下の交流の区分。
試験電圧=6,900V×1.5
=10,350V(交流)、連続10分間。
この数値の組合せでは、6,900Vは近似値ではなく計算上ちょうどの値です。公称6,600Vへ直接1.5を掛けた9,900Vは、最大使用電圧を求める段階を飛ばしています。
また、1.15/1.1は全電圧共通の換算係数ではありません。標準電圧に該当する1,000V以下では1.15を用いるなど、1-1表で係数が変わります。標準電圧に該当しない場合は電源機器の定格電圧等、計算や実績でさらに高くなる場合はその想定値を用いる規定もあります。
直流への代替と「10分間」の範囲
解釈第15条第2号では、電線にケーブルを使用する交流電路について、15-1表の試験電圧の2倍の直流電圧を連続10分間加えて耐える方法を示しています。前の6,600Vの例がこの対象に当たるなら、直流では10,350V×2=20,700Vです。ケーブルは静電容量が大きく、交流での試験には大きな電源容量を要することが、この方法の背景にあります。
これは交流電路に対する代替方法です。表にある「元から直流の電路」の試験条件とは区別します。また、ケーブルの規定を根拠に、変圧器や回転機も一括して直流2倍に置き換えられるわけではありません。
第15条第3号には、最大使用電圧170,000V超の地中電線路で両端の中性点を直接接地する場合に、0.64倍を連続60分間加えて耐える方法もあります。第4号は特別高圧の電路について承認された規格による確認方法を示しています。「絶縁耐力は、どの方法でも必ず10分間」とは覚えないでください。
経済産業省の解説は、第15条を設備が有するべき性能の規定と説明しています。この条文だけを根拠に、あらゆる設備へ毎年一律の耐電圧試験を課すものではありません。実際の検査方法・時期は、自家用電気工作物の保安で扱う制度や、設備の保安規程等と併せて確認します。
6.大地から絶縁しなくてよい「部分」は限定される
省令第5条の原則は、電路を大地から絶縁することです。ただし、構造上やむを得ず危険のおそれがない場合や、異常電圧の侵入などに備えた接地等の保安措置には例外があります。
解釈第13条の具体例は、次のように接地点や、絶縁できないことがやむを得ない部分に限られます。
- 解釈に従って接地工事を施す接地点。接地側の電線であっても、接地点以外まで一律に絶縁不要とはならない。
- 電気防食用の陽極など、電路の一部を大地から絶縁せずに使用せざるを得ない部分。
- 電気炉・電気ボイラー・電解槽など、大地からの絶縁が技術上困難なものの、やむを得ない部分。
例えば電気炉の炉体に例外があっても、電極へつなぐ導線まで同じ扱いにはできません。「電気炉」「電気防食装置」という機器名だけで、周囲の配線全体を絶縁不要とする説明は範囲を広げすぎです。接地工事そのものは電気設備技術基準・接地工事で学びます。
7.確認問題|条件から基準を選ぶ4問
本文の説明を読んだ後、答えの番号だけでなく、他の選択肢が合わない理由も確認しましょう。各問の正解は一つです。
第1問|境界の電圧
省令第2条の電圧区分について、正しい説明はどれですか。
- (1)交流600Vは、600V以上なので高圧である。
- (2)直流750Vは、交流の低圧上限を超えるので高圧である。
- (3)交流750Vは高圧、直流750Vは低圧である。
- (4)交流7,000Vは、7,000V以上なので特別高圧である。
- (5)低圧に分類される回路には、感電防止の対策は不要である。
第2問|絶縁の例外はどこまでか
解釈第13条の絶縁の原則と例外について、適切な説明はどれですか。
- (1)電気炉に供給する導線は、炉体から離れた部分もすべて絶縁しなくてよい。
- (2)接地された側の電線は、接地点以外の部分も一律に大地から絶縁しなくてよい。
- (3)屋内で使う配線は、天候の影響を受けないため例外になる。
- (4)電気防食装置に接続されていれば、その配線はすべて絶縁不要となる。
- (5)例外となる部分を特定し、それ以外の電路には絶縁の原則を適用する。
第3問|1.25倍した後の下限
解釈第15条第1号・15-1表で判定する交流電路の最大使用電圧が8,000Vです。中性点非接地式で、第16条等の適用除外には当たりません。必要な試験電圧はどれですか。
- (1)7,360V
- (2)10,500V
- (3)10,000V
- (4)12,000V
- (5)8,000V
第4問|交流ケーブルを直流で確認する場合
最大使用電圧4,800Vの交流電路にケーブルを使用しています。解釈第15条の対象で、第16条等の適用除外には当たらないものとし、第15条第2号の直流による方法を選びます。電圧と時間の組合せはどれですか。
- (1)直流7,200Vを連続10分間
- (2)直流9,600Vを連続10分間
- (3)交流14,400Vを連続10分間
- (4)直流14,400Vを連続10分間
- (5)直流14,400Vを連続1分間
8.復習の進め方と公式資料
問題を解くときは、電路の種類と適用条文を先に選び、次に使用電圧・対地電圧・最大使用電圧を分けて読みます。最後に、倍率だけでなく下限・時間・交流か直流かを確かめましょう。
- 電気設備技術基準(総則・電路の絶縁)ミニテスト第1回:このテーマの演習。
- 同ミニテスト第2回・第3回:追加の練習。適用条件は本記事と公式資料も併せて確認してください。
- 電気工事士法と電気用品安全法:作業する人の資格と製品の安全を整理する関連テーマ。
- 電気設備技術基準・接地工事:接地の種類と条件を学ぶ次テーマ。
本文の根拠と確認箇所は次のとおりです。省令の条文番号と解釈の条文番号は異なります。受験時には、試験実施機関が指定する法令の基準日にも合わせて確認してください。
- e-Gov「電気設備に関する技術基準を定める省令」:第1・2・4・5・58条(用語・電圧・安全・絶縁・低圧の絶縁抵抗)。
- 経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」(2025年11月20日改正版):冒頭、第1・13〜16条、1-1表・15-1表・16-1表。
- 経済産業省「電気設備の技術基準の解釈の解説」(2025年11月20日改正版):第13〜15条(例外部分、測定方法、絶縁耐力の意味)。
測定の意味を復習する補助資料として、日本電気技術者協会の「絶縁抵抗測定の要領」と「絶縁抵抗と絶縁耐力」も参照できます。現行条文の適用条件は、上記の省令・解釈を優先して確認してください。
法令確認日:2026年11月5日。省令は2023年3月20日施行版、解釈・解釈の解説は2025年11月20日改正版を参照しています。本文・表・問題は独自作成です。運営者は資格を独学中の個人です。
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