測定器の表示が細かくても、測定結果が同じ桁まで正しいとは限りません。器差、応答、サンプル輸送、ゼロ、換算係数、位置、集計方法まで含めて初めて、再現できる測定になります。
この第1回は、CO2計の表示980ppm、チューブ遅れ込み約70秒、粉じん0.131mg/m3、各階の法定測定点、平均880ppmに隠れたピークを扱う独自5択5問です。
資料確認日:2026年8月9日。厚生労働省の建築物環境衛生管理基準・測定器資料、NITEのJCSS資料、NISTの計量トレーサビリティ資料を照合しました。機器原理・校正・応答の全体は「環境測定器の選び方」で解説し、このページは別の測定値と現場条件による判断演習に特化しています。
解く前の3分整理|表示値の前後にある測定過程
| 段階 | 今回の確認 | 残す記録 |
|---|---|---|
| 準備 | 校正・ゼロ・電池 | 機器ID、期限、係数 |
| 採取 | 位置・高さ・チューブ | 平面図、流量、時刻 |
| 検出 | 誤差・応答・干渉 | 仕様、安定待ち |
| 変換 | ゼロ差引き・K値 | 生値、式、単位 |
| 評価 | 平均・ピーク・基準 | 集計法、在室、運転 |
校正は、参照標準が示す値と機器指示の関係を求める作業です。表示を内部調整する作業や、現場前のゼロ確認とは同じではありません。NITEは計量トレーサビリティを、各校正が不確かさへ寄与する切れ目のない連鎖によって測定結果を参照へ関連付けられる性質と説明しています。校正済みというラベルだけで、その後の全現場結果が自動的に正しいわけではありません。
第1問|表示980ppmでも1,000ppm以下を保証できない
CO2計が980ppmを表示した。メーカー仕様に、この範囲の指示誤差は±(40ppm+指示値の3%)とある。仕様値だけを単純適用した指示誤差の幅と、管理基準1,000ppmに対する判断の組合せとして最も適切なものはどれか。
- ±29.4ppm、確実に適合
- ±40.0ppm、確実に適合
- ±69.4ppm、表示だけでは1,000ppm以下を保証できない
- ±69.4ppm、確実に不適合
- ±98.0ppm、表示だけでは1,000ppm以下を保証できない
第2問|センサー応答58秒+輸送13秒で約70秒
一次遅れで近似するCO2センサーの時定数は25秒で、90%応答時間を2.303τとする。内径4.0mm・長さ10mのチューブから0.60L/minで吸引し、チューブ内を押出し流れと仮定する。チューブ容積÷流量の輸送時間を加えた90%到達時間に最も近いものはどれか。
- 13秒
- 25秒
- 58秒
- 70秒
- 83秒
第3問|粉じんはゼロを引いてK値を掛け0.131mg/m3
相対濃度式デジタル粉じん計の1分平均が132cpm、測定前後から採用したゼロ値が7cpmだった。この測定条件に指定された質量濃度変換係数K=0.00105mg/m3/cpmを使い、C=K×(R-D)で求める質量濃度に最も近いものはどれか。
- 0.00735mg/m3
- 0.125mg/m3
- 0.131mg/m3
- 0.139mg/m3
- 1.31mg/m3
第4問|各階・居室中央・床上1.1m・通常使用中
6階建ての特定建築物で、定期の空気環境測定を計画する。厚生労働省が示す通則的な測定方法に最も合う計画はどれか。
- 1階受付の1点だけを、始業前に床上1.1mで測る
- 通常使用時間中に各階ごと、適当な居室中央部の床上1.1mで測る
- 通常使用時間中に各階の窓際、床上1.8mだけで測る
- 屋上外気の1点を全6階の値として用いる
- 空調停止後に機械室だけを床上1.1mで測る
第5問|平均880ppmだけでは1分ピーク1,180ppmを再現できない
会議室の診断用CO2ロガーが1分ごとに760、780、820、1,180、860ppmを記録した。5分平均は880ppmである。保存方法として最も適切なものはどれか。
- 平均880ppmだけを残し、1分値は直ちに削除する
- 最大1,180ppmだけを残し、ほかを削除する
- 平均が1,000ppm未満なので、測定条件を残さず適合と確定する
- 生の1分値、平均方法、時刻、機器ID、位置、在室・換気状態を一緒に残す
- 1,180ppmを外れ値として理由なく削除し、再平均する
採点|数字の前に測定条件を読めたか
| 正解数 | 判定 | 復習の焦点 |
|---|---|---|
| 5問 | 測定設計は安定 | 品質手順へ展開 |
| 4問 | 1工程を再確認 | 誤差か応答 |
| 2~3問 | 表示値中心の判断 | 採取・変換・記録 |
| 0~1問 | 親記事から復習 | 校正・ゼロ・代表点 |
測定結果には、機器ID、校正・使用前確認、採取位置、開始・終了時刻、安定待ち、周辺条件、単位、補正式、丸め前の値を添えます。測定前後のゼロが大きく変化した場合は、その間の全データを無条件で採用せず、影響範囲を評価して再測定の要否を判断してください。
間違えた分野の戻り先
- 校正・応答・測定原理:環境測定器の選び方
- 空気環境の基準・位置・頻度:空気環境測定の基準と実務
- CO2・CO・粉じんの診断:室内空気質と汚染物質
- BEMSデータの比較・正規化:BEMSと省エネ検証
追加演習
NDIR、検知管、電気式温湿度計、ホルムアルデヒドは「環境測定機器と測定法ミニテスト第2回」、粉じん測定、通風乾湿計、ピトー管、グローブ温度は「環境測定機器と測定法ミニテスト第3回」で確認できます。
公式資料の確認先
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」
- 厚生労働省「デジタル技術を活用した建築物環境衛生管理」
- 厚生労働省「事務室の作業環境測定」
- NITE「JCSSの概要」
- NIST「Metrological Traceability」
まとめ|980ppmという数字だけで結論を出さない
表示980ppmでも、仕様±69.4ppmを単純適用すると1,000ppm超の範囲を含みます。時定数25秒のセンサーへ10mチューブを付けた例は、センサー応答57.6秒に輸送12.6秒を加えて約70秒です。粉じんは132cpmからゼロ7cpmを引き、指定K値を掛けて0.131mg/m3となります。
法定代表点は通常使用中、各階、居室中央部、床上75〜150cmです。5分平均880ppmだけを残すと1分値1,180ppmを失います。表示値には、原理、器差、応答、換算、場所、時刻、集計方法を添え、別の担当者が同じ判断を再現できる記録にしてください。
資料確認日/最終更新日:2026年8月9日
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