建築物環境衛生管理技術者 給水及び排水の管理

水道の分類と52項目の水質基準|PFOS・PFOAと残留塩素

水道管理は、まず「水源・供給先・給水量・受水槽容量」で法的な区分を決め、その後に水質基準と建物側の管理義務を重ねます。受水槽があるだけでは簡易専用水道とは限らず、給水栓の残留塩素測定と、水道事業者が行う52項目の水質検査も同じ制度ではありません。

2026年4月1日から、水道水質基準はPFOS・PFOAを加えた52項目です。基準は2物質の合算で50ng/L(0.00005mg/L)以下。この記事では、法定区分、残留塩素、検査頻度、異常時の初動を一つの判断手順へつなげます。

制度・資料確認日:2026年8月2日。e-Gov法令検索、国土交通省、環境省、厚生労働省の現行公表資料を照合しています。条例、水道事業者の供給規程、建物用途・水源により追加事項があるため、個別施設は所管行政庁と水道事業者へ確認してください。

最初に3層を分ける|水道法・建築物衛生法・地域ルール

同じ蛇口の水でも、誰に何を求める規定かが異なります。数字だけを横断して覚えると、「毎日」と「7日以内ごと」、「水質検査」と「管理状況の検査」を取り違えます。

制度 主な対象 管理の中心
水道法 水道事業・専用水道等 水質、施設、供給
水道法34条の2 簡易専用水道 水槽以降の衛生管理
建築物衛生法 特定建築物 建物内の飲料水管理
条例・供給規程 小規模貯水槽等 届出、点検、清掃等

一つのビルに複数の制度が同時にかかることがあります。たとえば、受水槽有効容量15m³の特定建築物なら、簡易専用水道としての管理に加え、建築物衛生法の残留塩素・水質検査等も確認します。

「上水道」は法第3条の区分名ではない

水道法第3条は、一般の需要に応じて水を供給する事業を水道事業と定義し、給水人口100人以下のものを除きます。そのうち給水人口5,000人以下のものが簡易水道事業です。

したがって、学習上よく見る「上水道=5,001人以上」は規模を分ける通称的な整理です。条文上の基本語は水道事業と簡易水道事業です。「簡易水道」と「簡易専用水道」は名前が似ていますが、前者は地域へ供給する小規模な事業、後者は建物等の受水槽以降の水道です。

水道の区分は4つの条件で判定する

区分 主な法定要件 典型例
水道事業 一般需要・給水人口100人超 自治体等の水道
簡易水道事業 水道事業・5,000人以下 小規模地域水道
専用水道 居住100人超または20m³/日超 工場・学校・団地等
簡易専用水道 全量受水・受水槽10m³超 ビル・共同住宅等

専用水道は、水道事業以外の自家用等の水道で、100人を超える者に居住用水を供給するもの、または1日最大給水量が20m³を超えるものです。井戸水だけが対象ではありません。他の水道からの全量受水でも、地中・地表部分の施設規模が政令の除外基準を超えれば該当し得ます。

簡易専用水道は、水道事業から受けた水だけを水源とし、水道事業・専用水道ではなく、受水槽の有効容量が10m³を超えるものです。高置水槽の容量を足して10m³を判定するのではなく、通常は受水槽の有効容量を見ます。消防用水槽と共用する場合は、飲料水として有効に使う部分を図面・容量計算で確定します。

小規模貯水槽水道は、一般に簡易専用水道に満たない貯水槽水道を指します。水道法第34条の2の直接対象外でも、自治体条例や水道事業者の供給規程による管理対象になり得ます。「10m³以下だから管理不要」ではありません。

2024年から水道行政は国土交通省と環境省へ移管

2024年4月1日、水道整備・管理行政は厚生労働省から国土交通省と環境省へ移管されました。国土交通省が水道の整備・管理、水質・衛生に関する事務は主に環境省が担います。水道事業の認可を現在も一律に「厚生労働大臣の認可」と説明するのは古い整理です。

一方、建築物衛生法による特定建築物の衛生管理は厚生労働省の所管です。記事や帳票の出典欄では、水道法上の水質基準は環境省、水道施設・簡易専用水道は国土交通省、建築物環境衛生管理基準は厚生労働省というように確認先を分けます。

水道水質基準は2026年4月から52項目

水道法第4条に基づく水質基準は、2026年4月1日に51項目から52項目へ増えました。PFOS・PFOAが、それまでの水質管理目標設定項目から、遵守・検査義務のある水質基準項目へ移ったためです。

代表項目 現行基準 主な意味
一般細菌 100集落/mL以下 微生物管理
大腸菌 検出されない ふん便汚染の指標
鉛・化合物 0.01mg/L以下 健康影響・配管
総トリハロメタン 0.1mg/L以下 消毒副生成物
pH値 5.8~8.6 腐食・処理管理
色度/濁度 5度/2度以下 外観・異常兆候
PFOS・PFOA 合算50ng/L以下 有機フッ素化合物

水質管理目標設定項目は、水道水中で検出される可能性があるなど、水質管理上留意する項目です。2026年4月時点では26項目で、法定の52項目と同じ扱いではありません。残留塩素1mg/L以下はこの目標設定項目にある味・臭い等を考慮した上側の目標で、給水栓に保持すべき消毒の下限0.1mg/Lとは目的が違います。

PFOS18+PFOA24=42ng/L|合算して判定する

ある給水地点でPFOSが18ng/L、PFOAが24ng/Lだった例を計算します。基準は個別に50ng/Lではなく、2物質の合計です。

合算濃度=18+24=42ng/L

42÷50×100=基準値の84%、42ng/L=0.000042mg/L

この例は50ng/L以下ですが、「安全率16%だから建物側で何もしなくてよい」とは即断しません。採水地点、定量下限、過去推移、受水元の公表結果、水源や活性炭処理の変更を確認します。反対に、一度の超過が直ちに健康被害の発生を意味するわけでもありません。環境省は、超過時に飲用摂取を防ぎ、水源切替等の低減措置を講じる考え方を示しています。

水道事業者等のPFOS・PFOA検査は、おおむね3か月に1回以上が基本です。ただし事業区分、全量受水、過去の検出状況等で頻度の軽減・省略条件が異なるため、「すべての建物が3か月ごとに検査」と覚えません。

残留塩素は下限と上側目標を混同しない

状態 遊離残留塩素 結合残留塩素
通常 0.1mg/L以上 0.4mg/L以上
著しい汚染のおそれ等 0.2mg/L以上 1.5mg/L以上

遊離残留塩素は次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンなど、結合残留塩素は主にアンモニア性窒素等と反応して生じるクロラミンです。消毒力は水温、pH、接触時間、有機物等でも変わるため、「結合は遊離の4倍なら同じ効果」と単純換算はしません。1.5mg/Lは0.4mg/Lの約4倍ですが、汚染のおそれがある場合の法定値であり、覚え方だけで理由を説明しないことが大切です。

DPD法の測定では、採水後すぐに所定の試薬・セル・測定範囲で測ります。蛇口を開けた直後か一定時間流した後か、給水系統のどこか、遊離か全残留塩素かを記録しないと、数値を比較できません。

「毎日」と「7日以内ごと」は対象制度が違う

対象 主な検査・作業 基本頻度
水道事業者等 色・濁り・消毒残留効果 1日1回以上
特定建築物 遊離残留塩素 7日以内ごと
特定建築物 16項目の水質検査 6月以内ごと
特定建築物 消毒副生成物12項目 年1回・6~9月
特定建築物 貯水槽清掃 1年以内ごと

水道または専用水道から供給された水だけを水源とする特定建築物では、一般細菌、大腸菌、亜硝酸態窒素、pH、味、臭気、色度、濁度等16項目を6月以内ごとに検査します。6月1日から9月30日の間には、総トリハロメタン等の消毒副生成物12項目を年1回検査します。地下水等を全部または一部に使う場合は、給水開始前の全項目や3年以内ごとの項目などが加わります。

2026年4月のPFOS・PFOA追加で、特定建築物の上記定期検査項目が自動的に1項目増えたわけではありません。厚生労働省は定期測定項目に変更なしと明示しています。ただし、地下水等を使う特定建築物が給水開始前に行う水質基準全項目の検査には、PFOS・PFOAも含まれます。

簡易専用水道の年1回検査は「52項目検査」ではない

簡易専用水道の設置者は、水槽を毎年1回以上清掃し、汚染防止の点検を行い、管理状況について毎年1回以上、地方公共団体の機関または国土交通大臣・環境大臣の登録を受けた者の検査を受けます。

この定期検査は、施設・管理状態、給水栓の臭気・味・色・色度・濁度・残留塩素、図面・清掃記録等を確認するものです。簡易専用水道は水質基準に適合した水を水道事業者から受ける前提なので、水道法上の年1回検査を「52項目の水質検査」と言い換えるのは誤りです。

受水槽の構造、マンホール、通気管、防虫網、オーバーフロー管、清掃後の確認は「貯水槽の構造と管理」で詳しく扱います。本記事では制度区分と水質判定に範囲を絞ります。

異常時は数値を追う前に使用を止める

色・濁り・臭い・味の異常、残留塩素の消失、異物侵入、配管の負圧事故、検査基準超過などがあれば、原因が確定するまで通常使用を続けません。健康を害するおそれがあると知ったときは、直ちに給水を停止し、危険である旨を関係者へ周知します。

  1. 停止・隔離:飲用停止、対象系統の遮断、代替水を手配する
  2. 周知:対象階・用途、禁止範囲、連絡先を具体的に伝える
  3. 現状保持:むやみに洗浄・消毒せず、採水や原因調査に必要な状態を残す
  4. 連絡:保健所、水道事業者、所有者、管理技術者、検査機関へつなぐ
  5. 調査:受水点と末端、系統図、直近工事、逆流・滞留、清掃記録を比較する
  6. 復旧:原因除去、洗浄・消毒、再検査、行政等との協議後に再開する

大腸菌検出やPFOS・PFOA超過の意味、必要な応急措置は同じではありません。結果を一括して「塩素を増やせば解決」と扱わず、微生物、化学物質、濁り、配管由来を分けます。クロスコネクションと逆流は「給水設備の保守管理」、感染症の初動は「ビルの感染症対策」を参照してください。

理解度チェック

【問1】水道法上の区分として最も適切なものはどれですか。

  1. 簡易水道事業は受水槽10m³以下の建物内水道である
  2. 上水道は水道法第3条が定義する正式名称である
  3. 簡易専用水道は井戸水を一部使っても該当する
  4. 簡易水道事業は給水人口5,000人以下の水道事業である
  5. 受水槽があれば容量にかかわらず専用水道である
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正解:4
簡易水道事業は給水人口5,000人以下の水道事業です。簡易専用水道とは別の区分です。

【問2】PFOSが18ng/L、PFOAが24ng/Lのとき、現行水質基準との関係はどれですか。

  1. 合算21ng/Lで基準超過
  2. 合算42ng/Lで基準以下
  3. 合算42ng/Lで基準超過
  4. 各50ng/L以下なので合算不要
  5. 0.042mg/Lで基準以下
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正解:2
18+24=42ng/L。PFOS・PFOAは合算50ng/L以下が基準です。42ng/Lは0.000042mg/Lです。

【問3】病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合、給水栓の遊離残留塩素として必要な値はどれですか。

  1. 0.05mg/L以上
  2. 0.1mg/L以上
  3. 0.2mg/L以上
  4. 0.4mg/L以上
  5. 1.5mg/L以上
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正解:3
通常は0.1mg/L以上ですが、著しい汚染のおそれ等がある場合は0.2mg/L以上です。1.5mg/Lは結合残留塩素の値です。

【問4】検査・管理頻度の説明として最も適切なものはどれですか。

  1. 特定建築物の遊離残留塩素は1日1回以上が法定頻度である
  2. 簡易専用水道の年1回検査は52項目の水質検査である
  3. 特定建築物の貯水槽清掃は3年以内ごとに1回である
  4. 水道事業者等の日常検査と特定建築物の検査は同じ制度である
  5. 特定建築物の遊離残留塩素は7日以内ごと、貯水槽清掃は1年以内ごとに行う
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正解:5
建築物衛生法施行規則では、遊離残留塩素を7日以内ごと、貯水槽清掃を1年以内ごとに行います。

公式の確認先

まとめ|区分、基準、検査主体の順で読む

簡易水道事業は5,000人以下の水道事業、専用水道は居住100人超または1日最大20m³超等、簡易専用水道は水道事業からの全量受水で受水槽10m³超が基本です。名称ではなく、水源・供給先・給水量・容量で判定します。

水道水質基準は2026年4月から52項目で、PFOS・PFOAは合算50ng/L以下です。残留塩素の通常下限は遊離0.1mg/L、結合0.4mg/L。水道事業者等の日常検査、特定建築物の7日以内ごとの測定、簡易専用水道の年1回の管理状況検査を分けて覚えましょう。

給水方式は「給水方式と給水設備」、科目全体の頻度一覧は「建築物環境衛生管理基準」、演習は「水道の分類と水質基準ミニテスト第1回」へ進んでください。

制度・資料確認日/最終更新日:2026年8月2日

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