接地工事は、故障したときの電位上昇や高電圧の侵入による危険を小さくするためのものです。外箱を大地につなぐ接地と、変圧器の低圧側を保護する接地では、目的と基準が異なります。
まず「どこを接地するか」、次に「電圧と遮断装置の条件」を読みましょう。特に、接地抵抗を500Ωまで緩和できることと、接地工事を省略できることは別の規定です。
1.接地は何を守るのか
電気が本来の通り道を外れて大地などへ流れる故障を地絡といいます。例えば、ポンプ用電動機の内部で絶縁が破れ、金属製の外箱に電圧がかかると、外箱に触れた人へ電流が流れるおそれがあります。外箱の接地は、こうした異常時の危険を抑えるための対策です。
一方、変圧器の内部で高圧側と低圧側が電気的につながってしまう事故が混触です。低圧側へ高電圧が侵入する危険には、B種接地などで備えます。B種接地は事故そのものを必ず防ぐ装置ではなく、混触が起きたときの低圧側の電位上昇を抑える役割を持ちます。
「電気設備に関する技術基準を定める省令」第10条は接地等の保安措置、第11条は電流が安全・確実に大地へ通じる方法、第12条は変圧器を通じた高電圧の侵入への対策を求めています。具体的な接地工事の方法や数値を示すのが「電気設備の技術基準の解釈」です。
接地しても、故障時の外箱が必ず0Vになるわけではありません。接地抵抗や回路の状態に応じて電圧は生じます。接地だけであらゆる感電を防げると考えず、絶縁・接触防止・地絡時の自動遮断などと組み合わせて考えます。
2.A・C・D種は外箱等、B種は変圧器の低圧側など
次の表は、解釈第17・24・29条による代表的な対象と基本の抵抗値です。A・C・D種の欄は、第29条の機械器具の鉄台・金属製外箱等を想定し、同条の例外や特例を使わない場合を示します。
| 種類 | 代表的な接地箇所 | 基本の接地抵抗 |
|---|---|---|
| A種 | 高圧・特別高圧用機器の鉄台・金属製外箱等 | 10Ω以下 |
| B種 | 高圧・特別高圧と低圧を結合する変圧器の低圧側中性点など | 150/IgΩ以下を基本に、条件別に計算 |
| C種 | 使用電圧300V超の低圧用機器の鉄台・金属製外箱等 | 10Ω以下 |
| D種 | 使用電圧300V以下の低圧用機器の鉄台・金属製外箱等 | 100Ω以下 |
C・D種の境界は使用電圧300Vです。300VちょうどはD種。交流200VのポンプはD種、交流440VのポンプはC種、6,600Vの機器はA種という順に判断します。400Vは300Vを超えますが、交流ではまだ低圧なのでC種です。電圧区分は総則と電路の絶縁で確認できます。
A種とC種の基本値が同じ10Ωでも、接地する対象は同じではありません。また、この表を計器用変成器の二次側や避雷器などにそのまま当てはめず、それぞれの条文を確認します。B種の値は電流や遮断時間で変わるため、A〜D種を抵抗値だけで一律に順位付けすることもできません。
B種を施す場所は中性点だけではない
解釈第24条第1項第1号では、次の箇所を示しています。
- 低圧側の中性点。例えば、星形結線の巻線をつないだ中心の点です。
- 低圧側の使用電圧が300V以下で、中性点への接地が難しいときは、低圧側の1端子。
- 低圧電路を非接地とする場合は、高圧・特別高圧側の巻線と低圧側の巻線の間に設けた金属製の混触防止板。
例えば6,600Vから200Vへ降圧する変圧器では、変圧器の金属製外箱に施すA種と、低圧側中性点等に施すB種を分けて考えます。「変圧器にはB種」とだけ覚えると、外箱と電路の接地を混同しやすくなります。
3.B種の150・300・600は遮断条件で選ぶ
解釈第17条第2項・17-1表で使うIgは、その変圧器の高圧側又は特別高圧側の電路の1線地絡電流です。単位はA。変圧器の定格電流や、漏電遮断器の定格感度電流を代入するのではありません。
基本となる上限は150/IgΩです。接地抵抗をRBとすると、電位上昇をIg×RBで考え、150V以下に抑えるための抵抗値を求めています。つまりRB≦150/Igであり、抵抗を必ず計算値と等しくするという意味ではありません。
300・600を使えるのは、高圧又は35,000V以下の特別高圧と低圧を結合する変圧器で、混触により低圧電路の対地電圧が150Vを超えたときに、高圧・特別高圧側の電路を自動遮断する装置を設ける場合です。その遮断時間から分子を選びます。
| 17-1表の条件 | 表から求める上限 | Ig=8Aの例 |
|---|---|---|
| 以下の緩和条件に当たらない | 150/IgΩ | 150÷8=18.75Ω |
| 上記の設備・保護条件を満たし、1秒を超え2秒以下で遮断 | 300/IgΩ | 300÷8=37.5Ω |
| 上記の設備・保護条件を満たし、1秒以下で遮断 | 600/IgΩ | 600÷8=75Ω |
表の8Aの例は、6,600Vと低圧を結合する変圧器を想定しています。1秒ちょうどは600の行、2秒ちょうどは300の行です。低圧側の漏電遮断器が速く動くだけで、このB種の緩和を使えるわけではありません。
Igは実測値のほか、高圧電路では17-2表の式による計算値も使えます。その式による計算結果は小数点以下を切り上げ、2A未満なら2Aとします。例えば3.2Aという計算結果なら4Aを採用します。この丸め方を、実測値や接地抵抗の計算結果へ一律に適用してはいけません。
計算の後に確認する第24条の条件
第24条第1項第2号により、B種の接地抵抗は5Ω未満までする必要はありません。例えば基本式の計算値が3Ωでも、この規定では5Ω以下とすればよく、3Ω以下まで下げることは要求されません。5Ω以上にしなければならない、という下限の規定でもありません。
特別高圧と低圧を結合する変圧器では、同項第3号により、17-1表の計算値が10Ωを超える場合でも10Ω以下とする規定があります。ただし、35,000V以下の特別高圧側で地絡時に1秒以内に自動遮断する装置を有する場合や、第108条の特別高圧架空電線路に当たる場合は、この10Ωの制限の例外です。特別高圧の問題では、17-1表の計算だけで答えを決めないようにします。
計算練習|同じ地絡電流でも上限は変わる
6,600Vと200Vを結合する変圧器で、Igの採用値が12Aと与えられました。Aは17-1表の自動遮断による緩和を使わない場合、Bは混触で低圧側の対地電圧が150Vを超えたとき、高圧側を1.6秒以内に自動遮断する場合、Cは同じ事故を0.8秒以内に自動遮断する場合です。各接地抵抗の上限を求めてください。
4.C・D種を500Ωにできる条件
解釈第17条第3項第1号と第4項第1号は、低圧電路に地絡が起きた場合、0.5秒以内にその電路を自動遮断する装置を施設するときに、C種・D種の接地抵抗を500Ω以下とすることを認めています。
「漏電遮断器が付いている」だけでは、地絡時に0.5秒以内で遮断する条件を確認したことになりません。また、この第17条の抵抗値緩和には「定格感度電流0.5A以下」という数値条件は書かれていません。装置の感度選定や他の規程の条件と、ここで問う条文の条件を分けて読みます。
| 判断すること | 条件・結果 |
|---|---|
| C種の基本 | 10Ω以下。所定の0.5秒以内の地絡自動遮断があれば500Ω以下に緩和できる。 |
| D種の基本 | 100Ω以下。同じ地絡自動遮断条件で500Ω以下に緩和できる。 |
| 緩和後の工事 | 接地工事は行う。抵抗値の上限が変わるのであって、接地線を外してよいわけではない。 |
例として、交流440Vの電動機にC種接地を施し、接地抵抗が180Ωだったとします。他の特例を使わない基本の10Ω以下には適合しませんが、地絡時0.3秒以内に当該電路を自動遮断する装置があれば、500Ω以下という抵抗値の条件を満たします。0.7秒でしか遮断できない条件なら、この緩和は使えません。
ここで判定しているのは接地抵抗の条件です。接地線や接続部、遮断装置の性能まで含む設備全体の適合性を、この一つの数値だけで判断するものではありません。
5.接地の省略は第29条の別の条件で考える
機械器具の鉄台・金属製外箱等について、第29条第2項は第1項の接地によらなくてよい場合を示しています。小規模発電設備である燃料電池発電設備は、この第2項の対象から除かれます。以下は同項第1〜5号の主な例です。
| 場合 | 省略を考えられる条件 |
|---|---|
| 乾燥した場所 | 交流では対地電圧150V以下、直流では使用電圧300V以下の機械器具。乾燥しているだけでは足りない。 |
| 絶縁性の床等での取扱い | 低圧用機器を、乾燥した木製の床など、これに類する絶縁性のものの上で取り扱うように施設する。 |
| 二重絶縁 | 電気用品安全法の適用を受ける二重絶縁構造の機器。単に外側が樹脂製という意味ではない。 |
| 絶縁変圧器 | 低圧用機器の電源側に、二次側線間電圧300V以下・容量3kVA以下の絶縁変圧器を置き、その負荷側電路を接地しない。 |
| 所定の漏電遮断器 | 水気のある場所以外に施設する低圧用機器で、電気用品安全法の適用を受ける電流動作型、定格感度電流15mA以下・動作時間0.1秒以下の漏電遮断器を電路に施設する。 |
500Ω・0.5秒は抵抗値の緩和、15mA・0.1秒は上表の漏電遮断器による省略と、まず判断の種類を分けます。15mAは0.015Aで、0.5Aとは異なります。水気のある場所では、15mA・0.1秒の装置があっても第2項第5号を根拠に接地を省略できません。
同項にはこのほか、適当な絶縁台、絶縁物で被覆された外箱のない計器用変成器、絶縁性の支持物の上の人が触れない高さなどの規定もあります。また、第29条第4項には、太陽電池等に接続する特定の直流電路のC種接地に別の抵抗値の特例があります。一般的な交流ポンプなどへ、その条件を確かめずに広げないでください。
6.接地抵抗と接地線の太さは別に確認する
接地抵抗は、接地極から大地へ電流が流れるときの抵抗です。接地線の太さは、故障時の電流を安全に通せるか、切れたり腐食したりしにくいかに関わります。地面の抵抗が低いからといって、接地線を細くしてよいわけではありません。
解釈第17条では、例えば移動機器の可とう部分等を除く通常の軟銅線について、A種は直径2.6mm以上、C・D種は直径1.6mm以上という規定があり、それぞれ故障電流を安全に通せることも必要です。B種は17-3表で接続する電路等の条件に応じて定められています。「D種ならどんな設備でも1.6mmで十分」とは判断しません。
直径のmmと断面積のmm²も区別します。丸い単線の断面積はπd2/4で求めるので、直径1.6mmなら約2.01mm²。直径1.6mmと断面積1.6mm²は同じ太さではありません。移動する機器の曲がる部分は別の条件で、電線の種類・断面積を確認します。
7.確認問題|対象・時間・例外を読む4問
各問の正解は一つです。設備の適合性全体ではなく、問題文で指定した条文と条件について判断してください。
第1問|外箱の接地と電圧
第29条第1項の原則を適用する機器の鉄台・金属製外箱等を考えます。同条の例外・特例を使わない場合、正しい組合せはどれですか。
- (1)交流300VはC種、交流440VはD種。
- (2)交流440Vは300Vを超えるのでA種。
- (3)交流300VはD種、交流440VはC種。
- (4)6,600Vの変圧器の金属製外箱はB種。
- (5)A種とC種は基本の抵抗値が等しいので、接地する対象も同じ。
第2問|B種の時間区分
6,600Vと200Vを結合する変圧器で、Igの採用値は10Aです。混触により低圧側の対地電圧が150Vを超えたとき、高圧側を1.4秒以内に自動遮断する装置があります。B種接地抵抗の上限はどれですか。
- (1)10Ω
- (2)15Ω
- (3)60Ω
- (4)500Ω
- (5)30Ω
第3問|500Ωへの緩和は何を変えるか
第17条第3・4項の500Ωへの緩和について、正しい説明はどれですか。
- (1)漏電遮断器があれば、その遮断時間を問わず使える。
- (2)低圧電路の地絡時に0.5秒以内で当該電路を自動遮断する装置があれば、C・D種の抵抗値を500Ω以下とできる。
- (3)同じ条件を満たせば、A種も500Ω以下でよい。
- (4)緩和が使えるときは、機器の接地線を取り外してよい。
- (5)この第17条の緩和には、定格感度電流0.5A以下という数値条件が明記されている。
第4問|水気と接地省略
低圧用の機械器具に、電気用品安全法の適用を受ける電流動作型漏電遮断器(定格感度電流15mA、動作時間0.1秒)を通じて給電します。小規模発電設備である燃料電池発電設備には当たらないとし、第29条第2項第5号だけを根拠に判断する場合、正しい説明はどれですか。
- (1)水気のある場所でも、この装置があれば同号により接地を省略できる。
- (2)水気の有無にかかわらず、感度が30mAでも同号の条件を満たす。
- (3)0.5秒以内なら同号の時間条件を満たす。
- (4)水気のある場所以外では同号の条件を満たすが、水気のある場所では同号による省略はできない。
- (5)同号は接地抵抗を500Ωにすることだけを認める。
8.復習の進め方と公式確認先
外箱か電路かを確認し、A〜D種を選び、抵抗値と保護条件を調べる順に解きます。省略を検討する場合は、その機器・場所・保護装置に該当する別の条文を確認しましょう。
- 接地工事ミニテスト第1回:対象と抵抗値を復習する演習。
- 接地工事ミニテスト第2回・第3回:追加の練習。緩和・省略の適用条件は、本記事と公式資料も併せて確認してください。
- 前テーマ:総則と電路の絶縁:電圧区分・絶縁抵抗の基準を整理。
- 次テーマ:架空電線路と地中電線路:配線の施設基準へ進む。
- 自家用電気工作物の保安:点検・検査の制度を確認。
根拠となる資料と確認箇所は次のとおりです。試験では、試験実施機関が指定する法令の基準日も確認してください。
- e-Gov「電気設備に関する技術基準を定める省令」:第10〜12条(接地の目的・方法・変圧器の保護)。
- 経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」(2025年11月20日改正版):第17条・17-1〜17-3表、第24条、第29条・29-1表(接地抵抗、電線、対象、例外)。
- 経済産業省「電気設備の技術基準の解釈の解説」:第17・24・29条(接地の目的と規定の考え方)。
補助資料として、日本電気技術者協会の「電気設備技術基準・解釈の解説〔その2〕電路の絶縁と接地」も参照できます。現行条文の適用条件は、省令と解釈本文を優先して確認してください。
法令確認日:2026年11月6日。省令は2023年3月20日施行版を確認しています。本文・比較表・問題は独自作成です。運営者は資格を独学中の個人です。
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